ちらりとむしと

    作者:陵かなめ

    「ち、ら、ラララ、ラ、りずみぃ♪」
    「りーずみぃ♪」
     小さな旅館の宴会ホールで、アイドルの巡業ライブが開催されていた。
     10数名の声援を受け、短いプリーツスカートとようやく胸が隠れるかどうかのトップスを身に纏ったアイドル少女が笑顔で踊る。
     彼女の名は地良・りずみぃ(ちら・―)。キレのあるダンスと、明るい笑顔が売りの自称、真のアイドルだ。
     そして、ラブリンスター配下の淫魔アイドルでもある。
    「らら……、え、なに?」
     りずみぃが次の曲を歌いだそうとしたその時、突然ホールのドアが破壊された。
     飛び散るドアの欠片と響く破壊音。その奥から姿を現したのは、赤と黒の醜い大きな蟲だった。
    「ちょ、この真のアイドルである、私のライブを邪魔するなんて、って」
     羽虫は問答無用でりずみぃに飛び掛る。
    「もう!! ライブがめちゃくちゃじゃないの!! このままじゃ貴重なファンの皆さんが怪我をしちゃう! えぇいっ」
     そう言ってりずみぃは後方に飛び、窓を突き破って会場の外に出た。羽虫も一般人に構うことなくリズミィを追いかける。
    「くっ。こ、この私にこんなことをして、あのお方が、許さない……。? あ、え? あのお方って……誰だったっけ?」
     誰かに助けを求めようとしたのに、それが誰だか分からない。
     呆然とするりずみぃに羽虫が飛びつき、そのまま彼女は連れ去られてしまった。
     
    ●依頼
    「大変な事が起こっているんだよ」
     須藤・まりん(高校生エクスブレイン・dn0003)は集まった灼滅者達にそう切り出した。
     『宇宙服の少年』が、都内で路上ハグ会を開いていたラブリンスターを襲撃、その絆を奪って連れ去ってしまったのだ。
     星野・えりな(スターライトエンジェル・d02158)達が、いち早く気づいてラブリンスターの行方を追ったのだが、羽虫型ベヘリタスに邪魔されて追う事はできなかった。
     更に、絆を奪われて混乱するラブリンスター配下の淫魔達を、羽虫型ベヘリタスが襲撃、連れ去ろうとし始めていると言う。
    「それで、皆にはこの襲撃を迎撃して欲しいんだよ」
     ダークネス同士の争いなので一般人などの被害は無い。けれど、ベヘリタスの動きを放置する事はできない。ラブリンスターの行方も気になるが、まずは、ベヘリタスの攻撃を迎え撃つことが必要だろうとの事だ。
    「今回連れ去られようとしているのは、地良・りずみぃって言う淫魔だよ。彼女を襲うのは、成長した羽虫型ベヘリタス。形は羽虫型ベヘリタスなんだけど、大きさが3m弱まで成長していて、戦闘力もかなり強力になっているみたいなんだよ」
     羽虫型ベヘリタスはシャドウハンターとバトルオーラ相当のサイキックを使う。出現数は一体だが、その力を甘く見る事はできない。
    「ええと、それから、地良・りずみぃは主にダンスで戦う淫魔だよ。真のアイドルを自称しているみたい」
     りずみぃは、戦闘が始まると灼滅者に後を任せて逃げ出そうとする。しかし、ダンスを褒めたり真のアイドルとおだてたりするなど、上手く説得できれば一緒に戦ってくれるだろう。他にも、上手い説得方法があれば考えてみるのも良いかもしれない。
     まりんは説明を終えたあと、少し難しい表情を浮かべた。
    「成長した羽虫型ベヘリタスを見る限り、ベヘリタス勢力の戦力はかなり強大になっている感じがするよね。嫌な予感がするんだよ」
     ともあれ、目の前の敵を何とかしなくてはいけない。まりんは再び尺滅者たちを見る。
    「みんな、頼んだよ。よろしくね」
     そう締めくくった。


    参加者
    近江谷・由衛(貝砂の器・d02564)
    アリス・クインハート(灼滅者の国のアリス・d03765)
    相羽・龍之介(焔の宿命に挑む者・d04195)
    美波・奏音(エルフェンリッターカノン・d07244)
    椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)
    新路・桃子(ビタースキート・d24483)
    白峰・歌音(嶺鳳のカノン・d34072)
    陸・舞音(高校生ご当地ヒーロー・d35449)

    ■リプレイ


     旅館では、地良・りずみぃのコンサートが開かれていた。
     もうすぐ羽虫型ベヘリタスの乱入があるに違いない。灼滅者達はその時を静かに待っていた。
    「繁殖の次は人さらいかよ。ダークネスだけど」
     白峰・歌音(嶺鳳のカノン・d34072)が腕組みをして空を見上げる。敵の行動がさらおうとする方になるのは気になるところだ。
    「喰い止めないと酷い事になりそうな気がする」
     ホールからは、明るい歌声が漏れ聞こえてきている。
    「ラブリンスター達には、戦争で助けられました。相手が誰だろうと受けた恩は恩。きっちりそれには応えたいですね」
     助けられた恩返し、それが相羽・龍之介(焔の宿命に挑む者・d04195)の行動理由だ。
    「あたしはりずみぃちゃんのダンスを見たいかな。一緒に踊ってみたいし」
     淫魔のキレのあるダンスとはどんなものだろう。美波・奏音(エルフェンリッターカノン・d07244)はウキウキしながらギターを構えた。
    「りずみぃは自分のファン達を守ろうとした。その『真のアイドル』としての心意気、助太刀するぜ!」
     椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)が両の拳を打ち鳴らす。
     奏音と武流は互いに顔を見合わせた。
    「りずみぃさんにとってライブのステージは自分の『居場所』のはず。それを邪魔するベヘリタスは許せません」
     2人の近くで陸・舞音(高校生ご当地ヒーロー・d35449)は控え目にそう主張した。
     そうして、ホールのドアが破壊される音が響く。
     続いて旅館の窓が勢い良く突き破られた。
     そこから飛び出してきたのは、短いプリーツスカートとようやく胸が隠れるかどうかのトップスを身に纏った少女だ。そして、彼女を追うように黒と赤の大きな羽虫が現れた。
    「くっ。こ、この私にこんなことをして、あのお方が、許さない……。? あ、え? あのお方って……誰だったっけ?」
     着地したりずみぃが呆然と自分の顔を指でなぞる。
     瞬間、羽虫が脚を大きく振り上げ少女に向かった。ギチギチと不快な音が聞こえる。
     その羽虫の横っ腹を、近江谷・由衛(貝砂の器・d02564)が思い切り殴りつけた。
    「ギ……」
     羽虫の巨体が揺らぐ。
     由衛は着地と同時に霊力を網状に放出して敵を縛り上げた。
    「え――?」
     りずみぃが驚きの声を漏らす。灼滅者達が次々に飛び出した。
    「武蔵坂学園のものよ。覚えているかしら?」
     りずみぃを背に庇いながら由衛が声をかける。
    「ひどいモッシュもあったものです」
     興奮した客が暴れまわったどころの騒ぎじゃないと、新路・桃子(ビタースキート・d24483)がシールドを広げながら言った。
    「どうやらちらりんをお狙いの様子ですし、これじゃライブが再開できねーです」
    「あ、貴方達、一体何のつもりで……」
    「アイドルが中座てのは手短にしませんとお……借りもあるですし手伝いますよ?」
     警戒するように羽虫と灼滅者を見比べるりずみぃに向かって桃子は爛々と光る鬼灯色の目を向ける。
    「えーと」
    「大丈夫ですか……? 助けにきました……! りずみぃさんの違和感……べヘリタスさんの親玉さんの仕業なんです」
     アリス・クインハート(灼滅者の国のアリス・d03765)もりずみぃに駆け寄った。
     ギチギチギチ、と。
     動きを止めていた羽虫が足を動かし身体を捩る。
     アリスはクロスグレイブの全砲門を開放し、光線を乱射して羽虫を凪いだ。
     ベヘリタスが受けた傷を庇うように少し身を引く。
     その間に、龍之介は戦いの音が漏れぬようサウンドシャッターを展開させた。


     舞音はウロボロスブレイドを綺麗に繰り敵を見据えた。
     普段の引っ込み思案な様子から一変、大胆にブレイドをしならせる。
     まだ会場にファンの人達が彼女を待っているかも知れないから。
     まだ間に合うかも知れないから。
    「りずみぃさん、力を貸します。あなたの居場所を取り戻すために!」
    「そ、そうなの。あは☆ みんな、私のためにありがとう♪ それじゃあ、私は~」
     自分が襲われた事、助けが来た事を理解したりずみぃは、あからさまな作り笑いを浮かべじりじりと後ろに下がっていく。
    「助けに来た。出来れば力も貸して欲しいけれど、無理にとは言わない」
     逃げようとするりずみぃに由衛も声をかけた。
     ギチギチと、羽虫型ベヘリタスが身を起こす。
     3メートル近い躯体を見上げると、その色合いも、形も、どれも不快なものでしかなかった。
    「え、えーと。それって」
     りずみぃは足を止め振り返る。
     羽虫型ベヘリタスが身を反らし、口元から何らかの体液を吐き出した。
    「きゃぁ?!」
    「危ない、こちらへ」
     すぐに龍之介がりずみぃの手を引き、そのダメージを引き受ける。じくじくと、毒が身体に入り込んできた。流石に、強い。
    「ここで倒しておかないと、また別の時に狙われるかもしれません」
    「私が? ええ~。困る~」
    「姉ちゃんここで逃げて、またあの虫にあったら、一人であの虫倒せるのかー?」
     龍之介と敵の距離を取らせるように、歌音がベヘリタスを横から何度も殴りつけた。
    「マギステック・カノン、人さらいをするはた迷惑な虫を駆除させてもらうぜ!」
     歌音の繰り出す、オーラを集中させた拳が、巨大な羽虫を押し戻して行く。
    「う。た、確かにぃ、私は戦う力はちょっぴり弱いけどぉ」
    「――りずみぃさんは、ファンの方を護ろうとして下さってます……りずみぃさんのお気持ち……りずみぃさんのなさろうとしている事……私達にも、それをお手伝いさせて下さい……貴女を待ってるファンの方の為にも……」
     アリスも敵を押し戻す攻撃に加わった。
     影を伸ばし、羽虫に喰らい付く。
    「その足六本全部ケジメしてやるぜェー!」
     更に桃子が盾で敵を殴りつけた。ドスの効いた罵倒と和風のゴシック感がある防具、不穏なオーラを漂わせている感じなども相まって、新感覚サイバーパンク系ヤクザアイドル感があるように思う。
     3人がかりでベヘリタスを押しのけ、一旦距離を取る。
    「貴女は充分、真のアイドルとしての行動をしてくれたものね。お客を守ろうとして、此処まで来た」
     次に由衛が敵を飛んで蹴り上げた。
     皆、りずみぃが一般客を庇って会場から飛び出て来た事を知っている。
    「ただ……歌も踊りも、とても上手だと聞いていたから。戦闘ででも見てみたいと思ったの」
    「あ、あらぁ。私の歌と踊りをそんなに?」
     りずみぃが気分を良くしたようにもじもじと短い服の裾を握り始める。
     ギチギチギチ。
     再びベヘリタスが起き上がった。
    「ミュージックスタート! 派手にイくわよ!」
     その前に、奏音と武流が飛び出てくる。
     奏音はギターをかき鳴らしステップを踏んだ。その動きに合わせるように武流が跳ぶ。
     同時に敵を打ち、蹴り、息を合わせて攻撃を叩き込む。
    「取り戻したいんだろ?奪われた『大切なもの』を」
     武流は言う。ここで逃げても同じ事だと。会場で待っている『大切な人達』を守りたいのだろうと。
    「だから加勢するぜ。速攻で片付けて、ファンのみんなに元気な顔を見せてやろうぜ!」
     仲間達も、攻撃を繰り出す。
     ――ギチギチ、ギチ。
     傷を負い、しかしベヘリタスは大きく足を構えた。
     まだ戦いは終わらない。


    「あー! もう、分かったわよ! そんなに私のダンスが見たいなら、一緒に戦ってあ、げ、る☆ 特別なんだからね!」
     りずみぃは観念したように腕組みをし、灼滅者達の真ん中へ降り立った。
     それを見ながら由衛が咎人の大鎌『朱散花』を構える。
     一緒に戦って欲しいと説得したが、淫魔に入れ込んでいるなどと言う事は無い。ただ、少し前に卵を植えつけられたアンブレイカブルを見た。あの光景は、やはり気分の良いものではない。
     そして、ベヘリタスは特に嫌いな個体だ。
     絶対に好き勝手させはしない。
    「ここで、倒す」
     短く言い捨て、由衛は地面を蹴って敵の斜め上までジャンプし、大鎌を振るった。
    「りずみぃさん!」
     アリスは嬉しそうにりずみぃを見る。
     ラブリンスターも、その仲間達も、大切な『お友達』だ。だから、助けなければと。
    「りずみぃさんを……羽虫さんの苗床になんかさせません!」
     アリスの手元で【Vopal sword Ark】の電子音が鳴った。アームドクロックワークスから大剣状に変形したヴォーパルソードを引き抜く。
    「苗床?! それは、やだわ~」
    「はい!」
     空色の光焔の刃を展開し、アリスは駆けた。
     ギチギチと、蠢くベヘリタスの足を踏みつけ足場にし駆け上る。
     狙うのは霊魂と霊的防護と。刃を突き立て、切り捨てた。
    「貴女の協力があればきっと勝てます!」
     龍之介は毒に犯されながらも己の片腕を半獣化させ、敵の身体に鋭い銀爪を突き立てた。
    「分かったわよ! この私が手伝ってあげるんだからね。貴方達もしっかりしてよね☆」
     背後にりずみぃの声を聞きながら、容赦なく敵の身体を引き裂く。
     もう何度目か、ギチギチと、羽虫が不快な音をたてた。
     ベヘリタスの身体からクラブのスートが浮かび上がり、傷が癒えていく。
    「もう! せっかくのライブ、よくも邪魔してくれたわね! 私の歌が聞きたかったら、チケットを買って客席で大人しく、えっと、声援はあってもいいけど、とにかく応援するだけでいいのよ!!」
     それを見て、りずみぃがひらひらと舞い敵に迫った。
     しなやかに伸びる手足はやはり見事だ。彼女が踊るたび服の裾が持ち上がり、ちらちらと魅惑的な身体が見え隠れする。りずみぃは空を蹴ったかと思うと裏拳で敵を叩きながらダメージを与え、さらに踊る。まるでリズムを打ち出すように、軽やかに見えるその一撃は、ベヘリタスの身体を地に叩き付け地面にめり込ませた。
    「なんだ意外と強いんだな! あのでっかいのを一撃で吹き飛ばすとか」
     武流はそれを見て素直に感心する。
     ベヘリタスを倒すまでは行かないけれど、りずみぃの攻撃はそこそこの威力で効いたと思う。
    「俺も助太刀するぜ! 奏音は回復よろしく」
     武流は奏音を見た。舞音が頷き返す。
     互いにやるべき事を確認し、ステップを踏んで飛び回る。
     武器に炎を宿し、武流は大きく振りかぶって飛び上がった。
     まだ敵は地に伏したままだ。
     勢い良く武器を振り下ろし、炎を叩き付ける。
     炎がベヘリタスの身体に燃え移った。
    「舞音ちゃん、一緒に回復の歌を歌うよ!」
    「はい!」
     一方、奏音は舞音に声をかけた。
     響く奏音のギターに合わせ、2人は龍之介へ向けて癒しの歌を歌う。
     奏音の歌は傷を大きく癒し、メディックである舞音の歌は毒を消し去った。
    「素晴らしい、心に響く歌声ですよー」
     2人の歌を聞いて桃子が歓声を上げた。今まで敵に向けていたヤクザアイドル感を一瞬引っ込め、2人の歌を盛り上げる。
     武流と奏音は息もぴったりに戦場を駆けた。
    「2人とも、凄いです」
     舞音は羨望の眼差しを2人に向けた。初めての戦いで、2人が自分を気づかってくれている事にも気付く。
     ギイ、ギイ。
     羽虫が再び足を蠢かした。
     だが、その様子は今までとは違っている。
     身を持ち上げる事が辛いのか、ベヘリタスは地を這うように身を低くしてゆっくりと移動した。
    「おいおいおい。詰めるか詰むか、もう仕舞いだなぁ、ええ?!」
    「これで最後だぜ!」
     桃子と歌音が武器を構え、敵との距離を一気に詰めた。


     歌音はエアシューズに炎を纏わせダッシュする。
    「お前の相手は、こっちだぜ!」
     敵に肉薄し、間近で大きく足を回転させた。
     ギチギチ、羽虫は不快な音を立て更に姿勢を低くする。歌音の身体を避けようとしたその先に、盾を構えた桃子が待ち構えていた。
    「そらよぉ」
     この攻撃が、今は一番良く当たる。
     桃子は確認するように盾を握る手に力を込め、力の限り殴り飛ばした。
     敵の身体がひっくり返る。
     その真上に、歌音がいた。
     大きく回転させた足で地面を蹴り、跳んでいたのだ。
    「そぉりゃーっ!」
     虫の息とはまさにこの事。
     体力を奪われ、消えかけている羽虫に、最後の一撃を叩き込む。
     気合と共に歌音が蹴り付けると、へべりタスは力尽き消えていった。
    「ふう。よしよし。何とかなったわね」
     りずみぃがほっと息を吐き出す。
     戦闘力がそれほど高くない彼女にとって、やはり脅威だったのだと、口には出さないけれど由衛は思った。
    「りずみぃちゃん、ハイタッチ」
     奏音が両手を挙げると、りずみぃが肩をすくめた。
    「仕方ないわねぇ。特別サービスよ、と、く、べ、つ」
     ちょっとだけ、二人の手が触れる。
    「今度あなたのライブにも招待してね?」
    「チケットを買って入場してねぇ」
     にこやかに笑い、りずみぃは皆に投げキッスを放った。

    「ラブリンスターさん――りずみぃさんの大切な方のお名前です……今は思い出せないかもしれませんけど……もし、私達のお手伝いが必要なら、いつでも――」
     アリスはラブリンスターのCDと手作りのマカロンをりずみぃに手渡した。
     それには、学園や自分の連絡先のメモも添えてある。
    「もし手助けが必要なら手伝わせてくれないか?」
    「『宇宙服の少年』『絆のベヘリタス』『シン・ライリー』に気をつけてほしい」
     武流や龍之介も連絡先を彼女に手渡した。
     そして、仲間の淫魔も狙われている事も伝え、龍之介はプロデューサーに『事態の解決のために話がしたい』と言伝もした。
    「あは☆ アイドルはファンから連絡先を渡される事があるって、聞いた事があるわ! これも、私が真のアイドルと言う事よね。で、も☆ そうそう簡単にアイドルから返事が来るなんて思わないでよね、くす」
     りずみぃは営業スマイルを浮かべ、連絡先を楽しげに受け取った。
     彼女が動くといちいち服の裾が持ち上がり、無駄に色んなところが見えそうだ。
     戦闘中は気にならなかったが、流石に目のやり場に困る。
     龍之介はりずみぃからちょっと目を逸らしてやり過ごした。
    「これがここに導いてくれたです。彼女がアイドルを好きにしてくれたです。絆ですよ」
     桃子もCDをりずみぃに渡した。
     ドキドキ☆ハートLOVEのCDを見ながら、りずみぃが首を傾げる。本当に、覚えていない様子だ。
    「また虫に襲われるかもしれないから仲間と連絡取って警戒した方がいいぞ」
    「そぉねぇ。私はこれから、どうしよっかなあ。でも巡回ライブもまだまだあるしい」
     歌音の忠告に、りずみぃが夜空を見上げた。いかにもアイドルがしそうな仕草だった。
    「皆さん、心配してますよ? ……私もあなたのダンス見てみたいですし」
     会場の様子を確認していた舞音が、戻ってきてりずみぃを呼ぶ。
    「くす。私はファンの皆さんのところへ戻るわ。今日は楽しかった☆」
     りずみぃがくるりと一度回転し、笑顔を向けた。
     それが彼女なりの礼であったと、灼滅者達は思う。
     一つ事件が終わり、皆は学園に帰還した。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年10月30日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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