●運命から逃げる為に
富山県と新潟県の間に跨がる、犬ケ岳。
すっかり周りは暮れており、真っ暗闇……当然そんな真っ暗闇の中では、登山を楽しめる訳もなく、人気は無い。
そんな人気の無い山道に。
『はっ、はぁ、はぁ……っ!!』
息を切らせながら、山中を走る男……格闘家、アンブレイカブル。
彼は時折後ろを振り返る……まるで、何かから逃げているかの如く。
そして、そんなアンブレイカブルが一端立ち止り、大きく息を吐く……と、その瞬間。
……その背後から、成長した羽虫型ベヘリタスが来襲。
そのベヘリタスに、舌打ちをしながら。
『クソッ……! 実験台に、なってたまるかよ……!!』
対峙し、構えるのだが……ベヘリタスの体躯は、己よりも大きい。
体躯の差がありすぎる戦いは、上からのし掛かられて……アンブレイカブルは、対抗する手段を持つことも出来ず、ボロボロに。
そして、ボロボロになったアンブレイカブルをベヘリタスは掴むと……その場を飛び去っていくのであった。
「皆さん、集まって頂き、ありがとうございます。早速ですが、説明を始めさせて頂きますね」
五十嵐・姫子は、集まった灼滅者達に軽く頭を下げると、早速説明を始める。
「皆さんも知っての通り、つい先日まで、アンブレイカブルにベヘリタスの卵が植え付けられ、羽化する事件が発生していました。そして四津辺・捨六(伏魔・d05578)らの追跡により、逃走したアンブレイカブルの状況が知ることが出来たのです」
「今のところ、この逃走したアンブレイカブル達は、日本海の北側に向けて、山中を移動している模様です。そして……この格闘家アンブレイカブルを、3m程にまで成長した、羽虫型のベヘリタスが襲撃する事が予知されたのです」
「このまま放置しておけば、格闘家アンブレイカブルは倒され、この羽虫型のベヘリタスに連れ去られてしまいます。恐らく、再び、ベヘリタスの卵の苗床にされてしまうのでしょう……」
「……ダークネス同士の争いですから、一般人に被害は出ていません。ですが、このベヘリタスの動きを放置する事は出来ません。また、格闘家アンブレイカブルが……軍艦島のダークネスに合流するのならば、こちらも灼滅する必要があるでしょう」
「二つのポイントがあり、難しい依頼だと想います。ただ、幸いこの格闘家アンブレイカブルと羽虫型ベヘリタスが接触する前に接触が可能です。ですから、先回りし、この事件の解決をお願いしたいのです」
そして、続けて姫子は詳細な説明を続ける。
「先ほどの通り、敵となるのはまず、成長した羽虫型ベヘリタスになります。このベヘリタスは大きさが3m程で、戦闘能力もかなり強力になっています」
「幸いなのは、たった一体だという事……皆さんで力を合わせれば、互角の戦いを挑むことが出来ると想います」
「そしてこのベヘリタスに襲われる、アンブレイカブルもいます。アンブレイカブルは、かなり消耗している状態ですから、こちらと戦い、勝利することはさほど難しい事ではありません」
「敵となるのはこの二体です。どちらを倒すかは、皆さんの判断にお任せ致します。ただ、注意点としては、バリケードを作ったり、何かを仕掛けたり、派手に騒いだりすると、アンブレイカブルはその場所は危険と判断し、近づかず別の場所を通る可能性が高いです。つまり、アンブレイカブルに何かを仕掛けるのであれば、隠れて待機する必要があるという事です」
そして、姫子は。
「……成長した羽虫型ベヘリタスを見る限りでは、ベヘリタス勢力の戦力はかなり強大になっていると想われます。この先何が起こるかは解りませんが……少しでも、その懸念を少なくするためにも、皆さんの力、お貸し下さい。宜しくお願い致します」
と、深く頭を下げた。
参加者 | |
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シェレスティナ・トゥーラス(欠けていく花・d02521) |
スレイル・フォート(リードホリック・d04430) |
笙野・響(青闇薄刃・d05985) |
聖刀・忍魔(雨が滴る黒き正義・d11863) |
水月・沙霧(天然迷彩・d16762) |
川崎・榛名(勝手は榛名が許しません・d31309) |
夜白・時雨(蒼き雨音の調べ・d31771) |
鴻野・紗紀(中学生殺人鬼・d35648) |
●狂乱の中
富山県と新潟県の間にある、犬ケ岳。
すっかり日も暮れた深夜の山道は、何処か不気味な雰囲気が漂う。
……そんな不気味な雰囲気の山道を、ひたすら疾走するアンブレイカブルと……それを追いかけてくるベヘリタス。
追う者と、追われる者……それが、どちらも敵である、というのが、今回の依頼。
「う~ん……ちょっと予想とは違ったな」
と、シェレスティナ・トゥーラス(欠けていく花・d02521)が小首を傾げながら言うと、それに笙野・響(青闇薄刃・d05985)と、水月・沙霧(天然迷彩・d16762)が。
「なんていうか……苗床とか、シュールね。ダークネス同士で争い合ってくれるだけなら、スルーでもいいんだけど。多分、こう……羽化したベヘリタスがアンブレイカブルの力を奪ってー……とかなりそうだし、放っておくと、ろくな事にならない気がするよね?」
「そうだね。一体……何をしでかそうとしているのでしょうね?」
と肩を竦める。
ともあれ……何にせよ、このアンブレイカブルとベヘリタスを放置しておいても、百害あって一利もなさそうなのは、なんとなく想像出来る。
だからこそ、灼滅者達は急ぎ、ベヘリタス、もしくはアンブレイカブルを倒さなければならないのだ。
「まぁ、何にしても、今は考察よりも、どちらかを確実に始末する方が先だよね」
とシェレスティナに、鴻野・紗紀(中学生殺人鬼・d35648)、川崎・榛名(勝手は榛名が許しません・d31309)が。
「初めての依頼だけど、重要な戦いだって判ってる。少し……怖いかも」
「そうですね……ですが、ここでアンブレイカブルを止めないと、もっと被害が出てしまう事になります。だからここで頑張らないと……榛名、頑張ります!」
ぐっと拳を握りしめる榛名に、沙霧と夜白・時雨(蒼き雨音の調べ・d31771)が。
「そうですね。いずれにせよ、芽は潰すのみです……!」
「さぁ、戦闘の依頼だ。時雨、頑張るよ?」
と頷き合う。
そして、スレイル・フォート(リードホリック・d04430)は。
「あぁ、ちゃんといい子にしてろよ? 戻ったらおいしいご飯作ってやっから……ああ、大丈夫。んじゃな」
と電話を切る。それに、聖刀・忍魔(雨が滴る黒き正義・d11863)が。
「……大丈夫か?」
「ん? ああ、大丈夫だ。さて……どうする? アンブレイカブルを倒すのか、ベヘリタスを倒すのか……それとも、両方を倒すのか?」
スレイルに、シェレスティナが。
「うーん……考えたんだけど、事態を確実に進めるためには、弱っているアンブレイカブルを倒す方がいいと思う。ベヘリタスが追いつく前に灼滅するのだよ。何か情報を引き出せるかもしれないけど、多分、何も聞き出せないと思うし」
そんなシェレスティナの言葉に、忍魔、スレイルが。
「そうだな……今回は、事態を確実に進める方が良さそうだしな」
「解った。それじゃ、アンブレイカブルがベヘリタスと遭遇する前に遭遇しないとな……急ごう」
と、頷き合うと共に、灼滅者達は急ぎ、アンブレイカブルの元へと向かうのであった。
●命の選択肢
そして灼滅者達は、アンブレイカブルの駆ける、山道の先へと到着。
薄暗闇の不気味な雰囲気に包まれる中、息を潜めて、ただただ待つ。
そして、待ち伏せして、数分。
『は、はぁ、はぁ……く、くそ……っ!!』
荒げた呼吸を整えるのも叶わず、ただただ、走り続けるアンブレイカブル。
そして、灼滅者達の近くで木に手を当てて、立ち止る。
ほんの僅かながら、呼吸を整えようとしているのだろう。しかしそんなアンブレイカブルの休息の瞬間こそが、チャンス。
「……良し。一気に仕掛けるぞ」
「うん。卑怯なことは好きじゃないけど、仕方ないよね」
と忍魔の合図に頷く紗紀。そして灼滅者達は一斉に姿を現す。
突然現れた灼滅者達に、アンブレイカブルは、っ、と苦虫をかみ殺した様な表情を一瞬、浮かべて、一歩距離を取る。
『くそっ……こんな所まで、灼滅者かよっ……!!』
「ええ。あなたに苗床になってもらうわけにはいかないから……ここで、倒れて貰うわよ」
「そうだ。ただ実験台として死ぬよりは、戦って散りたいだろう……?」
『っ……この野郎っ。こうなりゃ、ぶっ殺して、此の場から俺の力で突破してやらぁ!!』
と拳を握りしめ、覇気を纏うアンブレイカブル。
そんなアンブレイカブルの覇気に、忍魔は。
「さぁ行くぞ。弱っているからといって、俺は手を抜く気はない……!」
と、無敵斬艦刀を構える。
薄暗闇の中、忍魔が真っ正面に立つと、シェレスティナやスレイルも、その左右に配す。
そして、シェレスティナが除霊結界を展開すると、スレイルが結界糸、忍魔は鬼神変と攻撃を叩きつけ、そして。
「イリス、ディフェンダーお願いね!」
シェレスティナの言葉に、彼女のウィングキャット、イリスがぴょんぴょんと跳ねながら、アンブレイカブルの後方へと回り込む。
そして合わせてスレイルのライドキャリバー、沙霧の霊犬、コタロー、そして響も後方へと展開……アンブレイカブルの退路を、いつの間にか塞いでしまう。
しかし、それに気付かないように。
「ここは、通しません……!」
と沙霧が妖冷弾を正面側から討ち抜き、時雨、紗紀も。
「時雨、後方支援射撃……いくよっ!」
「ちょっと可哀想な気もするけど、あなたは私が殺してあげるの」
と、オールレンジパニッシャーと、レイザ-ストームを放ち続ける。
そして、後方に回り込んだところで、響が。
「ほらほら、鬼さんこちら……って羅刹じゃなかったわね」
と、多少アンブレイカブルを挑発しながらの一撃を叩き込み、そしてイリス、ライドキャリバー、コタローのサーヴァント陣も、アンブレイカブルの背後から、次々と攻撃していく。
……普通のアンブレイカブルであれば、それら攻撃をある程度避けることが出来たかもしれない。
しかし、ベヘリタスから逃げる為に、かなり消耗しているアンブレイカブルは……それら攻撃を、中々躱す事も出来ずにくらう。
『うぐっ……く、くそぉおおお、負けてたまるかってんだよぉ!!』
半ばヤケのアンブレイカブルは、その拳を大きく振り回し、目の前に居るシェレスティナへ攻撃。
命中を無視した、強力な一撃で殴りかかるアンブレイカブル。
窮鼠猫を噛む、其のネズミかとも言うべきその攻撃を食らえば、一撃でガッツリ体力を削られる。
が、そんなアンブレイカブルの攻撃に対し、行動を最後まで遅らせていた榛名が。
「大丈夫ですか! 榛名がすぐに回復します!!」
と、速攻でエンジェリックボイスで回復を施す。
そして、一通り行動が一巡し、次の刻。
「さぁ、ここからが正念場だな」
「そうだね。例え手負いだとしても、アンブレイカブルはアンブレイカブル……油断は出来ません!」
とシェレスティナはぐっと拳を握りしめ、そしてスターゲイザーで足止めを付与。
「背水の武人……お前を倒して見せる!」
更にスレイルのティアーズリッパー、忍魔のフォースブレイク。
そして後ろからは、響のフォースブレイクに、六文銭射撃、猫魔法、機銃掃射が確実に苦しませていく。
クラッシャーとディフェンダーの攻撃が、ガリガリと体力を削り……そして。
「ボクの全力、受けてもらうよ」
「行くよ、コタロー!!」
とティアーズリッパーや黙示録砲、トラウナックルでバッドステータスを蓄積。
……そして、アンブレイカブルの攻撃に対しては、榛名がしっかりと、毎刻に回復を行い、被害を後には残さない。
……三分、四分……そして五分が経過。
その時、アンブレイカブルが来た方から……何か、得体の知れない、恐ろしい気配が近寄りつつあるのを、感じる。
『……っ!!!』
目を見開くアンブレイカブル……その表情から、一気に余裕が無くなる。
『く、くそ……くそくそくそおおおおお!!!』
そして、アンブレイカブルの攻撃は……今迄よりも、一回りも、二回りも、強力に。
その激しい猛攻に、僅かに灼滅者達は押されていく。
「これが、火事場の馬鹿力とでも言う力……? でも……そんな力に、負けたりはしないよ!」
と、紗紀が声を上げ。
「皆さん、頑張って耐えましょう……ここを過ぎれば、きっと!!」
その猛攻を、榛名が声を上げて、皆を励まし、耐える。
流石に馬鹿力の猛攻は、長く続くものでもない……六分、七分……そして、八分。一気にアンブレイカブルの攻撃の勢いが弱まる。
「うん。よーっし、一気に仕掛けるよ!!」
とシェレスティナが叫び、灼滅者達の猛攻開始。
回復についていた榛名も、雲櫂剣やオーラキャノンでその攻撃に加勢し、後ろから、前から……。
『っ……!!!』
壮絶な表情のアンブレイカブルに、忍魔が。
「お前を憶えておく気は無い。丁寧に葬る事もしない……ただ、お前を利用しようとした奴らに、お前の代わりに仕返しはしてやる……!」
「そうだ。黄泉路までは追われないさ。安心して逃げな……夢幻胡蝶流、夢幻一閃!」
忍魔のフォースブレイクがアンブレイカブルを穿ち……そしてスレイルの居合斬りが、アンブレイカブルを一刀両断。
その一閃に、アンブレイカブルは、壮絶、しかし……何処か安心した様な表情で、崩れ墜ちていった。
そして、アンブレイカブルの姿は消える。
灼滅者達の心に、空しさが……。
「……」
と、アンブレイカブルの死を、無言で送った、その瞬間。
木々の間から、姿を現すベヘリタス。
「ベヘリタス……う~……潰して、おきたいけれど……後ろ髪惹かれるけれど、ここは撤退なのだー……」
「そうだね。敵はボクに任せてよ。こう見えても、運だけはいい方なんだ」
「いやいや。こういう時は強さとか運は関係ねぇんだよ。男の子の意地ってヤツさ。お兄さんに任せなさいな」
シェレスティナに、時雨とスレイルがベヘリタスに向けて構える。
ベヘリタスは、灼滅者達へ威嚇……それにスレイルが、鋼糸を張り巡らせ、ベヘリタスの動きを邪魔する。そして同時に、その糸を蹴って、張力で機動性を増し、一気にその場から離れていく。
他の灼滅者達も、ベヘリタスから早々に離れていき……そして、ベヘリタスの追撃の手を、どうにか逃れた。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年10月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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