●子爵襲来~夢の痕
三重県、津市、時刻は深夜。
時間もあり、ちょっと薄気味悪い洋館は静けさに包まれ、不気味な雰囲気が漂う。
が……いつもは静かな洋館は、今日は……何か違う。
そして、その洋館から、次の瞬間……飛び出してくるのは、多数のタトゥーバット。
彼等は夜の津市上空を飛んで行く……そして、夜の街を偶然歩いていた若者達に、襲い掛かる。
『わ、な、なんだ! や、やめろぉおおお!!』
絶叫が、夜中の津市に響き渡る。
が……その絶叫と同時に、周りの民家、家の中からも、同じく絶叫が、響き渡っていった。
「皆さん、集まっていただけた様ですね。それでは早速になりますが、説明を始めさせて頂きます」
と、野々宮・迷宵は、集まった灼滅者に真摯な表情で話し始める。
「今まで、タトゥーバット事件について、多くの灼滅者の皆さんが調査してきました。そして……そのタトゥーバットの動きが、三重県は津市で現われたのです」
「三重県津市にある、洋館の一つが、タトゥーバットの主人であるヴァンパイアの拠点となり、そこから津市全域へ、タトゥーバットが放たれる、というのが見えました」
「このヴァンパイアの洋館へと突入する作戦も並行して行われるのですが、タトゥーバットが街に放たれるのは間違いありません。そしてこのタトゥーバットは、津市の市民の方々を全て殺し尽くそうとしている様なのです」
「このままでは、津市の市民の方々はタトゥーバットに殺されてしまいます。そうさせないためにも、皆さんは、津市に向かい、このタトゥーバットの襲撃を、阻止していただきたいのです」
そして、迷宵は続けて詳細な敵との状況を説明する。
「タトゥーバットですが、体表面に描かれた、眼球状の呪術紋様により、魔力を強化された、コウモリ姿の眷属です。空中を自在に飛翔するタトゥーバット……人間の可聴域を超えた超音波を放ち、擬似的な呪文詠唱を行い、数々の魔法現象を引き起こします」
「又、その肉体に描かれた呪術紋様は、直視した者を催眠状態へと引きずり込む魔力を帯びているので、注意して下さい」
「そんなタトゥーバットですが……相手にする数が多い模様です。皆様が相手にするタトゥーバットの数は12体。敵の数が多いうちは、苦戦は免れません。素早く敵の数を減らす事が、この作戦の重要なポイントとなると思います」
「全部を倒す事は、かなり難しいと思います。一体でも多くのタトゥーバットを倒せるよう、皆さんで協力して頂ければと思います」
そして、迷宵は最後に、再度皆を見渡しながら。
「……このままでは、津市に住む市民の方々の多くが殺戮される事になってしまいます。どうか皆さんの力を結集し、タトゥーバットを倒してきて下さい。宜しく御願いします」
と、深く頭を下げた。
参加者 | |
---|---|
長姫・麗羽(シャドウハンター・d02536) |
綾峰・セイナ(銀閃・d04572) |
長沼・兼弘(キャプテンジンギス・d04811) |
小鳥遊・優雨(優しい雨・d05156) |
月島・立夏(ヴァーミリオンキル・d05735) |
日輪・瑠璃(汝は人狼なりや・d27489) |
白藤・幽香(リトルサイエンティスト・d29498) |
有城・雄哉(高校生ストリートファイター・d31751) |
●夢の終わり
三重県は津市、深夜の刻。
すっかり陽も落ち、肌寒くなる……秋の一時のそんな街角に、灼滅者達はたどり着く。
「全く……なんだか大変な事になったわよね」
「……そうだね。こんな事で、三重県に戻ってくるとは思わなかったな」
綾峰・セイナ(銀閃・d04572)の言葉に、空を見上げながら有城・雄哉(高校生ストリートファイター・d31751)が頷く。
何の変哲も無い筈の津市……しかし今、灼滅者達は、武蔵坂学園の命を受け、町に散る。
それは……ヴァンパイアの配下であるタトゥーバットが、津市全域に放たれるというもの。
例えタトゥーバットであったとしても、一般人からすれば脅威の存在であるのは間違い無い。
そんな脅威の存在が、深夜ヴァンパイアの命令を受け、一般人を殺し回ってしまう……それだけは、止めなければならない。
「本当、無差別殺戮だなんて迷惑な事ですねぇ」
「ええ。目的のために無差別に大騒ぎするなんて、迷惑なヴァンパイアね」
「全くヴァンパイアって奴は自分勝手なのが多いッスよね。カタギい手を出すっちゅうやり方も気に入らネーし絶対阻止!! つっても大元を叩かんとイカンし、そっち対応の皆に期待みたいな」
日輪・瑠璃(汝は人狼なりや・d27489)、白藤・幽香(リトルサイエンティスト・d29498)、月島・立夏(ヴァーミリオンキル・d05735)らの会話に、長沼・兼弘(キャプテンジンギス・d04811)も。
「そうだな。本隊は暁月達に任せて、人々の救助は俺達がやろう」
「そうね。メインの方は別班に任せて、こっちは目の前の蝙蝠を撃ち落としきりましょうか」
「ええ。あっぱらぱーなボスは襲撃班に任せて、私達の仕事をはじめましょう」
そんな仲間達の言葉を聞きつつも、長姫・麗羽(シャドウハンター・d02536)が。
「それにしても、これが子爵の一部か……なら随分と強力な相手だよね。そんな相手を動かすという事は、余程の思いと理由があるのかな?」
と軽く首を傾げると、小鳥遊・優雨(優しい雨・d05156)が。
「そうね……ただ、どうしようもないとは思います」
「だろうね。たとえばオレらの戦力を削ぎたいとか、かな? 当人は意識していなくても、上手く動かされている節はありそうだね」
「きっとこの子爵は、いい様に踊らされている事に気がついてはいないのでしょう。これも誰かが作った台本の筋書き通りで、私達は手のひらで踊らされているのでしょう」
「うん。まぁそうだとしても、それに載らないと行けない時もあるもんだしね」
「ええ。だから今はまだ役割を演じ、踊っておきましょう。これによって誰が得をするのか、損をするのか……ただ引きこもって中々姿を現さない吸血鬼達を引きずり出すには丁度いいですから」
優雨と麗羽の言葉に、雄哉が頷く。
「……そろそろ時間だね。避難場所は何カ所か目星はつけておいたよ。とはいえ蝙蝠の姿形をしているので、防ぐことは中々難しいけど」
「そうだな……飛び回る敵だもんな。まぁ、こっちとしてはきっちりやりきる以外に答えはないだろう。さぁ来い、蝙蝠ども。キャプテンチンギスが相手だ!」
と、拳を握りしめた兼弘。
そして灼滅者達は、町に拡がるタトゥーバットを灼滅の為に、急ぎ町へと向かうのであった。
●町の闇に飛ぶ
そして、タトゥーバットの飛来する夜。
灼滅者達は津市内を歩き回る……すると。
『や、やめろ、やめてくれぇええ!!』
と、響く叫び声。
その叫び声に、灼滅者達は声の元へ急行……すると、タトゥーバットに襲われている若者達数人の姿。
タトゥーバットは12匹……その身体に描かれた呪術紋様が、夜の闇の中に不気味に瞬く。
「ヤッベ、マジ多いッス。気合い入れるッスよ!!」
と立夏の言葉に、周りの灼滅者達も一気にスレイヤーカードを解放。
そして、襲われている若者と、タトゥーバットの間に割り込むと共に。
「ここは危ない、他の人の指示を聞いて避難するんだ!!」
「そう、さぁ早く!! 走って!!」
兼弘と瑠璃が一般人に叫びながら、殺界形成を発動。
恐怖心に駆られた一般人達を、更にセイナがプラチナチケットを使用し、関係者であると認識させた上で。
「こっちよ! 早く逃げて!!」
と、幽香、雄哉と共に、襲われている一般人達をその場から引き離し……先に決めておいた避難場所まで連れ出していく。
勿論、タトゥーバットは逃げていく一般人を追いかけようとするが。
「ヘヘ、ここはオレに任せて欲しいじゃんみたいな☆」
ニヤリと微笑み、立夏はとりあえず、目の前で一般人に襲いかかっていたタトゥーバットへ。
「燃えろ! リッカァァァ!!」
と、燃える拳で、レーヴァテインの一撃を叩き込む。
それに合わせるようにして、麗羽、優雨、瑠璃もタトゥーバットに対峙すると共に。
「さてと……ここから先は通さないよ」
「ええ。行きたいのならば、私達を倒してから行く事です」
「そうですね。これ以上、無差別殺戮はさせませんよ。幽世の力よ、闇より生じし存在を封じよ!」
と言い放ちながら、麗羽がシールドバッシュ、優雨がレイザースラスト、瑠璃が除霊結界を展開。
更に兼弘は。
「銃は嫌いだが……飛んでくる相手にはもってこいだろう?」
と良いながら、後方から断罪転輪陣で攻撃する。
……そんな灼滅者達の初撃に、タトゥーバットは一端距離を取り対峙する。
その肉体に描かれた呪術紋様を直視しないよう、敢えて少し視線をずらす。
そして、12匹がバサバサと翼をはためかせ……次の瞬間、次々と彼らは灼滅者へと攻撃してくる。
「っ……!!」
蝙蝠の激しい猛攻に加え、更に羽根を擦り合わせながら、超音波を放ち、更に擬似的な呪文詠唱を行い、魔法の効果を及ぼす。
灼滅者達の数よりも多いタトゥーバットの猛攻で、大量のバッドステータスが蓄積……更にダメージも付与されていく。
「っ……!」
「い、痛いッス!!」
と、唇を噛みしめる麗羽と立夏、そしてランスロッド。
そして、どうにかタトゥーバットの攻撃一巡をやり過ごした灼滅者……ディフェンダーの麗羽、立夏、ランスロッドはボロボロである。
「大丈夫か?」
と、兼弘が速攻でラビリンスアーマーで回復と盾アップを麗羽に付与し、一方立夏は。
「コォォォッ、波紋の呼吸ッス! 嘘ッス!!」
と言いながら、集気法で自己回復。また麗羽も、自分にワイドガードでBS耐性を付与し、耐える耐性を整え、ランスロッドも自分自身にフルスロットルで回復する。
……でも、三者、体力全開にまでは至らない……それだけ、タトゥーバットの攻撃は、厳しいという事。
そして、ディフェンダー陣に対し、クラッシャーの優雨が。
「出来れば、早急に叩きつぶして行きたい所ですね……決して、油断は出来ませんが!」
と言いつつ、ブレイドサイクロンを叩きつければ、瑠璃はジャマーポジションを生かして。
「極寒の冷気に震えなさい!」
と、フリージングデスを続けて、決める。
無論、全ての攻撃は、ターゲットは一匹に固定……まずは一匹、速攻撃破を狙う。
更に次のターン……流石にディフェンダー達は、防御に重きを置いて対峙。
とはいえ、防御優先の灼滅者達を、更に多勢に無勢で攻撃。
「これは……中々厳しいな」
「そうッスね……あ、ヤベッス……!!」
と言いながらも、敵の攻撃を集中し過ぎないように、時々ディフェンダーがディフェンダーを庇う様に動く。
……三分、四分、そして、五分。
『グゥッォオオオン……!』
と、そのタトゥーバットの一撃に、ランスロッドのエンジンが停止。
『ランスロッド! これは拙いッスよ!!」
と立夏が言ったその瞬間。
「……お待たせ!!」
と、一般人を避難させていたセイナ、幽香、雄哉が戻ってくる。
「よ、良かったッス。それじゃー一気に行くッスよ!!」
とニコリ笑い、立夏は拳を振り上げ、そしてまた手近なタトゥーバッドへレーヴァテインの一撃を叩き込み、やっと一匹を撃墜。
……残るは11体。
「流石、タトゥーバットね……ならばまずは、動きを鈍らせて静かにして貰おうかしら?」
と幽香が尖烈のドグマスパイクで攻撃すると、セイナも螺穿槍で壊アップを付与。そして雄哉は殲術執刀法で攻撃する。
一匹倒した事に、ほんの少し勢いを取り戻す灼滅者達。
とは言え、まだまだタトゥーバットの数は自分達を上回っている……厳しい戦いが続くのは、間違い無い。
更に六分、七分、八分……。
何とか更に1匹を倒して、残る10匹となるが。
「はぁ、はぁ……っ!!」
と、立夏がかなり息を荒げており、疲弊も激しい。
「大丈夫?」
「へ、ヘヘ……中々、厳しいッス……! で、でも負けられないッスよ!!」
セイナの言葉に立夏が苦笑しつつも、拳をぐっと握りしめる。
しかし、そのターン……タトゥーバットの強力な一撃が、立夏に左から、右からと集中砲火。
「ぐあっ……!!」
その一撃に、崩れ墜ちた彼。
「っ……させないわ。冬の寒さより冷たいわよ、食らいなさい!」
それに追撃を加えようとしたタトゥーバットへ、至近からのコールドファイアで撃退する幽香。
倒れた立夏を護るよう、彼を護る様に前衛の優雨、幽香、麗羽、セイナがタトゥーバットへ扇状陣で対峙していく。
「後9匹……か」
「そうね……」
麗羽の言葉に、額に汗を流すセイナ。
とは言え、このままではまだ、引き下がれない……気合いを入れると共に、灼滅者達は、残るタトゥーバットを相手に奮闘する。
……そして、戦闘開始してから数十分。
どうにか兼弘が戦線を維持する様、天魔光臨陣やラビリンスアーマーで回復に尽力した結果、綱渡りの状況ではあるものの、タトゥーバットは残り、後一体まで減らす。
最後の一体となったタトゥーバットが、かなり上方をバタバタと飛び、灼滅者達へのバッドステータスを付与しながら、回避の方向で蠢いている。
しかし、そんなタトゥーバットに、幽香が。
「……翼ごと断ち切っちゃうとするわ」
とタトゥーバットに対し、深く踏み込み、跳び、神薙刃の一閃を振り上げる。
片翼を切り落とされ、体勢を崩したタトゥーバット……だが、迎撃の呪文詠唱を行い……そのまま幽香は地上へ落下。
同様にきりもみ状態で落下していくタトゥーバットに、優雨が。
「……これで、トドメです」
と、渾身のグラインドファイアを叩き込み……最後のタトゥーバットは消滅した。
●去りし傷跡
「……ふぅ、どうにか、終わった、ッスね……」
息を切らせて、ニコリと笑みを浮かべる立夏。
「そうね……中々、厳しい……戦い、だったわね……」
と、幽香も倒れ込んでしまう。
……流石にタトゥーバットが12体ともなれば、心底疲弊するのも仕方ない。
そんな立夏と幽香の方を、セイナと兼弘が抱えるようにして。
「……一応、俺達の受け持ちは完遂した訳だ。後は……仲間達もしっかりとタトゥーバットを灼滅してくれる事を期待しようぜ」
そんな兼弘の言葉に灼滅者達は頷き、そして……深夜の津市を離脱するのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:月島・立夏(ヴァーミリオンキル・d05735) 白藤・幽香(リトルサイエンティスト・d29498) 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年11月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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