●美しき簪
ショッピングセンターの雑踏の中、吹き抜けの近くの壁によりかかったセラフィナ。スペインの血を引き、美しいストロベリーブロンドの彼女はやや人目を惹いている。紙袋からそっと取り出したのは、縦に長い箱。開ければ白い牡丹のような花のついた、美しい簪が姿を見せた。
(「これの先を尖らせる? このまま突き刺せる?」)
家に帰ったら、試しにぬいぐるみに突き刺してみようか。彼女がそんなことを考えているなんて、周囲の誰もが思ってもいないだろう。
(「きっとこの白い花は絵実子の血で赤く染まるわ。優しいフリして裏で裏切っていた、彼女の血で……」)
簪を紙袋にしまい、帰宅するべくエスカレーターを降りる。だがエントランスにたどり着いてみると、なんだか周囲の様子が変だ。
「おい、どうなってるんだ! 外に出られないぞ!」
「誰か責任者を呼んでよ!」
どうやら建物から外に出られないらしく、外に出ようとした客達が騒いでいるようだった。その声を聞きつけて、どんどん人が集まってくる。
(「なんなの? 外に出られないの?」)
セラフィナの心に宿ったのは、不安ではなく苛立ち。自動ドアや回転扉から出ようと蠢く人びとが、皆、自分の思いを邪魔しているように見える。
(「うるさい、うるさい、うるさい――そうだ、みんな、殺してしまえば」)
ふと彼女の頭に浮かんだ思考。意識するより早く紙袋の中の簪を掴んだ彼女は、側で騒いでいる同い年くらいの少年のうなじに突き刺した。ずぶり、簪が肉に食い込む感触。伝ってきた血で、花飾りが染まっていく。
(「今なら、みんな殺せる気がするわ」)
長い髪をなびかせて、彼女はエントランスを舞うように動いていった――。
●
「例の件、見つかったよ」
「そうですか。私の予想があたったのですね」
教室へと足を踏み入れると、神童・瀞真(大学生エクスブレイン・dn0069)が月姫・舞(炊事場の主・d20689)と会話をしていた。灼滅者達に気がついた瀞真は、彼らと舞に席につくように示す。
「神宮寺・柚貴(不撓の黒影・d28225)君らの調査により、新たな六六六人衆の密室事件が発生していることが判明したんだ。ここにいる舞君も調査をしていた一人だよ」
今回の密室は今までの密室と異なり、中にいる六六六人衆も密室に閉じ込められ脱出できないらしい。密室に閉じ込められた六六六人衆は、同じく閉じ込められた人間を殺戮しようとしているようだ。
「密室は中から外に出られないだけで、外からは簡単に中に入ることができるし、予知も可能。今回僕が予知した女の子、セラフィナ・オルティス君は闇堕ちしたばかりで、まだ殺人は犯していない。エントランスで刺してしまう少年も、幸い急所から外れているため、助かるだろう」
彼女は、密室から脱出するためには殺戮を行わなければならないと思い込んでいるが、闇堕ちから救出することができるかもしれないのだ。
「密室に閉じ込められた彼女を灼滅、或いは救出してほしい」
瀞真は和綴じのノートをめくる。
「現在高校1年生のセラフィナ君は、幼い頃にスペインから日本へと移住してきた。殆ど日本で育ったため、日本語も堪能だし、感覚もほぼ日本人だ。けれどもその日本人離れした容姿は中学時代から異性の目を惹いていたようだね」
高校に入学してしばらくして、憧れの先輩から告白された彼女は喜んで先輩と付き合うことにした。けれども2ヶ月ほどで先輩から別れを告げられてしまった。中学の時にも何度か同じようなことがあった彼女は、ついにその原因を知ったのだ。
「親友だと思っていた絵実子という子がね、セラフィナ君に彼氏ができるたび、相手から別れを告げられるように工作していたんだ。それを知って彼女は、殺意を抱いた」
しかし凶器を買いに来たショッピングセンターが密室になっていて、正面エントランスで殺戮を始めてしまう。
「このショッピングセンターへの出入り口は数カ所あるよ。セラフィナ君のいる正面エントランスの他に、駅からショッピングセンターを結ぶ高架通路が2階に繋がっている。地下と屋上には駐車場があって、そこにも建物内に入る入口がある」
灼滅者達が建物に入るのは、セラフィナがエスカレーターを半分ほど下った時点になるだろう。彼女への距離は、正面エントランスが一番く、次に2階の入り口、地下の入口、屋上の順に遠くなっていく。
「正面エントランスから入るのが一番近いけれど、すでに外に出られない人が何人も自動ドアや回転扉の辺りに詰めかけて騒ぎ始めている。そのため入るのに少し苦労するかもしれないし、入ってきた君達を見て、入ってこられるなら出られるのではと騒ぎが大きくなるかもしれない」
セラフィナから遠い位置の出入り口ほど集まっている人は少ないので、一般人が障害になりにくいだろう。ただ一番遠い屋上から普通に走って彼女の元へ向かっても、たどり着く頃には、彼女が二人目以降に手をかけてしまっているかもしれない。
彼女は殺人鬼相当の力と、簪を武器にして攻撃してくる。この簪は殺人注射器相当の力があるようだ。
「この密室は、閉じ込められたセラフィナ君が作成したものではないようだね。何者かがなんらかの目的で、密室に六六六人衆を閉じ込めたのだろうけど……もしかしたら、新たな密室殺人鬼を生み出すためかもしれないね」
そう告げると、瀞真は和綴じのノートを閉じて灼滅者たちを見つめる。
「君たちならこの件を解決できると信じているよ。頑張って欲しい」
そう言って微笑んだ。
参加者 | |
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外法院・ウツロギ(百機夜行・d01207) |
暴雨・サズヤ(逢魔時・d03349) |
逆神・冥(心を殺した殺人姫・d10857) |
ルコ・アルカーク(騙り葉紡ぎ・d11729) |
丹下・小次郎(神算鬼謀のうっかり軍師・d15614) |
イリス・エンドル(高校生魔法使い・d17620) |
狂舞・刑(暗き十二を背負うモノ・d18053) |
月姫・舞(炊事場の主・d20689) |
●密室の中の
買い物を楽しみに来た人、食事を楽しみに来た人、遊びを楽しみに来た人――ショッピングセンターには沢山の人がいて、それぞれの目的を果たしていく。だがショッピングセンターが密室と化してしまったことで、外へと出られなくなってしまったのだ。
正面エントランスにはすでに何人もの客が集まっており、異変に気が付き騒ぎ始めている。騒ぎに気づいた上階の客達が何ごとかと吹き抜けの下を覗き始めている。問題のセラフィナはまだエスカレーターの途中だ。
(「どんな事情があっても人を傷つけるのは良くないよ」)
まだ出入り口に殺到する人の少ない屋上から入ったイリス・エンドル(高校生魔法使い・d17620)は旅人の外套を纏ったまま吹き抜けまで走る。他の客のように興味本位で吹き抜けの下を覗いている暇はない。取り出した箒に跨がり、柵を超えてそのまま一階を目指す。
闇を纏った外法院・ウツロギ(百機夜行・d01207)と旅人の外套を纏った月姫・舞(炊事場の主・d20689)は2階の入り口から入り、出られないと騒ぎ始めた人々の間を抜けていく。一般人には二人の姿は見えていないので比較的スムーズに人垣を抜けることができた。
同じく2階の入り口から入った丹下・小次郎(神算鬼謀のうっかり軍師・d15614)と逆神・冥(心を殺した殺人姫・d10857)は外に出ようとする人びとにに捕まりそうになった。
「入ってこれるのね!? でも、出られないの! なんで!」
しかし先を急ぐ二人は人々の間をうまくすり抜ける。まだ正面エントランスより集まっている人が少ないおかげか、姿を隠して入った二人よりは少し時間がかかってしまったが、なんとか吹き抜けまで到着することができた。その時にはもうすでにウツロギと舞は柵を乗り越えて宙空に身を躍らせていた。小次郎と冥も躊躇うことなくその後を追う。
「えっ……!?」
エスカレーターから降りようとしていたセラフィナの視界の端に、2階から飛び降りてきた人の姿が映った。思わずそちらに気を引かれた彼女であったが他の客達は全く彼らに気がついていなくて。
「僕参上。やぁお嬢さん。僕とお話なんて如何?」
「えっ……」
「そこまでですよ。ここから先へは行かせません」
先に飛び降りた二人は迷わずセラフィナの元へと向かう。なぜ? と困惑の表情を抱いている彼女にウツロギは軽いテイストで言葉を投げかけ、舞の『行かせません』はまるで場所のことだけを指しているわけではないように響いた。
次いで飛び降りた冥と小次郎もセラフィナに駆け寄る。人垣から隔離するように、灼滅者達が彼女と『世界』を隔てる。
「なんなのよ! わけわからないわ! 私の邪魔をするというの!?」
その行動がセラフィナの苛立ちを彼らに向けることになった。袋から簪を取り出した彼女の瞳に怒りが蓄積されていく。その時――。
「きゃーーーっ!?」
飛来した大量の弾丸が炎の魔力を抱いてセラフィナに襲いかかる。放ったのは箒に乗ったままのイリスだ。彼女の姿はセラフィナ以外の一般人には見えていないが、音は隠すことができない。大量の弾丸が放たれる音は、外に出れぬと騒いでいた客達の間に急速に混乱と恐怖を募らせていった。
「凶器を持った女性がこの階に居ます。安全なルートを案内しますので、落ち着いて私達の指示に従ってください」
その時駆けつけたルコ・アルカーク(騙り葉紡ぎ・d11729)が声を上げた。同じく駆けつけた狂舞・刑(暗き十二を背負うモノ・d18053)と暴雨・サズヤ(逢魔時・d03349)もプラチナチケットを使っているため、客達にはショッピングセンターの関係者に見えるかもしれない。
「二階以上か地下へに逃げるんだ」
「入口からは逃げ出せない。落ち着いて此処から退避を」
刑も避難先を示しながら近くにいるものから移動させていく。サズヤは腰の抜けたお婆さんを背負い、上を目指す。だが、客達はどこから弾丸が飛んで来るか、自分が狙われるのではないかという恐怖に覆われている。騒ぎ出して避難誘導の声が届ききらない場所もあった。
「対処は私達が行います。とにかく落ち着いて」
しかしルコを始めとした三人はエントランスを隅から隅までまわって避難指示を伝えることを厭わなかった。同時にセラフィナの気を引いて抑えている五人が、彼女が一般人に意識を向ける前に接触できたのも良かったといえよう。セラフィナが攻撃行動に出れば彼女の気を引き続けるために応戦する必要もあった。そうすれば多少なりとも戦闘音が出てしまうのはしかたがないというもの。もう少し音に気を使えればベストだったが、全員の働きでその点はカバーすることができた。
「何? ショーか何か?」
「通り魔みたいだよ?」
上階の方からざわざわとした声が聞こえる。上の階の客ほど物見遊山な気持ちで吹き抜けからエントランスを見下ろしているが、もしかしたらエントランスから逃げた客の話を聞いて本物の店員や警備員が駆けつけてくるかもしれない。その前に、片を付けるしかない。
●染まりゆく
簪を手にし、瞳を凶器で染め上げたセラフィナは素早い動きで死角に入り込んで簪を振るったり、突き刺したその部分から毒薬を注入したりと楽しそうに灼滅者たちを傷つけていく。彼女の意識が間違っても避難中の一般人に向かぬよう、灼滅者たちも動いていた。
(「人間、うまく回らねえことはある。そういった時はガス抜きは要るさ」)
仲間に向かった攻撃をうまく受け止めた小次郎は、そのまま流れるように盾を振るう。
(「だが人を巻き込んで良い訳じゃない。特に、こんなふうに誰かのお膳立てに乗っかる形では」)
殴られたセラフィナがキッと小次郎を睨みつける。これで次から彼女が小次郎を狙ってくれれば、それは彼の思う壺というもの。
「殺意、ね。私も抱いている分人のことは言えないけど。せめてやるならこっそりやりなさい?」
……ま、密室なんて作ってる方も悪いだろうけど、と付け加えた冥は防御から攻撃へと体勢を変える。最後のひとりがサズヤにつれられて場を離れたことを確認したからだ。霊犬の鬼茂は小次郎を癒し回復させる。
(「……個人的には殺してもいいんだけど、救出したいのなら好きにすればいいんじゃないかしら」)
冥には一般人の生死に執着はないし、敵という立場のセラフィナに対しては基本的に殺すことしか考えていない。けれども多数が救出を望むなら、それを邪魔立てするつもりもなかった。
(「怒りを向けるなら本人にしないとね。というわけで闇堕ちは止めてあげやしょう」)
ちょっと痛いよ、丁寧に告げてウツロギが死角から斬り上げる。そして距離をとりながら、言葉を紡ぐ。
「君が殺意を抱く気持ちもわからないでもないが、殺してしまえば君は絵実子以下になっていまうよ」
「でも、絵実子は酷いことを……」
「だからさ、思い切りぶん殴ってやって、上から目線で君から絶縁つきつけて見下してやれば良いよ」
殺してはダメだ、そんなことセラフィナだってわかっていたはずだ。それでも殺したいほどに募ってしまった気持ちを変化させるなら、代替案を示すのがいい。
「そっちの方が爽快じゃない?」
目隠し故に瞳は分からないが、口元は愉快に嗤うようにウツロギは告げた。提案が意外だったのだろう、セラフィナが目を見開いた。
「よそ見してると危ないよ」
その一瞬の隙を逃すことなく、箒から降りているイリスが炎の弾丸をばらまく。
(「説得は皆の方が上手いから任せるけど、イリスもセラフィナさんにどうしても伝えたい事があるんだ」)
爆炎の向こう、セラフィナの瞳がイリスに向く。イリスもその瞳を見つめて。
「簪は人に刺すものじゃないんだよ」
これだけで十分。彼女の手にした簪の白花は半分以上赤く染まってしまっている。本来の用途と違った使い方をされた簪が、血の涙を流しているようにイリスには見えた。
「復讐を果たせばその瞬間はスッキリするでしょうね。でも、その後に残るものは一生の後悔だけよ」
それまで手にしていた十字架を『黒影布』へと持ち替えた舞が静かに告げ、放つ。貫いた手応えを確かに感じる。
「貴女は武器に箸を使ってるようだけど、箸を見る度に人を殺した感触が、手を染める血が、貴女の脳裏に蘇るようになるわ」
口の端から血を零したセラフィナは、『黒影布』を引き抜かれた衝撃で血を吐いた。やや震える手で彼女が見つめたのは、凶器としていた簪。
「貴女はそれに耐えられるかしら? そうじゃないならやめときなさいな」
「私は、私はっ……!」
舞の指摘を確かめようとするかのように、セラフィナは素早く移動する。彼女は小次郎の死角へと向かった。だがそれは彼にとって想定内の、むしろ望んだこと。斬りつけられた痛みは最初ほどではないように感じる。小次郎は動じず、視線も向けずに視覚にいる彼女へと話しかけた。
「友人に裏切られたのかね? それはつらいな。で、今度は君が裏切るのかね?」
「えっ……?」
小次郎の言葉が意外だったのだろう、攻撃後に素早く距離を取るのも忘れ、セラフィナの視線が小次郎を見上げたように感じた。
「ああ社会倫理とか親兄弟とかそんな道徳的な話じゃない。その簪を振るうことで君は人からはみ出す。それは自分への裏切りではないかな?」
「……どういう、こと?」
のろのろと後ずさる彼女。ここで初めて小次郎は彼女の方を向き、その視線を捉えた。
「裏切りの残酷さを知る君が、裏切る側に、その友人の位置まで堕ちなくてもよくないか?」
セラフィナは自らを被害者であると自認している。私は酷い目に合わされた、その思いが彼女を殺人衝動に駆り立てているのだから。
だがそんな彼女は彼女自身が加害者であると指摘されたのだ。彼女の心の揺れが、全員に目に見えてわかった。
「これより、宴を始めよう」
その言葉の直後に飛んできたのは、刃の形をとった『殺影器『黒吊幽』』。避難誘導にあたっていた刑が戻ってきたのだ。
「その親友とやらがどう思っていたかは兎も角、裏切られた事には同情しよう。だが、しようとしている行為は断じて認められん」
刑の重ねる言葉も小次郎と同じくセラフィナを加害者と定義しての言葉。裏切られて殺意を抱いたことまでは同情する。だが刑はその行動自体は認めも事はできない。まして本来のターゲット以外に手を出そうとしたことは、一片も許すことはできない。
「私……わた、しは」
きゅっと握りしめられた手に、血まみれの簪。
「その凶器、アンタは本当に使いたいのか?」
刑の言葉によって降りた、一瞬の沈黙。
「あなた綺麗なんですから、そんな事しなくたって、見返してやれる方法はいくらでもあんでしょう」
後方に駆けつけたルコは、祝福の言葉の風で前衛を癒しつつ、言葉を続ける。
「それはきっと、絵実子さんにはできねー事です。だから僻まれてるんです」
彼は他人の不幸をあざ笑うタイプではあるが、困った人は見捨てきれない、悪になりきれない悪タイプのようだ。だから、次に出てくる言葉は。
「戻るなら、今しかありませんよ」
「もど、る……?」
「セラフィナは何も悪くない」
ルコの言葉を裏付けるように、戻ってきたサズヤが口を開く。本当の悲しみや憎しみは本人じゃないと分からない。けれど、それを聞いてあげる事は出来る。だから。
「とても悲しかったと思う。親友だから許せないのもわかる」
彼我の距離を少しずつ詰めつつ、続ける。
「けどもしその手で誰かを殺したら、後戻り出来ない。悲しみは消えないし、憎しみも増えるだけ」
告げて、一気に距離を詰める。雷を宿した拳が、セラフィナに迫る。
「今なら、セラフィナのままで居られる。セラフィナはセラフィナのままでいい。自分を失うな」
活を入れるような一撃。衝撃で宙に浮いた彼女の身体が床につくまえに、冥と鬼茂が動いた。
「同情はするけれど、あなたの持っている憎しみは私のものとは違う軽薄なものよ。だから、戻れるわ」
合わせるように刀を振るうひとりと一匹。体勢を立て直しざまに繰り出されたセラフィナの一撃を防いだ鬼茂の姿は、普段の茶柴からは想像できないほど白く、雄々しい。
続けて追い詰めるようにウツロギとイリスがセラフィナを攻め立てた。そして、舞が『濡れ燕』を手に高速の動きで死角を目指す。
「悪を極めんとした男の業(わざ)と業(ごう)を見なさい。血河飛翔っ、濡れ燕!」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!」
後引く悲鳴を残して、セラフィナは床へと身体を横たえた。
●きっと新たな花が咲く
「繕ったり隠したり騙したり。本当に女ってメンドくさいですね」
慌ただしい上階の足音を聞きつつ、ルコがつぶやくと、セラフィナの長いまつげが揺れた。
「目覚めたか」
刑の言葉でセラフィナを見た冥とイリスはその無事を確認して小さく頷く。舞と小次郎が彼女に状況と学園のことを語って聞かせた。
「もっと豪快に生きてみせろ。ところでうちの学園に来ないかい? 中々スリル溢れる学園生活が送れやすぜ?」
「武蔵坂学園、ね……」
ウツロギの言葉にセラフィナは思案するように呟いて。だがまんざらでもないようだ。
「通り魔はどこだ?」
「こっちか!?」
2階から警備員らしき者たちが駆けつけてくる気配がする。サズヤは「ん」と小さく頷いて。
「全員で帰ろう。セラフィナも、一緒に」
血で染め上げられた花はきっと、土を変えて新たに咲き誇るだろう――。
作者:篁みゆ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年10月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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