その山から脱するを禁ず

    作者:のらむ


     金時山の麓を、1人の老獪な僧侶が歩いていた。
     真っ直ぐと背筋が伸びた背に巨大な護摩壇を背負い、手には断罪輪が握られている。
     彼は天海大僧正配下の羅刹、名を慶信と言う。
    「ふむ、ここで良いか……しっかりと役目を果たすとしよう」
     そう呟いた慶信は地面に護摩壇を置くとその中央に火を焚き、自身も地べたに座り込んで読経を始めるのだった。
     一方、金時山の山中には、一匹の獣が佇んでいた。
     金色の鬣に鋭い牙と爪を持つ巨大な獅子。その鋭い眼光は、慶信が建て、今まさに火が立ち昇っている護摩壇の方を向いていた。
    「グルルルル…………!!」
     獅子は唸り声を上げながら巨大な爪を振り上げ、周囲の木々を薙ぎ倒す。
    「――ガアアアァァァァァアア!!」
     激しい雄叫びは山中に響き、恐らくは慶信の耳にも届いただろうが、獅子はそれ以上護摩壇に近づくことはしなかった。もしくは、出来なかった。
    「グルルルルル…………」
     しばらくそのまま動かずにいた獅子だったが、ついに諦め引き返していくのだった。


    「先日使者を送ってきた天海大僧正に、どうやら新しい動きがあったみたいです」
     神埼・ウィラ(インドア派エクスブレイン・dn0206)は赤いファイルを開き、事件の説明を始める。
     どうやらウィラが言うには、天海勢力所属の僧型の羅刹が、神奈川県の金時山周辺の一般人を追い出し、周囲の立ち入りを禁止してしまったらしい。
     一般人の追い出しには、殺界形成に類似した力が使われているらしく怪我人等はいないが、やはり登山客の迷惑にはなっている様だ。
    「また、現在金時山には強力だ動物型の眷属が活動していて、僧型の羅刹はこの眷属を金時山から移動させないようにしているみたいです。目的は分かりませんが」
     今回の事件に対し灼滅者達は、金時山に潜む動物型眷属か、僧型羅刹。あるいはその両方を灼滅する事を目的とし行動して貰う事となる。
     どちらを、あるいは両方倒すかの判断は、灼滅者達の判断に委ねられる。
    「皆さんが金時山に向かうのは22時。完全に夜中です。その時金時山の麓には慶信という名の羅刹が、金時山山中には獅子型の眷属がいます。それぞれの居場所に関する情報は既に予知で入手済みですので、問題なく接触出来ます。まあ慶信に関しては夜の山中で堂々と火を焚いているので、見ればすぐに分かると思いますが」
     そう言ってウィラは資料をめくり、敵の戦闘能力について説明する。
    「まずは羅刹、慶信。慶信の能力は戦闘以外の能力に特化されているため、その戦闘能力はあまり高くありません。それでも灼滅者3人分程度はあるでしょうが。戦闘となれば、慶信は手にした断罪輪と、神薙使いのサイキックで応戦します」
     獅子型眷属を倒し慶信を倒さなかった場合、慶信は護摩壇を抱え京都方面へと帰って行く。
    「次に、金色の獅子の形をした眷属。こちらは眷属の中でもかなりの強さで、ダークネス程度の力は確実にあります。獅子型眷属は鋭い爪や牙を駆使した威力に特化した攻撃や、敵陣を威圧する咆哮、雷を纏って突撃し敵の攻撃能力を減衰させるサイキック等を使います。攻撃、防御共にシンプルに強いです」
     慶信を倒し獅子型眷属を倒さなかった場合、獅子型眷属は金時山を出て何処かへと去っていく。
    「今回の事件は、一般人の被害は全く出ていません。が、獅子型眷属が街を襲えば被害は出るでしょうし、天海大僧正の配下達の動きも怪しくないわけではありません。少し考えるのが難しいかもしれませんが、めんどくさいなら両方灼滅するという方法もあります。ただまあ、かなり乱暴な手ではあるかもしれませんが」
     そう言って、ウィラはファイルをパタンと閉じる。
    「さて、説明は以上です。皆さんがしっかりとした方針を持ち、その目的を無事達成できることを願っています。お気をつけて」


    参加者
    天鈴・ウルスラ(星に願いを・d00165)
    藤枝・丹(六連の星・d02142)
    月雲・悠一(紅焔・d02499)
    中川・唯(高校生炎血娘・d13688)
    丹下・小次郎(神算鬼謀のうっかり軍師・d15614)
    エリス・メルセデス(泡沫人魚・d22996)
    翌檜・夜姫(羅漢柏のミコ・d29432)
    高原・清音(彼岸花と霞草を持つ娘・d31351)

    ■リプレイ


     時刻は22時。場所は金時山の麓。
     火が立ち昇る護摩壇の前には、天海配下の僧侶型羅刹、慶信が読経を唱えていた。
     そして金時山に訪れた8人の灼滅者達は、慶信の下へ向かっている途中である。
    「こんな山の中で、眷属相手に何を考えて……いや、考察は後でいいか。今は目の前の事に対処しないとな」
    「わたしも、正直天海勢力は胡散臭いと思ってる……けど、今は眷属を倒す方が重要かな」
     月雲・悠一(紅焔・d02499)と中川・唯(高校生炎血娘・d13688)は慶信にあまり良い感情を抱いてはいない様だったが、今は進んで争う時では無いとも考えていた。
    「……上手く事が運べばいいのだけど……交渉は皆に任せるわね……」
    「戦闘能力が低くても、相手はダークネスデス。油断はせずに行きマショウ」
     高原・清音(彼岸花と霞草を持つ娘・d31351)と天鈴・ウルスラ(星に願いを・d00165)が警戒を緩めない様に改めて気を引き締めた頃、一同は慶信が佇んでいる金時山の麓に到着した。
    「お主等は……」
     灼滅者達の存在に気づいた慶信は読経を止め、灼滅者達に目を向ける。
    「初めまして、慶信さん。俺達は武蔵坂の灼滅者です。最初に言っておきますと、俺らに敵対の意思はありません」
    「そうそう、僕らに戦うつもりはないんだ。もしよければ、少しお話しても大丈夫かな?」
     慶信は灼滅者達の登場にかなり警戒していた様だったが、丹下・小次郎(神算鬼謀のうっかり軍師・d15614)と翌檜・夜姫(羅漢柏のミコ・d29432)の言葉に、一応警戒を緩めるような素振りを見せる。
    「ふむ……武蔵坂か。それで、儂に一体何の話か?」
     慶信はそう言って、訝しげに灼滅者達を見回す。
    「さっきも言った通り、俺達はあんたを灼滅しにきた訳じゃないっす。俺達は、この山に潜む眷属を灼滅しにきたんすよ」
    「……眷属に接触する前に、一応慶信さんにその事をお伝えしようと、思ったので……」
     藤枝・丹(六連の星・d02142)とエリス・メルセデス(泡沫人魚・d22996)の言葉をじっと聞き終え、慶信は静かに頷く。
    「成る程……眷属の灼滅に関しては問題ない。好きにするが良い」
     慶信はそう言いながら立ち上がり、護摩壇の火を掻き消す。
    「……意外ですね、こうもあっさり引いてくれるとは。あの眷属を倒さずに、わざわざ封じ込めに来たっていうのに」
     眷属の灼滅に関して拒否される可能性を危惧していた小次郎は、慶信の真意を組み取ろうとする。
    「……あの……ありがとう、ございます……眷属の件も、一般人に、気をつかってくださった事も……」
     エリスがそう投げかけると、慶信は静かに応える。
    「別に感謝される程のことでは無いの。儂は、主の命に従っておるのみ」
     そう言い切った慶信に、夜姫は質問を投げかけていく。
    「それと、少し聞きたいんだけどさ。どうして眷属を山中に閉じ込めたの? もしかして、獣狩りと何か関係があるのかな?」
    「すまんが、お主等の質問には答える事は出来ぬ。それは儂の役目では無い……それに、お主等は天海様との交渉を断ったばかりではないか」
     己の判断で、勝手に情報は提示できないという事だろう。
    「質問じゃないっすけど、1つだけ……今回は大丈夫だったっすけど、これからも一般人には手出しをしないでほしいっす」
    「……それも儂が決める事では無い。お主等も、儂と交渉をする為にこの山を訪れた訳では無い筈。己の目的を達成する事に集中するが良かろう」
     丹の言葉にそう応えた慶信は護摩壇を背負うと、灼滅者達に背を向け歩き出す。
    「……武蔵坂は一枚板では無いが、身内に手を出す者と嘘には寛容ではないでゴザルよ」
     去りゆく慶信の背に、ウルスラがそう声をかけたのだった。
    「去っていったね。慶信はわたし達に敵意はあまりなかったみたいだけど……胡散臭さも消えないね」
     慶信との会話の間、ずっと口を押さえ仲間の影に隠れていた唯は、仲間たちにそう投げかける。
    「確かにな。俺達も全方位に喧嘩を売りたい訳じゃないが……やっぱりきな臭いな。この行動が連中の利になりそうってのも、かなりモヤっとする」
     悠一は複雑そうな表情で、慶信が去って行った方角を眺める。
    「……それはそれとして……早く行きましょう……思ったより、時間を使ってしまったわ……」
     清音の言葉に頷き、一同は眷属が潜む山中へと向かうのだった。


    「グルルルルル……!!」
     エクスブレインの予知通りの場所に、獅子型の眷属は佇んでいた。
     灼滅者達の姿を確認した途端、獅子は灼滅者達を警戒した様子で間合いを測る。
    「さて、俺達の本番はここから。相手のテリトリーで油断は禁物っすよ」
     丹はそう呟くと、全身に纏った闘気を拳に集束させていく。
    「まずは一撃、確実に当てていくっすよ!」
     そして丹が拳を付きだすと、砲弾の様に巨大な闘気の塊が獅子の身体に直撃し、大きく吹き飛ばした。
    「噂通り獰猛そうでゴザルな。早い所片づけてしまうでゴザルよ!」
     ウルスラは、バラが絡まった黄金の鉄管の束の様になった十字架、『ローゼンクロイツ・オルガン』を構え、その銃口を獅子に向ける。
    「こいつを喰らって凍り付くが良いデス!!」 
     そしてウルスラが放った光の砲弾が、獅子の身体に直撃しその身を凍らせる。
    「ガァアアアアアア!!」
     獅子は巨大な咆哮をあげると、全身に雷を纏わせ突進する。
    「グッ……! こんなに強い眷属を閉じ込めていたんだね……!」
     突進を受け止めた夜姫は苦しげに呟くと、『騙神機巧・甲型』を構え獅子に狙いを定める。
     歯車の音を立てながら霊力が込められていくカラクリ腕を、夜姫は大きく振りかぶる。
    「ここだよ!!」
     そして放たれた打撃は虎の顔面を殴り飛ばし、放たれた霊力は全身を縛り付けた。
    「かなり、攻撃が強烈ですね……援護、します……」
     エリスは白絹の様に透き通った布を展開すると、仲間を包みその防護能力を上昇させる。
    「更に、行きます……」
     そしてエリスは勢いよく獅子に接近し、炎の蹴りをに叩きこむと、その巨体を高く打ち上げた。
    「よし、このまま続くぞ」
     悠一は火の神の名を冠した戦鎚に、己の血の力を注ぎ込むと、ロケット噴射を利用し一気に獅子に向かって跳び上がる。
    「――当たれ!!」
     そして放たれた強烈な殴打が、獅子の腹を打ち地面まで一気に叩き落とした。
    「……反撃の隙は、与えないわ……」
     清音はすかさず獅子の前に進み出ると、『百花龍嵐』の名を冠す鮮やかなリボンを展開する。
    「……その動き……封じさせてもらうわ…………」
     そして多方向から伸びたリボンは獅子を取り囲む様に迫り、その全身に絡みつき動きを鈍らせる。
    「そういう事なら、俺もその流れに乗るとしようかな」
     小次郎は『絡繰人形の腕』に霊力を込めながら、獅子の元まで一気に接近する。
    「グルァァァァァ!!」
    「おっと、悪いけどそんな強烈な攻撃を易々と喰らう訳にはいかないな」 
     獅子が振り下ろした爪をひらりと回避した小次郎は獅子に腕を叩き付けると、全身を霊力の網で縛るのだった。
    「よーし、うらみはないけど灼滅させてもらうよっ!!! やっぱりずっと黙ってるのは性に合わないね!」
     唯はバチバチと燃え滾る炎のオーラを全身に纏い、獅子と正面から相対する。
    「グルルル……ガァァァァアアアアアア!!」
     獅子の咆哮は灼滅者達の全身を打ち衝撃を与えるが、唯は剣を構えたまま耐えきる。
    「わたしの全力の一撃、受けてみるといいよ!」
     そして獅子に突撃した唯は闘気を纏わせた剣を一気に振り下ろし、獅子の身体に深い傷を刻み込んだ。
    「グルルルルル……!!」
     灼滅者達からの攻撃を受けそれなりの傷を負った様獅子だが、その攻撃の勢いは収まるどころかむしろ激しくなってきている。
     闘いは、もうしばらく続く様だ。


    「グガァァァァァァ!!」
     怒り狂う獅子は全身を駆使し、凶悪な攻撃を次々と放っていく。
     灼滅者達はそれでも何とか耐えていたが、獅子の戦闘能力は予想以上に高い様だった。
    「思ったより傷が深い……けど、このまま倒れる訳にはいかないな」
     仲間に向けられた攻撃を何度も耐えるうちにかなり傷を負った小次郎は、癒しの霊力で己の身体を癒す。
    「皆さん、頑張って下さい……私も、全力で治療、します……」
     更にエリスが七不思議の温かい話を語ると、灼滅者達の傷が更に癒される。
    「『足柄山の獣使い』を自称するラゴウに、金時山の眷属か。やっぱりこいつはラゴウの配下なのか……?」
     疑問はつきないが、今は目の前の相手に集中すべきだと、悠一は焔の如き闘気を全身に纏う。
    「人を襲い虐殺する可能性があるなら、絶対にお前を逃す訳にはいかないな」
     そして悠一が放った灼熱の拳が、獅子の全身を打ち地面に叩き伏せる。
    「……私が続くわ…………」
     清音は橙色の手帳を開き魔術を詠唱すると、魔力の矢を獅子に放ち追撃する。
    「ガァァアアアアア!!」
     獅子は己の傷も気にせず、猛々しい突進で更に灼滅者達を攻めたてる。
    「追い詰められた獣は危険だって良く言うけど……眷属でもそうなのかな」
     激し突進を受け止めた夜姫は自身の傷を癒すと、構えた十字架に光を集めていく。
    「でも、ボク達も負けてられない。一気に攻めきるよ……!」
     そして夜姫が放った光の砲弾は地面に着弾すると共に大きく爆発し、獅子の身体の一部が凍り付く。
    「随分と寒そうだね、今度は私が全身熱くしてあげるよっ!」
     唯は両腕に爆炎を纏わせると、獅子に向けて一気に突撃する。
    「私の炎を、そう簡単に耐えられると思わない事だね!」
     そう叫びながら、唯は獅子の眼前で両拳を地面に叩き付ける。
     そして放たれた炎の奔流は唯を中心とした巨大な炎柱を創り上げ、巻き込まれた獅子は言葉通りその全身を焦がされる。
    「更に一撃、いくっすよ!」 
     その直後、丹は木の死角から飛び出して槍を振るい、鋭い斬撃を放つ。
    「グルルルル……」
     灼滅者達の激しい猛攻に獅子は流石に怯んだ様子で唸りを上げる。
    「天海の利になる可能性があるのは少し厄介でゴザルが、最終的に灼滅すればいい話。今は被害を撒き散らす眷属を灼滅するのが優先でゴザルな」
     ウルスラは空色の一枚布を展開すると、獅子に向けて慎重に狙いを定める。
    「そういうわけで、さっさと倒されるが良いでゴザル」
     放たれた鋭い一撃が、獅子の身体を貫き深い傷を刻む。
    「……こちらの消耗も激しいけど……それは相手も同じ……このまま灼滅してあげるわ……」
     清音は橙色の小さな手帳型の魔道書を開くとパラパラとページをめくり、そこに書かれた複雑な魔術を詠唱する。
    「……何の目的かは分からないけど……人を襲うなら放っておくわけにはいかないわ……」
     そして発動した魔術が巨大な爆発を引き起こし、獅子の全身は爆風に吹き飛ばされる。
    「よし、このまま続くぞ」 
     そこに跳び出した悠一が戦鎚を振るうと、吹き飛んだ獅子の身体を更に打ち、周囲の木に勢いよく叩き付けた。
    「グウウ……グルアァァァァァアアアア!!」
     獅子の猛々しい咆哮は、何度喰らっても強烈な一撃であった。
    「イタタタ……きついけど、回復は任せたよ! 私は攻撃に徹するよ!」
     咆哮から仲間を庇った唯は獅子の死角へと回り込み、後ろ脚を深く抉った。
    「わ、分かりました……私に任せてください……」
     エリスは手を掲げ暖かな光を放ち、唯の全身を包みその傷を癒す。
    「当たって、下さい……」
     更にエリスは無数のダイダロスベルトを射出し、獅子の全身を貫いた。
    「グガァァァァァ!!」
    「ここに来てそこまでの威勢を保っているのは流石でゴザルが、身体はもうボロボロでゴザルよ」
     ウルスラは続き獅子の正面で槍を突き上げ、獅子の体力と防護能力を一気に削り取る。
    「俺も、後一撃耐えられれば良い方か……ここまで来て倒れたくはないな」
     小次郎は朱い高下駄に業火を纏わせ、獅子に向けて一気に飛び掛かる。
    「燃えろ」
     そして放たれた炎の蹴りが、獅子の顔面に突き刺さり全身を炎で包み込む。
    「――ガァァァァァァァアアアア!!」
     全身を炎に包まれ、多くの傷が刻まれた獅子は、唯ひたすらに目の前の敵を殺そうと暴れ狂う。
    「何だか見ていて痛々しい位だね……早く終わらせてあげよう」
     呟きと共に夜姫が放った霊力の網が、獅子の全身を縛り付ける。
    「流石にこんなのが群れを成したら、相当な脅威になるに違いないっす。ここは、確実に仕留めておくべきっすね」
     丹はそう言って槍を構え、その先端に己の妖気を込めていく。
     獅子もまた全身に雷を纏わせ反撃に出るが、その攻撃が放たれるよりも早く、灼滅者達が一斉に攻撃を叩きこんだ。
     唯が放った斬撃が獅子の身体を切り裂き、
     小次郎が放った跳び蹴りが脚を砕く。
     清音が放った魔術が全身を凍りつかせ、
     悠一が振り下ろした戦鎚が脳天を砕く。
     夜姫が放った光の砲弾が全身を吹き飛ばし、
     ウルスラが死角から放った斬撃が背を抉る。
     エリスが放った炎の蹴りが身体に叩きこまれ、
     丹は槍の先端を獅子に向ける。
    「これで、終わりっすよ」
     一閃。
     丹が放った巨大な刃は獅子の身体の中心を貫いた。
    「グゥゥ……!!」
     獅子は苦しげにもがき呻くが、その全身は刃を中心に、氷像の様に凍り付いていく。
     そして全身が氷に包まれた獅子は程なくして、軽い音と共に完全に砕け散った。
     金時山から抜け出そうとした暴虐の獅子は、こうして灼滅されたのだった。

     こうして獅子型眷属を灼滅した灼滅者達は、暗がりに包まれた金時山を後にする。
     眷属達は一体何処に向かおうとしていたのか。慶信を含む僧侶型羅刹と、彼らを従える天海大僧正の真意は何なのか。
     分からない事は多いが、それはこれから明らかにしていく事だろう。
     眷属による被害を未然に防いだ灼滅者達は学園へ帰還し、闘いの傷を癒すのだった。

    作者:のらむ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年9月28日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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