子爵襲来~夜と造花

    作者:菖蒲

    ●愛情とは、花に例えられる
    「る……瑠架ちゃん僕の瑠架ちゃん。君のために、僕はここまで来たよ。
     さぁ、瑠架ちゃんの為に、この街の人間を全て、血祭りにあげるんだ」
     情愛に濡れて、彼が咲かせる愛(はな)。言葉と共に吐き出されて行く大量の粘液が生み出したのはタトゥーバットたち。
     蠢いて、形を得たタトゥーバットたちは飛び交ってゆく。
     子爵は三重県津市の洋館の住民を『処分』し、己が城を作り上げていた――向かう先は、その『城下町』たる津の街。
     夜闇のカーテンが落とされたその日の静寂は破られる。静かな街を千鳥足で歩く男の眼前へと飛び込んだタトゥーバットが牙を剥く。
     男の身体は紅い液体で染まってゆく。子爵が望んだ『瑠架ちゃん』と逢う為の舞台装置として、命と言う花を散らしながら――ひとつ、ふたつ。
     それは、悪い、悪い――ユメ。
     
    ●introduction
     タトゥーバット事件の続報が出た。三重県津市の洋館の一つがタトゥーバットの主人であるヴァンパイアの拠点となり街へとタトゥーバット達が放たれたというのだ。
    「作戦はヴァンパイアの洋館に突入する作戦と、街に放たれたタトゥーバットを撃破することなの。そうじゃないと、タトゥーバットが市内の人間を殺そうとしちゃうから……!」
     惨い殺戮により街並みが赤く染まる前に、何としても止めなくてはならない。不破・真鶴(中学生エクスブレイン・dn0213)は12体のタトゥーバットの目を住民から引き付けるには『邪魔者』の存在が必要だと告げた。
    「灼滅者の排除を優先するから、避難とかは考えなくて大丈夫なの。
     誰かが不幸になる未来を皆で打ち破って欲しいから……よろしくなの」

     体の表面に書かれた眼球状の『呪術紋様』で魔力を強化されたコウモリの姿の剣族たちは空中を自在に飛翔する。
    「タトゥーバットの数が多い内は苦戦するかもなの。ポイントは素早く数を減らす戦術なのね」
     人間の可聴域を越えた超音波によって擬似的な呪文詠唱を行い、数々の魔法現象を引き起こす他、描かれた紋様は、直視した者を催眠状態に陥れる魔力を帯びているのだという。
     タトゥーバットは灼滅者の『排除』に力を入れてくる。数が多い内はそのバッドステータスや奇妙な鳴き声が耳に残り苦戦を免れないだろう。

    「このままじゃ津市のみんなが殺されちゃう……それは、それは絶対、駄目なの!」
     マナは此処で見てる事しかできないけれど――灼滅者を見詰めるエクスブレインはどうかお願いと頭を下げた。


    参加者
    花蕾・恋羽(スリジエ・d00383)
    花檻・伊織(蒼瞑・d01455)
    狼幻・隼人(紅超特急・d11438)
    鳥辺野・祝(架空線・d23681)
    鳥居・薫(涙の向こう側にある未来・d27244)
    奏森・雨(カデンツァ・d29037)
    綱司・厳治(窮愁の求道者・d30563)
    天道・白野威(描き出すは筆のしらべ・d31873)

    ■リプレイ


     雲間に望む底冷えする程に凍て付いた月を美しいと感じるのは常人の感想だ。街灯にぽつり、ぽつりと寂しげに照らされたアスファルトと暖かさを感じられる民家の灯りが混ざり合い、奇妙なコントラストを作りだす――闇の眷属にとって、人里は眩し過ぎてならない。
     街灯の下では薄氷が如く長い髪も、色を変えて見せる。花檻・伊織(蒼瞑・d01455)は怜悧な氷眸に不快感を乗せ、小さな溜め息を漏らした。
    「宵の空であれ、ここは彼らにとっても眩し過ぎるだろうに……」
     空色の腕章をしっかりと装着し、仲間と共に在るその証左を胸に街を往く彼の装備には『会心饅頭』。
     会心の一撃が出易くなる――そんな饅頭の気配を感じてか、桜色の瞳に羨望を映し出した花蕾・恋羽(スリジエ・d00383)は中央に薔薇を描いたコイン型のチョコレートを頬張りながら腹をきゅうと鳴らす。
     主人の胃袋事情を良く良く理解しているだろう豆大福が桜の花を飾ったピンと立った耳をへにゃと折り曲げる。
    「はっ……お腹が空いた訳では決してないですよ! タトゥーバット討伐を頑張らないとっ!」
     慌てた様にキャスケット帽を被り直した恋羽はストライプ模様のスカートを抑え、桜飾りのついたブーツでとんとんと地面を蹴る。
     固いアスファルトの感触に、冷たさと、余りに凍て付く様な空気感を感じとり息を飲む鳥居・薫(涙の向こう側にある未来・d27244)がやれやれと明るい髪を掻き上げる。
    「派手にやらかしてくれたじゃねーか子爵さんよぉ……」
     やる気を漲らせ、格好良い青年風を吹かせてみた物の――明らかに腹を空かせた同行者にタッパーに詰め込んだ菓子を手渡す辺りが『家庭的』な面を表している。無論、今回やる気を漲らせているのは『子爵』の行いを許せないからだけでは無い。
     ちらりと視線を向けた先で懐中時計を眺めた奏森・雨(カデンツァ・d29037)が戦闘の準備を整え始める。
     彼女の手にした『恋患』が――秒刻みの鼓動を思わせて。愛しい恋人の姿にほっと息を付く薫へと感情の解り難い雨の眸が俄かに笑う。
    「――ここで、喰いとめなきゃ」
    「ああ。散らかしてくれたからにはしっかりお掃除しないとな。塵も残さずな!」
     見上げた空に、幾つかの黒が羽ばたいた。目玉を描いた翼に牙を持った蝙蝠。産毛さえも見えてしまいそうな灯りの下でぐぱりと口を開いたタトゥーバットに天道・白野威(描き出すは筆のしらべ・d31873)が警戒し後退してゆく。
     赤い化粧を施して、白と赤を纏った彼女が握りしめた大筆。彼女の纏う色とは違う『黒』で夜を描く様に大きく振り翳し、放たれた神の刃。
    「数が多いって厄介ね……羽音が煩わしいわ」
     狼の耳を模したフードを塞ぐ様な仕草を見せた彼女に同意すると唇だけで笑った狼幻・隼人(紅超特急・d11438)が地面を踏みしめる。足元から伸びあがる翳と共に、『灼滅者』を発見したと跳びこむタトゥーバットの一撃を受け止めた。
    「眷属で一般人虐殺とか、やることがみみっちいのか派手なんかようわからんな」
     キィと鼓膜を揺さぶる様な金切り声に眉根から顰め、不快だと舌打ちを漏らす隼人の様子にもタトゥーバットが単純な数の暴力だけでは無く、一個体ずつ強い事を認識した綱司・厳治(窮愁の求道者・d30563)が契約の指輪を輝かせ合図を送る。
     銀の毛並みを揺らした霊犬が地面を蹴り、警戒心を丸出しにタトゥーバットを受けとめる。隙を探し厳格な魔術士として育てられた彼はゆっくりと魔術を作りだす。
    「子爵級ヴァンパイア、侮りがたい……しかし、今はタトゥーバットに集中すべきか――全力を尽くす」


     からんからんと下駄を鳴らして鳥辺野・祝(架空線・d23681)が鎖に繋がる五寸釘を振り翳す。
    『蝙蝠お化け』による大量虐殺――悪夢の様なその空間。誰ぞの愛が作りだした醜いエゴイズム。
    「これがゆめなら、さまそうか」
     先ずはひとつ、とディフェンダーを打ち破るべきと絶縁(バッドステータス)を振り翳す彼女へと伊織はちらりと視線を向ける。腰元で揺れたライトと、照らす橙色の灯りに放課後の奇妙な夕陽を思い出し彼は小さく唇を噛み締める。
    (「……俺が出来るのは護りではなく、一匹でも多く迅くこの蝙蝠どもを屠るだけだけどね」)
     宙を舞う『蝙蝠』が下りてきて前線に攻撃する合間を見つけた様に攻撃を重ねてゆく。空中戦に向かぬ灼滅者達はより多くを『撃ち落とす』事を目的に後衛に寄った作戦を作り上げていた。
     前線で守り手となるサーヴァント達は、前線の庇い役とし立ち回る隼人と恋羽に絶対的信頼を置いた様にくるくると咽喉を鳴らして居る。
    「さあ、いきましょう。兄様」
     ぎゅっと抱きしめた白兎のぬいぐるみ。呟く彼女のほんわかとした雰囲気が一転し、唇の端から漏れだす吸血種の証。
     耐性を得た恋羽の脳を掻き混ぜる様な『金切り音』に奥歯をぎゅっと噛み締めて。同じ苦痛を味わいながらも赤いバンダナを揺らした隼人は楽しげに笑みを漏らして居る。
     気合で何とかしてやると、笑みを絶やさぬ隼人の掌でぐるりと回った槍の穂先が地面に突き刺さり大きく跳ね上がった。ぐん、と蝙蝠へと接近する彼は「トリック・オア・トリートや!」とへらりと笑みを浮かべる。
    「あー、これはこれでハロインっぽいやつやな? ま、お菓子はやらんし、悪戯(なぐ)るのはこっちやけどなッ!」
    「お菓子はくれてもいいんですよ?」
     こてんと首を傾げながらも桜色のブーツで地面を滑る恋羽が空腹ですとジェスチャーを送る。ころりと咥内で転がした桃のキャンディの仄かな香りを漂わせ、眼前のタトゥーバットに笑みを浮かべた。

    「――高らかに、紡げ」

     記憶を紡いで。ヘッドフォンから流れる音もないけれど、雨は謡う様に攻撃を重ねてゆく。黒猫のフードがずるりと頭から落ち、攻撃を紡ぐ彼女の額から汗が一滴毀れ落ちた。
    (「誰も、殺させたりなんか、しない……!」)
     演技では無い、本心からの言葉を飲み込んで、彼女は敵へと照準を合わす。
     零さずに、落とさずに、無くさずにいる為に――一つ、穿つ。
    「顕れよ――一閃ッ!」
     文様を見ない様に、俯きがちに視線を動かしながら白野威が顔を上げる。無数のタトゥーバットに襲われる前線を回復する役を担った彼女にとって『目を逸らす』ことは何よりも難しい。
     瓢箪がたぷんと水音を跳ねさせる。地面を蹴り狼の様に駆る彼女目掛けて攻撃を放ったタトゥーバットの鳴き声は嗤う様にも聞こえ、耳障りだと厳治は首を振った。
    「お前達は黙るべきだな」
     ふ、と笑みを零す彼の声に呼応する様にキントキが後衛への攻撃を受けとめる。ふわりと尻尾が揺れ、口をあんぐりと開けた愛犬は前線の腹ペコ少女と同じ様にきゅうと腹を空かせた様で。
     食いしん坊で気分屋の相棒にダイエットをさせたものの、今回の大事な局面で働かぬでは支障が出る。ある程度の範囲で食事を与えたが、やはり空腹は強敵か。
    「腹が減ったのか? 花檻先輩が焼き肉に連れてってくれるかもしれないぞ?」
    「え」
     へらりと笑った祝が振り袖を揺らし、凪いだ空気の一筋を掴む様に手を伸ばす。赤い糸を手繰り寄せ、笑った彼女が地面を蹴る。
     何処か困った様な表情を感じさせた伊織は明るい彼女の空気感にほっと息を付いた様に向き直る。ひとつ、ふたつと数を減らしながらも――それで居ても灼滅者達にもダメージが増え続けている。
     前線で息を切らす霊犬達をサポートせんと『縁から生み出された怪物』を見詰めた祝は声を震わせた。
    「子爵と瑠架の関係性に善し悪しを言う気はないし、否定も肯定もしない。
     それはそれとして、他人を理不尽に巻き込むなら殺す。愛してるから、恋してるから、縁も所縁もあるっていうなら、仕方ない。これが愛情表現(それ)だってんなら、そりゃあ迷惑だからお帰り下さいって言うしかないなあ!」
     固いアスファルトとぶつかり合う下駄の音。響くそれと共に鈴の音が混じり合う。
     赤い糸を手繰り寄せ、凍て付く狂気(こおり)を放つ彼女の背後から援護する様に跳んだ一筋の弾丸。
     マジシャンの杖を模したそれをぐるんと掌で回した薫はくつくつと咽喉を鳴らして――前を見据えた。
    「闇の中でもよーく見えるぜ。覚悟しな」
    「闇なんて、払う」
     口を開いた闇の中、逃げ場を喪ったタトゥーバットへ襲い往くのは歌と、焔。
     薫の攻撃に視線を合わせなくとも、言葉が無くとも雨は合わせる。一瞬触れ合うその指先で、感じとったのは『憎悪』
     祝が言う『愛情本位と理不尽さ』。それを元に狂気に走った子爵の行いに雨は看過できぬと静かに憤りを感じていたのだろう。言葉なくとも感じとった薫はその怒りさえも打ち払わんと光の弾丸でタトゥーバットを撃ち抜いた。


     厳治にとって、相見えた敵は如何ともし難い相手だった。
     子爵ヴァンパイアの生み出す愛情(ぞくぶつ)。大量虐殺と言う狂気を孕んだ行い――歪んだ正義感で捉えても、理解しがたい危険因子であることには変わりない。
    「止めるべき……なのだろうな」
     欲望という人間の持つべき感情と、あるべき姿だと思いこんできたダークネスとしての心理が混ざり合う。苦悩しながらも背負い込んだ十字で放った一撃でタトゥーバットがアスファルトへと叩きつけられていく。
    『ギ、ギィ』
     醜い鳴き声を漏らすそれを一気に地面へと縫い付ける様に跳躍した伊織の刃が鈍く光る。
    「宵闇に蘇芳咲かすのは、何もそちらだけの専売特許じゃないよ」
     眼前に存在するのは数にして半数に絞られたタトゥーバット。庇い手となるディフェンダーを優先し攻撃した事は正解だったのだろう。
     庇う事もあり、ダメージの蓄積の多い相手から減らす事で『数』を絞った灼滅者達にとって、残る敵は己たちのダメージを含めた戦いと同義だ。
    「耳の奥が変なってるやろ? 煩い奴らやなぁ……」
     苛立ちを含んだ隼人の声音に耳の奥がキンとして動きを緩めていた祝が小さく頷く。
     苛立つのは、何も攻撃のせいだけでは無い――
    「ひとを理不尽に巻き込むなよ。全部叩き殺す」
     幼い子供が駄々を捏ねるかのような仕草を見せて。ぞわりと揺れた空気の中で彼女が一撃を放つ。
     刹那、動きを止めたタトゥーバットを縫い止めんと恋羽が跳躍する。
     流星の如き動きで落ちる蹴撃と共に咲いた仇花が桜の様にひらりと舞った。
    「これでお終いにしましょう……!」
     傍らでへたり込んだ豆大福の頭を撫でて、サーヴァント達の姿が掻き消える事を不満そうに恋羽は唇を尖らせる。
    「ここで、歩みを止める訳にはいかないのです」
     一歩、一歩前に。彼女にとって行く先が何処にあるのかは分からない――
     少女の背を追い掛けて、齎させる癒しは白き焔がゆらりと揺れる。
    「ゥオオ―――――――――ンッ!」
     腹の底から響き渡る様な慟哭に。狼の声が周囲を揺らす。
     タトゥーバット達から与えられた傷を癒す為に齎された焔の柔らかさに触れながら、白野威は地面を踏みしめる。両の足に感じるアスファルトが自然から離れた事を感じさせ、平和を乱す相手を許すまじと地面を蹴った。
    「言っただろう。全力を尽くすと。無論、その先がどうなるかは云わずとも解るだろうがな」
     小さく笑った厳治の一声と共に、放たれる幾重もの光。重圧さえも感じさせるそれは、後衛の四人が放った一撃一撃。
     重なり合って、混ざり合う。タトゥーバットの身体を切り裂いて、醜い声と共に混乱をきたしたそれを振り払う祝が「おしまいだよ」と柔らかに囁いた。
    「奔流、粉砕」
     そして、紡ぐ――
     雨の言葉の通りにタトゥーバットが一体『粉砕』された。
     残るは二匹。退く様子を見せぬそれは最後まで意地で通すつもりなのだろうか。
     ちら、と視線を向けた厳治は興味深そうにそれを見詰めた。
    (「一体、何者なのか……。朱雀門の差し金か、それとも……」)
     最後の一矢にならんと後衛の厳治目掛けてその身を投じたタトゥーバットを撃ち抜いて、薫が「そっち!」と愛しい恋人を呼ぶ。
    「さようなら」
     囁く声色は、何処か氷と似ていて。
     彼らの用いる『氷』とはまた違う――酷く冷たい響きはタトゥーバットを捉える様にぐねりと揺れた仲間達の影と似ている。
     残り一匹、そう言わずとも誰もが勝利を確信していた。傷を得たのは確かだった。後方へとも狙いが跳ぶ強敵であったのは確かだ――しかし、これで終いだ。
    「……呪いなんですよ」
     恋羽の色付く唇が柔らかく笑う。
     その身に宿した呪いのように――醜くなって落ちて行け。
     人を呪わば、という言葉は確かに存在している。
     呪う様に夜に造花(かれら)を振りまいたそれは跳ね返って攻撃へと転じてゆく。故に、青年は跳ね上がる。冷たいアスファルトを足場にし、塵が押されて宙に舞う。
     ぐんと背筋から伸びあがったベルトがタトゥーバットを捉えて離さない。

    「金輪奈落に沈んでいけ。君たちの主人も、直に逝く」

     その一撃は、凍て付く氷を思わせた。両断される蝙蝠の肢体。目の様に描かれた紋章がはた、と伊織と視線を合わす。
     彼の肩越しにその『目』を見据え、ぞっとした様に唇を噤んだ白野威は曖昧な笑みを浮かべて眸を伏せた。
    「――逝ったのね」
     この事件の首謀者は、此処には居ない。歯痒いと狼の牙を覗かせながら白野威は目を背ける。
     明けない夜は無いけれど、別働隊として動いた学園の仲間達の様子が気になってならない――大元を叩いた訳ではない。一端を倒すに至っただけなのだと恋羽は息を付く。
     傷を得た己の身体から一筋、流れた血潮の赤さにこくりと鳴った咽喉が己の中にある吸血種を思わせる様で彼女は目を伏せた。
    「……お腹空きました、ね」
    「せやなぁ。喧しいと飯の気分にもならん。夜は静かな方がええからな」
     ゆっくりと立ち上がり、痛みを堪える表情を一つ見せながらも笑って見せた隼人は不穏を感じさせる夜を見詰める。
     まだ、夜は長い――醒めないゆめの向こう側に何があるかを祝は知らない。只、『この場を切り抜けた』という証左だけが此処にある。
    「――子爵某とは何者だ?」
     独り言のように呟いて、厳治はゆっくりと立ち上がる。
     夜に散った彼の造り出した愛情(はな)。宵闇の向こう側、かの男は今如何しているのだろうか。

    作者:菖蒲 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年11月6日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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