蠢くモノは後追いて

    作者:カンナミユ

    「はあ……はあ……」
     日も沈みはじめ、薄暗くなる森の中を青年は走る。
     時折、振り返り、追ってくる気配から逃れようとひたすら走るが、その足取りは危ういもので。
    「……せっかく……俺は……」
     振り返り、そして走り、口から出るのは吐き出すような言葉。
     せっかく救われたというのに。
     また、どうして、俺は。
     荒い息を吐きながら、青年は必死に走り――、
    「ぐあっ!」
     足元をとられ、倒れこむ。
     ぶぶぶぶぶぶぶぶ……。
     半身を起す青年の耳に入るのは不快で不気味な羽音。
     ――ギギギギギギギ……!!
    「ちくしょう! 俺は……俺は、ここでやられる訳には……!」
     ぎりっと拳を握り締め、立ち上がる青年は目前にあるシャドウへ一矢報いるべく戦うが――。
     ――ギギギ、ギ、ギ……。
     程なくしてかさかさと、不気味に動き不快な羽音を響かせる巨大化したシャドウ――羽虫型ベヘリタスは、戦いに敗れた青年を抱えて森から去っていってしまった。
      
    「曜灯さん、これは確かに彼が送ったもののようだね」
     確認を終えて資料を揃えた結城・相馬(超真面目なエクスブレイン・dn0179)は、預かっていた封筒を玉城・曜灯(紅風纏う子花・d29034)へと返す。
    「そう、間違いなかったのね」
     差出人のない、手紙すら入っていなかった封筒を受け取る曜灯を前に、相馬が手にする資料を開いた。
    「アンブレイカブルにベヘリタスの卵が植え付けられて羽化する事件が発生していたが、捨六らの追跡により、逃走したアンブレイカブルの状況を知ることができた」
     四津辺・捨六(伏魔・d05578)達が追跡し、今のところ判明しているのは、逃走したアンブレイカブルが日本海の北側に向けて山中を移動しているという事。
     曜灯が助けた青年――長谷川・信二もまた、移動している。
     信二は何か嫌な予感がしたのだろう。曜灯へと連絡をしてきたが、それは的中し、3m程度まで成長した羽虫型のベヘリタスが彼を襲撃するという。
    「このまま放置すれば、信二はKOされ、羽虫型のベヘリタスに連れ去られてしまう。恐らく、再びベヘリタスの卵の苗床にされてしまうのだろう」
     そう言う相馬の言葉にふと、曜灯は考え、
    「日本海の北側……確か、軍艦島がいたわよね」
    「ああ、確かそうだったな」
     その言葉に相馬は頷いた。
    「今回の戦いはダークネス同士の争いだから一般人への被害は無いが、ベヘリタスの動きを放置する事はできない。それに、アンブレイカブルが軍艦島のダークネスに合流するというのならば、こちらも灼滅した方が良いかもしれないと俺は思っている」
     そう言い、今回の事件の解決を灼滅者達へと託す。
    「今回、信二と羽虫型ベヘリタスが接触し、戦闘が始まる場所に先回りする事ができる」
     接触するダークネス達が戦うのは山奥の開けた場所。
     人が立ち入らない場所で、灼滅者達は接触前に隠れて待ち構える事ができると相馬は話すが、バリケードを作ったり何か罠をしかけたり、派手に騒いだりしないようにと注意する。
    「こちらから何かしらの妨害行動をすれば近づかず、別の場所での戦闘になってしまう」
     そう言い、資料をめくる相馬はダークネスについても説明をはじめた。
    「成長した羽虫型ベヘリタスだが、体は3メートル弱もあり、かなりの強敵だ」
     シャドウハンター、解体ナイフ、影業に似たサイキックを使う羽虫型ベヘリタスは、配下を連れずに1体のみで行動しているという。
     そしてストリートファイター、バトルオーラに似たサイキックを使う信二だが、こちらはかなり消耗しており、戦闘能力はかなり低い状態だという。
    「今回の事件の解決方法を俺なりに考えてみたんだが……」
     そう言い、相馬は箇条書きで説明する。
     
     一つ目は、羽虫型ベヘリタスが来る前に信二を灼滅する方法。
     羽虫型ベヘリタスが信二と接触するには少し時間がある。なので来る前に灼滅してしまえば、ベヘリタスは戦場に現れない。
     アンブレイカブルを灼滅し、卵を植え付けられるのも阻止できるという意味では成果は十分だといえる。
     
     二つ目は、羽虫型ベヘリタスが信二と戦闘を開始してから羽虫型ベヘリタスのみを灼滅する方法。
     この方法を採った場合、信二は戦闘を離脱して逃走しまうので共闘はできない。だが、何か伝言を伝えたり、声をかけたりする事はできるだろう。
     
     三つ目は、羽虫型ベヘリタスが信二を撃破した後にベヘリタスを灼滅する方法。
     敵同士を戦闘させる事で、最大効率で目的を達する事ができるだろう。
     
     四つ目は、羽虫型ベヘリタスが現れてから信二を灼滅する方法。
     羽虫型ベヘリタスが現れた後、すぐに信二を灼滅して羽虫型ベヘリタスと戦闘して灼滅する。
     アンブレイカブルと羽虫型ベヘリタスの両方を自分達の手で灼滅する場合はこの作戦になり、当然だが連戦となる。
     
    「彼を灼滅、ね……」
    「まあ、それも解決策の一つと思ってくれ」
     死にたくないと口にした青年を灼滅しなければならない可能性に、曜灯はぽつりと呟くと相馬は瞳を向けた。
    「成長した羽虫型ベヘリタスを見る限り、ベヘリタス勢力の戦力はかなり強大になっていると思われる」
     嫌な予感がすると相馬は話し、資料を閉じて言葉を続ける。
    「信二を含む格闘家アンブレイカブルの師であった業大老を軍艦島のダークネス達がサルベージしようとしているという情報もあり、これがこの件と何か関係があるかもしれないが……。まずはこの件を無事に解決して欲しい。頼んだぞ」


    参加者
    羽柴・陽桜(こころつなぎ・d01490)
    草那岐・勇介(舞台風・d02601)
    三國・健(真のヒーローの道目指す探求者・d04736)
    巽・真紀(竜巻ダンサー・d15592)
    レイチェル・ベルベット(火煙シスター・d25278)
    刃渡・刀(伽藍洞の刀・d25866)
    玉城・曜灯(紅風纏う子花・d29034)
    凪野・悠夜(朧の住人・d29283)

    ■リプレイ


    「頼むぜ……うまくいってくれよ」
     日も暮れはじめ、徐々に薄暗くなっていく森の中で、レイチェル・ベルベット(火煙シスター・d25278)はぽつりと口にした。
     人が立ち入らぬこの森に灼滅者達が訪れたのは、アンブレイカブルが羽虫型ベヘリタスに襲われるという事件の解決の為である。
     一般人のソウルボードに卵を産みつける羽虫型ベヘリタスは、その対象をシン・ライリー配下のアンブレイカブルへと移した。
     卵を産み付けられたダークネスの一部は灼滅者達の手により救出され、難を逃れたものの、エクスブレインの説明によれば、再び襲われるというのだ。
     今回の事件を解決する道として灼滅者達が選んだのは、日本海の北側に向けて山中を移動しているアンブレイカブルと交渉する事。
    「私に出来ることは、ぶっばなす事と、祈る事くらいだぜ」
     得物を手に言うその言葉にウイングキャット・ミケランジェロがニャアと応え、レイチェルは周囲を警戒する。
     刃渡・刀(伽藍洞の刀・d25866)も刀を手に、ビハインドである村正・千鳥と共にいずれここへとやって来るダークネス――3メートル弱もある羽虫型ベヘリタスへの警戒を続け、
    「長谷川も気になる所だけど、まずはやる事をやらないとだね……」
     凪野・悠夜(朧の住人・d29283)の言葉に巽・真紀(竜巻ダンサー・d15592)は頷いた。
     真紀をはじめ、依頼を受けてやってきた玉城・曜灯(紅風纏う子花・d29034)以外の灼滅者達は羽虫型ベヘリタスの卵を産み付けられ、助けられたものの、再び襲われるアンブレイカブル――長谷川・信二の事を知らない。
     高潔に武に打ち込む武等派なのか、はたまたトンチキな因縁付けて殴殺するような戦闘狂なのか、何もかも。
     ただ、分かっているのは信二を救った一人である曜灯に連絡をよこしてきた、という事。
    (「大丈夫、健くんも……陽桜もいる」)
     ややぎこちない羽柴・陽桜(こころつなぎ・d01490)へと草那岐・勇介(舞台風・d02601)は視線を向け、振り返り、その瞳は交渉に付き添う三國・健(真のヒーローの道目指す探求者・d04736)へ。
     その瞳の先には山中を走り続けていた、敵対し、本来ならば灼滅すべき存在がそこにいた。
     

    「連絡ありがとう。それで、どういう意図で呼んでくれたのかしら」
     毅然とした態度で先頭をきって姿を見せた曜灯はダークネス――信二の前に立つ。
    「その気無いのに連絡寄越す訳無いよな?」
     曜灯の後に続く健も疲弊しきった信二をじっと見つめ、口にした。
     この青年がよこした連絡は宛名しか記されていない、差出人はおろか中身さえもない、一通の封筒のみ。
     意図が不明な連絡の理由について考えられる可能性に二人、いや、仲間達はいつでも行動できるようにしているが――、
    「お前達は、分かっているんじゃないのか?」
     返ってくる言葉を耳に、微かに眉を寄せる。
    「お前達は分かっている筈だ。あれだけでこの時間、この場所に俺が来る事が分かっていたお前達なら」
     そう続く言葉にふと思い出すのは、エクスブレインの説明。
     ――信二は何か嫌な予感がしたのだろう。曜灯へと連絡をしてきたが、それは的中し、3m程度まで成長した羽虫型のベヘリタスが彼を襲撃するという。
     確かに、あの説明からすれば、少なくとも信二が戦いを望んで連絡をよこした訳ではないのは分かる。
     では、何故、連絡を。
    「……俺は賭けたんだ」
     それは呟くような、吐き捨てるような言葉。
    「俺はお前達に助けられた。お前達には感謝はしている。……だが、俺はダークネスだ。一度助けてもらったからといって、灼滅者に助けを請うのはダークネスとしてのプライドが許せねえ」
     だから、賭けた。
     あれだけで灼滅者達が辿り着けたのなら。
     そこでダークネスの言葉は途切れ、自らの言葉でその先を続けたくないのだろう。沈黙に包まれる。
     ダークネスへかけるべき言葉が二人の胸中に募るが、沈黙を破るのは健の言葉だった。
    「ベヘリタスに寄生されたいきさつを教えてくれないか?」
     それを聞き、曜灯から携帯電話を受け取った信二は瞳を向ける。
     囮として利用しようとしていたのか、助けを求めていたのかは分からない。だが、可能性に賭けたという青年が、敵意や悪意と共に連絡をよこした訳ではないのは明白である以上、説得は不要だろう。
     そして健からの質問が賭けた可能性に対する条件だと悟ったようで、ダークネスから返ってくるのは真摯な瞳。
     ――だが、
    「寄生……あの時、か……? いや……?」
     問いに返すのは曖昧な言葉。
     記憶を辿ってはいるようだが、覚えているのかいないのか、ハッキリとしたものが出てこない。
    「じゃあ、これからどこに行こうとしてるんだ?」
     仕切りなおしとばかりに質問を変えるが、その答えは更に曖昧なものだった。
    「俺にも理由は分からないが……行かなければいけないんだ」
     伝う汗を拭う青年の言葉を耳に、曜灯も微かに瞳を細める。
     この青年は目指す場所も、目的さえも分からずに進んでいるというのか。
    「分からない? どういう事かしら」
    「だから、俺にもよく分からないんだ。だが、行かなければ。……きっと、もっと近づけば――」
    「……来ました」
     曖昧な、ダークネス自身も分からぬその答えは刀の言葉によって遮られた。
     

     木にもたれかかりながら目を閉じ、周囲の音と気配へ集中しながら警戒を続けていた刀の瞳はすと開く。
     刀の柄に手をかけ、千鳥と共に見据える先は朱に染まる空。かすかに聞えるのは――、
     ぶぶぶぶぶぶぶぶ……。
     不快で不気味な羽音。
     それは徐々に大きく、はっきりと聞えるようになる。
    「おでましのようだな」
     じゃきっとガトリングガンを構え、レイチェルもその方向へと瞳を向けると、その姿は嫌でも目に入る。
     赤と黒の、毒々しい蛾のような羽を持つ、巨大な羽虫型ベヘリタス。
     ――ギギギギギギギ……!!
     不気味な瞳が定めるのは狙い、追い続けていたダークネス。
     ようやく追いついたターゲットを見つけ、ヘベリタスは不快な声を上げる。信二を連れ去ろうとかさかさと腕を動かすが、それをさせる訳には行かない。
    「さてと……さっさと始めようじゃねぇかッ!」
    「オーライ、踊るぜ」
     戦闘狂へと変貌した悠夜に続き、羽虫型ベヘリタスへ構える腕を振るい上げると真紀が得意のブレイクダンスと共に一撃!
     ギギギギ……!
    「やるじゃねえか」
     ぶぶぶ、と羽音を響かせる羽虫型ベヘリタスへと悠夜は瞳を向けるが、大したダメージではなかったようだ。
     地を蹴り拳を叩きつける刀と挟撃するよう千鳥も動き、
    「行くぜミケ!」
    「ニャア!」
     ガトリングガンが火を吹き、ミケランジェロも続いて襲い掛かるがものともしない。
     ――ギギ……ギギギ……!!
     ばさりと不気味な羽をはばたかせ、竜巻の標的は疲弊したアンブレイカブルだ。
    「……させません」
    「ミケ!」
     だが、刀と千鳥、そしてミケランジェロが身を挺して盾となる。
    「曜灯!」
     勇介の言葉に向けた瞳は振り返り、信二を見つめ、
    「また会いましょう」
    「……縁があれば、な」
     木々の間に消えてくその姿を目で追った。
    「一致団結の力で更なる道行き切り拓く!」
     健は槍を振るい、陽桜も変化させた腕で切り裂くと、勇介、曜灯が続くが、まだ羽虫型ベヘリタスは余裕のようだ。
     ――ギギギ!
     ざくりとえぐられ、血のようなものを流すがその動きに変化はなく。
     気味の悪い声を響かせ、羽虫型ベヘリタスは回り込もうとする悠夜をかわし、刀と千鳥、レイチェルとミケランジェロの攻撃を払い捌く。
     そして、
     ――ギ……ギギギギギ!!!
     威嚇するような声と共に振り上げる、刃のように鋭い腕は悠夜を捉えるが――、
    「くらうかよ!」
     ぎいん!
     得物を手に悠夜は攻撃を払うと、健に続く陽桜の古き石の十字架からサイキックが放たれ、勇介は再び怪奇煙を仲間達へと展開させた。
    「大丈夫か?」
     戦いの中、ふわりと舞うのは真紀の癒し。
    「助かったぜ」
    「ありがとう」
     悠夜と陽桜の礼を目に、癒しによって傷が癒えた刀の刃は閃き、一閃!
     ――ギギ……ギ!!!
     避ける事ができず、胴を裂かれた羽虫型ベヘリタスは身悶えするも耐え切り、
     ――ギギギギギ!!!
     ぶわりと襲い掛かる攻撃を防ぐべくディフェンダー陣は動くが、全てを防ぎきる事はできない。
    「レイチェル!」
     真正面から受け、レイチェルの体はずず、と下がる。
     守りきれず心配そうな顔をするミケランジェロを前に、心配させまいと痛みを表に出さず真紀達に大丈夫だと応え、
    「でけえなあ……潰れるまで叩き続けてやるぜ」
     膝をついたレイチェルは立ち上がり、断斬鋏を手にする健が動くと陽桜も続いた。
     開けた森の中で灼滅者達は戦いを続けるが、陽は時間と共に沈みゆき、空は朱から藍へと染まる。
    「絆を喰らう蟲、か」
     勇介はぽつりと口にする。
     絆を失う怖さを知る瞳がちらりと向ける視界に飛び込むのはピンクの髪。ぎこちなかったその表情は徐々に、だが確実に変化が現れ――。
     これ以上、絆を失うなんてごめんだ。
    「あんなのの思う通りにさせない」
     その言葉に曜灯は頷き、
    「今ココに集う絆の縁の力この手に受けて! 健勇灯桜ダイナミック!!」
     上げる健の声に応え、勇介と曜灯、そして陽桜の4人は立て続けにダイナミックな連携攻撃を放つ。
     相手はかなりの強敵だというダークネス。優位に立っていても、多人数相手では長くは続かない。
    「おいおい、テメェの本気はこの程度かよ!?」
     だらだらと気味の悪い体液を流す羽虫型ベヘリタスを前に、すと攻撃をかわした悠夜は声を上げた。
     時折ふらつくその動きは限界が近いのだろう。不気味な羽もぼろぼろだ。
     死角に回り鈍く光る巨大な鋏を手に悠夜は切り裂き、
    「これでラストダンスといこうじゃねえか」
    「五刀流合わせ二刀重ね二刀……【かごめかごめ】」
     とどめとばかりに真紀が得意のダンスを披露すれば、刀が構えるのは5つの刀。
     手にする二振の刀と無数の刀剣を呑み込んできた黒影が生み出す刀、そして二振の刀を持つ千鳥。
     逃げ場を塞ぎ、閃く居合は胴を裂き、
    「やれえミケ! 虫には地べたが似合いだと教えてやれえ!」
     狙い定め、ばら撒く弾丸の間を縫い、ミケランジェロの肉球がうなる!
     ――ギ……ギギ、ギ……。
     畳み掛ける攻撃は避けようにも避けられず、決着をつけるべく放たれた攻撃を耐え切る事はできなかった。
     ――……ギ、ギ……。
     どず、ん。
     巨大な羽虫型ベヘリタスは地に落ち、自らが流した血溜まりの中に沈む。体はびくびくと痙攣していたが、しばらくするとぴたりと止まった。
     

     ダークネスの命は潰え、その姿は灰となり、消える。
    「……ただいま」
     勇介からかけられた言葉に陽桜の瞳からは涙が溢れ、こぼれていく。
    「……お疲れ」
     曜灯の手を取る勇介は言い、緊張が解けたのか響く腹の虫の音に健は苦笑い。
     4人が絆を深め合う中、
    「……一体、タカトは何が目的なんだか」
     戦いを終え、悠夜はぽつりと口にする。
     先程までの荒さは消え、いつも通りの思考で考えるのは、この一件に関わっているであろう人物の事。
     アンブレイカブルだけでなく、他のダークネスまでも標的とするその行動は何を意味するのだろうか。
    「それにしても……あの男はどこへ行ったのでしょう」
    「ま、いずれ分かるだろうけどな」
     刀と言葉を交わす真紀は、この場を去ったダークネスの姿を思い出す。
     ESPを試みていたものの、ダークネスだったからか羽虫型ベヘリタスと共にその思考を読み取る事が叶わなかったあの青年。
     死の運命から再び逃れ、一体どこへと向かったのだろう。
     日本海の北側へ向かっているというが、信二は自分でもどこへ行こうとしていたのか分かっていなかったようだが……。
     一連の事件はまだ分からない事ばかりだが、分かる事が一つだけある。
    「助けるため、真実を掴むため、私達はできる限りをやったんだぜ」
     流れる汗をぐいと拭い、レイチェルは共に戦った仲間達へと瞳を向け、
    「だからこの勝利は当然の結果だぜ!  んぅ、びぃくとりー!」
    「ニャア!」
     にっと笑みを浮かべながらの言葉に仲間達は頷いた。
    「……戻りましょう、武蔵坂に」
    「これ以上ここにいても意味ねえしな」
    「そうだね」
     刀と真紀の言葉に悠夜も言い、
    「皆もマジお疲れ!」
    「さ、帰りましょう」
    「もちろん、全員でね」
    「……うん」
     絆を深めた4人も帰り支度。
    「帰るぜ、ミケ」
     虫との戦いに満足したのか、てちてちと肉球を綺麗にするミケランジェロはお気に入りの飴を咥えたレイチェルに鳴いて応え、報告をする為に武蔵坂へと戻っていく。
     
     沈みはじめていた日も既に消え、辺りはすっかり闇の中。
     夜空に輝く星達は、まるでこれからの先を照らすようにきらきらと輝くのだった。

    作者:カンナミユ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年10月24日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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