密室ゲーム

    作者:天木一

     電子音が耳に痛いほど鳴り響く、並んだビデオゲームの前ではガチャガチャとボタンを連打する音が煩い。ゲームセンター特有の騒音が広い室内に満ちていた。
    「なんで出られねーんだよ、クソが!」
     大学生ほどの青年が苛立ったようにドアを蹴る。だがガラス張りの自動ドアはびくともしない。まるで鉄でも蹴ったような感触が返ってくるだけだった。
    「あーウゼー! ちょっと対戦しにきただけだってのによ、ゲームも負けるし踏んだり蹴ったりだっつーの!」
     腹立たしさに任せて入り口から入ってきた男を殴りつける。
    「ぐげっ」
     男は鼻を手で押さえると、隙間から血が垂れてきた。
    「きったねーんだよ! コラッ!」
     青年は男を蹴り今入ってきた出入り口から外に出そうとする。だがその体は見えない壁に阻まれて外には出れない。
    「チッやっぱ無理か」
     そのまま青年は男を蹴り飛ばす。
    「しゃーねー、出れるようになるまでゲームで時間潰すか」
     うずくまる男のポケットから手馴れた様子で財布を抜き取ると奥の対戦台の前に座る。
    「死ねっ、クソ、動くんじゃねぇ! あ、やられた! こんちくしょーが!」
     だがあっさりと対戦に負けて連続でコインを投入して連戦したあげく、全て負けると勢いよく立ち上がる。そして反対側に周り込んだ。
    「おい、テメー、チートしてんだろ、カス野郎が!」
    「は? 何言ってんの? 君が弱いだけじゃん」
    「言い訳すんじゃねーカスが!」
     青年が座っている対戦相手を蹴りつけた。そしてそのまま顔をゲーム画面に突っ込む。そのまま顔が砕けるまで何度も打ちつけた。喧嘩っ早くとも普段なら喧嘩で終わるところ、だがそのまま行為はエスカレートし、対戦相手がぴくりとも動かぬまで続けられた。
    「ケンカか?」
    「うわぁっ!? 人、人が死んでる!」
    「誰か警察を!!」
     顔をぐちゃぐちゃにされて死体となった被害者に気付いた周囲の人々が騒ぎ出す。だがケータイは繋がらず、逃げようにも外に出る事も出来ない。
    「はんっ、何だ、人殺しも大したことないな、こんなスっとするならもっと早くからヤってればよかった。こっからはリアルゲームスタートってことで」
     どこからともなく青年は両手に銃を手にし、銃口を逃げ惑う人々に向けた。
    「ファイアー!」
     閃光が奔り、ゲームの騒音をも打ち消す火薬の音が響く。銃弾が人々を襲う。
    「はっはー! やっぱオレには対戦よりガンシューのが向いてるわっ」
     ノリノリで笑みを浮かべた青年は、狩人のように次の獲物に向かって銃を向けるのだった。
     
    「新しい六六六人衆の密室事件が起きているみたいなんだ」
     能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が集まった灼滅者に説明を始める。
    「神宮寺・柚貴(不撓の黒影・d28225)さんらの調査で分かったことなんだけど、今までの密室と違って中の六六六人衆も密室から出る事ができないみたいなんだ」
     閉じ込められた六六六人衆は、同じように閉じ込められた人々を虐殺していく。
    「密室は中からは出られないけど、外から入るのは簡単だからね、みんなにこの六六六人衆を倒してきてもらいたいんだ」
     放置すれば密室内の数十人の人々は全て殺されてしまうだろう。
    「密室となっているのは大きなゲームセンターで、敵はまずビデオゲームコーナーから行動を開始するみたいだね」
     内部には数十人の一般人が散らばっている。密室であり巻き込まずに戦うのは難しい。
    「敵の名前は越前・零児。大学生で闇墜ちしたばかりのようだね。銃を使ったゲームを得意としていて、戦闘でも銃器を使って戦うみたいだ」
     動く者は全てターゲットとして撃ちまくるようだ。灼滅者との戦いとなっても一般人も躊躇無く狙ってくるだろう。
    「敵は密室に閉じ込められたばかりで、行動を始めたところだよ。ビデオゲームコーナーは既に制圧されている。可能な限り一般人に被害が出ないようにしたいね」
     到着時には何人もの死者が出ている。敵が慣れれば一気に増えるだろう。
    「この密室は他の誰かが作ったものだろうね。もしかしたら密室殺人鬼を生み出そうとしているのかもしれない。なんにしても放っては置けない事態になってるのは確かだよ。みんなの力で敵の思惑を打ち破ってきて欲しい。お願いするね」
     誰の思惑であろうと好きにはさせないと、灼滅者達は新たな密室へと向かった。


    参加者
    加藤・蝶胡蘭(ラヴファイター・d00151)
    万事・錠(ハートロッカー・d01615)
    水之江・寅綺(薄刃影螂・d02622)
    丹生・蓮二(アンファセンド・d03879)
    西院鬼・織久(西院鬼一門・d08504)
    天里・寵(超新星・d17789)
    鳥辺野・祝(架空線・d23681)
    平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)

    ■リプレイ

    ●ゲームセンター
     商店街にある店の前に灼滅者達が急ぎやって来ると、目の前で大きなガラスの自動ドアがまるで獲物を誘うように開いた。
    「新たな密室殺人事件か……。これまでとは様子が大分違うようだが、それでも一般人が被害に遭うようならそんな密室は必ず打破してみせるぞ!」
     気合の入った加藤・蝶胡蘭(ラヴファイター・d00151)の言葉に仲間達も頷き、店内に足を踏み入れる。すると自動ドアが閉まりそのまま何の反応もしなくなった。確認するが自動ドアは開かず、店の中に閉じ込められた。
    「一度入れば出られぬと……ク、クク……これは良い。まるで我等の望みの体現よ……ク、ヒ……ハハハ!」
     狂気を孕んだ笑いを溢した西院鬼・織久(西院鬼一門・d08504)は鋭い視線を店内に向ける。
     ゲームの音が騒音のように響く。足元に若い男が怪我をして倒れているだけで近くに人一人居ない。だが奥からはゲーム音に紛れて人々の叫ぶ声が聞こえていた。
    「ファイアー!」
     銃声が響く。放たれた弾丸がゲーム機や壁を撃ち抜き穴だらけにしてく。
    「ひぃっ」
    「誰か助けて!」
     足早に音の発生源へ向かうと、逃げ惑う人々を追う銃を構えた一人の青年が居た。情報通りの姿。越前零児を見つけた。よく見れば銃はプラスチックで作ったようなチープなもので、どうやって銃弾が飛び出ているのかも分からないような玩具だった。
    「作戦開始だ!」
     キャプテンODの装甲を纏った平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)が脚部のローラーダッシュで突っ込む。そして大型の機械鋏を展開して腕を挟もうとする。だが越前は咄嗟に腕を引き銃だけが挟まれ押し潰され砕けた。
    「なんだこのロボは、俺の邪魔をするな!」
     越前が新しい銃を和守に撃ち込むと、和守は避けるようにローラーダッシュで動き回る。
    「おいテメェ、そんな玩具の鉄砲で調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
     万事・錠(ハートロッカー・d01615)が注意を引くように正面に立って睨みつける。
    「はっ、なんだロボの次はヤンキーかよ、いいぜ狩ってやるよ!」
     越前が笑みを浮かべならが自動小銃の引き金を引いた。
    「やれるもんならヤッてみろ!」
     銃弾を恐れることなく、錠は黒革シザーケースから鋏を抜き出しながら突っ込む。乱れ飛ぶ銃弾に被弾しながらも鋏で銃を持つ右腕を切り裂いた。
    「ざけんな!」
     反対の手で拳銃を持つと、ありったけの弾を錠に撃ち込んで吹き飛ばす。
    「その軽そうな頭斬り飛ばしてやるよ」
     水之江・寅綺(薄刃影螂・d02622)がカードを開放し、一気に踏み込むと雪の様に白い剣を振り抜く。越前は拳銃で受け止めようとするが、押し切って胸に斬りつける。
    「俺に近づくんじゃねぇ!」
     自動小銃を狙いもつけずに撃つ。それを霊犬の壬戌が身を挺して防ぐが流れ弾全てを止められない。
    「私達は皆を助けに来た者だ! その場から動かず、身を隠して避難役の者が向かうまで待っていてくれ!」
     混乱の中でも毅然とした蝶胡蘭の声が、騒音の中でも一般人の耳に直接届く。
    「大丈夫、必ず帰れる。だから向こうへ逃げるんだ」
     流れ弾から一般人を護るように、丹生・蓮二(アンファセンド・d03879)と霊犬のつん様が射線に入り、銃撃に脅える人々を手助けして奥のメダルコーナーへと誘導する。
    「大丈夫だから落ち着いて、ここに居て。顔出さなきゃ撃たれないから静かにしててな」
     鳥辺野・祝(架空線・d23681)も一般人が巻き込まれぬように、身を隠すように指示していく。
    「あはは、ダッセ。素人相手に負けるのもダサいし、負けたら負けたで力任せにキレるのもダサい。猿ですか?」
     馬鹿にしたように相手を見下した天里・寵(超新星・d17789)が鼻で笑う。
    「誰がサルだこのカスが!」
     越前が怒りに任せて発砲する。それを予測していた寵は屈んで躱すと、ゲーム台に身を隠して移動する。
    「奇遇ですが、僕も大のゲーム好きですし、ガンシューなら負けません。さあ、君は僕に敵うかい?」
    「はあ? 舐めてんじゃねぇぞクソが! ガンシューで俺に勝てる奴なんざいねぇ!」
     顔を出して挑発する寵に、逆上した越前が銃をぶっ放す。
    「さあ……我等が怨敵よ、折角誂えて貰った死に場所だ。存分に殺し合おうではないか!」
     その背後から織久の影が伸びると無数の腕となって越前の体を捕らえた。

    ●ガンシュー
    「このっ放しやがれ、ぶっ殺すぞ!」
    「イライラすると殺すって、短略的だよね。本当に大学生なの?」
     影に縛られた越前に、横から近づいた寅綺は剣を振るって足を切り裂く。
    「お前らみたいなランダムで動く標的はイライラしてしょうがねぇんだよ! ちゃんと法則性を持ってかかって来い!」
     越前は手にしたショットガンをぶっ放して、寅綺と守ろうとした壬戌を纏めて吹き飛ばす。そして足を掴む影も撃ち砕いた。
    「リアルゲームか、ならここからはボス戦だ。私達が相手をしてやる、気を引き締めてかかってこい!」
     蝶胡蘭が黄色い標識を立てると、仲間達に力が与えられ傷が癒えていく。
    「ガンシューにヒーラーとか反則だろうが!」
     その動きを見て越前は蝶胡蘭に向けてショットガンを構える。
    「仲間を攻撃したいなら、まずは俺を倒すんだな」
     その射線に和守が割り込み代わりに放たれた弾丸を浴びた。衝撃にその体が吹き飛ぶ。
    「轟け、FH70ビームッ!」
     だが吹き飛ばされながらも肩のキャノン砲から光線を放ち、越前を撃ち抜いた。
    「よくも俺を撃ちやがったな! クソッまずはそのロボ野郎からぶっ壊してやる!」
     肩から出血しながらもショットガンを撃ちまくる。
    「はっはー!!」
    「随分楽しそうだなー。気分はどうだ?」
     仲間を守るように蓮二と霊犬のつん様が弾丸を防ぐ。
    「俺は最悪。けど、この場所っていうのはアンラッキーだったな。逃げたくても逃げられないぜ。俺たちも、お前も」
     不適な笑みを浮かべると、蓮二は鋏を振るって越前の腹を傷つけた。
    「なんなんだお前らは、シザーモンスターか何かかぁ!?」
     銃口を蓮二に向けるが、ガクッと体が傾いて弾丸が天井へ飛んでいった。
    「ただ喧嘩っ早いだけだってんなら、警察沙汰で済んだのにな。殺しておいて、楽に死ねると思うなよ」
     祝が鎖に繋がった五尺釘を投げて太腿に突き刺し、越前の体勢を崩していた。だが片膝をつきながらも執拗に銃で狙いをつける。
    「シューターがこんな近くまで敵を近づけたらダメですよ、もしかしてヘタクソですか?」
     その銃身を槍が貫き、寵はそのまま穂先を越前の胸に突き刺す。
    「だれがヘタクソだ! クソが!」
     新たに軽機関銃を手にした越前は銃を乱射する。
    「存分に暴れるがいい……クヒッヒハハ! それでこそ殺し甲斐があるというもの!」
     口元を大きく歪めた織久は、銃口から逃れるように駆け出し、円を描くように周囲を回りながら距離を縮める。敵がその動きに慣れた頃に向きを変えて一気に間合いを詰め、赤黒い槍を太腿に突き刺した。
    「やりやがったなこの狂人が!」
    「下手な鉄砲なんざ数を撃っても当たらねェんだよ!」
     錠が横から近づき剣を振り抜く。脇腹を斬られながらも越前は銃口を向ける。
    「おせぇ!」
     だが錠は返す刃で腕を斬りつけた。
    「うぜぇんだよ!」
     越前は小さな鉄の塊を手にするとピンを抜いた。それをその場に落とすと目の眩む閃光が視界を奪った。
     直後発砲音と共に錠の体が吹き飛ばされる。だが咄嗟に剣を盾に急所だけは防いでいた。

    ●バトル
    「ここからはマジモードだぜ、全員ぶっ殺してやるから覚悟しろ!」
     光が消え視力を取り戻すと、そこには据え置きされた巨大なガトリング砲を構える越前の姿があった。
    「ヘルファイアー!!」
     それまでとは比べ物にならない程の轟音と銃弾の雨が放たれる。そしてゆっくりと旋回し360度全てを破壊していく。
    「拙い!」
     和守が射線に飛び込み壁となる。その背後には一般人が避難しているメダルコーナーの一角があった。
    「あーん? はーほーなるほど、パンピーどもを庇ってんのか。カッケーじゃねーか、泣けるぜ。ははっその偽善がどこまで続くか試してやるよ!」
     銃弾が集中して和守を襲う。装甲が砕かれ血が流れ落ちる。
    「これ以上一般人を殺させん!」
     それでも一歩も引かずに和守はオーラを盾として踏み止まる。そこへ壬戌が駆け寄って共に攻撃を受けてダメージを分散させる。
    「動かない的にしか当てられないの? 才能無いよ、あんた」
     寅綺の影が幾つもの蟷螂の鎌となって越前の足を捉え切り裂く。
    「下からは卑怯だろうが!」
     越前は攻撃を避けようとガトリングを引きずって移動する。
    「大丈夫だ、今治す!」
     攻撃が止んだ隙に、蝶胡蘭が和守の体に帯を巻きつけて出血を止める。
    「ヘタな奴ほど文句を言うよね。君、本当にゲーム上手いの?」
     寵はローラーダッシュで突っ込むと炎を纏った回し蹴りを浴びせる。
    「ガンシューなら1クレジットでクリアできる俺を舐めるな!」
     越前が銃撃するが、寵は勢いのまま通り過ぎて狙いを定めさせない。ならばと一般人の居る方へと銃口を向けた。
    「これでお前らの方から寄ってくるんだろ?」
     ニヤリと笑って引き金を引こうとする。
    「これ以上殺させない、誰の死期も決めさせない、お前を殺してでも」
     蓮二が正面から剣を振り下ろした。刃が銃身を曲げ同時に放たれた弾丸が暴発して銃身が破裂する。越前が衝撃に地面を転がる。そしてうつ伏せで止まったかと思うと狙撃銃を構えていた。
    「俺が一番得意なのはこいつだぜ、高速エイムを見せてやる」
     スコープから狙いをつけるのは一瞬、放たれた弾丸は正確に蓮二の頭部目掛けて飛来する。それをつん様が跳躍して代わりに受け吹き飛ばされた。
    「スナイパーライフルの高速弾を防げると思うなよ」
     越前はすぐさま第2射を狙い撃つ。
    「それが本気か、俺の刃とどっちが強ェか勝負しようや!」
    「バカが、銃は剣よりも強し……だ」
     剣を構えた錠に向けて放たれた弾丸が狙い通りに頭を狙う。だが錠は剣を差込み刀身で弾丸は受けた。勢いに仰け反るが弾は逸れて直撃は免れた。
    「なんだとぉ!?」
    「何処を狙ってるのか分かってりゃ防げるんだよ」
     間合いを詰めて錠が剣を振り下ろす。だが越前は転がって避けると、仰向けの状態で錠を狙う。
    「遊ばれる気分はどうだ、六六六人衆。お前はもう、どこにも行けないよ」
     祝が氷柱を撃ち込み手を凍らせて銃撃をさせない。
    「ざけんなっ、俺がこんなステージ1でやられる訳ねーだろうが!」
    「クカカ、我等と出会ったが最後、どちらかが死に果てる運命よ」
     織久が黒い大鎌を振り下ろす。刃が右腕を斬り落とした。
    「ぎゃぁっ俺の腕が!?」
    「そしてこの場で果てるは貴様の方であったな」
     更に刃を返し切り上げると、逆袈裟に胸に傷が奔った。
    「ガンシューは覚えゲーだぞ、こんな初見殺しみたいなマネしやがって」
     悪態を吐きながらも残った腕でロケットランチャーを担いだ。
    「もういい、この密室に居る奴全部、ボムで消し飛ばして綺麗に片付けてやる!」
     放たれるロケット弾、それをビームが迎撃し空中で爆発を起こした。
    「やらせん! 言ったはずだ、殺させんと」
     和守はローラーダッシュで突っ込み剣を腹に突き立てた。
    「ウゼェ! だったら絶対に意地でも殺してやる!」
     ロケットランチャーから次々とロケット弾が発射される。その前に帯が編まれて壁となりぶつかり爆発する。それを抜けた弾に赤い細帯が撃ち込まれて全ての弾が宙で爆散した。
    「威力はありそうだが、迎撃もしやすいな!」
    「攻撃は私達が全て防いでやる」
     蝶胡蘭が帯を盾とし、祝が細帯を矢のように飛ばす。次の弾を撃とうとした時、銃口を影が塞いだ。直後に爆発が起きて越前の体が飛ばされた。
    「こんな狭い場所でそんな爆発物を使うなんて、頭悪いんだね」
     影を伸ばした寅綺が馬鹿にしたように言い捨てる。
    「クソクソッこんなはずじゃ……俺はもっと上手く殺れるはずなんだよ!」
     越前は拳銃を構えて後ろに下がる。
    「うわーカッコ悪い、典型的なヤラレ役のパターンですね」
     ゴミでも見るように目を細めた寵が包帯を撃ち出すと、拳銃を弾き続けての一撃が腕を貫いた。
    「クハハハハ! 切り刻まれて滅びよ!」
     織久が縦横に大鎌を振るい全身を切り裂いていく。
    「ひっ、この距離じゃダメだ、ちくしょう!」
     身を翻し逃げながら手榴弾を落としていく。
    「どこにいくつもりだ? 逃げ道なんてないんだぜ」
     蓮二が手榴弾を蹴り飛ばす。すると転がった手榴弾の爆風に巻き込まれて越前が転がる。
    「人質さえ手に入れたら……こんな奴らっ」
     這うようにメダルコーナーへ進もうとする越前の前に錠が立ち塞がる。
    「来いよ、腕に自身があるんだろ? それともビビッちまったのか?」
     錠の挑発に越前は怒りに目を吊り上げる。
    「脳みそぶちまけて死ねぇ!」
     越前が抜き撃ちで銃弾を放つ。同時に錠がオーラを纏って蹴り上げた。銃弾は錠のこめかみを掠り、顔を蹴り上げられた越前は仰け反る。そこへ剣を振り下ろし、越前の体は両断された。

    ●ゲームオーバー
    「溺れたんなら、お前は此処までだよ」
     祝が見下ろすと、越前の体は存在していなかったように消えていく。
    「任務完了、犠牲は最小限に抑えられたようだな」
     傷きながらも和守は一般人の犠牲者が増えなかった事に安堵の顔をみせた。
    「こうなる前にコイツを止められる奴は居なかったのか……」
     蓮二は墜ちてしまった敵の事を思う。するとつん様が元気を出せとばかりに足を叩いた。
    「怨敵は全て討ち滅ぼす。それが宿命なれば」
     織久は狂気の宿った笑みを消し能面の如く表情を失った。
    「ゲームオーバー、私達からするとゲームクリアだな。これが何者の思惑なのか、必ず突き止めてやる!」
     この密室事件を起こしている黒幕を許さないと蝶胡蘭は拳を握った。
    「所詮ゲーセンで威張るだけのゴミプレイヤーでしたね」
     やれやれと肩を竦めて寵は爽やかな笑みを浮かべる。
    「結局アイツが何したかったのかわかんねェけど、まだ密室があって、そこで殺しが行われるってんなら、俺が一つ残らずバラし尽くしてやる。テメェは地獄からそれを見てろ!」
     錠は自身が纏うオーラへ吼えるように笑いかけ、視線を事切れた一般人に向ける。そして体に触れると傷が再生して死体だったものが起き上がる。周囲を見渡し何事も無かったように去って行った。
     それをどこか寂しそうな目で見送り、灼滅者達は外へ出ようとする。
    「まさか人生初のゲームセンターが殺人現場とはね……人生ままならない」
     寅綺が溜め息を吐き、穴が空き砕けたガラスまみれとなったキャッチャーのぬいぐるみと目を合わせる。
    「今度は健全なゲームセンターに、友達と行きたいなぁ」
     呟きは流れ続けるゲームの騒音に掻き消され、灼滅者達はあっさりと開いた自動ドアから現場を後にした。

    作者:天木一 重傷:平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年10月22日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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