●琵琶湖周辺の某アパートにて
「はーい、お注射いきますねー」
どす!
「はうあっ」
ミニスカフリル白衣のナースさん、傷だらけのいかつい背中へ思いっきり肘を突き刺した。
「お、おねーさ……それ肘」
「うごかないでくださあい?」
ぐりぐりぐりぐり。
のけぞる羅刹が妙な悲鳴をあげるのにも気に留めず、ナースはゆるふわツインテールを揺らし肘をめり込ませる。
「だぶる!」
「あがー!!!!!!」
たしたしたしたしっ。
診察ベッドをぶったたく男、ふたつの肘でごりごりするナースさん。
――数分後。
「仕上げのマッサージでーす。もう痛いトコないでしょぉ?」
ぴょこっとベッドにあがり、緩めた服の胸元からのぞくやわらかおっぱいでむにむにむに。
「お、おおお、おう……」
「今日はお疲れさまでしたあ♪」
お耳をかぷりとかじった後で、ゆるりと言う名のいけないナースは甘く囁く。
「良かったらお友達にもこのお店のコト宣伝してくれると、ゆるり嬉しいなぁ」
そう、たゆまぬ営業努力が明日の繁盛につながるのである。
●はい注目!
「今回はみなさんに2手に別れて殺しあっていただきまーす! ……あ、ちょっと嘘」
ちょっとなのかー?!
「殺さなくていーけど、激戦の末どっちかが戦闘不能になるぐらいには、ホント」
灯道・標(中学生エクスブレイン・dn0085)はしれと告げた後、今回の依頼の流れを語りだす。
「道後温泉にいた道後六六六のいけないナース達が琵琶湖周辺のアパートで『いけないマッサージ店』をひらいてるんだよね」
お客さんは安土城怪人と天海大僧正との抗争で怪我をしたダークネス達。
これが結構繁盛してる模様。なにしろ敵味方気にせずウェルカム、こまけーことはいいんだよらしいので。
「で、そのいけないナースを灼滅して欲しいんだけど、警戒心強くてさ」
激戦の末戦闘不能になった怪我人以外が近づくと逃走確定、故に最初の物騒な指示となるわけである。
「敗北側がマッサージ店に客として潜入、でもってマッサージ中にもう一方が乗り込む。要は騙し討ちだね♪」
ナースはサウンドソルジャーと殺人注射器のサイキックを使用する。ポジションはメディックだ。
「まー、いけないナース弱いけど。具体的には4人で勝てる程度ね」
しかもナースさん、治療中の灼滅者を護って戦う習性があるもんだから、治療されてる組に縋られたら逃げられないときた! 怪我人チームは存分にナースの足を引っ張ると良いだろう。
「むしろ、マッサージ店に潜入するための灼滅者同士の戦いの方がマジでガチ。怪我した振りではナースは騙せないからね、ちゃんと殺りあってね」
エクスブレインさん、漢字漢字。
「ちょーっと可哀そうな気もするけど、所詮は淫魔だしねー。なにより今は無差別回復だけど、どっかの組織に抱え込まれたら大きな脅威になるだろうし」
そうなってからは遅すぎる。
故に――スレイヤー達よ、死力を尽くして同士討ちするのだー!
参加者 | |
---|---|
羽柴・陽桜(こころつなぎ・d01490) |
狗神・伏姫(GAU-8【アヴェンジャー】・d03782) |
メルキューレ・ライルファーレン(春追いの死神人形・d05367) |
明鏡・止水(高校生シャドウハンター・d07017) |
百舟・煉火(イミテーションパレット・d08468) |
本田・優太朗(歩む者・d11395) |
九形・皆無(僧侶系高校生・d25213) |
厳流・要(溶岩の心・d35040) |
●序
――しゃん!
稍寒の風がまばらなススキを揺らし赤の混じり始めた山肌へと裾を広げる。
「それで」
緊迫した空気の中相変わらずのとろんとした瞳の明鏡・止水(高校生シャドウハンター・d07017)は、ポケットから指を抜く。
「お互いの主張は受け入れがたい訳だ」
「ふはははは! とうっぜん!」
大きく胸を張る百舟・煉火(イミテーションパレット・d08468)は尊大上等、ずびしと目の前に座する四人と一匹へ指を向け。
「ボク以外に最強を名乗るなら拳で見せてみな!」
「むーー」
煉火の高笑いに仁王立ちで頬を膨らませるのは羽柴・陽桜(こころつなぎ・d01490)だ。決意と共に短くした髪が耳の下を撫でるのにはまだ慣れないけれど。
「ご託は良いではありませんか」
屈伸から肩のストレッチに滑らかに移行する九形・皆無(僧侶系高校生・d25213)の気配は泰然自若、だが錫杖へ指伸ばす様は油断ならない。
「全力で、ということですね」
果たして涼やかに発せられたメルキューレ・ライルファーレン(春追いの死神人形・d05367)の一声は、それを制する気があるのか否か。
まぁまぁと割入る本田・優太朗(歩む者・d11395)は柔和な面差しにますます笑みを挿し、
「どうせやるならお互い遠慮なくやりましょう」
怪我は避けられないでしょうけどと抜け目無い添え言に、狗神・伏姫(GAU-8【アヴェンジャー】・d03782)は愉快至極と喉を鳴らした。
「楽しめるという余裕というのも、時に必要だろうて」
と。
「……!」
そんな先輩諸氏のやりとりを、厳流・要(溶岩の心・d35040)はアーモンドのような瞳を瞬かせじっと伺っている。一挙一動から何かを必ず学び取る、その意気や良し。
「なら」
ぴん!
弾いたコインをつかみ取り、止水は僅かに引き締め勝負開始の合図を告げる。
異を唱える者は、いない。
「勝っても負けても恨みっこなしって事で」
……さぁ、真剣勝負の幕が開く!
●一
コインがススキに吸われ地に当たる微かな音、それを聞き逃す愚者など此処には存在しない。
バケツのペンキをぶちまけるように殺伐に切り替わった舞台の中、一に躍り出たのは、伏姫。
「来たよ!」
煉火が集中狙いの印をつけるべく摩擦熱帯びた踵を蹴り上げた刹那――世界は更にまた趣を、変えた。
「……神讃える歌満ちる楽園にようこそ」
メルキューレの手の甲飾る銀の薔薇から咲き乱れる極寒世界。優太朗以外三人は氷点下の凍えへ叩き込まれた。
薔薇園の管理者たるメルキューレの浄妙さに息呑む間も与えずに、蒼空薙いだのは季節外れの桜――陽桜の膨れあがった腕、だ。
そう、
伏姫は自らを見せ札の囮とし先手取りを狙い、結果、面白いようにうまくはまった。
「たああっ!」
「くっ!」
模擬戦とはいえ真剣勝負。だがそれ以外『戦』と違う何かが陽桜の所作に含まれるのに思慮深き皆無は気付く。だが思考より先に袂で佛継弥勒掌が軋み啼いた。
「ご返杯です」
同じ技で少女を土につけ立つ足に硬質の糸が、くるり。
止水の指元解け伝う糸はミシンで縫うように画然とした動きで凍え広げて抜け去る。
「すっかり先手を取られてしまいましたね」
鮫が獰猛さ誇示する飛翔の動きで止水の頭を掴むは、蒼塗れな優太朗の指先。
「まぁしかし出方を見せていただいた、とも」
本命刃は飛沫。胴を裂かれ後ずさる止水の口元はしかし笑んだまま。
「霊犬連れのディフェンダーを落とすよ! 続いて!」
薔薇で一端は止められたものの煉火の勢いは収まらない。伏姫をあぶり出すようにススキ焦がして薙ぎ払う。
「……物騒きわまりないのう」
老獪な警戒心でギリギリ避けた伏姫は、更なる後退と同時に甲高い犬の悲鳴を聞く。
「中々根性あるなァ」
裏拳に身を晒した八房へ、要は感心するように眉毛をあげる。霊犬であれ先輩は先輩、学ぶ姿勢はもちろん此処に。
その間、伏姫は自身を含めた前衛へ防護壁を展開、八房は一番深傷の陽桜へ癒しの瞳を向けた。
●二
両班の違いは進むにつれはっきりとした色を為す。
A班がほぼ無傷のメルキューレ以外にダメージが散っているのに対し、集中攻撃を喰らった皆無の損傷は中盤にして既に深刻だ。
A班2名の標的がうまく重なり、合わせる腹のメルキューレも早々に要から狙いを切り替えた。
一方B班はダメージソースの皆無と優太朗の狙いが別れ、集中攻撃を示唆する煉火は伏姫狙い……散漫は当然の帰結だろう。
「回復は任せてー、九形くんはでかいのぶっぱなしてよ!」
内心の焦りを押し殺し、煉火は仲間の疵へビビットピンクのリボンをかけたシュヴァリエR.C.を向ける。
「そうさせていただきます」
祭壇の光に痛みを宥められた皆無は口元の血を拭いすくと立った。
先手を取られ散々いいようにされたのは、戦場を貪欲に利用した伏姫の功績が大きい。煉火の言うように止めるべきだったのかもしれない、しかし。
(「彼女は護りも巧みで捉えがたく、更には――攻撃は最大の防御」)
掌を刀のように合わせそらし風を呼び、狙ったのは陽桜。
「くぅう……ッ」
逃げないと、決めた。
「その気概は賞賛に値します」
だが引き時を悟った皆無の一撃は強烈だ。戦線をひっくり返す一撃打ち込む使命感が高ぶらせるのだ。
(「……次は羽柴くんに畳みかけ……いや、まだはやいか」)
少しでも長く仲間を場に留まらせて、少しでも早く敵の数を減らす。そのために必要な手順を、煉火は必死に手繰る手繰る。
「あたし、攻撃」
そんな中、食いしばられていた陽桜の林檎の唇が大きく開かれる。
「……し、ます」
回復は任せたと慣れぬ口調で叫ぶと同時につきだした杖。しかし捉えたのは狙いより遥かに小柄……そう、自分より更に10センチ低い少年だった。
「いッてェ……なんて言う、かよッ!」
浅黒い肌から吹きだす汗は、気迫に満ちた要の熱で一瞬の内に蒸散する。
とにかく長く残り壁になることを腹に決めてきた。しかし狙われなければ壁とはなれぬ。ただ長く戦場にいるだけが能では無いと、この少年は戦いの中でまたひとつ学び取った。
「オラァ、いくらでもかかってこいやァ!」
小剣纏わせ回復する要。
「ようやったの」
対するA班ディフェンダー伏姫は身に蓄えた気を掌に集積し、陽桜を支え立たせると同時に疵を塞いだ。
「八房」
止水を示し今後の手に思考を巡らせる。
攪乱の効果も仕舞い、かき乱しで履いた下駄はそろそろ脱がねばならぬだろう。皆無が倒せるギリギリまでもったのは僥倖。むしろ正念場は、皆無が斃れた直後、守りに回っていた者が攻撃に転じるのを乗り切れるどうか。
ちらりと向いた紅を真っ向から受け止めて煉火は挑発的に唇を吊り上げる。ヒーローはいつでも笑っているモノだし、なによりこの戦いには後ろめたさと翳りが無くて心地よい。
翳り、罪悪感……ナースを騙し討ちする作戦に一物抱える一同の中、特に強く思い煩うのは間違いなく優太朗だった。
とはいえ、それで現在の手が鈍るなどないし、この後仕損じるコトもありえはしないのだ。
それを物語るように、優太朗は最小限のステップで紛れ着実にエモノである止水を苛烈な太刀筋で捉える、一度として外さずに。
「しつこいねぇ」
「そちらも、僕を狙ってくださっていいんですよ?」
派手さは前衛陣に任せてとでも言いたげに身を引く優太朗へ、やはりいぶし銀なる止水は胸に手を置き闇を編む。
「倍々に増やしてやる」
自分の役割――毒をさし、目に見えぬ軋み増やし蝕むコト。
そう最初から悟り動いていた止水の動きもまた終始的確であった。適度に自らの痛みは闇に払い落としつつ、一貫して皆無狙い、今度の闇の毒気は極上。
「それには増やす氷が必要でしょう」
肩に掛かる紫を払いのけ、メルキューレは純白を標のように捧げ持つ。薔薇の如き氷が虚空の熱を奪った分だけ膨れあがる。身を固める防具故、やや避けられやすいと気付いた氷は、ここぞの決め手。
ふわり。
死神が大鎌で世界を掻く仕草で打ち出された氷を身に受け仰け反った所へ叩きつけられる悪夢の塊毒。
「次が楽しみですね」
浪々と笑う止水は指に絡む鋼糸を掲げ見せる。
●勝敗
大方の予想通り、最初に地についたのは皆無であった。
「初白星はいただいておきますね」
広がる氷毒に軋む所を、メルキューレの断ち切るような一閃で幕。
しかし数分後、攻撃に転じたB班により止水の膝も砕けんとしている。
「もやもやはここで吹っ切らせてもらいますよ」
「そうですね」
器用に杖を繰り追い込む優太朗がさしたのは後のナース戦についてだが、陽桜は好きだけだった『ひお』に寄せて頷き、胸に手をあてた。
「いや……回復は、いりません」
「その心意気あっぱれ!」
癒しの歌声を制する止水へ、にぃと口元を吊り上げた煉火が鉄の塊を振りかざす。
「ふーははははは! これがトドメだ!」
どぉんと大地揺るがすような一撃で倒れる止水を横目に、陽桜は要へと視線を移す。
「オラァッ、来いッ!」
腹へ刺さる杖の先、連撃をひとつふたつ……と数えた要は同じ数だけ頭突きを入れてやると頭を突き出す。二撃で逃れた少女を八房に預け、伏姫は軍服翻し要へと喰らいつく。
「攻撃はせんと思とうたか?」
もがく少年をダイナミックに地に叩きつけた所へ、盾の護りごと砕くメルキューレの剣が振り下ろされた。
そして近づいても近づかせないとメルキューレは、氷が溶けできた水のように身を翻し間合いから姿を消す。
入れ替わり現れた桜の少女が開始と同じく腕翻す軌跡を焼き付けて、衝撃と共に要の瞼は落ちた。
「無傷の方を狙っても悪戯に時間がかかりますし……」
そんなコトを嘯き皆無が裂いた陽桜の脇腹へ突き立てる優太朗もまた、メルキューレと同じくほぼ無傷なのである。
さて。
――煉火と優太朗、それぞれの狙いは伏姫と陽桜。
――メルキューレを始めとしたA班の狙いは煉火ただ一人。
「ヒーロー勝負には負けられないよ!」
「それは確かにのぅ」
相打ち狙いの一撃で伏姫を崩せたのが煉火最後の意地だった。しかし伏姫の意地もまた八房が投げた銭により護られる。
手負いの陽桜とほぼ無傷のメルキューレ対、ほぼ無傷の優太朗。
「……気持ちが晴れたようでなりよりです」
「!」
何かを感じ取ったか優しげな優太朗の声、だがまだ勝負を諦めない彼は相反する鋭さで陽桜を打つ。互いに心は味方でも、この場では真剣勝負の相手。
皆無が穿ち続けた疵が効いたか思うよりはやく一対一に持ち込めた。
しかし、
ことここに至るまで当然優太朗は無傷とはいかなかった。逆に相変わらず無傷のメルキューレは、着実に纏うた盾の力を味方に鋭き太刀を弾き、躱す。
「――薔薇を、どうぞ」
耳元へ結わえるように差し出された氷花に埋もれ、優太朗は意識を手放した。
●ナースさんで〆
「治療行為とはいえ、密着されるのは流石に照れますね……」
ゆっさゆっさ。
間近で揺れる膨らみから左にそらせば鼻を押さえる要と、右にそらせば困った顔の優太朗と目が合い、皆無はふうむとうつぶせに戻る。
平常心。
とても、大切。
『はぁい、お注射いきますねぇ』
どすっ!
『すごぉい、ゆるりのこれで泣き言言わない人はじめてですよぉ』
しかしまぁ甘い声に女性独特の香りにトドメの柔らか攻撃……男の子は色々大変なんだぜ。
もう一度言うと、平常心。大切なー?
『女の子なのにこんなに疵だらけになっちゃって、もぅっ!』
ぐりんってした後、煉火の腰をてしてしてし。
「あぐっ……闘者たるもの……目の前にライバルが居れば戦って頂点を決めない訳が無いのだ……」
当初は唇をへの字に曲げていた煉火だが、確かな治療術に感心する気持ちもじわじわ。
――そんな風にせっせと治療されてる四人は、玄関と反対の窓硝子が派手に砕けるのを耳にする。ちなみに硝子を壊しての挟撃は建物の被害を出そうが逃がさぬと強く押した皆無の案だ。
『な?! 何ッ……きゃあ!』
不意に喰らった凍てつきは余りに苛烈で、溜まらず仰け反るゆるりの胸が要の間近で、たゆん。とても目の毒だ!
「さて、これも仕事なので悪く思わないでくださいね?」
恋人思えばまったく興味がわかぬ女体をさしたのは、初撃を叩きつけたメルキューレだ。
『くッ……患者さんの前ですよぉ?!』
患者に向いた気遣わしげな瞳は突破口を求めるように玄関へ。すると雀の巣頭の男と視線が絡む。
「逃がす気は、サラサラないしさ」
先程と同じくつま弾いた糸で凍てつき広げ走り込む止水。淫魔を挟み線引くようにひらり、古風な軍服が宙を切った。
「難儀なものよな。やりたい事を通す事が自身の首を絞める事になる」
鍵爪のように曲げた腕で首を捉え、伏姫は正面を向いたまま唇だけ動かす。
「時に柵に囚われる不自由な我らには無い奔放さは、ある種眩しく思うな」
その先にあるのが破滅だとしても――。
『ううー、難しいコト言ってぇ』
捕まり立ったベッドに横たわる煉火がぎゅうとその手を握る。
「まさか見捨てると言うのかい!」
「ああ……く、苦しいです。なんだか疵が開いたようで……」
優太朗、迫真の演技で震える腕で反対の肩をつかんだ。
「ううぅ」
(「……お、俺は未熟だ」)
突っ伏した要は先程の感触やら声やら思い出して唸り声をあげる。それが疵の痛みからととったか、ゆるりは頬を押さえおろおろ。
『安心してくださいねぇ、ゆるりは職場放棄なんてしませぇん。みなさんを守り抜いてみせ、ます!』
ずびしっ!
注射構え戦いの覚悟を決めたゆるりはメルキューレへと突撃していく。
――しかし。
統制の取れた灼滅者達に引き替え、患者を庇いかつその患者達に思う様足をひっぱられるゆるりに勝ち目なんぞあるわけない。
「あのね」
陽桜は素朴な疑問を唇にのせる。
「あなたがそうして敵味方関係なく癒すのはどうして?」
答えを待つように止水は握り込んだ拳を一端解いた。
……患者も灼滅に力振るうモノも、全てが耳を澄ましナースの言葉を待つ。それはこれから命を潰えさせようとする者の前にできた奇妙な沈黙。
「義務だから?」
『痛いのが無くなったら、みんなすっごい喜んでくれるでしょぉ?』
その笑顔が大好きなんですよ、あたし。
ゆるり以外の淫魔がどうかは知りませんけどぉ、あたしはそうです。
――自分の終焉を悟った女は、痛みだらけのくせにやけに人懐っこい笑みを浮かべそう答えると、黄泉路へと旅立つ。その疵を治す者はどこにも、いない。
作者:一縷野望 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年10月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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