●鬱屈された暴力の果てに
『ヒヒヒ、あー、楽しいぜぇ。こんなにも暴れるのが楽しいなんてよぉ!!』
ニヤリと笑みを浮かべながら、血濡れの拳を握りしめる羅刹。
その脚元には、無差別に転がる人、人、人……路地裏は、まさしく地獄絵図。
その倒れた人達にはゴロツキだけでなく、若者とかも含まれている。
『まったくよ、破門がなんだってんだ。天海だなんてくそ食らえだ! これまで暴れられなかった分、今まで以上に暴れまくってやるぜ!! 安土城怪人様、バンザイ、ギャハハハ!!』
笑い声を上げる羅刹は、腕をまたグルングルンと回しながら、更なる被害を広げていくのであった。
「皆さん、集まりましたね? それでは早速になりますが、説明をはじめさせて頂きますね」
と、五十嵐・姫子は、集まった灼滅者達に一礼をすると共に、説明を始める。
「先日、使者を送ってきた天海大僧正。その勢力に動きがありました。闇堕ちした刺青羅刹の『依』から、再び学園に連絡が入ったのです」
「その情報によれば、天海大僧正は『人間の殺害の禁止』『人間を苦しめる行為の禁止』『灼滅者と遭遇時は、戦わずに逃走する事』の3つの命令を配下に出していた様なのです。ですが、それを不満とする粗暴な羅刹達は、天海大僧正の勢力から離反していってしまいました。更に彼らは、安土城怪人側の勢力に寝返ってしまった様なのです」
「離反した羅刹は、既に破門されたのですが、彼らが人間を襲う危険性は高いでしょう。そして依りが寝返った羅刹達の情報を、私達武蔵坂学園に連絡してきたのです」
「そして、この情報を元にして、安土城怪人側に寝返り、暴れる羅刹の事件が特定出来ました。なので、この羅刹を灼滅し、被害を未然に防いで欲しいのです」
そして、続けて羅刹の詳細な戦闘能力について、続けて説明する。
「羅刹は一体……この羅刹は暴れるのが好きで、周りに居る一般人を見境無く殺して回っています。その活動エリアは、陰鬱な雰囲気漂う繁華街の裏路地です」
「たった一体ではありますが、羅刹の戦闘能力は、皆さんと互角以上の戦いを繰り広げることが可能です。主たる攻撃はまさしく脳筋と言うが如く、その鋼よりも固く、痛い拳で殴る事と、凄い勢いで繰り出される蹴りです。一撃一撃の威力が馬鹿高いので、下手に喰らえば即重傷の可能性も十分あるのでご注意ください」
「後は、先ほども言った通り、周りには繁華街があり、下手すると一般人達が迷い込んでくる可能性がありますので、その点もご注意ください」
そして、最後に姫子は。
「このままでは、粗暴な羅刹が人々を殺し回る事になります。どうか粗暴な羅刹を倒し、人々を護ってください」
と、頭を下げるのであった。
参加者 | |
---|---|
室崎・のぞみ(世間知らずな神薙使い・d03790) |
檮木・櫂(緋蝶・d10945) |
成瀬・ピアノ(敬天愛人・d22793) |
犬良・明(中学生人狼・d27428) |
仮夢乃・流龍(夢を流離う女龍・d30266) |
天道・白野威(描き出すは筆のしらべ・d31873) |
庄治・メアリー(耳はどこかに置いてきた・d33846) |
シエナ・デヴィアトレ(ディアブルローズルメドゥサン・d33905) |
●暴力
天海大僧正の勢力から破門されし羅刹。
多数現れた離反した彼らは、安土城怪人側に寝返り続けていると言う。
「全く……同族の離反者が続出するだなんて、天海さんも苦労しているみたいですの……」
と、シエナ・デヴィアトレ(ディアブルローズルメドゥサン・d33905)がぽつりと呟くと、そうだね、と仮夢乃・流龍(夢を流離う女龍・d30266)は。
「羅刹か……かなり凶悪そうな相手。でも殺戮を楽しむなんてのは許せない! 気合いを入れないとね!」
と、拳を握りしめる。
離反羅刹が繰り広げているのは、周りの一般人達を見境なく殺し回るという……自分の欲望にただただ忠実な行動。
そんな行動に、檮木・櫂(緋蝶・d10945)が。
「しかしこれ……まるで子供だよね」
と肩を竦めると、それに庄治・メアリー(耳はどこかに置いてきた・d33846)、成瀬・ピアノ(敬天愛人・d22793)、犬良・明(中学生人狼・d27428)に、天道・白野威(描き出すは筆のしらべ・d31873)も。
「そうだね。どこにでも堪え性のない暴れたがりっているもんだしね。でもそういった御仁には、早々にご退場いただかないとね」
「うん。止めなくちゃ。あれは……戦いたいっていうよりは、単純に暴れたいだけなのよね。だから、狙うなら弱い者の方が楽なんだ。弱い私達がそれを阻もう。これだけ集まらなくちゃ、アレの相手をするのもきついような、弱い私達が。戦う力の無いような、本当に弱い人たちの為に。私達は戦うんだから」
「ええ。一般人の方を一方的に殺戮する羅刹……絶対に許せないです」
「人々を虐殺するような穢れに慈悲は必要ないわね。確実に祓うわよ」
と、気合いを入れる。
……そんな仲間達の言葉に、ふと室崎・のぞみ(世間知らずな神薙使い・d03790)が。
「しかしこれ……何となく……うまく利用されている気がしないでもないですね……」
ふと呟いた一言に、流龍とシエナが。
「確かに……そうだね。羅刹自体は自分の欲望を満たしてくれてありがとう、って思っているのかもしれないけれど、安土城怪人は、願ったり叶ったりなのかもしれないね」
「しかし天海大僧正自体も不思議です。申し出は拒否したにもかかわらず、人間に危害を加えない事や、武蔵坂学園とは敵対しないような動きを見せて、それに反感した配下を破門する……まるでこうなる事を見越していたのではと思うと、申し出がされた時から、天海や依の思惑の上で動かされていたのでは……と」
「そうですの。何らかの思惑があるとは言え、こちらが拒絶した申し出の内容を護ってくれているのにままならないものですの」
「うん……まぁ、何にせよ、このまま放置しておく訳にも行かないし、さっさと倒しちゃおう!」
と流龍が改めて拳を握りしめ、気合いを入れ……そして、羅刹の出現するという、裏路地へ。
その入り口に、メアリーが持ってきた、緊急工事中につき通行止めの看板を設置し、向かった。
●心より悪に染まる
『ヒヒヒヒ……あぁ、楽しいぜ。こんなにも暴れるのが楽しいなんてよぉ!! 今迄あの馬鹿坊主のせいで我慢させられ続けていたしな。こうやって拳を思う存分振り回せるゼェイヤッホォォ!!』
そして、裏路地の一角で、高笑いを上げる羅刹。
思う存分力を振りかざすことが出来て、満面の笑み。
そして、そんな羅刹に次々とぶちのめされている一般人達。
『う、うう……た、助けてくれぇえ……』
と……死屍累々の光景の中、救いを求める一般人達の悲鳴も響く。
そんな裏路地に到着した灼滅者達。
「っ……!!」
と、一般人と羅刹の間に立ち塞がり、そして。
「ふむ……自分より、弱い者としか戦えないのですね?」
「そうね……本当、子供ね。自分が勝てる相手と戦って、勝って喜んでいるだなんて……井の中の蛙を体現してる様ね」
と、明と櫂が挑発の言葉を放つ。
と……その挑発の言葉に。
『あぁん、何だとてめぇら! もう一度行ってみろやゴラァ!!』
と、ギロリ睨みつけ威圧する。
が、勿論そんな威圧に怯む灼滅者達ではない……更に。
「全く、反論はその程度? 主を替えても、頭の悪さは全く変らないのですね?」
「そうですね。そういえば、羅刹ってこういう感じなんですよね? 数百年も生きていれば、性格が落ち着いてくるんでしょうか? ……私も羅刹として、数百年位生きたら、あんな落ち着いた感じになれるのでしょうか……ともかく、天海やラゴウと比べれば未熟。遅れは取りませんよ」
明、のぞみの言葉……そして、構えると共に。
「誰も死なせませんし……私も倒れたりしません!!」
と、気合いと共に、バトルオーラを纏うのぞみ……他の灼滅者達も次々と戦闘態勢を整える。
そして、先手の一撃を叩き込むのは流龍。
「さぁ、悪事もここまでだ! 徹底的にいたみつけてやる! 皆、行くよ!!」
と威風堂々たる立ち振る舞いで構え、そして先手のグラインドファイアを叩き込むと、合わせて小竜も、顔を晒すで攻撃。
続く櫂、ピアノのクラッシャーが、ラビリンスアーマーで盾アップと、レイザースラストの狙アップで、強化。
そして、ジャマーのシエナがソニックビートで妨アップすると、合わせてスナイパーのメアリーもレイザースラスト。
そして白野威が後列に白炎蜃気楼を付与し、妨アップ。
最初のターンは、一通りの自己強化。
そんな灼滅者達の動きに、羅刹は。
『このやろぉ、オレを怒らせたらどうなるか、思い知らせてやらぁ!!』
と怒りと共に、拳を大きく叩きつけてくる。
……流石に、力を振るうことを求めていた羅刹だから、その一撃はとても強力。
その攻撃を明が受け止めつつ、カウンターで幻狼銀爪撃。
『ちっ!!』
咄嗟に一歩距離を取る羅刹、そして攻撃を受けた明を、即座にのぞみがシールドリングで回復を施す。
そして、明は。
「ふうん……やっぱりその程度ですか。やっぱり、頭の足りない羅刹には、暴れるしか能が無いのでしょうね」
と明に、ピアノがこくこくと頷きつつ。
「だからやっぱり、弱い人しか相手に出来なかったのかな? ……羅刹といっても、残念な羅刹ですね」
と……。
更なる挑発の言葉に、羅刹は貌を更に真っ赤にして。
『うるせえ、うるせええええ!!!!』
烈火の如く怒り狂う羅刹。
冷静さを失った羅刹は、攻撃力は高まるものの……命中率は下がる。
でも、その攻撃に。
「つうっ! 流石に一撃が強い。予想以上だ!」
と吐き捨てる流龍。
羅刹の攻撃は前にいる櫂、ピアノ、明、流龍、小竜を無差別に攻撃し、どんどんと体力を削っていく。
しかし、そんな羅刹の猛攻は。
『ゥオオオオオォォーーーン!!』
と、白野威の白炎蜃気楼と、のぞみのシールドリングによって程なく回復。
そして、攻撃を受けていない灼滅者達が、左から、右から攻撃。
1対8の数の差と、冷静さを欠いた攻防で、羅刹の体力は加速度的に現象……そして約10分の後。
『ぐぁ……っ!』
くぐもった声と共に、片膝崩れ墜ちる羅刹。
「ほら、どうしたの? もう終わりなの?」
と、流龍がニコリと笑いながら言い放つと、羅刹はくそっ、と唾を吐いて。
『うるせえ! くっそ……今日は調子が悪かっただけだ!! 本当の本気を出せば、お前らを倒す事なんて朝飯前なんだよ! 今日は、これくらいで許してやらぁ!!』
……その言葉と共に……脱兎の如く逃げようとする羅刹。
でも、その逃げ道に立ちふさがる白野威。
「どこに行くのかしら? 逃げるの? 逃げるという事は、自分が弱いと認めるという事よ、情けないわね。ここで尻尾を巻いて逃げて、その後にあなたの居場所はあるのかしらね?」
と、白野威の言葉に、ぐっ、と唇を噛みしめる羅刹……そして。
「都合が悪いから逃げるの? さすがに暴れたいだけの脳筋の出来はすごいんだね。負けるのが嫌……全然強くないじゃん」
「ほんと、そうですわね。意気揚々と戦い始めたくせに、危なくなったら逃げる……途中で逃げる位なら、最初から天海さんの指示通りに逃げておけば良かったのに」
メアリーとシエナも、辛辣な言葉を言い放ち、決して逃がさない。
逃げること叶わず、羅刹は……破れかぶれでの反撃。
「全く、仕方ないね……一気にたたみかけちゃおう!」
と流龍の言葉に、櫂、ピアノのクラッシャー二人が頷き、ピアノが渾身の鬼神変の一撃。
その一閃が、羅刹の片半身を一刀両断にし、そして櫂が。
「これで、トドメよ!」
と、雲櫂剣の一閃が横に薙ぎ……羅刹は、断末魔の悲鳴と共に、崩れ墜ちるのであった。
●羅殺
「ふふん、当然だね! 羅刹なんかに負けたりはしないよ!」
と、勝ち誇った表情と共に、ナイフをクルクルと回し、腰の鞘にしまいつつ、決めポーズ。
しかし……羅刹と戦った疲労はとても大きかったようで、一瞬の立ちくらみに、その場にしゃがみこんでしまう。
「ん……大丈夫?」
と櫂が心配して言葉を掛けると、あはは、と笑いながら。
「大丈夫大丈夫。でも、さっすがに強かったなー……身体が痛いよ……早く帰って寝よう……」
そんな流龍の言葉にくすりと笑う櫂。
……そして、後片付けという事で、建てた看板と、戦闘の痕跡をできる限り片付けるメアリー。
一通り片付け終われば、早々にガラの悪いその場を後にする。
……そして。
「しかし、破門された羅刹……ただ暴れるだけしかできないのなら、まだ良い方なのですが……いずれ、知恵の回る羅刹も、破門されてしまうのでしょうかね?」
と、ふとした明の疑問。
それにシエナとピアノは。
「十分、あり得る話ですわね……天海大僧正に付くことに、メリットを見いだせなくなれば、これから先に続々と離反していく可能性は十分にあり得るでしょう」
「そうだね……そうなれば、戦いは更に難しくなりますね。人質を取ったりする事もあるかもしれません」
「ですわね……今は、一人ずつ倒していきましょう」
と頷き合い……そして灼滅者達は、その場を後にしていくのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年10月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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