喪われた心を、歌声を

    作者:悠久


     高層ビルが乱立する、深夜のオフィス街。
     人の気配はなく、ただ街灯だけが照らし出すその場所で、ビルのガラスを鏡代わりにダンスレッスンに励む、1人の少女がいた。
     しんと静まり返った中、小さなラジカセから音楽を流し、少女はひたむきに練習を続ける。よくよく観察すると、その頭部には小さな巻き角が生えており、スカートからは尖った尻尾がぴょこんと覗いていた。
     淫魔だ。恐らく、練習に熱中するあまり本性が現れているのだろう。
     と――不意に、その頭上を大きな黒い影が横切る。
     刹那、見上げるほどに巨大な異形が、羽音を立てて少女の前に降り立つ。蛾の羽を持つ異形。羽虫型ベヘリタスだった。
    「えっ……なに、これ、なんなの?」
     混乱する少女に、ベヘリタスは容赦なく攻撃を仕掛ける。
    「いやっ、やめ……! 助けて、助け……え……?」
     少女はたまらず逃げ惑い、助けを求めようと口を開いた。けれど。
    「わたし、誰に助けてもらおうと思ったの……?」
     今までずっと、誰かに守られていた。なのに、それが『誰』のおかげだったのか、どうしても思い出せない。
     まるで、心の中にぽっかり穴が空いているかのようだ。
     空虚な心に戸惑いを覚える少女を、べヘリタスは容赦なく昏倒させ、そのままどこかへ連れ去っていった。


    「皆、大変だよ。『宇宙服の少年』が、都内で路上ハグ会を開いていたラブリンスターを襲撃、その絆を奪って連れ去ってしまったんだ」
     教室に現れた宮乃・戒(高校生エクスブレイン・dn0178)は、厳しい面持ちで話をそう切り出した。
    「星野・えりな(スターライトエンジェル・d02158)さん達が、いち早く気付いてラブリンスターの行方を追ったんだけど、羽虫型ベヘリタスに邪魔されて追う事はできなかったようなんだ」
     更に、絆を奪われて混乱するラブリンスター配下の淫魔達を、羽虫型ベヘリタスが襲撃、連れ去ろうとし始めているのだという。
    「皆には、この襲撃を迎撃して欲しい」
     ダークネス同士の争いなので一般人の被害などは無いが、ベヘリタスの動きを放置する事はできない。ラブリンスターの行方も気になるが、まずは、ベヘリタスの攻撃を迎え撃つことが必要だろう。
     今回予測された事件現場は深夜のオフィス街、広場のようになっている一角。周囲に人の姿はない。
    「現れるのは、羽虫型ベヘリタスが1体。どうやら、3m弱くらいの大きさに成長しているようだね。戦闘力もかなり強力になっているみたいだ」
     羽虫型べヘリタスはシャドウハンターに似たサイキックの他、羽から鱗粉を飛ばしてこちらの足止めを狙ってくるようだ。油断することなく相対してほしい、と戒は話す。
     一方、ベヘリタスに襲われる淫魔の名前はリリカ。戦闘力はあまり高くなく、灼滅者がベヘリタスと戦闘に突入するとこれ幸いと逃げ出してしまうようだ。
    「うまく説得できれば、もしかしたら一緒に戦ってくれるかもしれないね」
     戦闘力の低い淫魔と言えど、れっきとしたダークネスだ。戦闘の間だけでも味方に引き込めれば、ベヘリタスとの戦闘はかなり楽なものになるだろう。
    「くれぐれも、気を付けて向かって欲しい。僕は君たちの活躍に期待しているよ」
     と、戒はそこでふと表情を曇らせて。
    「成長した羽虫型ベヘリタスを見る限り、ベヘリタス勢力の戦力はかなり強大になっているように思えるよ。……なんだか、嫌な予感がするね」


    参加者
    黒瀬・夏樹(錆塗れの手で掴むもの・d00334)
    東方・亮太郎(バトルスピリット・d03229)
    フレナディア・ヘブンズハート(煉獄の舞姫・d03883)
    北斎院・既濁(彷徨い人・d04036)
    リュシール・オーギュスト(お姉ちゃんだから・d04213)
    吉沢・昴(ダブルフェイス・d09361)
    天宮・黒斗(黒の残滓・d10986)
    高沢・麦(とちのきゆるヒーロー・d20857)

    ■リプレイ


     深夜。高層ビルの乱立するオフィス街に人の気配はなく、しんと静まり返っていた。
     ただ街灯だけが煌々と周囲を照らす中、不意に黒山のような影が現れる。
     羽虫型ベヘリタス。それは今まさに、淫魔の少女・リリカへ襲い掛かろうとしていた。
     だが、恐怖のまま逃げ惑うリリカの前に、幾人もの人影が飛び出した。同時に周囲の音声が遮断される。
    「きゃっ……! な、なに!?」
    「大丈夫、俺達は武蔵坂学園。君の味方だ」
     困惑するリリカにそう答えたのは、東方・亮太郎(バトルスピリット・d03229)。リリカを守るように、彼女と羽虫型ベヘリタスの間に立ち塞がって。
    「む、武蔵坂学園の……灼滅者さん? な、なんで? でも、この隙に逃げられるかも……!」
     これ幸いと走り出すリリカへ、亮太郎は素早く声を掛ける。
    「待ってくれ! 君の力を貸してくれないか? 俺達だけじゃ厳しい相手も、一緒なら倒せるはずだ」
    「それに、コイツはお前を追っていく……そうなると、こっちとしても守りにくい」
     間髪入れず、天宮・黒斗(黒の残滓・d10986)も冷静にそう呼びかけた。
    「わたしを、追ってくる?」
    「ああ。このシャドウは、リリカの混乱の原因の一端なんだ」
     思い出せないことがあるだろう、と。黒斗を始めとした灼滅者達の問いかけに、リリカは困惑も露わに頷く。
    「お前が思い出せなくなってる奴に、でかい借りがあってな」
     だからお前を救いに来た――と。吉沢・昴(ダブルフェイス・d09361)は横目でリリカを見やり、一瞬、口元に笑みを上らせた。リリカの目に、その笑みは頼りやすいように見えているだろうか。
    「可能なら、そいつを救う為にも力を貸して欲しいが」
     何にせよ護る、と。昴は淫魔を背に庇うようにベヘリタスと対峙した。その隣には黒斗が並ぶ。
    「詳しい話は戦い終わってからするよ」
     三人の言葉に真摯なものを感じたのだろう、リリカは逃げようとした足を止めて。
     その瞬間、ベヘリタスが再び彼女に襲い掛かるべく、その巨体を震わせた。
     だが、刹那。敵を貫いたのは、黒瀬・夏樹(錆塗れの手で掴むもの・d00334)が放った黙示録砲。高らかに響く聖歌と共に光の砲弾がベヘリタスを撃ち抜いて。
    「おっと、リリカさんに手出しはさせませんよ」
     ベヘリタスを見据え、夏樹は微かに笑う。まさかダークネスの救出に駆け付ける日が来るとは思わなかったが、まあ、悪くはない。敵が宿敵たるシャドウというのなら尚更だ。
    「というわけで、僕達の近くにいてもらえますか?」
     リリカにそう語り掛ける夏樹の横を、リュシール・オーギュスト(お姉ちゃんだから・d04213)が華麗に駆け抜ける。
    「それに……同じ道を歩んでる、しかも新規ファン候補がここにいるのに。踊りを見せてくれないまま帰るなんて酷くありませんか? ふふっ」
     リュシールはリリカを誘うように情熱的な舞踊を披露し、ぱちんとウインクして見せた。
    「ふ、ファン候補!?」
     ぽっと頬を紅潮させるリリカの顔から、恐怖の色はかなり薄れている。
     そのことを確認したフレナディア・ヘブンズハート(煉獄の舞姫・d03883)は、おもむろに口を開いて。
    「おまけに、ここであれを潰しとかないと、貴女の体を餌にあれの幼虫をわんさか生まされる事になるわよ? 実際、武蔵坂学園にはそういう報告がいくつも来てるもの」
     淫魔が多少なりとも灼滅者達に好感を持ったというのであれば、ここからは駄目押しだ。フレナディアの言葉に、リリカが引きつるような悲鳴を上げた。
    「勝てる見込みがあるかは知らんが、こっちとしてはお前と戦って消耗したところを叩けば、戦いが楽になるだろうよ。だが、それは勿論嫌だよな?」
     北斎院・既濁(彷徨い人・d04036)がそう尋ねれば、リリカは勢いよくこくこくと頷いた。
     共闘するか、否か。突き付けられた決断にリリカの瞳が揺れる。
    「さあどうする、時間はないぞ」
     追い立てるような既濁の問いかけに、リリカはおずおずと口を開いた。
    「ここで逃げても、追いかけられちゃうんですよね。……本当に、皆さんは一緒に戦ってくれるんですか?」
    「もっちろん!」
     高沢・麦(とちのきゆるヒーロー・d20857)は人懐っこい笑顔を浮かべ、リリカの目を真っ直ぐに覗き込んで。
    「バッチリ守ってみせるからさ、近くにいてね?」
    「……は、はい! わかりました!」
    「よーし、一緒にがんばろー!」
     麦は応えると同時、リリカに向かったベヘリタスの攻撃を防ぐ。
     説得は成功。リリカは戦闘準備に入っている。
     あとは、ベヘリタスを灼滅するだけだ――と、灼滅者達はそれぞれの武器を構えた。


    「来い、走甲車ァ! 装着合体、走甲車サムライザー!」
     掛け声と共に飛び出したレースカーを鎧に纏い、亮太郎は地を滑るように敵へと駆け抜けた。
    「最初から飛ばしていくぜ!」
     言葉どおり、亮太郎の蹴りは炎を纏い、羽虫型ベヘリタスの胴体へ深々と突き刺さった。
     羽を震わせ、敵が撒き散らした鱗粉から仲間達を庇うのは、ライトキャリバーのホライゾン。縦横無尽に駆け巡り、足止めされてなおその動きを止めることはない。
     羽を持つことから飛行状態の可能性も想定していた灼滅者達だったが、幸い、相手が飛行する様子はないようだ。
    「だからって、厄介なことには変わりねぇってな」
     既濁は近くのビルの壁面を足場にするように跳躍、敵の死角を突くように鋭い斬撃を繰り出した。正確な狙いが、確実に敵へダメージを与えると共にその動きを封じていく。
     重ねて、フレナディアも流星の如き飛び蹴りを繰り出す。炸裂する一撃が、幾重にも敵を足止めして。
    「さあ、楽しんでいきましょうか!」
     フレナディアの声に応えるように響き渡るのは、リリカの歌声。
     可憐な歌が敵の脳を震わせた隙を突き、リュシールは棒高跳びのような動作で勢いよく敵の背へ飛び乗った。
    「さあ、悪い夢にはお仕置きですよ!」
     縛霊手を構え、リュシールは敵の背目掛け乱打を繰り出した。同時に網目状の霊力が周囲に展開し、敵の動きをきつく捕縛して。
     痛みと怒りのためか、ベヘリタスはひときわ大きく体を震わせた。リュシールがぱっと飛び降りると同時に、敵は影を宿した一撃を振るう。
     受け止めたのは、昴。刹那、トラウマとして顕現した人影に強く下唇を噛み締めるも、正確な袈裟斬りを相手に見舞って。
    「黒斗、今だっ」
    「任せて」
     わずかに痛みの滲む声で名を呼ばれ、黒斗は昴の背からするりと現れた。急所を正確に捉えた斬撃は、敵を深々と切り裂き、その巨体を揺るがせる。
    「大丈夫ですか? すぐに回復します!」
     夏樹は後衛から戦況を把握、ダイダロスベルトを昴目掛け飛ばし、傷を癒すように彼の体を包み込んだ。昴のみに見える人影――トラウマも解かれ、ふっと掻き消える。
     回復が十分なことを確認すると、夏樹の足元からは蛇腹剣の如き影が伸びた。縦横無尽な動きで敵の死角を突き、翻弄する。
     足止め、捕縛、炎、催眠。幾重にも動きを封じられながらも、ベヘリタスに弱る様子はまだ見られない。
     ベヘリタスが次撃の狙いをリリカへ定めた。誰よりも早くそれを察知し、反応したのは麦。
    「ご当地名産ゆずビーム! 当ったれぇぇ!」
     ご当地ビームがベヘリタスの巨体へ吸い込まれる。と、敵は怒りに羽を震わせ、麦へと狙いを変更した。
     敵の撃ち出した漆黒の想念に頬を裂かれながらも、麦は得意げに笑ってみせる。
     借りとか絆とか、細かい話はともかく。女の子がでっかい羽の怪物に襲われていたら助けに入る。
    (「人助けに理由はいらないっしょ、ヒーローだし!」)
     灼滅者それぞれ、思うところはあれど――戦いは、なおも続く。


    「うふふっ、まだまだ終わらないわよ?」
     艶めいた笑みを浮かべたフレナディアが、戦場を華麗に駆け抜ける。その刃が羽虫型ベヘリタスをジグザグに切り裂くと、敵の体を覆う炎はその激しさと勢いを増していった。
     初撃から重ね続けた状態異常の数々は、確実にベヘリタスの動きを鈍らせ、ダメージを蓄積させている。
     たまらずといった風にクローバーのスートを浮かべ、負った傷を癒すベヘリタス。だが、状態異常を軽減させる方法までは持たないがゆえに、状況は確実に灼滅者の有利へと傾いていた。
     ベヘリタスに付与された破壊の力を見て取ると、黒斗は素早く地を蹴って。
    「させないよ。お前はここで、私達に灼滅されるんだ」
     刹那、その片手に出現したのはサイキックエナジーで形作られた剣――Black Widow Pulsar。柄も鍔もなく、ただ刃のみを振るい、敵を自己強化もろとも切り裂く。
     次撃に備え後退する黒斗へ、しかし、敵は漆黒の弾丸を撃ち出して。
     避けられない――黒斗がそう思った瞬間、瞬時に彼女の目の前に現れたのは、昴。刹那の跳躍と同時に刀を振るい、敵の放った弾丸を相殺する。
    「護るのは、俺の仕事だからな」
     口元に笑みを浮かべ、昴は再び跳躍。今度は敵の急所目掛け、鋭い斬撃を放った。
     蓄積する一方の負傷に耐えかねてか、ベヘリタスは幾度目かも分からず胴を震わせ、羽を揺らし。同時に、周囲へまたも鱗粉がばら撒かれた。
    「うわっ、ちょっ! あーもう、厄介だなぁ!」
     麦はすかさず仲間達を庇うように飛び出し、鱗粉の直撃を受けて。吸い込んでしまった鱗粉をぺっぺっと吐き出しながら、後衛の夏樹へ視線を送る。
    「黒瀬くん、手分けして回復しよっか!」
    「はい!」
     夏樹は力強く頷くと、手にした西洋剣を掲げ、癒しの風を吹き渡らせる。
    「わ、わたしもお手伝いしますっ!」
     二人の回復へ沿うように、リリカも天使の如き歌声を響かせ、共鳴させて。
    「ありがとうございます、リリカさん」
     微かな笑みで感謝を示すと、夏樹は再度、戦線の状況を確認する。
     状況は灼滅者達の有利を保っている。だが、油断は禁物――と、夏樹は足元に漆黒の影を忍ばせて。
     癒しの風によって鱗粉が霧散するや否や、リュシールはディフェンダー達の間を縫うように敵目掛け走り出した。
    「さあ、そろそろおしまいにしましょうか!」
     力強くそう叫ぶのと同時に敵の一部をむんずと掴み、小さな体からは信じられないほどの膂力で担いで。くい打ちの如く投げ付けると、反動を利用して反対側へも打ち付ける。
     ズゥン……と低く鈍い音を響かせ、倒れたベヘリタス目掛け、亮太郎が駆けた。その両手に握られているのは、巨大な蒼黒い水晶刀。
    「ぶった切ってやるぜェッ!!」
     裂帛の気合いが込められた刀が、圧倒的質量を持って敵の胴へめり込んだ。ライドキャリバーのホライゾンも、フルスロットルの突撃で主人に続く。
     そして。痛みに悶えながらも、今まさに灼滅者達へ攻撃を仕掛けようとしていたベヘリタスの頭上から降ってきたのは、既濁。ダブルジャンプでビルの壁を蹴り、空を駆け、敵の注意の向かぬ方向からの接近だった。
    「死角から狙う……なんて素直に思ったのか? 大間違いだよ」
     ベヘリタスの不意を突く形で、相手へ幾重もの斬撃を繰り出す。無慈悲に、無感情に、ただ殺意だけを乗せて。
     既濁の手が止まり、その足が地へと降りる頃――ベヘリタスは、もはやぴくりとも動かなかった。
     異貌の巨体は、ゆっくりと消滅を始める。


    「お疲れ様でした!」
     羽虫型ベヘリタスが消滅していくのを確認すると、リュシールはリリカに駆け寄り、清々しくハイタッチを交わした。
    「……忘れちゃったかも知れませんけど。私達、貴女達のプロとは敵じゃないんですよ」
    「ラブリンスターのこと、思い出せないんだろ。そういうの、全部あいつらのせいなんだ」
     絆を奪われてしまったためだ、と黒斗はリリカに説明する。
    「これからも、ベヘリタスには気を付けた方がいい」
    「君が最初に助けを求めようとしていた人も、そいつらにさらわれた。君も気を付けてくれ」
     黒斗の説明に、変身を解いた亮太郎もそう言葉を重ねた。
     話を聞いていたリリカが、ひっと小さな悲鳴を上げた。すると、彼女を安心させるように、麦が明るい笑顔を浮かべて。
    「憶えてる中でも、ちゃんと信じられる人と一緒にいて、1人にならないようにした方がいーのかもしんないね?」
    「他の方のところにも、ベヘリタスが来ている可能性があります。念のため、お知り合いの方に連絡を取ってみた方がいいかもしれませんね」
     夏樹はリリカへ知人の安否確認を勧め、さりげなく『七不思議使い』の組織についても探りを入れてみたのだが。
    「はい、あの人たちはお友達ですよ。でも……どうしてお友達になったんでしたっけ?」
     リリカは不思議そうに首を傾げた。これも、ラブリンスターのことを忘れてしまった影響でのことだろうか。
     携帯電話にラブリンスターに直通の電話番号が残っていないか、とリュシールが調査を提案したのだが、こちらも空振りに終わる。
     ベヘリタスについて知っていることはあるかと既濁が問うも、特に有効な情報は得られない。
     どうやら、それぞれが考えていた質問では、これ以上の情報を引き出せないようだ。
    「安全に避難できる場所に心当たりはあるの? 別に、武蔵坂に逃げ込んでもいいけど」
    「だ、大丈夫です! 心配していただいてありがとうございます!」
     フレナディアの言葉に、リリカは慌てて首を横に振った。灼滅者の集まる場所ということで、警戒されているのかもしれない。
    「ならさ、この後、飯でも食いに行かないか?」
    「いえ、ライブが近いので、この後も練習しようと思います。皆さん、本当にありがとうございました」
     昴の申し出を丁寧に辞退すると、リリカは深々と頭を下げ、その場を去っていった。
     静かな夜の街に消える小さな背中。見送る灼滅者達の表情は、どこか複雑な色彩を浮かべる。
     ベヘリタス、宇宙服の少年、ラブリンスター。果たして、事態はどう動くのか――。
     静かな街並みに、未だ朝日は昇らない。

    作者:悠久 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年10月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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