忘却の淫魔

    作者:緋月シン


    「ふぅ……今日のところはこんなものかしらね」
     満足気な息を吐き出すと、少女は適当なところへと腰をかけた。
     周囲に広がっているのは、廃墟と化した室内である。だがそれを気にしている様子がないのは、本当にどうでもいいからだ。
     淫魔である少女にとって、そこが何処であるのかなどはどうでもいいのである。重要なのは、ここでならば好きなだけレッスンが出来るという、それだけなのだ。
     しかしそんな風に完全に気を抜いていたからだろう。
     少女は、背後の窓からそれがやってきているのに、まるで気付いていなかった。
    「……えっ?」
     そして気付いた時には、既に遅かった。
     衝撃を覚えた直後、その身体が地面に叩きつけられる。さらにはそれだけでは威力が殺しきれず、周囲の瓦礫と同じようにその場へと転がった。
    「……っ、一体、何、が……?」
     痛みで意識が途切れそうになるが、必死に繋ぎとめながら顔を上げれば、視界に映ったのは一匹の虫。
     ベヘリタスだ。
     何故、何のために、という思考が一瞬頭を過ぎるが、すぐにどうでもいいことに気付く。
     重要なのは、襲われているということと、どう考えても自分だけではどうしようもないということだ。
     故に少女は咄嗟に、助けを求めるべく口を開き――。
    「……え? あれ? 助けを求めるって……誰、に?」
     確かに自分は、強力な存在の庇護を受けていたはずなのだ。
     だが何故か、その名前を、存在を思い出すことが出来なかった。
     混乱している少女は、続くベヘリタスの攻撃をさけることも、受身を取ることすらも出来ずに、今度こそその意識を失う。
     そしてベヘリタスにその身体を掴まれると、そのまま何処かへと連れ去られてしまうのであった。


    「さて、また随分と厄介なことをしてくれたものね……」
     四条・鏡華(中学生エクスブレイン・dn0110)はそう言って呟くと、一つ溜息を吐き出す。
     だがすぐに気を取り直すと、事件の概要を説明し始めた。
    「まず、『宇宙服の少年』が都内で路上ハグ会を開いていたラブリンスターを襲撃、その絆を奪って連れ去ってしまった、ということがあったらしいわ」
     星野・えりな(スターライトエンジェル・d02158)達がいち早く気づき、ラブリンスターの行方を追ったのだが、羽虫型ベヘリタスに邪魔されて追う事はできなかったようだ。
     更には、絆を奪われて混乱するラブリンスター配下の淫魔達を羽虫型ベヘリタスが襲撃、連れ去ろうとし始めている。
    「今回の依頼は、それの阻止が目的、ということね」
     ダークネス同士の争いなので一般人の被害などは無いものの、ベヘリタスの動きを放置する事はできない。
    「ラブリンスターの行方も気にはなるけれど、とりあえずはベヘリタスの攻撃を迎え撃つことが必要よ」
     現れるベヘリタスは一体のみだが、大きさが3m弱まで成長しており、戦闘力もかなり強力となっている。一体のみとはいえ、決して油断していい相手ではないだろう。
     対する淫魔の方は戦闘力は高くなく、自分でもそれを理解している。戦闘が始まれば、あとは任せて逃げ出してしまうだろう。
    「ただ、一応一緒に戦ってくれる可能性はあるわ。弱いとはいってもダークネスではあるのだから、戦闘はかなり楽になるでしょうね」
     勿論そのためには上手く説得をする必要があるが……結局のところ、戦闘が楽になるかどうかの違いでしかない。
    「まあどうするにしても、好きにして構わないと思うわ。あなた達次第、ということね」
     そこまで言ったところで、話すべきことを終えた鏡華は資料を畳んだ。
     そしてふと思い出したかのように――。
    「それにしても、まさかラブリンスターを拉致するなんて……タカトは一体どれだけの力を持っているのかしらね……」
     そんな懸念を口にしつつ、灼滅者達を見送ったのであった。


    参加者
    長久手・蛇目(憧憬エクストラス・d00465)
    忍長・玉緒(しのぶる衝動・d02774)
    三条院・榛(猿猴捉月・d14583)
    茂多・静穂(千荊万棘・d17863)
    リアナ・ディミニ(不変のオラトリオ・d18549)
    玄獅子・スバル(高校生魔法使い・d22932)
    セレス・ホークウィンド(白楽天・d25000)
    十文字・瑞樹(ブローディアの花言葉のように・d25221)

    ■リプレイ


    「……え?」
     呆然とした声と轟音は、ほぼ同じタイミングでその場に響き渡った。
     発生した場所もほぼ同じであり、だが眼前のそれは直後に吹き飛ばされる。吹き飛ばしたそれの名は、決闘円盾――モノマキア・キルクルス。
     淫魔の少女を守るように一歩前に出たのは、茂多・静穂(千荊万棘・d17863)だ。
    「今度は淫魔にまで手を出し始めたか、ベヘリタス。生憎何度か彼女たちが勧誘失敗しかけた所を護った事もあるからな、今回も同じく、守らせて貰う」
     続き、セレス・ホークウィンド(白楽天・d25000)がその場に現れ、少女との間に割って入る。
    「……間に合ったか。吸血鬼の時は世話ンなったな」
    「ああ。間に合って何よりだ」
     玄獅子・スバル(高校生魔法使い・d22932)と十文字・瑞樹(ブローディアの花言葉のように・d25221)も乱入し、少女を護る様に構え――。
    「私達武蔵坂学園の人間なのだけれど……武蔵坂学園のことは知っているかしら?」
    「え……? そ、それは勿論知ってるけど?」
     突然のことに目を白黒させていた少女であったが、忍長・玉緒(しのぶる衝動・d02774)の言葉で我に返ると、首を傾げながらも頷いた。
     それに対し目配せをし合ったのは、最悪武蔵坂のことも曖昧になっていた可能性もあったからだ。
     しかし少女の様子を見る限り、その心配はなさそうである。
     だが、今回の目的は少女を助けることだけではないのだ。
    「ふむ、ならば私達が君を助けに来たのだというのは理解してくれると思うが……ところで、何か大事な事を忘れている気がしないか?」
    「大事なことを……?」
    「そうだな、例えば……君達を保護していた淫魔がいたと思うが、その名前を思い出せるかい?」
    「名前? そりゃもちろ……ん……あ、れ?」
     瑞樹の言葉に、当然だと頷いていた少女であったが、その表情に瞬く間に困惑が広がっていく。
    「思い出せないのは奴らベヘリタスに絆を奪われたからだ」
    「ああ、俺達も今調べてるトコだが、それはどうもあの虫公絡みの様だぜ」
     瑞樹に続き、スバルも言葉を口にすると、少女はさらに混乱を増した。
     だが生憎と、それが収まるのを待っている暇はない。
    「忘れてしまっているようですが、あなた達には、ラブリンスターというボスが居ます。ですがそのラブリンスターは何者かによって襲われてしまいました」
    「ラブリン、スター……?」
     しかし、リアナ・ディミニ(不変のオラトリオ・d18549)がその名を告げてみるも、少女の反応は芳しくなかった。
     が、それ以上のことを試している余裕は、やはりない。
    「まあそれで、そのせいなのかは分からないんやけど、最近淫魔があれに襲われてるんや」
    「はい。その何者かによって、貴方と同じように襲われる淫魔が大勢いるようです」
     三条院・榛(猿猴捉月・d14583)の言葉を補足するように、リアナが頷く。
     そして本題は、ここからだ。
    「まあ詳しい話はあれ倒してからってことで、手伝ってくれへん?」
    「手伝う……?」
    「はい。逃げてもベヘリタスが追ってきます。ですから、ここで倒しておきませんか? 確実に」
    「こいつらは酷くしつこい、倒さないとどこまでも追いかけてくる可能性が高い……私達だけでもいけるかもしれないが、共闘してくれたらさらに確実に倒せるはずだ」
    「アレにはストーカーの気があるみてぇでな。目ぇ付けたらどこまでも追っかけ回すんだと。闇雲に逃げ回るより、ここで沈めりゃ幾らか安全だ。アンタが協力してくれりゃもっと早く終わる。どうするよ?」
     次々と向けられる言葉に少女がそっと視線を外したが、それは拒絶というよりは迷っている風でもあった。
     その様子に、リアナは諌めるか迷いながらも、そっと息を吐き出す。
     正直に言ってしまえば、リアナはあの宇宙服野郎とべヘリタスが気に喰わないだけであって、特にラブリンスター達に思い入れがあるわけでもないのだ。
     だが勿論それはリアナ個人としての考えであり、中には当然好意的な者も居る。
    「その代わり、ってわけじゃないっすけど、敵を倒し終わったらあなたを庇護していた存在について教える、ってのはどうっすか?」
     長久手・蛇目(憧憬エクストラス・d00465)もその一人だ。
     そんな提案をし、力を貸して欲しい、などと言ってはいるものの、結局やることに大差はないだろう。
    「前にも今回と同じように他の淫魔の人が襲われているのを助太刀したり、ラブリンスターさんのライブに乱入した不届き者を倒したりしたことがあるんすけど、なんか聞いたことないっすか? まあそんな感じなんで、多分そこそこ話せることもあると思うっす」
     さらなる言葉を交えつつ……しかし、友好的な者が居れば、逆の立場の者が居るのも、やはり当たり前のことだ。
    「ベヘリタスに狙われた者の末路を知っているけれど、碌なものじゃなかったわよ?」
     もっとも、玉緒は何も意地悪でそれを言っているわけではない。純粋に、それはただの忠告である。
     確かにダークネスは嫌いだ。拳を握り今も襲ってくる殺人衝動を殺しつつ、改めてただ欲望に従うだけのダークネスは嫌いだと、そう思う。
     だがそれは、ベヘリタスを増やしてしまうことよりも優先されることではないのだ。
     それに。
    (「……三竜包囲陣の借りもあるしね」)
     心の中で呟きつつ、自身の感情を抑える。
    「かといって逃げようとしてもどうなるかは、既に聞かされたでしょう? そしてこの場だけは何とか出来ても、次がないとも限らない。でも、これを倒すことが出来れば、侮りがたいという印象を与え、貴女が安心して好きなだけレッスン出来る環境を勝ち取れるもしれないわよ?」
     さあ、どうする? と、視線で問いかけ――。
    「ま、ついでに手伝ってもらえたら助かるけど、僕としては、ダークネスとは言え女の子が襲われてたから助けに来ただけやから、どっちでも構へんねんけどね」
     しかしそこで、逃げ道を用意するかのように榛が告げた。
    「実際前にも同じように三人ほど助けてるしのぅ」
     榛のある意味で凄いところは、それが本心だということだろう。しかもその三人というのは、あくまでもアイドル淫魔に限った場合の話である。
     同様の理由で助けたというだけならば六人になるのだから、筋金入りだと言えた。
    「……まぁ、吸血鬼ン時の借りもある。さらっと見捨てんのもぶっちゃけ気分ワリィしな。やれるこたぁ、やってやるよ」
     ついで、付け足すようにスバルもそう告げる。スバルとしては、ラブリンスター勢とは持ちつ持たれつの関係性だとドライに割り切っているつもりなのだが、以前に学園側の危機に助力してくれた借りも無碍にはしたくないというのが本音でもあるのだ。
     もっとも結局のところ、少女次第ではあるが――。
    「まあどうするかはキミに任せるが……出来れば、目の前のベヘリタスを倒す為に、今回だけでも良いので協力してはくれないだろうか?」
     そんな、ベヘリタスの牽制を続けながらの瑞樹の言葉も受け……少女はその場を見渡すと、息を一つ吐き出した。
    「……分かったわ。そこまで言われておいて、はいさようならってのも気が引けるもの」
     頷きに、皆もそっと息を吐き出す。何だかんだで、助けてくれるというのならば、それに越したことはないのである。
     ともあれ、あとはベヘリタスを倒すのみだ。牽制をしていた者達も一旦引き、改めて構える。
     そうして玉緒の手に握られるのは、一本の鍵。両親から貰ったそれを介し祈り、目を開ければ、その目には殺意が宿っていた。
     それとほぼ同時。
    「我は盾、皆を護る大盾成!」
     開放の言葉を耳にしながら、地を蹴る。
     激突した。


    (「アンブレイカブルだけじゃなく淫魔まで、か」)
     眼前のそれと、後方をちらりと眺めながら、セレスは自らの心の中に言葉を落とした。ベヘリタスはどこまで勢力を広げれば気が済むのだろうかと、そう思い――。
    (「……私が知らないだけで羅刹やヴァンパイア、ご当地怪人とかも狙われているのか……? なんとかして本体を叩き潰さないとならないが……」)
     だが今はまず、目の前のそれを仕留める必要があると、バベルの鎖を瞳に集中させながら、一歩を前に踏み込んだ。
     鳥人と化した姿が地を滑り、その手に握るのは一本の槍――ツグルンデ。突き出されたそれが、捻りと共に敵の身体を抉り、穿ち、ほぼ同時に前に出たのは瑞樹。
     白の斬撃が触手ごとその身を斬り裂き、続きその場に静穂が飛び込む。
    「ダークネス同士の絆すら餌とは節操の無い事ですね」
     呟きながら半獣化させた腕を振るい、銀爪で引き裂いた。
     瞬間、スバルから放たれた氷塊がぶち当たり、直後に死角に回り込んでいた玉緒がその身体を斬り裂く。
     痛みに悶えるベヘリタスを正面に捉えながら、静穂の頭に浮かんだのは、一体何が目的なのか、ということであった。
     とはいえ考えたところで分かるわけでもなく――。
    「これ以上の増殖は食い止めたいですし、淫魔の受ける未来の痛み、ここで全て引き受けるとしましょう!」
     そんなことを言いながら、向けられた触手を文字通りその身で受け止める。
     それは役割的には正しいのだが、その本当の意味は浮かんでいる笑みが示す通りであり――。
    「さあ、初の実戦投入ですよ! その大きな羽根をちょん切ってあげますから、仕返しはどうぞ私に! 是非私に!」
     何を言ってるんだお前はといった感じではあるが、静穂は至って真面目であった。ただちょっとばかりオープンなドMなだけなのだ。
     拘束服を纏い、自身の上半身をダイダロスベルトで腕ごと縛り、締め付ける感覚を味わいながら戦ってはいるが、それだけなのである。
     向けられた触手を変わらず嬉々として受けつつ、ベルトの先端に取り付けられている鋏で斬り、刻んでいく。
    「……あれは大丈夫なの? その……色々な意味で」
    「ん? ああ、いつものことやさかい問題あらへんよ」
     それは別な意味で駄目な気がしたが、気にしない方がいいと判断した少女は流すことにした。
     それよりも。
    「ところで、私はこんな後ろの方に居ていいのかしら?」
    「僕達の方が助けに来た側やしね。ま、襲われた腹いせに前で思いっきりぶん殴りに行ってもええけど」
    「……そ。まあ戦闘は得意じゃないし、甘えさせてもらうけど……折角だから、一発ぐらいは殴っておこうかしら」
     瞬間少女の姿が掻き消え、次の瞬間には轟音が響いた。
     音のした方へと視線を向けてみれば、そこにあったのは足を蹴り上げた体勢の少女と、宙に浮いたベヘリタス。
     榛は小さく口笛を吹くと、その顔に苦笑を浮かべた。
     少女が戦闘を得意でないというのは、実際のところ本当なのだろう。何せ彼女は灼滅者三人程度の力しかないのである。
     だがそれは逆に言えば、灼滅者三人分の力もあるということなのだ。
     とはいえ苦手だという少女にやらしておいて、自分がそれを眺めているだけというわけにもいかないだろう。その手にあるそれ――玄武金剛腕へと力を込め、後を追うように地を蹴った。
     しかしそれは宙に浮いたまま体勢を整え――だがそこに襲い掛かるのは、暗く、紫色に映る影。リアナの足元から伸びるそれが敵を絡め取り、その瞬間に榛がその腕を振り抜いた。
     影を宿したそれで殴りつつ、眺め――。
    「この間んを残したらこうなるとは、前の全部駆除できてよかったわぁ」
     落とした呟きは、先日孵化した虫を駆除し、思うところあったが故だ。
     だがその言葉は、直後の轟音によって掻き消された。蛇目が一撃を叩き込み、同時に流し込んだ魔力が爆ぜた音である。
     ――ラブリンスターさんの配下を襲う奴は俺の敵でもあるからやっつけるっす!
     そんなことを思いながら、行灯の猫魔法に合わせ、さらにオーラを集束させた拳が叩き込まれた。
     轟音と共にその身体が地面に叩きつけられ、リアナが踏み込む。同時にその手に握られたそれ――斬穿改式で穿ち貫き、次の瞬間にその身を斬り裂いたのは、セレスの放った蒼色の斬閃。
     直後、雷を纏った瑞樹の拳が叩き込まれ、引いたと同時にスバルから撃ち込まれた魔法の矢が貫いた。
     たまらず後退しようとしたベヘリタスだが、玉緒の放った鋼糸が巻き付きそれを許さない。
     悪あがきとばかりに触手が伸びるが、それはやはり静穂が受け止め、その懐には既に榛が踏み込んでいた。
     その手に握るブレードトンファー――蛟拐を振り抜き、非物質化したそれがベヘリタスの身体にめり込む。
     そのまま、一切の外傷を与えることなく逆側へと抜け――だが、力を失ったその身体が、ゆっくりと地面に向けて倒れていく。
     地響きが立ち……それが、戦闘終了の合図となるのであった。


     鍵を握り、祈り終えた玉緒は、殺意のなくなった瞳をその場に残っている少女へと向けた。開かれた口から出るのは、提案だ。
    「さて、無事撃退出来たわけだけれど、今後も似たような状況に陥る可能性はあるわ。可能なら、自衛のためにも同じような境遇に居る淫魔同士で組んだ方がいいかもしれないわね」
    「そうですね、あとはケツァールマスク派を頼ってみるのもいいかもしれません」
     静穂が続け、そこでふと思い出したかのようにセレスが口を開く。
    「ところで、ケツァールマスクのことは知っているのか?」
    「勿論知っているけど、そう都合よく会えるかしらね?」
    「ふむ……ならロードビスマスはどうだ?」
    「そっちも同じく、ね。まあそれを言ったら、他の皆もなんだけど」
    「まー最悪僕らの所来ますかのぅ? 困ったらまた助けられますしな」
     榛の提案に、しかし少女を苦笑を浮かべると首を横に振った。さすがに天敵である灼滅者の集団へと飛び込むのは無理だということだろう。
    「まぁ、せめて連絡先だけでも受け取っておけや。何らかの役に立つかもしれないしな」
    「とにかく、どうするにせよ今後どうにかはしておいた方がいいと思います」
    「……まあ、そうね。考えてはおくわ」
     スバルからのメモを、迷いながらも受け取りながら、少女はリアナの言葉に頷く。
    「ところで、ラブリンスターのことは思い出せないのかい?」
     瑞樹はそう問いかけるも、少女は首を横に振った。
    「さっぱりね。何か思い出せそうな気はしなくもないんだけど、全然思い出せないわ」
    「ふむ……そうか。まあそれはともかくとして、勘付いてるとは思うが、ラブリンスターは先ほどのベヘリタス勢力に捕らえられているようだ。借りがあって個人的に助けたいと思っているため、何かわかったら是非連絡して欲しい。とはいえ勿論、その際も無理はしないように」
    「そうね……覚えておくわ」
     その後も情報交換等をしてみたものの、特にこれというものは互いに得られず、少女はその場を去っていく。
     だが少女を助けられたということに違いはなく、蛇目はその背を見送りながら、そっと安堵の息を吐き出したのであった。

    作者:緋月シン 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年10月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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