ハロウィン行進に紛れるは

    作者:夕狩こあら

     とある学園の生徒達は、週末に廃校舎で行われるハロウィンイベントに向けた仮装衣装の制作と、教室の飾り付けで大忙しだった。
    「お客さんも沢山来てくれるといいなー」
    「そうでないとお菓子が貰えないからね!」
     古びた廊下も彩りを増して賑やかに、既に衣装を完成させた生徒達は、列を成して本番さながらの行進を楽しんでいる。
    「コラー! 出来たなら飾りつけを手伝えー!」
     教室からはそんな叱責の声も投げられるが、廊下を行く彼等は悪戯な笑顔を浮かべたまま練り歩く。
    「みんな結構、本格的に作ったんだね」
    「あれなんて本物っぽい!」
     行列を成した中には、気合十分に制作したか、本当と見紛う程の出来栄えを見せる者も居り、
    「実はオバケが加わっていたりして」
    「人数が増えているとか……」
    「なにそのホラー!」
     生徒らは楽しそうに笑うものの、喜々として話を深めれば、サイキックエナジーを受けて実体化するのは、間もなくの事であった――。
     
    「廃校舎の廊下を、ハロウィン衣装に身を包んで行進していたら、いつの間にか1人増えていて……それが本物のオバケだった! というホラーは、都市伝説となって実体化するッス!」
     教室に集まった灼滅者らを前に、暗~い顔をしていた日下部・ノビル(三下エクスブレイン・dn0220)が、クワッと顔を上げると、廃校舎の構内図を手渡して説明を続けた。
    「灼滅者の兄貴と姉御らには、この廃校舎に潜入して、週末に開催されるハロウィンイベント前に都市伝説を灼滅して来て欲しいんスよ!」
     生徒達の仮装行列を成功させる為に、灼滅者らが先に仮装した状態で廊下で行列を成し、都市伝説を誘き出して灼滅して欲しい。
     全員が仮装必須という訳ではないが、「行列」を成す為にも人は欲しいところだ。
    「廊下を歩いていたら、いつの間にか人数が増えている筈なんで、そいつが都市伝説ッス!」
     くれぐれも仲間を攻撃せぬよう注意したい。
    「巨大なカボチャを頭に被った都市伝説は、ファイアブラッドに類する攻撃技と、手に持った大鎌を咎人の大鎌の如く使ってくる事が分かってるッス」
     戦闘時のポジションはキャスター。
     黒いマントを翻してフワフワとヒラヒラと、気味悪い立ち回りで灼滅者を翻弄してくる難敵だ。
    「接触地点は廊下なんすけど、気付かないフリをして教室まで行進を続けて誘導する事も出来るッス」
     戦場は廃校舎の中で、灼滅者の人数や陣形で有利な場所を選びたいところだ。
    「敵がカボチャ頭っすから、仮装衣装はカボチャ以外がお勧めッスよ! 同志討ちに注意して、本物だけを灼滅して来て欲しいッス!」
     ノビルはそう言いながら、颯爽と席を立つ灼滅者らに敬礼を捧げた。
    「ご武運を!」


    参加者
    乾・舞斗(硝子箱に彷徨う者・d01483)
    東郷・時生(天稟不動・d10592)
    ガーゼ・ハーコート(自由気ままな気分屋・d26990)
    二荒・六口(ノクス・d30015)
    新堂・桃子(鋼鉄の魔法使い・d31218)
    日章・宵(一五白夜の数え唄・d33198)
    今瀬・ルシア(光風・d33211)
    朔頼・小夜(東天紅に浮かぶ月・d33951)

    ■リプレイ


     秋の高き空を茜に染めゆく黄昏。
     天蓋に泳ぐ鱗雲も頓て宵に融ける光と闇の境界を、逢魔が時とは言うたもの。
     廃校舎より睦まじげに去る生徒達と入れ違いに、人知れず身を滑らせた黒影は、鍵を忘れた窓に青白い指を這わせると、ギッ、と軋む音に紛れて装束を翻した。
    「無用心だな」
     薄暮に影を伸ばす廊下に忍び入るは、殭屍――に扮した二荒・六口(ノクス・d30015)。
     彼は己の額に貼った霊符を微風に遊ばれて振り向くと、
    「校舎に忍び込むなんて、ちょっとワクワクしちゃうわね」
     音もなく着地して嫣然を零す妖狐――東郷・時生(天稟不動・d10592)に頷いた。
     ふわふわ狐耳ともこもこ尻尾は愛らしく、花魁風に着崩した着物姿は妖艶と、悪戯な笑みを浮かべた目尻の紅も鮮やか。
     妖に続くは魔か、
    「廊下で仮装して行列になれば、都市伝説は出てくるんだったね」
     ローブにウィザードハットという古典的な西洋魔女を装った新堂・桃子(鋼鉄の魔法使い・d31218)が、鍔を持ち上げて花顔を晒すと、
    「これなら……きっと、仲間と……思って、くれる筈……」
     一同の仮装にふわり微笑む朔頼・小夜(東天紅に浮かぶ月・d33951)は対して和風の魔法使い。薄桃色の振袖に濃紺の袴、三角帽子にマントを羽織る、小粋なハイカラさんだ。
    「包帯ぐーるグールぐる。ミイラってこんなカンジかな?」
     今瀬・ルシア(光風・d33211)の仮装は友人の助力を得て何とも入念。色白の柔肌を白布に包み、ヒタヒタと歩く様は中々肝が冷える。
     否、肝が冷えるのは彼女が怪談を紡ぐ所為で、
    「ホラほらー、怖いヨネ? 散っちゃって!」
     百物語『可愛さ10倍増し』に雑霊が騒めけば、空気も凍えよう。
    「……皆さん、素敵な仮装ですねぇ。楽しくなりそうですよぅ」
     間延びした声で嬉々と袖振る日章・宵(一五白夜の数え唄・d33198)が扮するは雪女。
     彼女の両唇を擦り抜けるは吹雪に代わる百物語で、人を遠ざけた一同は愈々行列を成して廊下を歩き出す。
    「最初は七人で行進だねー」
     増える前に数を確認する手指が肉球なのは、ガーゼ・ハーコート(自由気ままな気分屋・d26990)が化け猫となっている所為。リアルな猫の被り物の下に声をくぐもらせた彼女は、リズム良く点呼を取りながら薄暗い廊下を歩き出した。
    「1、2、3、4、5、6、7……1、2、3、4、5、6、7……」
     その装いと廃校舎の雰囲気も相俟って、一人ずつ結ぶ言は何処か儀式的で呪術的。
     窓に差す斜陽が、生徒らが飾り付けた教室を赤く染めきって空際に消えると、遂に闇が忍び寄る。
    「1、2、3、4、5、6、7……1、2、3、4、5、6、7……」
     夜の帳が一同の影を隠し、行進が不気味さを増した頃――、
    (「あ、あれ……」)
     DSKノーズで業を嗅ぎ分けていた小夜が、鼻腔を擽るカボチャの香りに思わず細顎を動かそうとした。
     これは――。
    (「小夜」)
     彼女の微細な変化を察した時生が、振袖の端を摘む。
     他の仲間もまた気付いたか、用心深く点呼を聞けば、
    「1、2、3、4、5、6、7、ハチ……」
     やはり……増えている。
     都市伝説『パンプ』の出現を耳に捉えた行列は、そのまま或る教室まで行進を続けると、一同の到着を待つ乾・舞斗(硝子箱に彷徨う者・d01483)に8体目を差し出した。
    「まあ、ハロウィンはダークネスの季節ですから、当然の様に湧いてくる……」
     ドアが閉まり、照明が灯されると、闇を這った影が敵の黒衣を縛る様が浮かび上がる。
    「正直、キリが無いですけど、頑張って退治しようと思います」
    「イギギギギャッ!」
     犀利な黒瞳に射抜かれたパンプは、漆黒の外套に包んだ躯をギチギチと揺らし、痛撃に声を絞りつつ――嗤っていた。


     教室に誘い込む事で物理的に囲繞し、初撃の足止めに成功した灼滅者は、戦闘の主導権を握るべく追撃を駆る。
     間髪を容れず、阿吽の呼吸で剣戟を重ねたのは時生と六口。
    「行列に誘われて現れるなんて可愛らしいわ」
    「あぁ」
    「襲ってさえ来なければ、ね」
    「――同感だ」
     天駆けた双翼は闇黒の触手に縛されたパンプを眼下に敷きつつ、右より螺穿槍を、左より神薙刃を繰り出して、疾風の鋭刃に錐揉む。
    「ケギギィッ!」
     刻まれた黒衣より闇を燻らせたパンプは、そこから腕を伸ばして大鎌を暴くと、虚無の刃に斬撃を振り払い、奇声を上げて反撃に出た。
    「ヒィィィホォオオゥッ!」
     三角眼に灯火を差し、奇怪な笑みを象る相形が近付けば、対峙するは2枚の盾。
    「ハロウィンに南瓜頭のお化けが出てくる……都市伝説っていうかそのまんまだね」
     桃子は迫り出る大鎌の妖光に抗雷撃を突き入れて相殺すると、
    「ネタがわかってそれを灼滅するっていうのは、夢がないというか、なんていうか……」
    「グギギギ」
     閃光を散らして真向かう敵影に言を零す。
     抗衡する両者に割り入ったガーゼは、鬼神変にて押し返し、
    「カボチャの下はどうなっているのかなー」
    「ギケケケッ!」
     胴に減り込む爪撃は寧ろ猫パンチか、暗黒の躯をくの字に折り曲げたパンプは、フラフラと後退して宙を泳ぐと、今度は頭部をグルリと回して炎の奔流を解き放った。
     怒涛と迫る烈火は忽ち教室を熱に包むも、3枚目の盾が自陣へのダメージを許さない。
    「皇……皆を守って。……ね?」
     魂を分つ小夜の声を背に前進したビハインドの皇は、霊障波に壁を成しつつ、防護符を配って耐性を敷く主の時を稼ぐ。
     それと同時、荒ぶる灼熱を裂いて疾駆する舞斗は地の利を得たもの。
    「お借りした身ながら、存分に戦わせて頂きます」
     先刻の待機中、教室を戦闘に差し支えないよう片付けていた彼は、成程立ち回りも俊敏で、火の海に踊るパンプを雷光閃く拳打に捉えた。
    「ギギギッ、ギギッ!」
     闇の衣を波立たせ、衝撃を往なそうと身を捩る敵躯には、スナイパーが抑えに回り、
    「サウンドを聞く耳ある? てユーか、その頭にナカミある?」
     ルシアはソニックビートを弾いてカボチャ頭に音波を流し込む傍ら、
    「今より語るは『鞠つきマリちゃん』……おいでませ、ですよぅ」
     宵は歌うような調子に乗せて小気味良く七不思議奇譚を紡げば、両者の奏でる異質の旋律にパンプは翻弄される。
    「イギッ、イギギギィ!」
     底気味悪い嘲笑を浮かべる暗黒の口から、怒りに似た笑声が聞こえたのは寸刻の後。
    「ケケケ……ケケ!」
     パンプは身丈程もある大鎌を冴月の如く輝かせて薙ぐと、波動となった斬撃が真一文字に疾走して、敵懐へと潜る六口を斬った。
    「ッ、!」
     閃く筈だった拳の闘気が致命傷を避けたものの、纏う黒装束より血潮を噴かせた彼は、更に翻る切先を眼前に見る。
    「トリック・オア・トリック!」
    「させないよー」
     ゴロンと床に転がったのは、仲間の首ではなく、猫の被り物。
     麗顔を晒したガーゼは猫耳を付けて尚仮装を成立させる周到ぶりで、気怠げに語尾を伸ばした彼女は然し颯爽と、迫る斬撃に斬影刃を切り結んで敵のダブルを妨げた。
    「いろは、回復はお任せしますよぅ」
     即座に床を蹴った宵は、随行する相棒の翼猫いろはの光るリングを見届けると、自らは更に飛翔し、敵の頭上より流星の煌きを撃ち込む。
    「妖魔の和洋対決ですぅ」
    「ギギギャ、イゲゲゲ!」
     超重力に圧された敵躯には、続く時生の閃拳が雨落つ如く稲光を堕とし、
    「ハロウィンにはまだ早いわよ、南瓜頭さん。大人しく灼滅されなさい」
     せっかちねと微笑みながら、漆黒の外套より血繁吹く如く闇を噴かせた。
     衝撃と絶叫が耳を劈くも、戦闘音を軍場に檻した自身である――攻撃は至極苛烈。
    「グギギギギ……ギケケッ!」
     黒霧さながらの闇を放出して教室を深淵に沈めたパンプは、満身に走る激痛にも嗤って翻ると、断罪の刃を振り下ろして死を突きつける。
     月牙の如く幽光を放つ弧が迫れば、桃子は之に婚星の軌道を合わせて十字を結び、
    「いっくよー! せーのっ!」
    「カカカカッッ!」
     魔法使い乍ら格闘術に優れた彼女ならでは、刃撃と蹴撃の衝突は熾烈なる波動を逆巻いて教室を揺らした。
    「凄い、衝撃波……!」
    (「折角のみんなの仮装……破けないようにしなきゃ」)
     小夜は猛風に揺れる艶髪を項に押し当てながら、鋭き風刃より一同を守るべくラビリンスアーマーを届け、薄桃色の暖光に包まれた舞斗は自身を颯と化すと、
    「……彼等にとっては自身がトラウマの様な気もしますが」
    「援護するヨー」
     ルシアが弾くマジックミサイルを援護に影喰らいを放ち、ユラユラと浮遊するパンプを丸ごと黒闇に飲み込む。
    「ギャギギッ! ギギギィ!」
     暗黒に覆われた視界に飛び込むは、禍々しきトラウマと虹色の尾を引く鋭き光矢。
     之にはパンプも笑声に苦痛を滲ませ、カボチャ頭をグルグルと回した。


     闇の訪れと共に邂逅した魔と魔が、廃校舎で繰り広げる死闘はまるで妖怪大戦争。
     フワリと浮かぶカボチャ頭に、殭屍や妖狐、化け猫に雪女、和洋を揃えた魔法使いにミイラも加われば、その絵は壮観だ。
     元より彼等の行軍に惹き付けられたパンプは、灼滅者の技という技に翻弄され、嘲弄を湛えた顔貌以上に苦境へと追い詰められている。
    「これでもくらえっ」
    「ケギギギッ!」
     大鎌の間合いを優に潜って鋼鉄拳を撃ち込む桃子も闘い慣れたもの。幼く小柄な躰から繰り出たとは思えぬ脅威の打撃に、敵躯はフラフラと後退させられ、
    「そちらへ行かれては困ります」
    「イギッ、クゲゲッ!」
     ウィザードローブ【サイレント・ナイトレイド】を翻した舞斗は神速で脇に回り込むと、飾り付けられた黒板にぶつかりそうになるパンプに斬影刃を差し入れて衝突を阻んだ。
    「カガガガッ、カカッ」
     引き裂かれた衣より暗黒を漏らしながら一転したパンプは、焔を巡らせた刃を迫り出して反撃に出る。
    「トリック! トリック!」
    「安心しろ。オレ達が返すのもトリックだけだ」
     灼熱に輝く刃撃に頬を灼かれるも怯まず、六口がオーラキャノンに相殺すると、刹那、爆風と轟音を擦り抜けたガーゼがパンプの頭に鋭爪を走らせた。
    「やっぱり、カボチャの下が気になるなー」
    「るぅはお味が気になるヨー」
     彼女の斬撃の意を組んだルシアの狙いも敵の頭部。
     猫の如く嫋やかに駆けたガーゼの斬影刃に続き、ルシアが縛霊撃にてカボチャ頭を捕らえれば、衝撃にグルンと首を回したパンプが遂に頭と胴を切り離す。
    「ヒィィッホォォウ!」
     好奇心、或いは食欲が暴いた姿は――首なくしてマントを翻す闇の塊。
     床に転がったカボチャからは尚も笑声が響き、黒霧を噴き出してゴトゴトと動いた。
    「どちらが本体とは……とりあえず、武器を持っている方を仕留めますねぇ」
     怪異面妖な光景にも宵は冷静で、前衛へと翼を翻すいろはの回復量を見極めながら、自身はフワリと浮かぶ胴体を煉獄の焔で枷する。
    「ケギギギギィ!」
     闇すら灰と消さんばかりの焦熱に呑まれたパンプは、闇雲に大鎌を振って焔を拒むも、
    「みんな、のハロウィン……邪魔しちゃ……だめ……!」
     小夜の想いに身を躍らせた皇は霊撃にて刃撃を防ぎ、主はレイザースラストを衝き入れて狂乱に踊る敵躯を折り曲げた。
    「カカッ! カカカカッ!」
    「小夜、ナイスアシスト!」
     感情の絆を緻密に繋いだ時生は、仲間が作った好機を逃さない。
     彼女は碧天を帯びる【風信子心】に地を蹴ると、繊麗なる躯を風花の如く翻し、
    「トリック・オア・トリート!」
     宙を漂う闇の衣を漆黒の踵に捉えて灼く。
    「キギャギャギャッッッ!!」
    「お菓子で帰らない悪い子は、私の炎で浄化してあげる」
     紅炎を迸らせたパンプは更に蒼炎に包まれると、全身の闇を愈々灼熱に喰われ、天井に届く頃には塵灰と消えていた。
     床に転がって奇声を上げていたカボチャ頭が沈黙したのは――間もなくのこと。


     闇を払い、不敵な笑声を失すれば、静謐に佇むはジャック・オ・ランタン。
    「もぐモグしちゃおっと! いっただっきまーすっ」
     それもミイラの触手……否、ルシアが手を伸ばして食べてしまえば、悪さもするまい。
     彼女は秋の味覚を愉しみながら都市伝説を吸収するつもりであったが、
    「……ぶーっ! 何コレ無味ダヨ? 聞ーてナイよコンナのー! ぶーブー」
     味せぬものは中々に辛かろう、頬を愛らしく膨らませて文句を言っていた。
     斯くしてパンプは灼滅され、或いは吸収されて姿を消せば、
    「一件落着……かな……?」
     ほう、と安堵の息を吐いた小夜が、負傷の具合を確認すべく一同を見渡す。
     彼女と視線を合わせた時生はゆったりと頬笑み、
    「謙虚で優しい貴女がメディックに居てくれたお陰で、安心して攻め込めたわ」
     と、信頼の言を受け取った小夜も絆の強さに佳顔を綻ばせた。
    「可能な限り荒らさないよう気をつけて戦ったつもりだけど、片付けていこうか」
     大きく伸びをして桃子がそう言えば、舞斗は戦闘前に撮影した教室の画像を差し出し、
    「生徒達に怪しまれぬよう、元の通りにしましょうか」
     配置を間違えて彼等を驚かせぬよう、気配りも充分。
     一同は疲労を感じる間もなく復元に取り掛かり、
    「これは?」
    「右側のカーテンですねぇ……お手伝いしますぅ」
     高所は六口が軽快に昇って装飾し直し、彼の下ではオーナメントを抱えた宵が丁寧に配置を確認する。
    「何だか、お祭りに……参加してる、気分……」
    「飾り付けの作業も楽しいものね」
     人体模型にリボンを結わえる小夜の隣では、時生が骨格標本に三角帽子を被せて頷き、
    「週末は愉しいイベントになりそうネー」
     蝙蝠を吊るしていたルシアは、ハロウィンの雰囲気を取り戻していく教室に咲う。
     因みに、その口にはスルメが咥えられており、
    「欲しい人いればあげるよー」
     見ればガーゼが渡したのだろう、駄菓子用のポット容器を抱えた彼女は、戦闘で汚れた箇所がないか確認して回っていた。行く先々で手が伸びるのは、本人が見るからに美味しそうに齧っているからに他ならない。
    「次が最後だな」
    「これでお仕事は終わりですねぇ……お疲れさまでしたぁ……」
     天井に蜘蛛の巣を付けた六口が降りて来ると、労いの言に迎えた宵が破顔し、ここに漸く制勝の感を得る。
     画像と照らし合わせていた舞斗も細顎を持ち上げて微笑すると、
    「あとは我々が都市伝説にならないよう、身を隠して撤退するだけですね」
    「確かに……よりそれらしくなってしまったからね」
     桃子は激闘にリアル感を増した衣装を摘んで頷き、これには皆が苦笑を零した。
     平穏を取り戻した教室を見渡したガーゼは、齧っていたスルメを手に祝福の言葉を残すと、
    「Happy halloween」
     と、笑顔を贐に踵を返す。
     それから一同は静寂の裡に戦場を後にしたようだが、闇夜に紛れた彼等の影は、高みに浮かぶ月桂すら見つける事は出来なかったという――。
     

    作者:夕狩こあら 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年10月22日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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