手ブラだけじゃ帰れない!? 水着脱がしカメラ!

    作者:叶エイジャ

     藤花・アリス(淡花の守護・d33962)はある日、都市伝説らしき噂を耳にした。
     ――季節外れの水着コンテストに、妙なカメラマンが現れ、なんやかんや撮影されてる内に水着が脱がされてる。
    「た、大変……!」
     あわわ、と状況を想像して真っ赤になったアリス。学園に行きエクスブレインに詳しく視てもらうと……
    「小さくても、水着コンテストみたいな催しを行えば出てくる都市伝説みたい」
     天野川・カノン(中学生エクスブレイン・dn0180)が説明を付け加えた。灼滅者たちだけでやっても、出てくるようだ。
    「みんなで水着コンテストしてると現れてね、最初はちゃんと撮ってくれるんだけど……」
     気を許したあたりで服を消してしまうフラッシュをしてくる。
     一般人たちはあれよあれよと身に着けているモノを全部脱がされて、大変な目に遭ってしまうようだ。
    「うぅ……迷惑な、都市伝説さんですね」
     ただし灼滅者なら、その身から溢れるサイキックエナジーがバリアのようになって、最後の一線は守られる。
    「最後の一線、ですか?」
     この場合、それはパンツになる。
    「え……じゃあ、あの……胸の、ほうは?」
     当然消えてしまう。
     どころか、上と下が一体化したものは両方消えそうになるので要注意。
     更にこれは持ち物にも適用されるため、仮にアリスの場合だと、大事にしているぬいぐるみを残して……と言う場合も。
    「そ、そんな……」
     愕然とするアリス。その膝でのんびりあくびをするウイングキャットのりぼん。一応朗報はある。
     殲術道具の武器は消えない(防具も消えないが透明化する)。
     サーヴァントに影響は――服を着ている場合あるかもしれないが――基本ないので、最悪武器かサーヴァント(で)に隠してもらえればいい。
    「逆にこの都市伝説って、そんな能力に特化してるせいか、かなり弱いみたいだよ?」
     倒せば持ち物や衣服は元に戻るので、その点は安心だ。
     ちなみに。
     男子勢は最初からパンツ一丁――最後の一線だけだぜ、と安心するのは大間違い。
     最後の一線も、そのうちフラッシュではぎ取られる可能性がある。
    「な、なんやてー!?」
     今回同行予定の大橋・定時が愕然とする。
    「それはともかく、せっかく水着コンテスト開催するなら、十分楽しんだ後に灼滅するのもいいかも? あ、でも風邪ひかないようにねっ」
     カノンがそう締めくくった。


    参加者
    水月・鏡花(鏡写しの双月・d00750)
    鬼城・蒼香(青にして蒼雷・d00932)
    橘・清十郎(不鳴蛍・d04169)
    黛・藍花(藍の半身・d04699)
    アルクレイン・ゼノサキス(黄昏の天使長・d15939)
    早乙女・雅㫖(クロスシザー・d19774)
    黎・葉琳(ヒロイックエピローグ・d33291)
    新堂・柚葉(深緑の魔法使い・d33727)

    ■リプレイ

     ヌーディズムという言葉がある。
     いわゆる、裸族のたしなみだ。
     実際は違うのだが、ヌーディズム後進国の日本では、そういう誤った認識も致し方ないだろう。
     ちなみにヌーディストビーチという単語もあるのだが、今日の灼滅者たちは『不慮のヌーディストビーチ撲滅委員会』と言っても相違なかった。
    「1番……でいいのかしら。水月鏡花よ」
     水月・鏡花(鏡写しの双月・d00750)は台の上でポージング。黒のワンピースタイプの水着に包まれたスタイルを見せつける。この時期は少し辛いからと羽織ったパーカーは良い具合にはだけ、胸元では三日月を模したネックレスが陽光に煌めいていた。
    「あ、鏡花さんもうちょっと」
     アピールを終えた彼女に待ったがかかる。カメラを構えた鬼城・蒼香(青にして蒼雷・d00932)と雨宮・絵梨香だった。ノリよくシャッターを切る二人に鏡花はため息。
    「目的は都市伝説の灼滅よ?」
     今回の敵は『水着を脱がすカメラ』をもつ都市伝説。こうして水着コンテストを開催したのも、都市伝説をおびき出すためだ。
    「確かに、分かりやすい下心をもった相手ですね」
     でも、それとは別に楽しみましょう、と蒼香が微笑む。絵梨香も頷いた。
    「それに、いざ戦闘になると脱げちゃうそうじゃないですか☆」
    「……変な所写したら、カメラ壊すわよ?」
     不穏な言葉に釘を刺している内に、今度は黛・藍花(藍の半身・d04699)の番となった。妹分を応援しに来た司城・銀河、そして王華・道家が「似合ってるよー」と審査席からエールを送る。
    「恥ずかしすぎて、戦闘前に戦闘不能になりそうです……」
     それでも、ビハインドと揃いの、白黒フリルの付いたセパレートタイプでポーズをする藍花。ビハインドの方はノリが良く、藍花の手を取ってはアイドルポーズや胸を強調する体勢でアピールする。
    「ぁぁ、うぅ……」
     知り合いの手前もあって、藍花の表情も赤面しっぱなしだ。
    「女子はやっぱり可愛いネ。照れてる仕草も素敵だと思うナ」
     早乙女・雅㫖(クロスシザー・d19774)が採点表に丸を書き込む。ちなみに簡易的に作ったそれは『カッコイイ、可愛い、素敵、セクシー』の四項目しかない。
    「それに男子の水着は……美味しそうダネ」
     え……。
     今日の男性陣は雅㫖を入れて四名。誰もがその言葉にピシリと固まった。その様子に雅㫖が笑う。
    「――なーんテ。流石にネ!」 
     脱力する三人。雅㫖は妖しく笑っていた。
    「みんなかわいい……! あ、次は私の番ね。とっておきの水着、あらためて披露しちゃうんだから!」
     黎・葉琳(ヒロイックエピローグ・d33291)が元気よく審査席から立ち上がった。白いスク水の上からチャイナドレス風の上着を着こむ。
    「あ、大橋さんは着替えちゃダメよ」
    「お、おぅ」
     心の中を読まれ、うなだれる大橋・定時(高校生ご当地ヒーロー・dn0193)。なお教室で、
    「大橋さんは、男らしく、海パン一丁で来てくれるのよね」
    「……え? いや、もっと服――」
    「楽しみだわ!」
    「ぁ。うん。ま、任せろや……」
     という会話があったとかなかったとか。
    「言い負かされてるな。頑張れ」
     橘・清十郎(不鳴蛍・d04169)が苦笑する。
     彼は今年の水着コンテストで着た、羽織とセットのものを着用している。流石に敵が敵とあってか、ディフェンスな彼は水泳帽とゴーグルを手にしていた。
     なお、彼が彼女を連れてこなかったのは身を案じたからではなく……実は浮気現場が今回、激写されるのではという情報が。
    「そこ、嘘を流さない」
     清十郎の指摘に、銀河と道家が視線を逸らした。
    「それじゃあ、いきますよ」
     準備のできた葉琳と、アルクレイン・ゼノサキス(黄昏の天使長・d15939)が壇上でポーズ。偃月刀風のフロート遊具を構える葉琳。アルクレインは青いビキニ――に見えるが、実は背中を大胆に開いたワンピースだった。パラソルを差し、パレオを翻し一回転。可愛く次のポーズを決める。横目にそれを見た葉琳がむむ、と遊具を武器のように旋回させてウインク。活発で好印象を与えるのだが、最初に考えていた淑女の振る舞いからは遠かったりする。
    「次は、私の番……ですね」
     眩しいほどの白いビキニを付けた新堂・柚葉(深緑の魔法使い・d33727)。緊張気味だった。頭では必要だからと分かっているが、いざこうして仲間からも撮影されるとなると、気恥ずかしい。蒼香が声を掛ける。
    「大丈夫ですよ、柚葉さんもスタイル綺麗ですから。自信をもってポーズを」
    「ポーズ……どういうポーズを取ればいいのか」
    「とりあえず、思いついたものでいいのでは?」
     アドバイスを受け、柚葉は迷った末、突然その場にしゃがみだした。いわゆる体育座りだ。
    「柚葉さん、それ……!」
    「だ、だってこれしか思いつかなくて!」
     いいや結構あざと可愛いんですけど!
     ビキニの白が肌で隠れて、まるで自ら布地面積を減らして『想像して』と言ってるようなものだ。なんてけしからん中学生だろう。自然とシャッターの音も多くなる。
    「あ、あまり撮らないでください」
     耐えられなくなった柚葉。手にしたパーカーで慌てて隠すが……なんでこう、エロティックな想像を醸し出させる姿態になるのだろうか。
    「もう終わります!」
     柚葉はパーカーで下を、帽子で上を隠し逃げ出した。それはいいが、胸部容積が帽子の許容量を完全オーバーしている。
     最後まで、無意識のサービス精神が旺盛であった。
    「次って、早乙女さんじゃない?」
    「え、俺?」
     雅㫖はややぼーっとした感じの表情で、目をぱちくりさせた。
    「俺は見せるヨリ、見てる方ガ良い気もするケド」
     審査員席にゴーグルとサンダルを置き、立ち上がった雅㫖の姿はサーフパンツに黒の猫耳パーカーだ。
    「あまりポーズも浮かばないシ、蒼香がその分時間使ってヨ。とりあえず、ピースピース!」
    「じゃあ、お言葉に甘えて」
     記念にと雅㫖のダブルピースを納め、次となった蒼香はカメラを置いて壇上へ。この日集った灼滅者の中で年長者と言うこともあるが、くびれのセクシーな、グラマラスな体形だ。アピールのためそらした胸には、格差社会の女王を示すようなふくらみがあった。
    「蒼香さん、いいですねー」
     カメラ役の絵梨香の声が聞こえ、フラッシュが何度も焚かれる。その光を浴びながら、蒼香はふと思う。
     ――そういえば、ついカメラがあったから撮影してたけど。
     あれって、誰のカメラだったのだろうか?
     それにしても、フラッシュがきつい。
     鏡花が言った。
    「絵梨香、これだけ明るいのにフラッシュはいらないでしょう?」
    「え。私、フラッシュなんて――」
     そこで強烈なフラッシュが絵梨香を襲い、手にしたカメラも衣服もすべて事象の彼方へ持って行った。
    『シャッターチャアアアアアンス!』
     ついに現れた都市伝説が、蒼香の手にしていたカメラにサイキックエナジーを集約させていく。全てを失った絵梨香は砂浜に伏したまま、ピクリとも動かない。
     一人の少女の犠牲から戦いは始まった。


     バッババババババババババババババババババ!
     都市伝説のカメラから、フラッシュが連続で巻き起こる!
     いまどきの記者会見ですら軽く凌駕する、超新星の如き光がビーチを席巻した。
    「どわ!?」
     その光に飲み込まれた定時のパンツが弾け飛び、死者二人目の出来上がり。
     こと今回の敵に関しては、サポートやサーヴァントの尊厳など塵芥も同じ!
    「させるかーっ」
     サポート(強調)の銀河と道家は、フラッシュの危機にさらされた藍花を助けるべく向かう。
    「きゃっ……」
     藍花が小さな悲鳴を上げ、胸を押さえる。フラッシュで手ブラとなったのだ。トドメが彼女を襲う寸前、二人が間に割り入った。
    「大丈夫!?」
    「銀河お姉様! あ、ミッチーさんは絶対振り向いてはダメです!」
    「藍花クンのピンチだ、決して見ない!」
     本当は血の涙が出そうだが、我慢して見ない!
    「さあ来いっ。最高の一枚を撮ってもらおうじゃないか☆ボクは消されても恥ずかしいカラダは――」
     バッ!!
     洒落たポーズを決めた道家から上下の服が消し飛んだ。どこか満足げな顔を、残った化粧と鼻玉で彩りながら、彼は砂地に逝った。
    「道家! くっ、藍花逃げて!」
    「はい。銀河お姉様は、ここは敢えて……!」
    「敢えて……何!?」
     銀河は振り返ろうとしたが、身体が動かない。怯えたビハインドが背後から抱きつい(羽交い絞めにし)ていたのだ。フラッシュが銀河を襲う。
    「待って! せめて腕は外して!? 自分の身を守らせて!?」
     バババババババババ!
     光の波濤が涙目の銀河に直撃し、さまざまなかいほーかんをもたらした。
     特大メロンが産地直送! ついでに心も直葬!
    「まるで機関銃……軽装では瞬殺されますね」
    「困った都市伝説が居たものです。ここは私たちの出番ですね」
    「ふふん! 私の水着を脱がそうなんて不届き者には、痛い目見せてあげないとね!」
     盛大に何かを打ち立てたような気がしないでもないが、対策で重装備を整えた柚葉、アルクレイン、葉琳が意を決して都市伝説に突撃した。
     フラッシュが彼女たちを出迎えるが、多少被害が出ようと一撃でも繰り出せるのなら!
     しかし運命は残酷であった。
    「ああっ、メガネが!?」
     柚葉のメインカメラが狙われたのだ。ついクセで足を止め、メガネを探そうとしたのが運の尽き。続く猛射に髪留めやら胸部装甲を一気にひっぺがされ、瞬く間に悲鳴と手ブラの状態へ。実になまめかしい。
     一人脱落したことで、アルクレインと葉琳への激写も増す。サンダルから始まり乙女必須のアクセサリやアイテムが次々と消失していく。
    「な、なによっ。中華な上着が消えたって下のスク水が――あああああ!?」
    「あ、待って、これワンピースだか――きゃああああ!」
     なぜか遊具以外が先に全消失した葉琳。しゃがむしかなく、動こうにも動けない。アルクレインは彼女のように隠す物すらないので手をあたふたうごかすが、
    「あ、そ、そうです。こんな時のラビリンスアーマー!!」
     機転を利かしてダイダロスベルトを起動。ほっと一息つくが、帯が素肌に巻き付く姿はやらしー雰囲気がプラスアップ。しかもフラッシュで消失が起きてしまい、扇情的な姿でヒールサイキックを常に使用せねばならない模様。
     某都の条例を嘲笑うかのような事態に、少女たちも大人の階段を数段飛ばしで駆け上がっているようだ。
     いずれにしろ、これで三人は行動不能だ。
    「うーん、コレだけ被害が広がるト、目のやり場に困るネ」
     雅㫖は上空を見上げる形になっていた。すでに残るはハーフパンツのみ。
    「すまない……」
     清十郎もディフェンスで消耗し、羽織を始め諸々が消失していた。残るはパンツひとつ。良好な視界が望めず、そして冷静な思考を続ける為か、ウイングキャットの塩鯖が肉球で目を塞いでいた。
    「こちらの攻撃圏内に入ったと同時に、水着も消されるようね」
     ここまで完璧な回避をしてきた鏡花も槍を手に考える――被害0で済む方法を。蒼香が決意の目で言った。
    「ここは、わが身を犠牲にして勝利を得るしかないようですね」
    「犠牲に、ですか?」
     藍花が顔を曇らせる。散って逝った大事な人たちのことを思うと、胸が張り裂けそうだ。
     ちなみにその胸はビハインドが手ブラしている。なんとも背徳的な光景だ。
     フラッシュが近づいてくる。残された時間は少ない。灼滅者たちは肌色に染まった仲間たちのためにも、覚悟を決めなければならなかった。


    「都市伝説さん」
     岩場の近く。蒼香がビーチマットの上でうつ伏せとなり、谷間を強調して見せつけた。
    「こういうポーズ、綺麗に撮ってはくれないのですか?」
     本日2度目、メロン直送便の誘惑に都市伝説の動きが変わ(と言ってもフラッシュばかりでよく見えないのだが)った。迫りくるフラッシュの嵐に、蒼香はビーチマットを盾に跳ね起きる。マットも、重ね着たパーカーやホットパンツも消えていくが、蒼香は更に挑発するようにポーズを続行。海に入り水浴びするような姿勢から素早く動き、フラッシュから逃れていく。
    「鏡花さん、みなさん、今です!」
     十分に引きつけて合図。近くの岩陰から鏡花が、清十郎や残りのメンバーが都市伝説を包囲し迫る。
     しかし、都市伝説はこと撮影において恐るべき能力を持っていたのだ。
     都市伝説を中心に、全方位に光の障壁が広がっていく。
    「な……360度パノラマ撮影、だと!?」
     一斉攻撃があだとなった。回避行動をとっていた蒼香はまだしも、殆どの灼滅者たちが最後の一線までひっぺがされてしまう。
     特に鏡花はネックレスが一線であったらしく、慌てて槍で――月を模した装飾部分と、細そうな柄で――己の身の隠ぺいを図る。マーベラス。
    「……っ」
    「鏡花さん大丈……って、ああ!」
     取り回す槍が駆け寄った蒼香のパンツに引っかかり、紐が取れていく。
    「鏡花さん、取れちゃいますよ! 振りぬかないでくだ――」
     振り抜かれた。蒼香の最後の一線は味方のダイレクトアタックで海に舞った。
    「危ない!」
     彼女らを襲うフラッシュ。横っ跳びに割り入った清十郎が海へ着水。しかし海パンは光にのまれて散った。
    「安心してください」
     すぐさま起き上がった清十郎は、片足を上げて色々隠しつつも、断言する。
    「一見、穿いてないように見えるが……穿いてますよ」
     真偽を知るのは、真横から彼のことを見ている藍花のビハインドのみ。ビハインドは両手を頬に当て、真っ赤だ。一体何を見たというのか?
     切迫した事態は更にあった。フラッシュがビハインドを標的にしたのだ。慌てて回避しようとするが、何故か身体が動かない。背後から銀河が押さえ(羽交い絞めにし)ていたのだ。
    「避けると藍花に当たるから、ダメ」
     藍花>ビハインド。無敵状態(要するにぜんらー)の銀河の決断によって、ビハインドに機関銃の如きフラッシュの嵐が着弾していく。その度に激しく体を波打たせ、水着が弾けて消えていくビハインドの様は、カメラによる除霊シーンにしか見えなかった。
     しかしその犠牲は無駄ではない。
     顔の布も消えたせいで、顔を晒すサイキックが発動。至近距離から都市伝説に直撃したのだ。その手からカメラが吹き飛ぶ。
    「こっちばかり脱がされるナンテ、不公平ダヨ」
     雅㫖の放った影の刃が、都市伝説であるカメラマンの服を切り裂く。同時に蒼香がたゆんたゆんと胸を揺らしながら、拳を振りかぶった。
    「これ以上は撮影禁止です!」
     トラウナックルが都市伝説を殴り飛ばし、海へぶっ飛ばした。その先の海面から柚葉が顔を出し、迎撃の影喰らいを。さらに葉琳が七不思議を発動させた。海面に幾つもの兵隊の影が姿を現す。
    「レディをこんな目に遭わせて、ただじゃ置かないわ!」
     号令と同時に、兵隊たちが海に落ちた都市伝説を袋叩きにしていく。
    「まだ、カメラがあります!」
     カメラマンをフォースブレイクで滅ぼし、アルクレインが上空を指さす。そこにはカメラが宙を舞い、今にもフラッシュを閃かせようとしていた。
    「そのカメラが諸悪の根源でしょうか……!」
     藍花が制約の弾丸を放ち、鏡花が妖冷弾を撃ち出す。清十郎のご当地ビームが貫いた瞬間、カメラは強烈な光を放って爆散した。
     戦闘が終わり、静寂が戻る。耳に波音が聞こえてきた。
     悔しいことに、光の粒子が散っていく光景は綺麗だった。


    「ひどい戦いだった」
     清十郎が言った。全員の総意でもあった。
    「二度と思い出したくないわ」
    「そうですね……」
     最近、夕陽の見える時間が早くなってきている。夕日以外の理由で真っ赤になった葉琳とアルクレイン。ある意味貴重な体験に、変な癖が身につかなければ幸いだ。
    「お姉様、護ってくれてありがとうございます」
    「可愛い妹の為だからねー」
     一肌脱ぐどころではなかった記憶を葬り、あっけらかんと笑う(顔は赤い)銀河。こうして藍花の一蓮托生計画は成功に終わった。道家が笑う。
    「元に戻ったことだし、改めて写真を撮ってもらおうかな☆」
    「え、もう一度ですか……?」
     髪が解けたままの柚葉が赤面する。これはこれで良い絵になることは間違いないだろう。
    「そういえバ、絵梨香のカメラは大丈夫だったノ?」
    「ええ、問題ないです」
     雅㫖に、絵梨香が頷く。
    「ただ、皆さんの際どいショットが記憶のメモリーにしか残ってないのが残念です」
    「いっそ、今すぐ引導を渡そうかしら」
     鏡花が呟いた。蒼香がカメラのメモリを確認する。
    「あ、でも一緒に撮ったりしたものがないので、一度合わせで撮ってもらいません?」
     賛成の声が上がった。先ほどの記憶を消すには、楽しい思い出で上書きが必要だろう。
     水着コンテストは、もう少しだけ続いた。

    作者:叶エイジャ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年9月29日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 3/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ