末期より現れる怪虫

    作者:東条工事

     夜。港町の裏路地を一人のアンブレイカブルが逃げていた。
     いたる所に傷を負い、既に死の色が滲み始めている。
     そして何よりも目を引くのはその表情。
     最強を目指し、常に強敵との殺し合いを渇望するアンブレイカブルが、恐怖に顔を引きつらせていた。
    「嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ! こんな、こんな死に方……戦って死ぬならまだしも、こんな餌になるような……死なん、死んでたまるか!」
     自らを鼓舞するように叫び、やがて裏路地から空地へと出る。
     新築予定地のそこには誰も居なかった。
     救い手も、終わりのもたらし手すらも。そして悟る。自分には、もはや絶望しかなのだと。その絶望に膝を屈する。やがてアンブレイカブルは、吠えるように絶叫した。
    「クソ……誰でも良い、誰でも良い! せめて、せめて戦いの中で終ぶぅあああああっ!」
     祈りのような言葉を最後まで口にする事すら許されず、アンブレイカブルはソウルボードに植え付けられた卵に末期をもたらされる。
    「ぐぅっごぼおおおお――」
     アンブレイカブルの体が膨れ上がる。内側からの圧力に耐えたのは一瞬。破裂し、その身から虫どもを溢れさせた。
     現れた数十匹の怪虫が、ギチギチと鳴く。周囲を探るような間を置いて、怪虫は散り散りに散って行った。


    「最近発生しているベヘリタスの卵が羽化する事件に、シン・ライリーが関わっているのではないかという、伏木・華流(桜花研鑽・d28213)さんの懸念が的中してしまいました。皆さんには解決をお願いします」
     硬い口調で、東雲・彩華(高校生エクスブレイン・dn0235)は集まってくれた灼滅者達に資料を渡し説明を続ける。
    「深夜一時、あるアンブレイカブルが岩手県宮古市港町の空き地に現れます。アンブレイカブルはそこに着くとしばらくして苦しみ出し、やがて体から数十体の羽虫型ベヘリタスともいうべき見た目のダークネスに体を食い破られ死亡します。
     この羽虫型ベヘリタスは、本来のベヘリタスとは見た目の異なるダークネスですが、おそらく、このアンブレイカブルのソウルボードに植え付けられていたベヘリタスの卵が孵化した物と思われます。皆さんにはアンブレイカブルが現れる場所に出向いて頂き、可能な限り羽虫型ベヘリタスの灼滅をお願いします。
     このダークネスは、一体一体は皆さんよりも少し弱い程度ですが、余りにも数が多すぎます。恐らく全ての灼滅は無理だと思われますので、どうか無理だけは、なされないで下さい」
     彩華は祈るように言うが、エクスブレインとしての自身の役割を遂行する為、説明を更に続けた。
    「羽虫型ベヘリタスの数は二十体。全てがシャドウハンターに相当するサイキックを使ってきます。ポジションは皆さんの行動に合わせ、それぞれが勝手に取ります。羽虫型ベヘリタスは、戦闘を仕掛ける限り反撃してきますが、灼滅者が逃走すれば自分達も撤退するので、ギリギリまで戦うことが出来ます。どうかご自身の身の安全を第一に、見極めて下さい」
     そこまで言うと、僅かにためらうような間を開けて、もう一つの対応策を口にする。
    「今回のアンブレイカブルですが、羽虫型のベヘリタス達に食い破られる前に彼のソウルボードの中に入り、その中で巣食う羽虫型のベヘリタス達を倒す事で、彼を助け出すことは出来ます。ですが問題点が二つあります。
     一つ目は、アンブレイカブルは死の恐怖に混乱しており説得が困難である事です。錯乱していますので攻撃を受ける可能性すらあります。
     二つ目は、ソウルボード内での戦闘後に、現実でも即座に連戦しなければならなくなることです。しかも現実に現れた羽虫型のベヘリタス達にはダメージが無い状態であるのに対し、皆さんにはソウルボード内でのダメージが残った状態での連戦になります。
     これだけの事をしても、助けられたアンブレイカブルはすぐにその場を逃げ出してしまいます。ただ、皆さんにその場で危害を加えようとはしないようです」
     労は多いが、得る物がその後にあるのかどうかは、かなり不透明。それが、彩華が二つ目に出した対応策だった。
     考え込むような沈黙が流れる中、彩華は懸念を口にする。
    「今回の事件は、絆のベヘリタスの卵から生まれた、本来のベヘリタスとは違う姿をしたシャドウにより起こされる事件だと思われます。おそらく、アンブレイカブルのソウルボードを利用して、ベヘリタスの卵を孵化させている者が居るのでしょう。それがシン・ライリーなのかどうかまでは分かりません。
     このやり方の恐ろしい所は、私達エクスブレインの予知でも実態を把握する事が難しい為、今どの程度のベヘリタスの卵が孵化しているのか、予測もできないことです。ですので、せめて予測出来た物だけでも、出来得る限り灼滅をして頂きたいのです……」
     エクスブレインとして懸念を告げ、そして最後に彩華自身として激励を口にする。
    「いつも皆さんを危地に送り出す事しかできませんが、どうかご無事で戻られて下さい。皆さんのご武運を心から願っております」


    参加者
    伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267)
    黒揚羽・柘榴(魔導の蝶は闇を滅する・d25134)
    影龍・死愚魔(ツギハギマインド・d25262)
    黒絶・望(風花の名を持つ者の宿命・d25986)
    百合ヶ丘・リィザ(水面の月に手を伸ばし・d27789)
    カルム・オリオル(ヒッツェシュライアー・d32368)
    黎・葉琳(ヒロイックエピローグ・d33291)
    リサ・ヴァニタス(アンバランスライブラ・d33782)

    ■リプレイ

     空地へと現れたアンブレイカブルは待ち受けていた灼滅者達に歓喜した。
    「俺と……戦え!」
     格闘家としての死を望み拳を振るう。死に掛け弱弱しいその拳を、避ける事なく受け止めたのは伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267)。これにアンブレイカブルは叫ぶ。
    「何故戦わん!」
    「俺達の目的は、お前の中に巣食う物だからだ」
    「な……に?」
     蓮太郎の言葉にアンブレイカブルの絶望はより濃くなる。格闘家としての死すら得る事が出来ず、自分は誰にも相手にもされず死ぬのだと。その絶望は諦めとなって混乱する意識を冷めさせた。
     だがそうであるからこそ灼滅者達の言葉はより届くようになる。
    「私達は貴方の中に寄生する虫のようなシャドウを駆除したいだけなんです。よろしければ協力してもらえませんか? 利害も一致してることですし、ね?」
     黒絶・望(風花の名を持つ者の宿命・d25986)は自分達の目的と利害の一致のみを告げる。この時、下手に同情するような事を言えば却って怒らせ戦いを挑んで来たが、それは避けられる。死を前にしてアンブレイカブルは灼滅者達の言葉に意識を向け、それを確かな物にするべく更に言葉を掛ける。
    「こっちとしては、シャドウを駆逐したいだけだしね。任せてもらえないかな?」
    「そうですよぉ。私達は貴方でなくて虫さん達と戦いたいだけですしぃ。ふふ、一杯戦えるなんて、凄く愉しみなんですよぅ」
    「僕らはあくまであんたさんにとり憑いてるソレを倒しに来ただけであって、あんたさんを倒そうとかそういうのはあらへんよ」
     影龍・死愚魔(ツギハギマインド・d25262)とリサ・ヴァニタス(アンバランスライブラ・d33782)、そしてカルム・オリオル(ヒッツェシュライアー・d32368)は畳み掛けるように言葉を重ねる。それに迷うような気配を見せるアンブレイカブル。
     その間、黒揚羽・柘榴(魔導の蝶は闇を滅する・d25134)は、いつ何が起こっても対応できるよう油断なく態勢を整える。そして百物語を使い一般人対策を行った黎・葉琳(ヒロイックエピローグ・d33291)は仲間の説得を見守りながら、同様に警戒に当たっていた。
     僅かに静寂が流れる。アンブレイカブルは灼滅者達の言葉に心を揺れ動かされながらも、あと一歩言葉が足りていない。それは誇りへと訴え掛ける言葉。言葉を聞くようにさせ、理性で納得させても、心を動かす決定的な言葉が足りなかった。
     それを百合ヶ丘・リィザ(水面の月に手を伸ばし・d27789)が口にする。
    「……その程度ですの? あなたが戦いに向ける渇望は」
     膝を屈し顔を俯かせたアンブレイカブルが、リィザの言葉に視線を上げる。その瞳には怒りと、僅かな誇りの火の意志が見えた。それをリィザは奮い立たせる。
    「体を奪われ命が尽きる、それがどうした。折れるな。抗え。それすら出来ないのなら、負け犬らしくすっこんでなさい……!」
     音がするほどにアンブレイカブルは歯を噛み締める。激情が心を震わせ、生き延びようとする意志を燃え上がらせる。その意志を感じ取り、蓮太郎は言った。
    「恩を売るつもりはさらさらない。とり憑いているものを追い出す間だけ大人しくしていてくれればそれでいいのだ」
     重ね告げられた灼滅者達の言葉。それにアンブレイカブルは返した。
    「アギト……俺の名だ……お前らに、恩など感じるつもりはない……だが、これは借りだ……もし生き延びることが出来……」
     何かを告げようとし、けれど限界に近づいたアギトは気絶するように眠りに落ちる。それは灼滅者達の言葉に僅かな希望を感じ、気が緩んだから。本来のアンブレイカブルならば、今のように気絶するような事はまずありえなかっただろう。ソウルボードに巣食われていた事が影響していたかもしれない。

     かくして救出の準備が整う。今回の灼滅者達のやり方は、このアンブレイカブルに対しては有効であった。最初から戦い気絶をさせようとしても、よほど巧いやり方で無ければ失敗しただろうし、そもそもアンブレイカブルなら戦う事に喜んで死ぬ事を厭わず襲い掛かって来ただろう。説得も、有効な物を幾つかの段階と流れを汲んで行えたから成功したといえた。
     そして、ソウルボードへと灼滅者達は戦いに向かった。

    ●巣食う羽虫を撃滅せよ
     荒涼たる果て無く広がる石の闘技場。それがアギトのソウルボード。その世界を羽虫どもは齧り食らう。ソウルボードの主たるアギト自身もバラバラにして齧りながら。
     あと僅かで、虫どもはアギトの全てを食い尽くし現実へと溢れ出ていただろう。しかしその未来を、灼滅者達が撃ち砕く。

    「予知通り、数だけは多いですわね。折角ですし、どちらがより多く倒せるか競争しません?」
     リィザはライバルである柘榴に遊ぶように提案する。そこには油断は無く、けれど戦う事への高揚と柘榴への信頼にも似た対抗心があった。それに柘榴は楽しげに返す。
    「構わないけど、協力して倒した撃破数はどうするの?」
    「もちろん二人の物ですわ」
    「良いね。じゃ、行くよ」
     笑みを浮かべ二人は敵へと向かって行く。
     敵の陣形はディフェンダーとメディック共に十。灼滅者の陣形が極端に偏ればバランス型になっていたが、そうではなかったので極端な陣形を取る。ディフェンダーが積極的に壁役として就き、壊アップの効果を持つヒールサイキックで攻撃力を高めたメディックが後半クラッシャーへ移動し攻撃するという布陣である。
     待ち構える敵に二人は攻撃の間合いに動く。真っ直ぐに踏み込むのはリィザ。ライドキャリバー・ブラスと共に敵の注意を引く。
     一斉に攻撃に移ろうとする敵ディフェンダー。そこへ柘榴の、衝撃のグランドシェイカーが放たれた。
     リィザに気を取られていた敵はまともに食らい、地を伝う衝撃に無数の裂傷を刻まれる。その傷に動きが止まる者も居たが数が多すぎ、何体かがリィザに向かおうとした。
     それを防ぐように放たれるブラスの機銃掃射。更に敵の動きが鈍った所に、リィザはその時最も命中率の高い抗雷撃を叩き込む。
     敵は打ち上げられるように雷纏うアッパーカットを食らい、雷撃に焼かれながら粉砕された。
     確実に一体ずつ数を減らしていく。だが敵の数は多く、動ける一匹がリィザを襲おうとする。それを打ち倒したのは死愚魔。
    「数が多すぎて、鬱陶しいね」
     全身から濃密な殺気を生み出す。それは疾走するような勢いで敵前衛へと襲い掛かり、焼き爛れるような傷を与えていく。それによりリィザへと襲い掛かろうとした一匹は灼滅された。
    「援護に回るよ。二人は思う存分、戦って」
     同じクラブの知り合いである柘榴とリィザに死愚魔は呼び掛け、二人は礼を返し戦いに集中する。
     それらの連携はかなりの成果を見せていく。そして当然、他の灼滅者達も同様に次々敵を打ち倒していった。
    「ほな、はじめよか」
     カルムは敵の群れに跳び込む。敵は迎撃せんと羽を刃のように尖らせ幾つも放つが、その全てを交わしながら距離を詰める。
    「害虫は、大人しゅう駆除されとき」
     放たれる殲術執刀法は的確に弱所を切り裂き、敵は切り口からひび割れ砕け散った。
     次々数の減って行く仲間に虫達は焦るように鳴く。そこへ怒りの拳を叩き付けたのは蓮太郎。
    「駆除してやる」
     格闘者としての誇りを踏みにじるようなベヘタリスの行為におぞましさを感じていた蓮太郎は、そのおぞましさを撃ち砕くように閃光百裂拳を放った。
     叩き込まれる無数の拳打。肉を陥没させ敵をのけぞらせる。敵は、それでも辛うじて反撃しようと黒弾を生み出そうとするが、
    「滅びろ」
     全身の捩じりを集約するような拳が深々と減り込み、粉砕するように破壊し消滅させた。確実に敵の数は減っていく。更に減らすべく望は動く。
    「舞い上がれ、愛と希望の風花よ!」
     目隠しを外し、SC解放により戦闘態勢へ。咎人の大鎌・Laminas pro vobisにサイキックエナジーを注ぎ込み活性化。赤いアネモネが装飾された純白の大鎌により召喚され、虚空より現れた無数の刃が狙いを付ける。それを敵は避けようとするも、
    「逃がさない!」
     望に操られた刃は次々敵を切り裂いた。それは仲間が付けた傷を更に増やし、動きを鈍らせる。そこへ追撃を入れたのは葉琳。
    「自分達がした事の痛みを、思い知らせてあげるわ!」
     葉琳は快活に声を上げ、七不思議の怪談を起動。
    「古の英雄よ、仮初めたる影の器に宿り、敵を撃ち滅ぼしなさい」
     葉琳が語るは、古の英雄達を模した影達の物語。語られる物語に呼応するように彼女の影が伸び、そこから現れる無数の兵。それらは影から更に溢れてきた漆黒を纏い武人の姿と化すと、敵に目掛け一気に突進した。
     組み付き切り裂き、毒を食い込ませる。叫ぶように悲鳴を上げる虫達。そこへ踏み込んだのは人造灼滅者として水晶でできた全身甲冑の騎士姿になったリサ。
    「あは、みんな好い声で鳴きますねぇ。それにまだ、こんなに一杯。こんなに一度に相手するなんてぇ、壊されちゃいそうですぅ。でも――」
     戦いの喜びと興奮に瞳を潤ませ、熱い湿り気のある吐息を漏らしながら敵に踏み込む。それを迎撃するべく、敵は刃と化した羽を打ち出すも紙一重で回避。その羽を足場に弧を描き宙を跳ぶと、
    「壊されるより壊す方が好みですぅ。壊れて下さいねぇ」
     放たれた無数の斬撃は虫の首を切り飛ばし、細かな塵へと変え消滅させた。

     かくして戦いは続き、多少の傷は受けつつも全滅させる。そして即座に現実での連戦を行うべく、現実へと皆は帰還した。

    ●虫共を絶滅せよ
     現実に帰還すると共に戦いは始まった。サウンドシャッターを展開し一般人対策もする中、救出したアギトから情報を得ようとする者も居たが、虫が邪魔過ぎてそれ所ではない。しかも虫は余計な事を喋らせまいとするかのようにアギトを攻撃しようとした事もあり、既にアギトはその場から逃走している。先の事は未だ誰にも分からないが、今この時、情報を得る術は全て断たれる。
     だからこそ、灼滅者達は虫を一匹でも多く滅ぼすべく戦いに集中する。
     繰り返される戦いの中、ブラスが集中攻撃を受け戦闘不能になったものの、皆は既に七体を灼滅し、後三体も倒せば成果は十分。そこまでならば後に残る怪我も無く戻れたが、灼滅者達が選んだのは可能な限りギリギリまでの戦闘だった。

     柘榴とリィザは共に敵へと踏み込み、その後を援護に死愚魔が動く。
     先行して踏み込んだ柘榴に敵の一匹が羽の斬撃を放つ。
     しかしそれを横からリィザが殴りつけ軌道を逸らすと、更に踏み込み握り潰す勢いで両手で掴む。そこからジャイアントスイングの如く振り回すと、遠心力の勢いも付け地面に勢い良く叩き付け灼滅した。
    「危ない所でしたわね」
    「ありがとう。でも――」
     柘榴は礼を返しながらリィザと交差するように彼女の背後に踏み込む。そして放たれたのはフォースブレイク。リィザの背後から襲い掛かろうとした一匹を爆発粉砕する。
    「――これで貸し借りは無しだね」
     笑みを交わす2人。そこへ敵前衛の生き残りが攻撃を放とうとするも、
    「余計な事をするもんじゃないよ」
     リィザと柘榴の動きに合わせ距離を詰めていた死愚魔はティアーズリッパーを放ち灼滅した。
     連携をこなす三人の奮闘はかなりの物があった。しかしそれだけに敵に危険視され集中砲火を食らう。敵メディックがクラッシャーに移動し、三人に集中攻撃した事もあり倒れてしまう。
     その三人を安全圏に仲間が移動させる間にカルムは迎撃に踏み込む。
    「あっぶないなぁ……お返しや」
     敵の放った黒弾をギリギリで回避し、懐に跳び込むと同時に縛霊撃を叩き込む。霊力の網で捕縛した所に、
    「潰れろ」
     蓮太郎は踏み込むと虫の巨体を一気に持ち上げ、頭から地面に叩き付ける。激突し頭を潰されるように砕かれ敵は灼滅された。

     ギリギリの奮闘を灼滅者達はこなしていく。メディックの望が回復に奮闘する中、敵の命中率が極端には高くなく、その上で灼滅者達の幸運が味方したのか、かなり避けられた事もあり、相当なダメージは受けつつも敵の数を大きく減らす。ここに来て下手に回復するよりは攻撃に集中した方が良いと判断し、全員が攻撃に専念した。

    (「今は目の前の敵に集中しないと」)
     戦いのみに意識を集中し、望はブラックウェイブを放つ。黒き波動がダメージと共に、敵の武器でもある羽をボロボロにする。
     そこへ妖の槍・緋凰一閃を手に踏み込んだのは葉琳。
    「みんなをこれ以上、傷付けさせないんだから!」
     炎のような刀身を持つ紅蓮の槍を烈火の如き勢いで放つ。捩じりを加えた一撃は虫を貫き灼滅した。

     繰り返される攻撃に敵の数は減るも、灼滅者達も無傷では居られない。綱渡りのようなギリギリの攻防の中、最後の一匹に止めを刺したのはリサだった。

     赤くスタイルチェンジさせた交通標識を手にリサは一気に踏み込む。
     敵は、それを迎撃するべく刃と化した羽を伸ばすが、付与されたBSにまともに動かず余裕を持って交わされる。
    「あはっ、綺麗な風穴空けてあげますよぉ?」
     まるで槍のように交通標識を突き出し、虫の胸元を吹き飛ばす。
     花が咲くように血肉が飛び散り、
    「ふふ、綺麗」
     うっとりとリサが声を上げる中、敵は塵と化し虚空に消え失せた。

     こうして戦いは終わり、あとに残るほどの怪我をする者さえ出てしまう。そうでない者も、少しでも運が悪ければタダでは済まなかった、それほどの激闘であった。しかしそれと引き換えに敵を全滅させる快挙を見せる灼滅者達でもあった。

    「ベヘリタス……タカト……シン・ライリー……羽化シャドウ……何から何までわからないことだらけです……一体何を考えているんでしょう……?」
     戦い終わり傷を回復させる中、望の疑問の言葉のように、皆の胸中には未だ見えてこない事態への不安がにじり寄る。
     けれど、何があろうと仲間と共に打ち倒すに違いない。
     そう思える奮闘ぶりを見せた依頼でもあった。

    作者:東条工事 重傷:黒揚羽・柘榴(魔導の蝶は闇を滅する・d25134) 影龍・死愚魔(ツギハギマインド・d25262) 百合ヶ丘・リィザ(水面の月を抱き締めて・d27789) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年9月25日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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