逃走劇の結末を選び取れ

    作者:東条工事

     人気のない山奥を、一人のアンブレイカブルが疾走していた。
     以前、灼滅者達の活躍によりソウルボード内に植え付けられた羽虫型ベヘリタスから助けられた者達の一人だ。
     名をアギトと言った。
     アギトは疾走しながら背後から追い縋る気配を探る。
     それは羽虫型ベヘリタス。しかし以前、灼滅者達が滅ぼしたモノとは比べ物にならない気配を放っている。3m近い巨体でありながら速く、そして力強い。
    「ギイィィッ!」
     羽虫型ベヘリタスは耳障りな鳴き声を上げ黒弾を生み出すとアギトに向かって放つ。
     背後から襲い掛かるそれを、アギトは見る事すらなくかわす。山に生える木に向かって跳び、避けると同時に周囲の木々を足場にして跳び回り、羽虫型ベヘリタスへと突進する。
     そこへ刃物のように鋭く硬質化させた羽を伸ばす羽虫型ベヘリタス。しかしそれすら足場にして間合いを詰めると、羽虫型ベヘリタスの顔目掛け、右膝と拳を叩き付ける。
     タイ古式武術ムエボーランの技の一つ、ハヌマーンヤーンランカーにサイキックを込めたアギトの業。
     それは羽虫型ベヘリタスの顔面にひびを入れる。しかしそこまで。万全ならともかく、かつてソウルボードに巣食われ衰弱した体が回復していない今では、倒し切る事は叶わない。
    「ギガアアッ!」
     怒りの声と共に羽虫型ベヘリタスが死角から生みだした黒弾をアギトはまともに食らう。
     黒弾の勢いに地面に叩き付けられ、あげく体の自由を奪われるアギト。
    「おのれ……借りすら返せぬ無様なまま、こんな所で――」
     怒りで自身を奮い立たせようとするも願い叶わず、羽虫型ベヘリタスが伸ばした影に絡め取られ、そのままいずこかへと連れて行かれるのであった。

    「アンブレイカブルにベヘリタスの卵が植え付けられて羽化する事件が発生していましたが、四津辺・捨六(伏魔・d05578)さん達の追跡により、逃走したアンブレイカブルの状況を知ることができました」
     硬い口調で、東雲・彩華(高校生エクスブレイン・dn0235)は集まってくれた灼滅者達に状況を説明する。
    「今のところ、逃走したアンブレイカブルは日本海の北側に向けて山中を移動しているようです。そしてこのアンブレイカブルを、3m程度まで成長した羽虫型のベヘリタスが襲撃することを予測できました。
     このまま放置すればアンブレイカブルは倒され、羽虫型のベヘリタスに連れさられてしまいます。おそらく、再びベヘリタスの卵の苗床にしようというのでしょう。
     ダークネス同士の争いなので一般人への被害はありませんが、ベヘリタスの動きを放置する事はできません。また、アンブレイカブルが軍艦島のダークネスに合流するというのならば、こちらも灼滅した方が良いかもしれません。
     今回、アンブレイカブルと羽虫型ベヘリタスが接触する場所に先回りする事ができますので、この事件の解決をお願いします」
     そこまで言うと、羽虫型ベヘリタスの戦力に関して説明する。
    「形は羽虫型ベヘリタスですが、大きさが3m弱まで成長しており、戦闘力もかなり強力になっています。出現数は1体のみで、配下も連れていません。シャドウハンターと、影業の斬影刃と影縛り、そして契約の指輪の制約の弾丸に相当するサイキックを使用してきます。戦闘の際は、ディフェンダーのポジションに就くようです」
     一息つくような間を開けて、アンブレイカブルについて説明する。
    「アギトという名のアンブレイカブルは、タイ古式武術であるムエボーランにサイキックを込めた独自の業を使うようですが、かなり弱体化しており、戦闘力はあまりありません。羽虫型ベヘリタスと戦った後の連戦で無ければ、それほど灼滅するのに苦労はしないでしょう。具体的なサイキックやポジションは不明です」
     ここまで言うと、資料を渡し当日に取れる対応に関して具体的に説明する。
    「今回は、羽虫型ベヘリタスとアンブレイカブルが戦う30分前である、午前10時には現場で待ち受けることが出来ます。最初にアンブレイカブルが訪れ、少しして羽虫型ベヘリタスが現れます。
     この際、バリケードや罠などを設置したり、或いは派手な音を立てるなど相手に見つかるような行動を取っていますと、羽虫型ベヘリタスとアンブレイカブルはそれに気付き他の場所で戦闘を始めてしまいます。
     今回予測した場所は迎え撃つのに邪魔になる障害も無いですし、一般人の方が訪れたり音で気付かれたりする事もありません。ですので、この場所で戦う為にも、羽虫型ベヘリタスとアンブレイカブルが来るまで現場で待機して頂く必要があります」
     皆が資料を確認し内容を理解してくれるのを待って、更に詳しく対応法に関して説明する。
    「今回は大きく分けて4つの対応法があります。
     一つ目は、羽虫型ベヘリタスが来る前にアンブレイカブルのみを灼滅するやり方。
     2つ目は、羽虫型ベヘリタスがアンブレイカブルと戦闘を開始してから羽虫型ベヘリタスのみを灼滅するやり方。
     この際は、アンブレイカブルは弱っていますので共闘することは出来ませんし、皆さんが戦っている間にアンブレイカブルはその場を離脱しますが、その際に皆さんの行動によって何らかの対応を取るかもしれません。ただしその場合でも、情報を聞き出す事は出来ません。
     3つ目は、羽虫型ベヘリタスがアンブレイカブルを撃破した後に羽虫型ベヘリタスを灼滅するやり方です。
     この際、アンブレイカブルを灼滅せずに放置しようとしても、羽虫型ベヘリタスがアンブレイカブルを倒しに動くでしょうし、仮にアンブレイカブルが生き残っていたとしても、皆さんに好感を抱く可能性は非常に低くなりますし、場合によっては戦いを挑んできます。
     4つ目は、羽虫型ベヘリタスが現れてからアンブレイカブルを灼滅し、その後羽虫型ベヘリタスも灼滅するやり方になります」
     ここまで言うと、最後に情勢説明と激励を口にする。
    「現在、格闘家アンブレイカブル達の師であった、業大老を軍艦島のダークネス達がサルベージしようとしているという情報もあり、今回の騒動はそれに何か関係があるかもしれません。ひょっとすると、今回逃走しているアンブレイカブルはそこに合流しようとしている可能性もあります。今回の件は巧く行けば、業大老や軍艦島のダークネス達に影響を与えられるかもしれません。
     とはいえ、皆さんの身の安全が第一ですので、どうかご無理だけはなさらないで下さい。皆さんが無傷で戻られる事を願っております」


    参加者
    アルファリア・ラングリス(蒼光の槍・d02715)
    城橋・予記(お茶と神社愛好中学生・d05478)
    戒道・蔵乃祐(グリーディロアー・d06549)
    影龍・死愚魔(ツギハギマインド・d25262)
    百合ヶ丘・リィザ(水面の月に手を伸ばし・d27789)
    シフォン・アッシュ(影踏み兎・d29278)
    御伽・百々(人造百鬼夜行・d33264)
    リサ・ヴァニタス(アンバランスライブラ・d33782)

    ■リプレイ

     羽虫型ベヘリタスが生みだした黒弾をまともに食らい、アンブレイカブル・アギトは地面に叩き付けられ、あげく体の自由を奪われる。
    「おのれ……借りすら返せぬ無様なまま、こんな所で――」
     怒りで自身を奮い立たせようとするも願い叶わず捕えられ連れ去られる。その寸前、灼滅者達は介入した。
     鋭き銀爪が走り羽虫型ベヘリタスの腹を切り裂く。
     響き渡る羽虫型ベヘリタスの絶叫。
    「腹に幼虫でも身籠っているかと思いましたが、違いましたか」
     戒道・蔵乃祐(グリーディロアー・d06549)は幻狼銀爪撃で切り裂いた傷口を見ながら分析するように呟く。
    「灼滅者か」
     思わず声を上げたアギトに、
    「お久しぶり。また会ったね」 
    「戦われていますのね、アギト様」
    「あらあら、この間振りですねぇ、お元気でしたかぁ? うふふ」
     以前の依頼でアギトと関わった影龍・死愚魔(ツギハギマインド・d25262)と百合ヶ丘・リィザ(水面の月に手を伸ばし・d27789)、そしてリサ・ヴァニタス(アンバランスライブラ・d33782)は声を掛ける。
    「あの時の灼滅者達か……二度になるか、助けられるのは」
     表情を強張らせアギトは呟くとシャウトを使う。動けるようになったアギトに、
    「折角、百合ヶ丘達が助けたのだ。ここで滅びるのも勿体ないだろう。逃げるが良い」
    「そうそう、百々ちゃんの言う通りだって。逃げちゃえ逃げちゃえ」
     リィザと同じクラブの御伽・百々(人造百鬼夜行・d33264)は古風めいた口調で、そしてシフォン・アッシュ(影踏み兎・d29278)は百々の言葉に賛同するように告げる。
    「逃げろ、か……ここで俺ごと奴を滅ぼした方が貴様らにとっては益があるのではないか?」
     アギトは灼滅者達と、灼滅者達が突如現れた事で混乱し次の行動がとれないでいる羽虫型ベヘリタスの気配を油断なく探りながら返す。それに、
    「誤解されないよう言っておきますが、僕等は今、主に対ベヘリタスの方針で動いているんですよ。奴等一般人にも幼虫を産み付けるので、それでどうなるかは分かりますよね?」
     蔵乃祐は羽虫型ベヘリタスが動き出さないよう牽制しながら言葉だけで返す。更に、
    「そうだよ、それだけなんだよ! た、ただ羽虫が嫌いなだけだからねっ!」
     城橋・予記(お茶と神社愛好中学生・d05478)は、周囲の状況を油断なく探りアギトの動きにも注意しながらも、世話好きで真面目な彼はツンデレ気味に返した。
     これにアギトの気配が静かな物になり、
    「そちらに思惑があるのは当然。我らとてそうする。それでも、一度ならず二度助けられたのは事実。礼を言う」
     これに予記は、
    「お礼は、別にしなくても良いけど……ご縁、大切に出来ると嬉しいや」
     照れつつも嬉しそうに笑顔で返す。それにアギトは苦笑するように気配を和らげ、灼滅者の気配を探るのを止める。そこへ、
    「貴殿方とは、武神大戦での遺恨があります。貴方が軍艦島に合流するつもりなら、何れは戦うことになるでしょう。もし貴殿方が仲間を散々灼滅した仇である僕等と、共通の敵を倒すために私情を捨てて、立場を越えた共闘を行うのでもなければ。それはそれでヒロイックで燃えますけどね」
     蔵乃祐は探るように告げる。それにアギトは、僅かに迷うような間を開けると、
    「恐ろしいな、お前達は。それほどの情報を知るか。その恐ろしいお前達と共闘すれば……いや、ここで言っても意味がない。もし意味がある時に告げられれば告げると約束しよう。それが形になるとまでは約束できぬが」
     アギトなりの最大限の譲歩を口にし、逃走体勢に移る。その前にアルファリア・ラングリス(蒼光の槍・d02715)は静かに立つと、
    「襲われている者を見捨てるというのも寝覚めが悪いですから、この場は私達が引き受けます。もっとも、人間に害なす者ならば別ですが」
     丁寧で柔らかな物腰で告げる。それにアギトは、
    「お前達の言う人間がどういった者達を指しているかは知らんが、弱者と戦った所で強さの糧にはならん。意味が無い」
     淡々と告げる。それにアルファリアは見極めるような間を開けるとアギトの背を守るように動き、
    「この場は武蔵坂学園が請け負いました。あなたは早々に離脱してください」
     羽虫型ベヘリタスに意識を集中する。
    「すまぬ」
     信頼するかのように振り返ることなく去ろうとするアギトに、
    「先日の非礼をお詫びします」
     リィザは戦う者としての言葉を贈る。
    「貴方の牙は確かにあった。そして――虫が目障りです。邪魔の入らない戦場で、遊びましょう?」
     これにアギトは笑みを浮かべると、
    「好き言葉だ、戦う牙知る者よ。お前のその言葉こそが、俺を生き延びさせた。あの時、礼も無く去った非礼を詫びよう」
     無防備に頭を下げる。そして、
    「灼滅者達よ、お前達の武運を祈る」
     一言告げ、一気にその場を走り去って行った。
    「さて、それじゃ害虫退治を始めようか」
     死愚魔はアギトが無事に去ったのを確認し、相棒たるウイングキャット・マオゥと共に戦闘態勢へ移行する。
    「良いですねぇ。おあずけされて焦らされた分、一杯、愉しみますよぅ」
     リサは人造灼滅者として、水晶で出来た全身甲冑の騎士姿へと変わる。そして、
    「害虫は、ここで断ち切ってくれよう」
     百々は人造灼滅者として怨霊纏う、怨霊武者の姿へと変わる。そんな彼女に賛同するように、
    「うんうん、やっちゃおう! これ、前逃しちゃったヤツかもしれないしね。挽回させてもらうよ」
     シフォンはやる気を見せる。そして、
    「みんなと一緒なら、逃がす事なんかないよ。みんなでやっつけよう」
     予記は相棒のナノナノ・有嬉と共に羽虫型ベヘリタスを逃がさぬよう配置に就き、皆に声を掛ける。それに皆は返すと、戦いは始まった。

    ●怪虫を撃ち滅ぼせ
     戦いは灼滅者有利の中、攻撃は絶え間なく重ねられた。

    「興味深いですが、じっくり調べる余裕は無さそうですね」
     探究者としての側面も持つ蔵乃祐は、敵に興味を持ちつつも戦いに集中する。
     チェーンソー剣・バズソー・ミートチョッパーを手に踏み込む。敵の迎撃をかわし懐へと踏み込むと、叩き潰すような勢いでズタズタラッシュを叩き込む。
     痛みに鳴き声を上げる敵。そこへ間髪入れず追撃が入る。
     初手で敵のBS対策にイエローサインを前衛に掛けた予記は敵へと踏み込む。
     それに敵は黒弾を生み出し防ごうとするも、有嬉がしゃぼん玉で迎撃。それに予記は褒めるような笑顔を有嬉に一瞬向け、
    「……ボクも負けてられないや!」
     敵へ真っ直ぐな眼差しを向け、自らの影を走らせる。それは敵の真下に到達すると同時に無数の影刃を生み出し、貫くように切り裂く。
     痛みに絶叫するように鳴き声を上げる敵。そこに連携攻撃が叩き込まれる。
    「随分と成長した虫だね……。まぁこれ以上、成長させるつもりは無いけど」
     死愚魔は連携の先陣を切るように踏み込む。敵の迎撃を掻い潜り距離を詰めると、マオゥが猫魔法を放った瞬間を逃さずシールドバッシュを叩き込み、自身に注意を向かせる。
     怒りの眼差しを向ける敵。そこへリィザとシフォンの連携が入る。
    「先手は頂いても構いませんか?」
    「良いよ。そっちの方が美味しい所持って行けそうだし」
    「あら、そんなこと言っていると、私が全部美味しい所は頂いちゃいますよ」
     親しい仲の二人はクスリと笑みを浮かべると一斉に動く。
     先行して踏み込むのはリィザ。死愚魔に気を取られる敵にスターゲイザーを叩き込む。
     蹴り飛ばされ木に叩き付けられる敵。動こうとするも、リィザのライドキャリバー・ブラスが機銃掃射。動きが止まった所にシフォンは、マテリアルロッドをデモノイド寄生体に取り込み、刃に見立てDMWセイバーで切り裂く。
    「ギイィッ!」
     怒りに敵も影を伸ばすも、シフォンは縦横無尽に動きかわす。
    「影踏み兎は止められないよっ」
     楽しげに避けながら注意を引き、仲間の攻撃の助けとする。
    「いざ、参る」
     百々は敵がシフォンに気を取られる隙を逃さず一気に踏み込むと、殲術執刀法で敵の弱所を切り裂く。それに動きが止まった敵に、アルファリアは妖の槍を手に踏み込む。
    「淫魔も狙われているようですし、これ以上好きにはさせませんよ」
     敵は黒弾を放ち応酬しようとするも、アルファリアは流れるような動きで回避。目前に迫ると、螺穿槍で貫き抉る。
    「グギィッ!」
     怒りに任せ出鱈目に硬質化させた羽を振るう敵にアルファリアは即座に退避。そこへ入れ替わるように踏み込むのはリサ。
    「あはっ、丸々と成長しちゃって……すごく愉しそうですよぉ? うふ、うふふふ」
     甲冑の下から笑い声を漏らし敵の迎撃を掻い潜り懐に飛び込む。同時に放たれた殲術執刀法が弱所を切り裂き動きを麻痺させる。
    「愉しいですかぁ? ふふ、私は愉しいですよぅ、とってもぉ」
     撫でるように敵に手を這わせ、リサは戦いの興奮に歓喜した。

     こうして灼滅者有利で戦いは進む。アギトが交戦した後の介入を選んだ事もあり、敵はその分ダメージを受けていたが、それ以上に灼滅者達の連携や攻撃が有利さをもたらしていた。
     それを維持したまま、灼滅者達は一気に攻撃を叩き込む。

    「逃がしませんよ」
     逃げ出そうとするかのような動きを見せた敵に、アルファリアは立ち塞がる。
    「ダークネスさえも苗床として増殖し成長する。そんな危険な物、見逃せません」
     エアシューズを起動し、敵の進路を塞ぐように高速移動。迎撃に放たれた黒弾を速度でかわし、炎纏う蹴りを叩き込む。
     灼滅者達に囲まれるような位置に蹴り飛ばされる敵。そこへリサは赤くスタイルチェンジさせた交通標識を手に踏み込む。
     それを敵は、影の刃を放ち迎撃しようとするも、リサの速さに追い付けない。
    「ふふ、一生懸命ですねぇ、嬉しい。私も頑張りますねぇ」
     全ての影の刃を置き去りにしてリサは一気に踏み込む。それに敵は逃げるように背を向け、飛び立とうと羽ばたかせる。だが遅い。
    「堕ちちゃってくださぁい……あはっ」
     交通標識を一閃。羽を切り裂いた。
    「ギ、ギイィ」
     弱弱しく声を上げる敵に、止めを刺すべく連続攻撃が叩き込まれる。
    「調べる事も出来ないですし、さっさと倒してしまいましょう」
     蔵乃祐は咎人の大鎌・殺戮処刑人鏖殺血祭を手に踏み込む。瞬時に間合いを詰めると、殺意を塗り固めたかのように剣呑な輝きを放つ刃で切り裂いた。
     そこへ、後続の仲間に繋げるように攻撃を放ったのは予記。
     先行して有嬉が放ったたつまきに合わせるように影喰らいを放つ。
     影に飲まれ苦しげに悶える敵。その機を逃さないよう、
    「今だよ! 止めをお願い!」
     仲間へと呼び掛ける。それに応えるように、連携攻撃が一気に叩き込まれた。
    「止めは任せるよ」
     クラブの仲間に花を持たせるように、死愚魔がまずは動く。
     予記の攻撃で悶える敵に、更に重ねるように影喰らいを放つ。
     敵を包む影が更に濃くなり、そこにマオゥは肉球パンチを叩き込み、更に麻痺させる。
     そこへリィザとシフォン、そして百々が一気に動く。
    「止めはお願いしますね、百々」
    「百々ちゃん、止め、お願いするね」
     リィザとシフォン、二人の言葉を受け止めながら、
    「引き受けた。必ず止めは刺そう」
     百々は期待に応えるように精一杯力強く返す。そんな百々の頑張ろうとする姿に、微笑ましさや可愛らしさを覚えながら、リィザとシフォンは左右挟撃の形で踏み込む。
     タイミングを合わせ、左右同時に。
     リィザは、キャリバー突撃を行うブラスと共に、月と太陽が合わさり太極の模様となったWOKシールド・月下烈日を起動させシールドバッシュを、そしてシフォンはフォースブレイクを叩き込む。
     その攻撃に数えきれない傷が敵に刻まれる。
     そこへ百々は真正面から踏み込み、一刀両断するように赤くスタイルチェンジさせた交通標識を振り降ろす。
     鋭い一撃は敵を真っ二つに切り裂き、崩れるようにして消滅させた。

    ●戦い終わり
    「あのアンブレイカブルは無事着いたかな」
     戦い終わり、念の為に周囲を調べ終えた死愚魔は静かな声で言う。それに、
    「きっと大丈夫ですわ。逃げ切って万全になるでしょう。その時に戦える機会があれば、楽しみですわね」
     リィザは楽しげに返す。それに同意するように、
    「そうだな。皆の頑張りが無駄にならないで欲しいものだ」
     百々は返す。それに、
    「うんうん、百々ちゃんも頑張ったもんね」
     シフォンは楽しそうに返した。
     そうして逃走したアンブレイカブルを気に掛ける者も居れば、増殖する羽虫型ベヘリタスを気に掛ける者も。
    「アンブレイカブルだけでなく淫魔も襲われているようですし、最終的な目的が何なのかは分かりませんが、これ以上好きにさせる訳には行きませんね」
    「目的、ですか。現在の一連の行動は、どうにも目的と手段が入れ替わっているように感じますね。ザ・クラブは現実世界を望み自身を生み落しているのではなく、自身を産み落とす為に現実世界を必要としているようにさえ見えます。つまりは、ただの餌場として」
     アルファリアの懸念に返す蔵乃祐の言葉に、皆は脅威を感じる。だが、
    「大丈夫だよ。みんなが協力すれば、きっと何があっても乗り越えられるよ」
     皆を励ますような予記の言葉に、皆も賛同するように言葉を返していく。そして、
    「ふふ、その時が愉しみですねぇ。一杯、遊べそうですぅ」
     リサが口にしたように、いずれ激突するかもしれない敵に闘志を燃やした。
     未だ敵の全容は見えて来なかったが、それに打ち勝つ意志を持ち、その場を後にする灼滅者達であった。

    作者:東条工事 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年10月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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