隣の好敵手! マッサージもあるよ!

    作者:叶エイジャ

    「ありがとうございました!」
     そのダークネスの顔は、青空のように晴れやかであった。マンションの扉から顔を出した淫魔が微笑んだ。
    「ふふ、気分は良くなりましたか?」
    「はい! 怪我どころか、いろいろ良くして戴いて! もう最高でした!」
    「あら嬉しい――あっ」
    「危ない! もう中に入って良いっすよ。あんな激しいコトのあとだし……それにもう寒いし、風邪ひいちまいます」
    「心配してくれるの? ありがとう」
     素肌にセーター一枚という姿の女淫魔はダークネスにしなだれた。
    「ま、また来ます!」
    「あら、ダメよ。ここは怪我人を癒す場所なんだから……で・も」
     淫魔の指が妖しい動きを見せた。「ダメ」と言われ落ち込むダークネスの身体をなぞる。
    「緊急の検診なら、今シテあげてもいいかなっ」
    「う、うおおおおおお!」
    「やん、激しい♪」
     ダークネスが女淫魔――いけないナースを部屋の中に連れ込んでいく。
     二時間後、完治した不良系少女の羅刹は幸せそうな表情で、マンションから出ていった。

    「……という感じで色々と割愛したけど、DOG六六六のいけないナース達が、琵琶湖周辺に現れたんだよ!」
     天野川・カノン(中学生エクスブレイン・dn0180)の話は本題に入った。「割愛なしで詳しく聞きたい」という声には、仁左衛門に常備したクッションを使ってのツッコミが入る。
    「ふぅっ……いけないナースたちはマンションの一室を、いけないマッサージ店に改装して、怪我をしたダークネス達の治療をしてるよ」
     安土城怪人と天海大僧正との抗争で負傷した者たちだ。敵味方かかわりなく癒やしているらしい。
    「とても警戒心が強いから、負傷者以外が近づいてもすぐ逃げちゃうよ」
     それも、激戦の末に戦闘不能になるような怪我を負った者くらいでないとダメらしい。ゆえに折衝が出来ない。
     だが、灼滅者同士が2グループにわかれて、相手を戦闘不能にするような戦いを行えば、敗北した側は、マッサージ店に客として潜入することができるようになる。
     あとはマッサージを受けている所に乗り込めば、灼滅する事は難しくないだろう。
    「だから、みんなには真剣な摸擬戦をやってもらいたいんだ」
     いけないナースは淫魔の力を持つが、ダークネスとしての戦闘能力は灼滅者4人と互角くらい。
    「もともと、戦闘以外の能力に特化したタイプなんだ」
     いけないナースは、治療中の灼滅者を守って戦おうとする。その習性を利用すれば、逃走させること無く灼滅することができるだろう。
    「たぶん、マッサージ店に招かれるための戦いの方が、厳しい戦いになるかと思う。 本気で戦わないといけないし」
     今回のいけないナースの名前は不明だが、治療に訪れた者たちからは「くぅちゃん」と呼ばれている。
     淫魔ということで、可愛くて、患者にはとっても親身で、男女の隔てなく、治療がとーってもやらしいとか。
     あと、プロ意識か自分の患者は死んでも守ろうとする。
    「さっきも言ったけど、戦闘不能になっていたみんなを守って戦うよ。乗り込んだ側のみんなだけで戦っても、普通に倒せるかな?」
     いけないナースを灼滅していけば、もっともいけないナースと接触するチャンスもあるかもしれないだろう。
     現在は無差別に回復をしているナース達だが、特定の組織に所属してしまうと、大きな脅威になってしまうかもしれない。そうなる前に、対処する事ができれば良いのだが。
    「マンションから少し離れた場所に河原と、廃工場があるよ。四対四くらいに分かれて戦闘して、戦闘不能になった方が回復後マンションに負傷者として転がりこむって言うのが、大まかな骨子だよ」
     詳細なやり方は、みんなに任せるから、とカノンは言った。


    参加者
    九条・風(廃音ブルース・d00691)
    ミルフィ・ラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・d03802)
    エウロペア・プロシヨン(舞踏天球儀・d04163)
    布都・迦月(紅のアルスノヴァ・d07478)
    野良・わんこ(世界大紀行・d09625)
    白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)
    絡々・解(解疑心・d18761)
    九条・御調(ジェリクルを探して・d20996)

    ■リプレイ


     廃工場の扉はガタついていて、微かに揺れてはかん、かんとせわしなく音を刻んでいた。茶色く濁った南京錠がひっかかっていたが、扉を軽く押しこめばあっけなく千切れて、下生えの中に消えていった。
     中は広かった。埃臭い工場内に入った灼滅者たちは、互いに今回の『敵』たちを見据える。
     灼滅者たちは、いけないナースを灼滅することに決めた。
     だがそのために、自分たちで戦闘し『負傷者』を四人作る必要がある。
    「ったく、面倒くせェなァ」
     九条・風(廃音ブルース・d00691)はざらつく床を踏みにじる。
    「まァやるからには手は抜かねェぜ、恨みっこなしだ」
    「うむ。ひとつお手合わせ願おうぞ!」
     エウロペア・プロシヨン(舞踏天球儀・d04163)が応じる。
    「ガチバトル、ってやつですね。気合入りますよー♪」
    「マッサージへの深入りは危険な香りがするからな。悪いが勝たせてもらおう」
     布都・迦月(紅のアルスノヴァ・d07478)が静かな声で、九条・御調(ジェリクルを探して・d20996)の戦意を受け止める――実のところ心中は穏やかではない。
    「負けられない戦いがあるんだ」
     迦月の目に宿った決意。同質の笑みを解は浮かべた。
    「ふっふっふ。無駄ですよ、絡々ちゃん。今日こそミキちゃんにセクハラしてやりますからね!」
    「やめて!?」
     絡々・解(解疑心・d18761)が最も警戒すべきは野良・わんこ(世界大紀行・d09625)。彼女の気迫にミキが後ずさる。
    「マジピュア・ウェイクアップ!」
     魔法少女に変身した白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)が武器を構える。
    「全力で行きますよ! 模擬戦は所属するクラブの売りの一つ。そう簡単に負けるわけにはいきません!」
    「さて……始めましょうか」
     ミルフィ・ラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・d03802)がコインを投げた。放物線を描くそれが地面で澄んだ音を奏でる。
     灼滅者たちが動き出した。


    「ジャッジメント――」
     御調が右手を天に向け、振り下ろす。
    「レイ!」
     駆け抜ける光条。風は跳んでその光をかわすと、上方から縛霊手を駆動させる。
    「ちょこまか動かれると面倒だからな」
    「そうくると思ったよ」
     除霊結界が発動する――寸前、解の蛇腹剣が伸びてきた。分裂して突き進む刃に舌打ち一つ、風は戻した縛霊手で攻撃を弾く。刃を組み直した解が跳躍し、風の足は炎を宿す。刹那、上段からの振り下ろしと炎の蹴りが交差し、爆発の如き衝撃波が撒き散らされた。
    「隙、アリだ」
    「そちらもね」
     互いにディフェンスの隙を突こうとして、迦月とジュンの視線が交錯した。目標変更と使用サイキックの決定を瞬時に行ったのち、機先を制したのはジュンの交通標識だ。
    「……やるな」
     横合いからの殴打を、迦月は避けられなかった。体力の3割を散らす衝撃を経て、それでも交通標識を掴んで動きを封じる。
    「だが威力なら、こちらも同じ」
     突き出した錫杖が澄んだ音を奏でた。後方に跳び退るジュンより早く、魔力を爆発させる。吹き飛ばされたジュンが放置された棚などを巻き込み、崩れる派手な音があがった。
    「こちらのチームはクラッシャーが二人。わんこもボコりますよ!」
    「ここで優勢を築きましょう」
     鋼鉄拳を振り回すわんこが突撃し、ミルフィが腰の時計を見つつ十字砲の全砲門を解放。続けざまに放つ光線で前衛への追撃を狙う。
    「そう簡単にはやらせぬぞ」
     エウロペアが神薙の風を纏い、ウイングキャットを光線の群れへと投げた。エイジアの悲鳴が光線の爆発と共に聞こえてきた時には、お返しとばかりにかかげた銀の十字から、光線の群れを撃ち出す。標的となったミルフィをかばい、キャリバーのサラマンダーがそれを受け止め被弾した。
     いくつもの爆煙の上がる廃工場。目標であるミキを見失ったわんこを、当のビハインドの霊障波が襲った。直撃ではないがよろめく。
    「やりますね」
    「本命はここからやよ」
     背後から煙を貫いて、御調が接近していた。その両手から放たれたオーラが、迎撃の鋼鉄拳を避け、軌道を変えてわんこを弾き飛ばす。御調が軽く笑った。
    「何事もやってみないとわかりませんけど……こうして戦うのも悪くないわね♪」


     互いに戦えという注文は、灼滅者たちには新鮮だったかもしれない。
     いくら全力で、手加減抜きでと言っても、後のダークネス戦を考えれば、無意識に手心が生じる――はずだった。
     最初は。
    「そこ!」
     ミルフィは十字砲から光線を放ち、そのまま薙ぎ払う。積み重なった瓦礫は光の刃に崩壊し、逃げる御調を追って雪崩うつ。
    「お返し!」
     御調のオーラキャノン。緋色の闘気をミルフィは避けるが、代わりに着弾したドラム缶の山が弾け飛んだ。視界を覆うほどの勢いに、一瞬でも注意を向けたのが仇となった。突撃してきた御調の槍を十字砲で受け止めるも、衝撃を殺しきれずに吹き飛ばされる。御調が槍を構えて追撃に入ろうとした。
     それを止めたのは、サラマンダーによる機銃掃射だ。
     行く手を阻む弾幕に御調がたたらを踏んだ直後、風の重力の跳び蹴りが彼女を豪快に蹴り飛ばした。エウロペアが祭霊の光を御調に放ち、エイジアとともに間に入るが、今度は横合いから迦月の鬼の腕がエイジアを殴り飛ばす。
    「そろそろ、誰か倒れてもらう」
    「ごめんじゃな」
     縛霊手を振ったエウロペア。結界が風と迦月の足に絡まり、身動きを封じると同時にエアシューズの力を解放。渦巻く暴風で二人に駆け寄りざま、顎と鳩尾と膝裏を狙った蹴りが繰り出されていく。起き上がったミルフィが援護に入ろうとするが、それより先にジュンが彼女の目前に現れた。
    「……!」
     生じた炎は二つだ。レーヴァテインを纏った十字砲はジュンの右肩を粉砕するも、炎の蹴りはより厳しく、ミルフィの身体に衝撃を浸透させる。
    「無念、ですわ……」
     ミルフィが力尽きた。脱落した一人分の穴をさらに広げるべく、解が風と迦月の側方から迫る!
     その眼前に、迫る猫パンチ。
    「っ!?」
     カウンターのアッパーを喰らった解に、キハールが空中にステップを刻みながら接近する。解のストレートを華麗に回避するとジャブで右頬、続くストレートが鳩尾に突き刺さる。よろめいた彼に態勢を立て直す暇はない。超至近距離(猫のリーチは短い)から猫パンチの嵐が、なぜか執拗に顔面を狙って繰り出されていく。ビハインドのミキが、主の危機に攻撃の準備を行うべく駆け出す。
     その時だった。
    「行かせませんよ」
     ミキの後ろから現れたわんこが彼女に接近。気づいたミキのスカートをパッと跳ね上げ、狼狽えた末の霊障波を難なくかわすと、背後から密着して関節を固定する。
    「決まりましたね。羞恥心を燃え上がらせる、いわゆる『えっちな』関節技!」
     どや顔で言うわんこ。つま先立ちになり、顔を赤く染めて耐えるミキ。そしてわんこのセクハラ攻撃が……!
    「そこまでだ」
     わんこが舌打ちして視線を動かす。解が立っていた。
    「それ以上ミキちゃんに何かするなら、全力で刺すよ……」
    「仕方ないですね。これからゴボウを鼻に突っ込む予定だったのに」
    「だからしないでって!?」
     わんこがミキを放す。倒れたミキは服が乱れ、わんこが性癖異常者にしか見えない。
     解がキハールを横たえた。猫はぐったりしていて、解が動物虐待者にしか見えない。
    「四つに畳んであげますよ」
    「ミキちゃんは守る!」
     わんこのチェーンソーが前髪を斬り飛ばさんと唸り、解が死角から一撃必殺を狙っていく。

    「人数差はこちらが有利、あと少しです」
    「人数差が――なんだって?」
     ジュンの蹴りを掴み、風は豪快に振り回した末にコンテナの残骸に放り投げる。冗談のようにコンテナがひしゃげた。
    「そこじゃ!」
     風の背後を狙ってエウロペアと御調が遠距離攻撃。庇ったサラマンダーが限界を迎え、消え去る。
    「……無駄にはしねェ」
     風が素早く地を蹴り、攻撃直後の二人へと除霊結界を放つ。霊力の網が強力に絡みつき、続いて現れた十字架の光が降り注いだ。
     迦月のセイクリッドクロスに、エイジアが消滅。続いてダメージの蓄積していた御調が戦闘不能になった。盛り返した形勢に迦月が頬を緩ませかけ……直後、強張った。
    「せぇい!」
     怪力無双でジュンがコンテナを持ち上げ、投擲。迦月に直撃した。灼滅者にとって微々たる威力も、意識と集中を乱し、視界を塞がれれば十分に脅威だ。背後から現れたジュンに、迦月は反応できない。
    「これで……!」
     スターゲイザーが突き刺さり、衝撃が迦月の体力を奪っていった。目の前がふと暗くなる。敗北だ。
     ――負け、か……。
     負けたら、ナースにあれこれされる。
     ――彼女にバレたら殺される!?
     絶対に勝つ。死ぬ気で勝つ。頑張れ俺!
     生きろ俺! 立ち上がれ俺!!
    「……戦わなければ生き残れない!」
     迦月がどのような経緯で凌駕し立ち上がったのか、誰にもわからない。
     ただ、クラッシャーの威力を排除できなかったことが、最終的な勝敗を決めることになった。
     鬼神変が、エウロペアの意識を刈り取る。
    「悪いが、淫魔に好き勝手にされる役目は御免なんでな」
     風の蹴りが、ジュンにとどめを刺した。

    「やりますね、絡々ちゃん」
    「名探偵は頑丈だからね!」
     わんこの拳を、解の交差した腕が防ぐ。解の剣を、チェーンソーが受け止めて火花を散らす。
     二人の戦いはまだ続いていた。わんこの体力はあとわずか。解は護り手でもあるため、やや余裕がある。
     わんこの命中率がやや下方であるのが、勝敗を分けそうだった。
    「……思ったんだがな」
     解の黒死斬で凌駕に入った風が呟く。チーム戦的には3対1だが、体力差的に逆転は普通にあり得る。
     今回の戦いで最も有利なエフェクトはフィニッシュだったが、唯一所持したわんこの命中率がさほど高くないのが、泥沼化した戦いの理由だった。
     すでに最初の脱落者から10分近くが経過している。
    「もう戦闘不能者が四人いるんだが、これ以上戦う必要ってあるのか?」
    「あ」
    「あ」
     迦月と解が動きを止める。
    「隙アリ!」
    「わぁ、ひどい!?」
     襲撃したわんこが解のカウンターで沈んだ。
     その後の戦いで、結局解も倒れることになったの、だが。
     だが。

    「……ま、まあ、わたくしは最初に倒れてしまいましたし」
     淫魔への耐性も少々ありますので、と、ミルフィはエウロペア、御調、ジュンに先んじて目前の扉をたたく。
    「はぁ~い。あら、大変!」
     大小の傷を負い、疲労困憊の四人を見て、淫魔のくぅちゃんは部屋に招き入れた。
     入ったその場所は、ベッドが仕切りで分けられた、簡易保健室のような場所だ。
    「横になっててね、酷い人から見るから」
     そう言って、くぅちゃんは御調の服に手をかける。
    「見ていい?」
     ぐったりした御調、弱く頷き、淫魔と共に仕切りの向こうへ。他の三人も寝台へ。御調に何があったのかは、本人以外は分からない。
     次はミルフィ。これは他の者も、声が仕切り越しに聞こえた。
    「あ……そんなところまで、治療して下さいますのね」
    「いやだった?」
    「いいえ。治療ですもの。でも、して頂いてばかりでは、悪いですわ。わたくしにも『お返し』させて下さいまし」
    「きゃ。こら、あまり動いちゃダメなんだぞ♪」
     言いつつ、嬉しそうな淫魔の声。時折ミルフィの切ない吐息が聞こえるが、負傷部は敏感になるものだ。仕方ない。
    「ぁ……」
    「あれ、お返しくれないの?」
    「も、もう許してくださいまし」
    「仕方ないなー、ありがとうね!」
     残るは二人だった。エウロペアは淫魔を前に、
    「エ、エステみたいな感じで頼めるかの?」
    「いいよ? 服はここに置くね♪」
    「うむ……待て、こういうのは背中からではないのか!?」
    「だって被弾箇所、前が多いじゃない。治療始めまーす」
    「ま、待っ――ああああああ!?」
    「ふふ、ビンカンっ。さ、薬液を塗りますねー」
    「ひゃうっ、待っ、確かに怪我はあるけどそこはぁ!」
    「さーどんどん激しくいこう。痛いの痛いの飛んでけー」
    「ああああ!? やめ、ふああああ!」
    「ついでに意識も飛んでけー」
    「あ、あ、あああ、がっ!?」
     声が途絶えた。治療の音と淫魔の楽しそうな声が聞こえる。ジュンは仕切り越しに想像し、汗を浮かべていた。
    「さ、君の番だよ」
     現れた淫魔に、自然と後退る。
    「さ、エッチなこと(治療)しよっか♪」
    「まさかの本音!? 駄目です、魔法少女的にエッチなのはいけないんですー!」
    「恥ずかしがって、可愛い。じゃあ軽く始めて『もうダメ』って言ったら、止めてアゲル」
    「本当……? 嘘はダメですよ?」
    「大丈夫大丈夫♪ ガバッ」
    「嘘つきー!? もうダメ、やめて!」
    「えー真に迫ってなーい。そーれ」
    「ああああああダメだから、もう……ダメ、本当にダメだってばぁ!」
    「今の良かった。もう一度!」
    「ひゃあああ、ダメ、ダメ、ダメぇっ!」
    「あれー、聞こえないなぁ?」
    「もうダメええええええ!」

    「……あと三十秒」
     ジュンの「もうダメ」が数十回目に及んだ頃、残った灼滅者たちは冷静に時間を計っていた。
    「行くよ!」
     解が扉を蹴り開ける。驚いた淫魔が飛び出してきた。解が言った。
    「ふ、服を着てください!?」
    「す、灼滅者!?」
    「おっと、逃げたら寝てるやつらはどうなると思う?」
     風の言葉に淫魔が決死の形相で戦いを挑んで来る。
    「怪我した人まで狙うなんて、許しません!」
    「……あぁ、なんか妙に疲れてくる」
     迦月が帯を鋭く繰り出した。わんこが関節技を仕掛ける。
    「漫画で観た技再現はストファイの特権、ちょいあー!」
    「あうっ、でも、快感!」
    「何の漫画なの!? あ、ミキちゃん違うよ凝視なんかしてない!」
     淫魔を警戒する解がミキの視線に気づき慌てる。風がため息。
    「ぐだってきたな……そっちも頼むわ」
    「!?」
     攻撃が淫魔の背後に炸裂。ダークネスの視界にはミルフィと御調。
    「治療して下さった貴女を謀るのは心苦しいですけど」
    「ごめんなさい。これも今後の為なのよ……」
    「く、くぅは悪くないもん。いやらしいことはしたけど、怪我人には平等――」
     サイキックが淫魔に引導を渡した。

    「これで、もっともいけないナースも動きを見せるでしょうか」
    「疲れた。4対4は良かったけど」
     ミルフィと迦月の言葉。ジュンとエウロペアは治療で気を失っていた。にゃーん、とエイジアが主を踏んで猫球マッサージ。
    「帰るか。あーあ、俺ァやっぱ清純派だな」
     風が踵を返す。解はまだミキに弁明し、更にはわんこがそこに絡む。
    「野良君もうやめて!? 勝っても負けても大問題だよお!」
    「でも、本気で戦うって結構……うん、楽しいかもしれないわ」
     御調が対戦したことに言及して、微笑んだ。

    作者:叶エイジャ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年9月30日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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