●琵琶湖近くのマンションにて
とある、デザインマンションの扉の鍵が、内側からガチャリと開く。
扉から出て来たのは、妙にすっきりした表情の羅刹――慈眼衆だった。
「実に良いマッサージであった、礼を言わせて貰う」
「うふふ、気に入って頂けたようで、わたしも嬉しいです」
扉の方に向き直った慈眼衆が礼儀正しく頭を下げると、扉越しから身を半分乗り出した、露出度の高いナース服の女性が、艶やかに微笑む。
「お怪我されたり調子が悪い時は、いつでも来て下さいね。団体さんも大歓迎ですよ」
女性――いけないナースは両手で包み込むように、慈眼衆の無骨な手を優しく取る。
手から伝わる温かな温もりと熱を帯びた眼差しに、慈眼衆の口元も締まりなく緩んだ。
「……ふむ。ならば拙僧の仲間にも、この店の事を伝えておこう」
「うふふ、嬉しい! その時は皆さんにも、たっぷりサービスさせて頂きますね!」
●いけないナースのいけないマッサージ店
「DOG六六六のいけないナース達が、琵琶湖周辺に現れたとのことでございます」
集まった灼滅者達を出迎えた里中・清政(高校生エクスブレイン・dn0122)は、バインダーに挟んでいた地図を配りながら、説明を始める。
「武蔵坂の介入で、道後の拠点を維持出来なくなった『もっともいけないナース』が、ダークネス同士の抗争が起きている琵琶湖周辺で活動を再開するのは、ごく自然なことだと思われます」
DOG六六六のいけないナース達は、マンションの一室をマッサージ店に改装し、安土城怪人と天海大僧正との抗争で傷ついたダークネス達を、派閥関係なく癒やしているという。
「早急に対処したいところでありますが、1つ問題がございます」
いけないナース達は、非常に警戒心が強くなっている。
激戦の末に戦闘不能になるような、怪我を負った者しか近付けず、それ以外の者が近づくと、すぐに逃げてしまう。
「ですので、接触前に灼滅者様同士が2グループにわかれまして、ちょっと近くの川原で本気で殴り合って頂ければと思います」
「つまり、片方が戦闘不能になるくらいに、激しく戦わなければならない、ということ?」
「……はい」
困惑する灼滅者達に、執事エクスブレインも申し訳無さそうに頷く。
「戦闘不能になるほど敗北した側は、マッサージ店の客として、いけないナースに接触することが可能になります」
ナースが施術に集中している時なら、勝者側も容易に接触することが出来るという。
勝者側と敗者側で挟み撃ちに持ち込めば、灼滅することは難しくない。
「幸い、いけないナースの戦闘能力は高くはございません。戦闘不能者を半数抱えていたとしても、互角で渡り合えましょう」
しかも、いけないナースは、お客様を守りながら戦おうとする、習性を持っている。
例え、お客様が灼滅者でも、何が何でも守ろうとするので、逃走を防ぐのは簡単だ。
「むしろ、その前の灼滅者様同士の模擬戦の方が、ハードなものになるかと存じます」
相手は淫魔、下手な小細工は通用しないだろう。
なので、マッサージ店に招かれるためには、本気で殴り合わなければならないのだ!
「ですが、いけないナースを灼滅していけば、もっともいけないナースの行方や、手掛かりに繋がる可能性がございます」
DOG六六六のいけないナースが活動を再開したということは、もっともいけないナースも、琵琶湖周辺に来ている可能性があるという。
「現在は無差別に治癒を施しておりますが、何かの弾みで何処かの勢力についた場合、大きな驚異になる可能性がございます。……そうなる前に、灼滅できれば良いのですが」
一旦、口元を閉じた執事エクスブレインは、何時も通りに恭しく頭を下げる。
「良い決闘をお祈りしております、いってらっしゃいませ」
参加者 | |
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風雅・月媛(通りすがりの黒猫紳士・d00155) |
椿・諒一郎(Zion・d01382) |
一橋・聖(空っぽの仮面・d02156) |
ユエファ・レィ(雷鳴翠雨・d02758) |
狩家・利戈(無領無民の王・d15666) |
東堂・八千華(チアフルバニー・d17397) |
天月・静音(橙翼の盾纏いし妖精の歌姫・d24563) |
リサ・ヴァニタス(アンバランスライブラ・d33782) |
●黄昏の決闘
夕暮れ時、とある河川にある高架下。
その下に辿り着いた灼滅者達は、4人ずつ2チームに分かれると、同時に向き合った。
「勝ったチームは心霊手術、負けたチームは淫魔ッサージで問題ないわね」
翡翠色の瞳の黒猫紳士の着ぐるみを着た、風雅・月媛(通りすがりの黒猫紳士・d00155)が、背後に影業で旗を立て、それにバトルオーラで大漁旗を投影する。
夕陽を受けて煌めく旗には、『全力全開』と書かれてあった。
「お手合わせ、よろしお願いします、ね」
「遠慮なくボッコボコにしていいからね♪」
和服風に仕立てられた、チャイナドレスの裾を靡かせたユエファ・レィ(雷鳴翠雨・d02758)が、隙無く龍砕斧を構えると、一橋・聖(空っぽの仮面・d02156)も何処か前のめりな感じで弾んだ声を響かせる。
(「真剣勝負は楽しみだが、しかしどうしてこうなった……」)
そんな中、椿・諒一郎(Zion・d01382)の双眸は、何処か遠い空を見つめているよう。
敗北して淫魔のマッサージを受けることは、諒一郎にとっては罰ゲームに等しく、無意識の内に短い溜息を洩らしていた。
「あくまで全力戦闘ですね、おっけいです」
対する4人も、中々の戦闘狂が集まった様子。
東堂・八千華(チアフルバニー・d17397)は作戦の概要を復唱しながら、ストレッチで体を軽くほぐしていて。
「これも依頼だから手は抜かないよ。ライブハウス同様、やろうか」
灼滅者同士の模擬戦という、緊張感。
本気で戦う心構えで、天月・静音(橙翼の盾纏いし妖精の歌姫・d24563)が素早く武装を解除すると、傍らに現れた霊犬のクラージュも、真剣な眼差しで牙を剥く。
「灼滅者同士の戦いもドキドキしますよねぇ……あはっ」
生死を賭けたギリギリの戦いが好きな、リサ・ヴァニタス(アンバランスライブラ・d33782)も、楽しそうに後衛に着くと、愛用の交通標識を器用に回してみせて。
「味方同士で戦うべしなんて、けったいな作戦だが……まあ、敵を欺くためとあれば致し方がない」
揃いも揃って、高ぶる気持ちを隠せない。
狩家・利戈(無領無民の王・d15666)は、クールな笑みを浮かべると、獲物を構える。
互いに準備万端の中、一拍の静寂が落ちる。
——そして!
「ヤるからには、楽しまないとな!」
利戈が迷いすら振り切るように駆けだすと、高架下に激しい戦いの火花が鳴り響く!
●灼滅者同士の戦い
一斉に地面を蹴って剣戟が鳴り響けば、緊張とプレッシャーも瞬く間に打ち消される。
学生から灼滅者に切り替わる一瞬。何時もと違うのは、相手が灼滅者だということだ。
「折角の機会ですから、全力で……です、ね」
これはこれで立ち回りの練習にもなりそうだと、ユエファは思う。
先ずはクラッシャーの利戈から倒さんと、雷の闘気を拳に宿したユエファが更に間合いを狭めようとした時だった。
「させないよ……!」
即座に相手ディフェンダーの静音とクラージュが身体を割り込ませ、返す刃の如く霊的因子を強制停止させる結界を、相手前線に展開する。
だが、初手で状態異常を狙うのは、彼女だけではなかった。
「済まないが嫌がらせくらいさせてくれ」
目紛しく変わる戦況に双眸を鋭く研ぎ澄ませた諒一郎も、縛霊手を打ち振う。
放たれたのは全く同じサイキック、互いに動きが阻害される中、剣戟は鳴り止まない。
「中々やるわね」
今度はリサの攻撃を紙一重で避けた月媛が、強く地を蹴って跳躍する。
「精一杯いきましょ」
左手に持った斬艦刀相当の鮪を担ぎ直した月媛は、体重を乗せて豪快に振り下ろす。
初手から大技を繰り出す主人を護るように、ウイングキャットのフォスフォロスが傍らに着くや否や、すぐその側を颯爽と風が通り抜けた。
「バッチ来い~っ♪」
隣でLED式の電光交通標識を振り回していた聖は、何処か攻撃が散漫な様子?!
だが、クラッシャーで総受け全開という、絶好のチャンスを逃す者は、この場にいない。
「攻撃を合わせ、1人づつ確実に撃破するべし!」
「うふふ、了解ですよぉ」
背に灼熱の劫火の如き闘気を灯した利戈が、バベルブレイカーを高速回転させる。
それを合図に、リサが赤色にスタイルチェンジさせた交通標識で、聖の身体を吹き飛ばすと、瞬時に肉薄せしめた利戈が、杭を真っ直ぐ突き刺した。
「ごめんなさい……」
「あー、マッサージがアタシを呼んでいる〜♪」
続けざまに静音の飛び蹴りが炸裂、八千華とウイングキャットのイチジクの攻撃を同時に受けた聖は、とても気持ち良さそうに倒れ伏す。
「面白くなってきたな」
清々しい聖の受けっぷりに、同じ班の仲間が溜息をついたのも、一瞬。
諒一郎は落ち着いた所作で霊的因子を阻害する結界を展開し、更に敵前衛の動きを鈍らせていく。
「がんがん攻撃するわよ」
1人減っただけでは、勢いを止めるには至らない。
月媛は旗に見立てた影を伸ばして、リサの足取りを鈍らせる。
基本に忠実な相手に対し、自分達は回復は使わない。只、攻撃あるのみッ——!
「やはり強いです、ね」
「灼滅者同士の模擬戦も、悪くないかな?」
中でも激しい接戦となっていたのは、ユエファと静音のディフェンダー対決。
仲間の隙を補うように、強烈な斧の一撃で容赦なく斬り込んでくるユエファに対し、静音は攻撃と回復を使い分けて、ぶつかり合う。
能力は高めだけど回復無しのユエファ、クラージュと連携してバランス良く戦う静音。
まさに互角に近い競り合いだった。
「皆、回復は足りているか!」
「私は大丈夫……!」
利戈の声に八千華は即座に返事を返すと、自身よりも体力が低いリサを見やる。
幸い相手の攻撃は前衛に集中しており、後衛のリサが致命傷を受けることはなかった。
「いいですねぇ、楽しいですねぇ、ゾクゾクしますねぇ」
緊迫した戦いにスリルと興奮を覚えていたリサは、楽しそうに口元を歪めていて。
銀の髪をなびかせると、利戈の攻撃に重ねるように、足元の影を勢いよく伸ばした。
「……っ、やはり回復無しは、きついです、ね」
相手を惹きつけ続け、徐々に追い込まれていた、ユエファの表情が、初めて歪む。
影を受け止めようとするも押し負け、意識が遠ざかった瞬間、形勢は一気に逆転した。
「そろそろ決めて行きたいところだな!」
相手側がほぼ総崩れに近い今、利戈は味方の手数の多さを生かして攻撃に転じる。
仲間に合わせて攻撃を繰り出す利戈に対し、血塗れの月媛が満身創痍で踊り出た。
「バトルジャンキーをにゃめんなよ」
影を乗せたバベルブレイカーに叩き付けられながらも、滴り落ちる血に増々テンションが上がった月媛の口元には、薄ら笑みすら浮かんでいて。
けれど、鬼気迫る抵抗もそこまでだった。
「合わせますね」
八千華の攻撃を間一髪避けた一瞬の隙を突いて、静音が炎を纏った激しい蹴りを放つ。
強烈な一撃が入って炎に包まれた月媛は、倒れる寸前にもう一度微笑み、崩れ落ちた。
「残るは俺1人か……いざ、尋常に勝負」
多勢に無勢でも、諒一郎は最後まで抗い続ける覚悟を持っていて。
縛霊手に緋の闘気を宿して迎え撃つ諒一郎、リサも勝負を挑むように駆け出した。
「これで決めますよぉ」
急所を瞬時に見出したリサが正確な斬撃を交差させ、八千華も攻撃を合わせて。
同時に。大きく身を捻った静音が放った流星の如く煌めく跳び蹴りが、鋭い軌跡を描きながら、諒一郎の肩を打ち砕く。
それが、全ての決着が着いた、瞬間だった。
「良い戦いでした、ね」
「だが、回復を使われていたら、俺達の方が負けていたかもな」
身体を半分だけ起こしたユエファが、可能な限り万全な状態にしておいて欲しいと勝者側に告げると、利戈は頷いて仲間に心霊手術を始める。
互いのサーヴァントは消滅していたものの、皆揃って意識ははっきりとあった。
「うふふ、リサも心霊手術で治療しますよぉ」
「ライブハウスと似た感じだったけど、中々きつかったかな……?」
勝利したとはいっても辛勝に近く、勝者側も揃って殺傷ダメージが蓄積されていて。
特にディフェンダーで疲労が濃かった静音には、リサが即座に心霊手術を施した。
「これくらいボロボロなら、疑われずに済みそうね」
勝者達が心霊手術で互いの傷を癒し合う中、月媛が重い体を起こして立ち上がる。
「ビバ、目くるめく官能の世界へ!」
「妹に何を言われるか……」
聖が嬉々と後に続く中、沈痛な面差しを浮かべていた諒一郎も、重い足取りでナースが潜伏するマンションに向かうのだった。
●ドキドキ☆マッサージタイム
「あらあら酷い怪我! さあ、早く治療をしましょう」
「頼りにしている」
転がりこむように戸を叩いた諒一郎達を、ナースは警戒なく迎え入れてくれた。
4人を清潔な寝台にうつ伏せに寝かせたナースは、律儀にも男性と女性を分ける仕切りを間に敷くと、理由も聞かずに治療を始めた。
「まずは、お背中からほぐしますね」
「はいはーい、アタシからお願いしまーす♪」
背中を優しく愛撫し始めたナースを、聖の火照った唇がもっともっとと激しく急かす。
「背中だけなんて物足りないっ! もう思うが侭に……あんっ!」
不意にナースの指先が胸元まで艶かしく滑り、豊かな唇がうなじに当てられた聖は、たまらず身を捻る。
「……続きは、他のお客様の背中をほぐしてから、たっぷりしてあげますから」
「あ、ダメ! 待ってっ!」
熱を帯びた言葉と指先が、焦らすように聖の耳と躯からゆっくり離れていく。
恍惚に満ちた聖が嫌々と首を横に振る中、ナースはユエファと月媛の背をほぐしに取り掛かった。
「ここはどうかしら、まだくすぐったい?」
「あ、背中は……っ!」
背中を触られた瞬間、ユエファはくすぐったそうに身をよじってしまう。
その様子にナースは小さく微笑むと、腕の筋肉からほぐすように、優しく撫でていく。
(「何だか良心に付け込んでいる気……します、ね」)
否、放置しても無差別にダークネスを癒されてしまうだけだ。
切り傷だけでなく、疲れが取れた腕にユエファが感嘆を覚える中、月媛の声が洩れた。
「あ、そこもっと強く……っ、もうちょっと右、やっぱり左」
「ふふ、やりがいがありますねぇ」
月媛も警戒心の欠片も無く、ナースの手解きに身を委ねていて。
細かい注文の多さにも、ナースは嫌な顔1つせず、艶やかな笑みで指を滑らせる。
(「流れ流れて琵琶湖の畔~って、演歌になりそうな落ち延び具合ねぇ」)
ところで、このマッサージは……ムニャムニャ。
余りの心地良さに月媛が微睡んだのをみて、ナースは男子の寝台へ向かった。
「私のマッサージ、お気に召しません?」
「…………」
男性1人で個室状態となった諒一郎は、全てを雑に割り切って、現実逃避中♪
半ば不貞寝に近かったけれど、印象が悪く思われては不味いと、重い口元を開く。
「いや、美しい人だな、と」
「うふふ、嘘がお上手」
甘い声で上手に返事を返すものの、そういうことに関しては淫魔の方が上だ。
だが、無心に近い素っ気ない態度に、ナースは気を害するどころか……。
「そこまで無心にされちゃ、逆にも、え、る、ワ♪」
「なっ!」
只でさえ露出が高い服を脱ぎ始めるナースに、諒一郎は困惑を隠せない。
——その刹那。男子と女子の寝台を区切っていた仕切りが、乱暴に斬り開いた。
●ナースとドキドキバトルタイム
「取り込み中のところ、邪魔するぞ!」
部屋を強襲した利戈達の視界に入ったのは、下着1枚のナース……否、淫魔である。
他の4人も似たような感じだったけれど、敢えて何も言わないのが、優しさだろう。
「あはっ、楽しいことになってますねぇ」
「これは……少し恥ずかしいかも」
……すみません、前言撤回。
瞬時に取り囲むや否や、リサに護りを固めて貰った静音が鋭い飛び蹴りを炸裂させ、ナースの機動力を奪う。
動揺を隠せないナースも自らの役目を果たそうと、怪我人達を守るように立ち阻んだ。
「お客様、私が襲撃者を引き止めている間にお逃げ下さい!」
先程とは打って変わって、ナースは襲撃者達を真剣に見据えたまま、指を鳴らす。
身の丈程もある殺人注射器を構えた刹那、聖がせがむように足元に纏わりついた。
「もっともっとアタシを悦しませてっ!」
「お客様、下がって!」
すがりつく聖を引き放そうとすると、今度は足腰が砕けたと駄々をこねて。
辛うじて注射器の先端を静音に向けると、射線上にユエファが倒れ込んできた。
(「何だかテレビの悪役さんになたよな気……します、ね」)
ナース達に恨みはないけれど、これもお仕事だ。
痛みで身体が上手く動かないとユエファが告げると、月媛も沈痛な面差しで頷く。
「俺も、まだ傷が痛むようだ」
偶然を装って諒一郎が払った足も、ナースの気を引くには十二分で……。
お客様に気を取られ、逆に支えようとするナースの隙を逃す襲撃者達ではなかった。
「お姉さん隙だらけだよ」
エアシューズを強く蹴って駆け出した静音が、炎を纏った激しい蹴りを繰り出す。
ナースの挙動に注意を払っていた利戈も、タイミングを図るように駆け出した。
「潰し、穿ち、ぶち壊す! 我が拳に砕けぬものなど何もない!」
拳に集束させた烈火のオーラを勢い良く見舞う利戈に合わせて、八千華とイチジクが攻撃を重ねていき、そして!
「うふふ、お姉さん……リサとも遊んでくれますかぁ?」
「そんな暇はありませんわ」
艶やかな身のこなしでナースの反撃を避けたリサは、交通標識を器用に振り回す。
瞬時に赤色にスタイルチェンジした交通標識でリサに勢い良く殴打されたナースの身体がくの字に歪み、両膝を鈍く床に打ちつけた。
「嗚呼、お客様を、癒して差し上げない、と……」
不意に、ナースの視線が「最後に、お客様方を……」と、怪我人の4人に注がれる。
死に瀕してなお、お客様を逃がそうとしているのか……?
「お客様を、たっぷりしっとり全年齢何ソレな感じで、癒して差し上げたかった♪」
「「やめて差し上げろ!!」」
哀愁に似た笑みでにっこり微笑んだナースが、今度こそ塵と化して消えていく。
周囲に静寂が戻る中、少年少女達は一部を除いて、安堵に似た溜息を洩らした。
「任務とはいえ、これは恥ずかしいよ……色々と」
「全くだ」
いつもの依頼より、酷く疲れた気がするのは何故だろう。
言葉少なげに静音と諒一郎が俯く中、聖は物足りなさそうにマンションを後にする。
彼女達の首魁である、もっともいけないナースの行方は、未だ分からない——。
作者:御剣鋼 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年10月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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