狂える武人に迫る影

    作者:彩乃鳩

    ●灼滅者に助けられたアンブレイカブル
    「はあ、はあ……くそ、ここまで来て!」
     シン・ライリー派アンブレイカブルのサワムラ。
     以前に灼滅者によって、ベヘリタスの脅威から救われた経緯を持つ男だった。
    「何とか、何とか、あそこまで辿り着ければ……」
     そして、人気のない山中。
     格闘家は息を弾ませて。今も死にもの狂いで、逃げ急いでいる――あの羽虫から。
    「ギギギギギッギ!!」
     絆のベヘリタスを芋虫型にして蛾の羽をつけたような姿。体長は三メートル弱ほどの羽虫が、アンブレイカブルに襲いかかる。
    「この、軍艦島まで……あともう少しだってのに!」
     立ち塞がるシャドウに、傷だらけのサワムラは決死の覚悟で挑みかかる。勇気は、この場合は無謀と同義だった。そのことは、本人が一番良く知っていた。
    「ギギギ!」
    「ぐっ!」
     一方的に嬲られ続け。
     気を失ったアンブレイカブルを連れて、シャドウはまた何処かへと姿を消す。不気味な羽音を、静かな山中に響かせながら。

    「アンブレイカブルにベヘリタスの卵が植え付けられて羽化する事件が発生していましたが。四津辺・捨六(伏魔・d05578)さん達の追跡により、逃走したアンブレイカブルの状況を知ることができました。そこで、また事件が起こるようです」
     五十嵐・姫子(大学生エクスブレイン・dn0001)が灼滅者達に説明を始める。
    「今のところ、逃走したアンブレイカブルは、日本海の北側に向けて山中を移動しているようです。更に、この格闘家のアンブレイカブルを、3m程度まで成長した羽虫型のベヘリタスが襲撃することが分かっています」
     このまま放置すれば、格闘家アンブレイカブルはKOされ、羽虫型のベヘリタスに連れさられてしまう。おそらく、再びベヘリタスの卵の苗床にされようとしているのだろう。
    「ダークネス同士の争いですので、一般人の被害などはありません。ですが、ベヘリタスの動きを放置する事も問題です」
     もっとも格闘家アンブレイカブルの方は、軍艦島のダークネスに合流するつもりのようであり。こちらも別の意味で、対応を考える必要があるかもしれない。
    「今回の事件は、格闘家アンブレイカブルと羽虫型ベヘリタスが接触する場所に先回りする事が可能です。どうか、解決をお願いします」
     羽虫型ベヘリタスは、出現数は1体のみ。ただし、成長を遂げているために、戦闘力もかなり強力になっている。
    「対してアンブレイカブルは、かなり消耗している状態です。現状の戦闘力ではアンブレイカブルは、羽虫型ベヘリタスには敵わないとみて良いでしょう」
     場所は人が寄り付かぬ山の中。
     戦闘が始まる前に、待ち受ける事が可能だ。ただし、バリケードを作ったり何か罠をしかけたり。或いは、派手に騒いだりすれば、アンブレイカブルはその場所に近付かずに別の場所を通って移動してしまう。
     現場に到着した後は、格闘家アンブレイカブルがやってくるまで、隠れて待機する必要があるということだった。
    「成長した羽虫型ベヘリタスを見る限り、ベヘリタス勢力の戦力はかなり強大になっているようです。更に、格闘家アンブレイカブルの師であった業大老のサルベージを、軍艦島のダークネス達が行っているという情報もあります……此度の件と関係があるかもしれません。皆さん、くれぐれもお気をつけて」


    参加者
    無堂・理央(鉄砕拳姫・d01858)
    鴻上・巧(氷焔相剋のフェネクス・d02823)
    栗原・嘉哉(陽炎に幻獣は還る・d08263)
    ギルドール・インガヴァン(星道の渡り鳥・d10454)
    流阿武・知信(炎纏いし鉄の盾・d20203)
    梢・藍花(白花繚藍・d28367)
    未崎・巧(緑の疾走者・d29742)
    ヘイズ・フォルク(青空のツバメ・d31821)

    ■リプレイ


    (「べヘリタス、シャドウがここまで派手に動くとなると。いえ、今は目の前のことを片付けませんとね」)
     問題の山中。
     鴻上・巧(氷焔相剋のフェネクス・d02823)は、目的の地点で、猫変身して待機している。灼滅者達は、サワムラとベヘリタスが接触する現場で先回りして待ち伏せしていた。流阿武・知信(炎纏いし鉄の盾・d20203)はせめて地味な服装で、目立たないようにする。
    (「おひめさまがベヘリタスのこと、懸念してたし。きっちり……灼滅しておきたいな」)
     おひめさまとはナミダ姫のこと。なんとなく好きなのだ。
     人狼の梢・藍花(白花繚藍・d28367)は、狼に戻って耳をそばだてて、羽音を聞き逃さないように待ち構えていた。
    「出発前にラブリンスターの件を聞くと思う所があるね。まぁ、まずは八つ当たりも兼ねて目の前の事を解決しようか」
     無堂・理央(鉄砕拳姫・d01858)が、仲間に合図を送る。彼女にとっては、一度見知った顔。シン・ライリー派アンブレイカブル。サワムラが、必死の形相でこちらに向かってくるのをしかと確認。真正面から接触を図る。
    「こんにちは、災難続きなアンブレイカブルさん」
    「お前達は……あの時の!」
     格闘家の男は足を止め。知信の挨拶に、最初は訝しげな表情を作ったが。見知った顔を見つけて、後退して構えを取る。
    「ちょっと、待って。ボク等が戦うのは後から来るベヘリスタだ」
    「灼滅はしない。ただ、あの時助けた礼くらいは言って欲しいかな。そういう暇はなかったとはいえさ」
     向こうも警戒していることを見越して、理央は最初に重要なことを明確にしておく。同じく相手と面識がある、栗原・嘉哉(陽炎に幻獣は還る・d08263)も口添えした。
    「……」
     サワムラはじっと灼滅者達から目を離さず。黙して語らない。その身体は全身あちこち傷を負っていた。
    「サワムラさんに声を掛けたのはぶっちゃけ、何かしら武蔵坂が動ける何かしらの情報が無いかと思ってね。例えば、今動けるはずのシン・ライリーやケツァールマスクに頼らず、動けないはずの業大老に助けを求める理由とかさ」
     構わずに理央が言葉を続ければ。
    「ああ。キミ達に何が起こったんだ?」
    「貴様達の目的を言えば逃がしてやるぞ?」
     ギルドール・インガヴァン(星道の渡り鳥・d10454)も質問を重ねる。ヘイズ・フォルク(青空のツバメ・d31821)はダメ元で条件を出してみた。
    「……前回の時は助かった。その点については感謝を。そして、非礼を詫びよう」
     逡巡する素振りを見せた後に。
     まずサワムラは理央と嘉哉に頭を下げる。
    「俺達は、何かを奪われた……そして、その残り滓を辿って、ここまで……」
    「!」
     サワムラの対応は仲間に任せていた、藍花の狼耳がぴくりと反応する。薄気味悪く羽が擦れる不快音。気配を殺したままニホンオオカミを解除。戦える態勢を整えて待ち構える。
    「くっ、来たか!」
    「ギギギギギギ!」
     羽虫のシャドウ。
     ベヘリタスが、アンブレイカブル目掛けて迫る。
    「なあ、アンタ、困ってんだろ? 助けてやるよ。一緒に戦うもよし、このまま逃げてもまあ、別にいいけどさ」
     サワムラは軍艦島の位置を探るために泳がせるつもりで逃がす。
     それが未崎・巧(緑の疾走者・d29742)の方針だ。殺界形成を発動させて人避けする。
    「一応訊くけど、共闘の意思はあるかな?」
    「ここでこいつを潰したら直近の危険は去るけど、どうする?」
    「貸し借りじゃないけど虫に襲われたり卵を産み付けられたりするよりはマシじゃないか?」
     灼滅者達は、格闘家を守るように前に出つつ。意志を確認する。猫変身していた鴻上も人の姿に戻って選択肢を示す。
    「このまま逃げるか、べヘリタスに立ち向かうか。僕達と戦うというのならば、あなたはあの羽虫に倒されますよ」
     ヘイズの問いは、もっと直截的だ。
    「此処でアレに連れ去られるか、此処で纏めて消されるかどっちが良い?」
    「……どちらも、御免被る」
     アンブレイカブルは首を横に振り。
     はっきりと答えを返した。
    「共には戦えない。悪いが、先を急ぐ。それを阻むというのならば、相手をしよう。ベヘリタスだろうが、灼滅者だろうがな」
     身体は衰弱していようとも。
     その精神は、なお頑強なのは明白。
    「それも、あなたの決めた結論」
     鴻上が頷く。ギルドールも消耗している相手には、そのまま逃げてもらうつもりだったので異論はない。
    「残念ですが、無理強いはできませんね。僕らはここでベヘリタスを灼滅します。お気を付けて」
     無理に引き止める真似は、知信もするつもりはなかった。シャドウがすぐそこまで接近しており、サワムラの相手をしている暇がないという事情もある。
    「影の虫、まだいっぱいいるみたいだから気を付けてね」
     藍花はサワムラに釘を刺しつつ回復しておく。軍艦島の手掛かりを持っていたらビスケットでコピーもしておきたかったが……そこまでの余裕はなさそうだ。
    「いっこだけ、いい……かな。あなたは『タカト』って、知ってる?」
    「名前だけは、な。それ以上のことは知らん……治療、感謝する」
     アンブレイカブルは、踵を返して駆け出す。
     その背中を見送りながら。知信はぼそっと不吉な呟きを漏らした。
    「よくよく羽虫に縁のある人だな……軍艦島でもベヘリタスに襲われてたりして」


    「出たな化け物! そんじゃま、着装!」
     カードを掲げ威勢よく発声し、未崎は緑の強化装甲服を身に纏う。正体を虚ろにし妨害能力を高める、夜霧を味方前衛に展開した。
    「ギギ! ギギ!」
    「キミの相手は、僕達だよ」 
     サワムラに照準を合わせているベヘリタスに対し。
     ギルドールは制約の弾丸を被せて、こちらに注意を寄せる。
    「虫を追いかけようと思ってたけど、まさか虫に追いかけられてるなんてな……あの時倒しきれなかった個体じゃないよな。もしそうだったら怖すぎるんだけど」
     念のためにサウンドシャッターを発動して。
     嘉哉は抗雷撃による、アッパーカットを繰り出す。相手は前に戦ったときよりも、巨大化しているシャドウの羽虫。自然豊かな静かな山中に、煩わしい羽音が響く。
    「さぁ、害虫駆除と行こうかッ!」
     愛用の武器、加速刀「雷花」を装備。
     戦闘中のヘイズは、人が変わったように好戦的な性格となる。高速の動きで敵の死角に回り込みながら、規格外の羽虫を斬り裂く。
    「ギギギギギ!」
    「羽虫型ベヘリタス……元のベヘリタスも大概だけど、夜道で会いたくないデザインしてるなぁ。人型じゃないだけ、やりやすいかな?」
     ワイドガードとフェニックスドライブを使い。知信は強化を重ねていくことを心掛ける。
    「――」
     理央はファイティングポーズの構えを取り。
     ボクシングをメインに拳撃のみで戦う。シールドバッシュの障壁で拳を覆ってジャブを打って、己へと気を引いた。更に藍花のレイザースラストがダークネスを精確に狙う。
    「羽虫べヘリタス。分割的存在か、あるいは新たなシャドウか」
     右手に槍のような形状のガトリング銃アラドヴァル。
     脚に戦闘特化エアシューズのグラニ。
    「貫く」
    「ギ!?」
     鴻上はアラドヴァルに炎を纏わせて貫く。たまらずといったように、ベヘリタスは燃え盛る焔から距離を取る。
    「ギギギギギギギギギギギギギギギギ!!!」
     当初、アンブレイカブルを追撃せんとする動きを、見せていたシャドウだったが。連続攻撃を喰らったことで、完全に灼滅者達を標的と据えたようだ。眼光鋭く威嚇してくる。
    「デカイ、グロい、キモい……」
     とは羽虫型ベヘリタスを見たヘイズの感想だが。
     確かに、大型の怪物が節足をワシャワシャと蠢かせる様は、夢に出て来そうな雰囲気が漂っているのは間違いない。毒の牙を剥き出して襲いかかってくる姿は、無意識にこちらの背筋を凍りつかせる。
    (「常に冷静沈着に、心に余裕を保ちながら行動を――」)
     戦闘は疾風のように鋭く、獲物を捉えた鷹のように。
     ギルドールはフリージングデスと影縛りで、行動抑制を行っていく。
    「ジャミング行くぜ!」
     白炎蜃気楼を未崎は使用。
     予知を妨げる白き炎を放出し、全体のジャミング能力を更に高める。
    「蹴り砕く……直伝、レインディアキック!」
     支援を受けた鴻上のスターゲイザーが炸裂する。理央の抗雷撃が、相手に深々と突き刺さった。
    「そっちには行かせないんだよ!」
    「ギ、ギギギ!?」
     ヘイズが黒死斬で羽虫を足止めをする。相手の動きを鈍らせて味方の攻撃をサポート。その隙に、嘉哉が獣人型の影業でベヘリタスを縛りにかかった。知信はワイドガードを重ねつつ、レーヴァテインで殴る。
    「みんなのこと、できる限り庇ったげて。でも、無理はしないように」
     そーやくん。
     命を受けた藍花のビハインドが、ベヘリタスの前へと積極的に立つ。己の身体を盾として、毒牙から仲間を献身的に救う。主人の方は、味方のサポートに重きを置いて動いた。ディフェンダー、前衛を最優先にしてメンバー全員にラビリンスアーマーを使用していく。
    「ギギ……ギギギギギ!!」
     ベヘリタスが大火力のブラストを吐き出す。
     その戦闘力は相当なもので、漆黒のエネルギー波が一帯を薙ぎ払う。戦いが長引くにつれて、山の地形自体が変わりつつあった。
     小型だったものが、ここまで成長しているだけはある……ということか。
     嘉哉が前述していた通り。この個体が、以前に逃がしたものかどうかは不明だが。あのベヘリタス達が全て、このように成長している可能性は充分にある。
     だとしたら、脅威としか言いようがない。
    「卵殖えつけられて羽虫の化け物の苗床とか、ちょっとグロい……アンブレイカブルの連中には同情するぜ」
     未崎はジャマ―として、バッドステータス付与を念頭に戦い。
     問題の化け物を撹乱にかかる。


    「なんとも寄生虫のような行動をするものだね」
     次第に激しくなる敵の猛攻に対し。
     ギルドールは、回復とキュアは臨機応変に。間に合わなければ補助で行う。攻撃は威力と命中率のバランスをとる。
    「ストライクインフェルノ!」
     鴻上のレーヴァティンが火を吹く。
     黒に紅い輝きが映える、槍型の銃器が炎を撒き散らした。
    「……共食いみたい」
     ベヘリタスが自分達を突破したら、恐らくまたサワムラを追いかけるのだろう。そうならないためにも。藍花は味方の麻痺する身体をキュアし。最低でも前衛は六割、中後衛は五割の体力を維持できるように回復に奔走する。回復が追い付かないときは、知信がジャッジメントレイを使う。理央も前衛限定で集気法による回復補佐を行いながら、拳を振るって味方を守る。
    「ギギギギギ!」
    「させないよ」
     理央が軽快に、ベヘリタスの牙をガードする。
     フットワークを使い、どの味方も庇えるように動き回った。攻撃で煽って敵の怒りの矛先を自分に向けることができたので、使う技もそろそろ切り替える。
    「ギギ、ギギギ!」
     ただ、スピードということならシャドウも負けていない。
     その機動力は侮りがたく、巨体とは思えぬ俊敏さで戦場を駆け回る。灼滅者達は、攻撃にしろ防御にしろ先手を取られていた。
    「ちょこまかと飛び回りやがって……」
     ヘイズは大きく跳躍して羽虫に近づく。
     そこにあるものは、何でも利用した。そう、何でもだ。
    「ちょっと失礼!」
     味方達を踏み台にしてジャンプ。
     シャドウとの機動性能差を埋め、攻撃を叩き込む。
    「落ちろ、害虫!」
    「ギギギ!?」
     これは、さすがに相手も予想外だったのか……灼滅者側の仲間もだが。まともに、剣を受けたベヘリタスは地面へと落下する。
    「チャンスだぜ」
     未崎がすかさず近接してトラウナックルを見舞う。鴻上はグラニの踵にある車輪を高速回転させて叩きこむ。
    「バーニングスピン!」
    「ギ……ギ、ギ」
     サイドのタイヤ型パーツが蹴りの威力を増大。炎撃と破壊力に特化させた脚部武装が、威力を発揮する。
    「ここは、頑張りどころだな」
     嘉哉は影業を武器に変形させて使用。足元からの影の線は切れず、色は黒一色の巨大な十字架を手にして。精密に、打ち、突き、叩き潰し。的を絞った格闘術を繰り出す。
    「ギギ、ギギギギ!!」
     灼滅者とベヘリタスは一進一退の攻防を演じた。
     羽虫による鱗粉の毒が、こちらの身体を侵食する。ブラストが縦横無尽に放たれて、戦列に穴を開けんばかりに猛威を振るう。
    「大丈夫。まだ、やれるよ」
     隊列を崩さないように留意して、ギルドールは仲間と連携を取っていった。高純度に詠唱圧縮された魔法の矢を、敵に向けて飛ばし。知信が続いて一撃を入れる。
    「ワイドガードを重ねておいた甲斐があったね」
     予めバッドステータス耐性を、その身に付与しておいたのが功を奏し。知信は毒や麻痺も、他の仲間と比べて影響が少ない。
     戦況が終盤に差し掛かり、温存していた力を爆発させる。
    「あと少し、だよ」
     藍花も影喰らいで攻勢に転じた。ビハインドが合わせて、霊撃を放つ。鴻上はガトリング連射で、確実に狙いにいき。ヘイズは紅蓮斬でドレイン、自分の回復を両立する。
    「ギギギ!!」
     敵が癒しの鱗粉で力を増そうとすれば。
     すぐさま理央と嘉哉の二人が反応した。
    「エンチャントは――」
    「――外させてもらう」
     理央が鋼鉄拳によるストレートを繰り出し、相手に深々と突き刺さった。スナイパーである嘉哉のサイキック斬りが、高精度で命中してブレイクする。
    「付与するなら、こっちだよ」
     ジグザグスラッシュが一閃。
     全員のジャマ―能力を高める、未崎の戦略もここに来て目に見えて成果を上げていた。累積された悪影響によって、ベヘリタスの身体が見えざる鎖で縛りつけられる。
    「ギ……ギギ……!」
    「逃がしませんよ。落ちろ、羽虫!」
     シャドウの後退する気配を見逃さず。鴻上はブレイジングバーストによる、爆炎の魔力を込めた大量の弾丸で射撃する。逃げるタイミングを失った相手に、理央が一気に距離を詰めた。コークスクリューで装甲を引き裂く。
    「ギギ!?」
    「切り裂けッ!」
     ヘイズの居合刀が煌めく。
     目にも止まらぬ抜刀。裂帛の居合斬りが、衰弱した羽虫をたちどころに斬り捨て。
    「あぁ、虫の返り血とか最悪だ……」
     血を払い、武器を納刀する。
     巨大なシャドウの身体は、高らかな音を立てながら四散した。
    「終わった、か」
     灼滅者達は息を吐き。
     サワムラが去っていった方角を見やる。
    「戦闘スタイルを観察する機会を逃した。あとは、どこに向かおうとしてたのか、もっと訊いておきたかったな。ただ、逃げているわけじゃないと思ったんだが」
     嘉哉のみならず。知信も軍艦島やシン・ライリーのことなど、気になることは多かった。
    「空飛ぶ箒で空中からサワムラのむかう方向と、現在位置を記録しておきます」
     鴻上の言葉に、皆が頷く。
     それが、一つのピースになると信じて。何かの動きを、誰もが肌で感じていた。

    作者:彩乃鳩 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年10月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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