子爵襲来~津市制圧迎撃戦

    作者:彩乃鳩

    ●津市へと放たれるタトゥーバット
    「る……瑠架ちゃん僕の瑠架ちゃん。君のために、僕はここまで来たよ」
     三重県津市の中心部にある、洋館の一つ。ヴァンパイアの子爵はそこにいた。住人を処分して、自分の屋敷に作り変えてしまった場所に。
    「さぁ、瑠架ちゃんの為に、この街の人間を全て、血祭りにあげるんだ。そうすれば、瑠架ちゃんは、僕に会いに来てくれる。あぁ、瑠架ちゃん……。しばらく見ないうちに、きっと成長しているよね。あぁ、その成長を今すぐ目に焼き付けたい、撫でて触って確かめたい、あぁ、瑠架ちゃん」
     屋敷の中で子爵は、ウゲロロォォと、大量の粘液を口から吐き出す。その液体は、モゴモゴと蠢くと、タトゥーバットの大群へと姿を変えた。
    「さぁ、僕のタトゥーバットよ、この街の人間を全て殺しつくせ! 邪魔する奴がいるなら、誰でも構わない、すぐに殺してしまうんだ」
     大量のタトゥーバット達が、外へと飛び立つ。蝙蝠型の眷属が、津市全域を制圧せんと広がっていく。深夜の空に、怪物達の呪術紋様が妖しく光った。
    「ビビビ!」
     タトゥーバットの一群がやがて、ある建物に目を付ける。
     それは……多くの子供達が寝静まっている、古びた孤児院だった。

    「タトゥーバット事件について、多くの皆さんが調査してくれていましたが、三重県の津市で動きがあったようです」
     五十嵐・姫子(大学生エクスブレイン・dn0001)が、灼滅者達に説明を始める。
    「三重県津市の洋館の一つが、タトゥーバットの主人であるヴァンパイアの拠点となっており。そこから、津市全域に大量のタトゥーバットが放たれます」
     このヴァンパイアの洋館に突入する作戦も同時に行うが、タトゥーバットが街に放たれるのを防ぐことは出来ない。放っておけば、タトゥーバットは市内の人間を全て殺し尽くそうとする。
    「このままでは罪のない市民が次々とタトゥーバットに殺され、全滅してしまう危険もあります。それを防ぐためにも、津市に向かってタトゥーバットの襲撃を阻止して欲しいというのが、今回の依頼です」
     本件のタトゥーバットの数は12体。
     戦闘になると、灼滅者の排除を再優先に行動する。

    「タトゥーバットは体表面に描かれた眼球状の『呪術紋様』により魔力を強化された、コウモリの姿の眷属です。空中を自在に飛翔するタトゥーバットは、人間の可聴域を越えた超音波によって擬似的な呪文詠唱を行い、数々の魔法現象を引き起こします。また、その肉体に描かれた呪術紋様は、直視した者を催眠状態に陥れる魔力を帯びています」
     現場は、深夜の孤児院。タトゥーバット達は、庭から院内に侵入しようとする。そこを待ち構えて、撃退するという形になる。
    「タトゥーバットの数が多いうちは苦戦は免れないでしょう。素早く敵の数を減らす戦術が重要になります」
     今回は敵の数が多い。タトゥーバット達は、最後の一匹まで逃走せずに戦闘を続けるようだ。全てを倒す前に力尽き、こちらが撤退せざるを得ない状況になるということも、充分に考えられる。

    「タトゥーバット事件の黒幕が遂に現れました。そして、このままでは津市の市民の多くが殺戮されてしまいます。皆さんの健闘をお祈りします」


    参加者
    殺雨・音音(Love Beat!・d02611)
    神凪・朔夜(月読・d02935)
    静永・エイジ(影戯のデスペラティオ・d06387)
    須野元・参三(絶対完全気品力・d13687)
    蒼月・桔梗(蒼き剣を持つ翼の花・d17736)
    四刻・悠花(高校生ダンピール・d24781)
    エリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318)
    ジュリアン・レダ(鮮血の詩人・d28156)

    ■リプレイ


    「VITALIZE!」
     四刻・悠花(高校生ダンピール・d24781)が、胸の前にカードを構え解放する。
     その視線の先には、タトゥーバットの群れ。
     件の孤児院の庭内で相手を待ち構えていた灼滅者達は、今まさに闇に蠢く怪物達と対峙する。適当にばら撒いておいた複数のケミカルライトが、庭先を淡く照らす。
    「お前達雑魚には用はない、軽くあしらってやろう。黒幕と対峙するまで倒れる訳にはいかないのでな」
     一応、暗がり対策として装着しておいた、蒼月・桔梗(蒼き剣を持つ翼の花・d17736)のヘッドライトが、蝙蝠型眷属の一団を捉える。
    「ビビビビ!」
     その数は、予知通り十二体。
     体表面に描かれた眼球状の『呪術紋様』が妖しく、灼滅者達を見つめていた。
    「フフーフ、蝙蝠程度束で掛かってきてもこの気品高き蝙蝠ハンターたる私を突破できるものか。孤児院を勇敢に守る私を良く見ておくのだな!!」
     タトゥーバットを迎え撃つために、須野元・参三(絶対完全気品力・d13687)は光源で照らしながら警戒していた。その様は、まさしく気品高く高邁な風貌、だが――。
    「ビビビビビ!!」
    「ひっ!?」
     怪物が瞳を光らせて威嚇してくると、参三は途端に腰を抜かす。本当は気弱で、精神的に脆く感情の起伏が激しい性質なのだ。
    「子爵ちゃんってきもいかも! けどアイドル(違)はこんなファンでも大切にしなきゃだよねぇ~。瑠架ちゃんっ、会ったことも無いけどファイトだよっ」
     付け耳ピコピコ
     なんちゃって勘違いアイドル系、お転婆ハイテンションガール。
     殺雨・音音(Love Beat!・d02611)がサウンドシャッターを発動。周囲が薄暗いため、持参した携行照明も点灯させる。
    「戦闘前の準備や、灯りの確保もお任せしちゃったからね。ここからが、本番だ」
    「庭が荒れるでしょうけど、人命には代えられないわよね」
     神凪・朔夜(月読・d02935)が敵のジャマ―に狙いを定めて、鬼神変で攻め込む。エリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318)も、同じ相手を標的に続く。今回は敵の数が多い。優先順位をしっかりとつけて、確実に敵を減らしていく心積もりだ。
    「ビ!?」
    「ビビ!」
    「ビビ、ビビ!」
     先制して攻撃を受けた、タトゥーバット達の敵意が高まる。ここを通りたくば、灼滅者達が障害となると理解したらしい。すぐに好戦的な数匹が牙を剥き――そこへ静永・エイジ(影戯のデスペラティオ・d06387)が割って入り仲間の盾となる。
    「この背の向こうに守るべき者がいる以上、なんとしても勝たねばならんな。醜悪な蝙蝠など存在自体が害悪だ。子供達が起きて目にする事がないよう早急に叩き潰すとしよう。塵も残さず全て滅するがいい」
     後ろの孤児院を、ちらりと確認した後。
     エイジは目の前の敵に集中。仲間の回復を中心に行動を開始する。
    「穢れも、罪も共に」
     ジュリアン・レダ(鮮血の詩人・d28156)も、スレイヤーカードを開放する。初手に使うのはイエローサイン。敵のバッドステータスを警戒して、耐性を付与しておく。
    「ビ、ビビビ!」
     タトゥーバット達は続々と、孤児院の庭内――灼滅者達の元へと集まっていく。悠花はディフェンダーとして、カバーできるように敵の攻撃に集中する。
    「寄りにも寄って子供の命を狙おうとは!」
     そして、棒を用いて反撃。
     棒。
     棒術に用いる、6尺前後の全て均一の太さで磨いて滑りやすくした断面が円形の棒。そこから、悠花は轟雷の魔術によって、雷を引き起こし蝙蝠の怪物を撃ち抜く。
    「ビビ!?」
     勿論、一番に狙うのはジャマ―の役割たるタトゥーバットだ。
     更に桔梗がスナイパーとして、ガトリング連射で追撃する。ガトリングガンの連射弾が、敵を蜂の巣にせんばかりに火を吹く。
    「次、捕縛を頼む」
    「しょ、承知している」
     参三は怪物の勢いに驚いて、尻もちをついていたが。仲間が戦っている間に何とか起き上がり、イカロスウイングを放つ。ちなみに、使われるダイダロスベルトの名前は、参三グレートブリリアントフリンジだ。広がる翼の如く全方位に帯は放出されて、敵群の動きを纏めて縛り抑制にかかる。
    「ビビビ!」
    「ビビ、ビビ!」
    「ビ! ビ! ビ!」
     捕縛を受けたタトゥーバット達が、もぞもぞと飛び交う。群体の生き物が、闇夜に集まっているような様は生理的嫌悪を刺激するに充分だ。
    「生まれ的に蝙蝠ちゃん達バッチい気がするよ~」
     音音は交通標識を黄色標識にスタイルチェンジし、味方に前衛に耐性を与える。敵の数が多い今回の戦いは、乱戦の態をなしていった。


    (「子爵が大きく動いたわね。この一件がどういう結末を迎えようともヴァンパイア周りの情勢は動くでしょうね」)
     狙うポジションで弱った敵は優先して叩く。
     目安はジャマー、スナイパー、ディフェンダー、クラッシャー……の順で潰すのが理想。
    (「なら、少しでも私達の望む結末を迎える為にも、今此処にいるタトゥーバットを殲滅しないといけないわ」)
     逆にメデックは基本無視して最後に回す。
     敵の数は多いのだから、確実に数を減らしていかなければ。
    「少なくとも他の場所で戦う仲間達の足を引っ張るような真似はしたくないわね」
     いざとなったら、闇堕ちも辞さない覚悟。
     エリノアの妖冷弾が、タトゥーバットを貫き。ジャマ―のポジションにいた一体が力尽きる。この戦いにおける最初の白星。
     手数の差で、今のところ灼滅者達は押され気味ではあるものの。
     仲間に続かんと、朔夜も子爵が生み出した手先にマテリアルロッド――玉兎を振るう。いつだって常闇と太陽と共に。金烏と対になるといわれる兎の名を冠したロッドである。
    「自分勝手な奴はどこまでも自分勝手。嫌だね」
     朔夜は平安より続く、退魔の名家、神凪家当主の実弟だ。
     神凪家は、平安の昔より、力無き人々に仇なす悪を祓ってきた一族で、今回の『子爵』のような自分勝手な欲望で一般人を襲うような輩は唾棄すべき不倶戴天の敵に他ならない。
    「でも黙ってなすがままにさせる筋合いも全く無い訳で。止めさせて貰うよ」
     あらかじめEN破壊は付けてある。
     フォースブレイクの一撃が、敵を殴り飛ばす。同時に注ぎ込まれた魔力によって、身体の内側から怪物は爆破され木端微塵に砕け散った。
    「二体目……」
     しかも、最優先とされた敵ジャマ―は片付いた。
     エイジ達が防護符などによって、BS耐性で仲間を保護していったおかげでバッドステータスの被害も比較的軽微だ。祭霊光のキュアとヴァンパイアミストでの複数名の回復も欠かさない。
    (「下らぬ理由で住処を得るなどヴァンパイアに似合いの話だ。然し一般人を巻き込むのであれば、その存在ごと死滅させるだけの事。私にとって奴等は根絶するべき仇敵である故にな」)
     ヴァンパイアに誇りを傷付けられ、ダンピールになった経緯がエイジにはある。そのため、眷属でも細胞1つ残したくないほど嫌悪は深刻を極めた。
    「ビビビビ!」
    「ここは通せないし、通さないよ」
     ジュリアンのレイザースラストが、孤児院へと向かおうとする一匹を精確に削る。足止めや命中補正系でアシストするよりも、一匹ずつ倒すのが先決だ。
    「わたし達がここで撤退するということは、その命が奪われるということ。仲間も子供達も、誰も殺させはしない!」
     ディフェンダーの悠花は、人一倍多数の攻撃に晒されるが怯むことはない。使用者の周りを滞空する、実体を持たないサイキックエナジーの光輪が敵へと勢いよく射出される。
    「ビビビ!」
     タトゥーバットは飛んできたリングスラッシャーを、紙一重で避けたが。ホーミング機能によって、光の輪は眷属の動きを追尾。敵スナイパーは翼を切断されて、動かなくなる。
    「ビビビビビビビ!」
    「ビビ! ビビビ!」
    「ビビッツッツッ!」
     たて続けに同族を討たれたタトゥーバット達は、警戒心を強めたようだった。呪術紋様が妖しく光る。妨害能力を上昇させて、一斉に攻勢をかけてくる。
    「タトゥーバットの群れか、なんとも厄介な相手だな。こちらより数が多いと苦戦を強いられそうだが、俺たちも人々の為に負ける訳にはいかない!」
     桔梗が後衛のスナイパーを狙って、ブレイジングバーストを使用。仲間達と連携をとって、確実に数を減らしていく方針を採る。
    「バスタービームで撃ち抜き葬ってくれるわ!!」
     桔梗によって傷を負った相手に、参三の参三スペシャルバスターライフル砲が向けられる。不利は悲鳴を上げ出したりと五月蝿く、有利は叱咤を飛ばすのが彼女だ。ヘタレ、負け犬属性という言葉が思わず浮かんでしまう。
    「ビ!?」
     ともあれ。
     バスターライフルからの眩い閃光が、タトゥーバットを包み込み。宣言通りに、打ち抜かれた個体が葬り去られる。ライドキャリバーのヴィネグレットは主人を中心として、援護兼守りを行う。機銃掃射による足止めは、確実に相手の動きを鈍らせた。
    「ビビビッツ!」
    「ふえ~ん、ネオンは狙わないでぇ~っ」
     音音は悲鳴をあげながら、ラビリンスアーマーとイエローサインを使ってメディックとして戦線を支える。
    「皆のお~えんガンバるけど、もう帰りたいよぉ~。グッスン」
     などと言いつつも。
     タトゥーバット達が妨害能力を上昇させてきたので、対策として天魔光臨陣を使うことも忘れない。他列が特に狙われて危険なら、目立つ動きで攻撃分散を図った。敵の攻撃は、まだまだ苛烈だ。灼滅者達の疲労は、当然のように蓄積されていく。
    「街一つ壊滅させられる規模の眷属の群れ、ね。腐っても子爵、爵位級ヴァンパイアなだけはあるということかしら。だからと言って、理解しがたい身勝手な理由で街の住民を皆殺しにされてたまるもんですか、絶対に阻止してみせるわ」
     回復が追い付かず、エリノアがシャウトで自身をキュアする。きっと各所では、同じような激戦が繰り広げられているのだろう。こちらも負けてはいられない。
    「スナイパーを狙うには、ちょっと遠いな」
     他の者の手が回らない中、集気法で自力回復しつつ。
     朔夜が技を切り替えて、轟雷の一撃を繰り出す。雷撃が闇夜を際立てるように彩り、後衛の一匹が光となって消滅する。


    「汚らわしいその姿、触れた空気すら濁る罪を憶えん背徳の存在よ、神の御許に行く事無く死ね」
     エイジのギルティクロスが炸裂。
     赤きオーラの逆十字が、タトゥーバットを斬り捨てた。四肢を斬り裂かれた眷属は、悲鳴をあげて消え去る。
    (「多くの者が作戦に挑んでいる。けれど、背後の孤児院の人々を護れるのはオレ達だけなのだ。退かないし、通さない」)
     ジュリアンが、ワザと大きな音を立てて蝙蝠の気を引く。
     度重なる攻防に、味方の損害も大きい。特に前衛陣の疲弊は顕著だった。
    「ビビ!?」
     音に群がるように、敵がジュリアンへと向かう。
     それらを神霊剣でブレイクし、レッドストライクのパラライズで迎え撃つ。続いて悠花のヴォルテックスが敵を襲い。一体、また一体とタトゥーバット達は落とされていった。
    「まだまだ、俺の攻撃は終わらせないぞ」
     確実に当てるため、両手にオーラを集中。
     桔梗のオーラキャノンが、怪物をヘッドショットした。ひとたまりもなく、怪物がその姿を四散させる。
    「ビビビビビビビ!!」
    「うわわわ」
     タトゥーバットが超音波で反撃してくると、参三は驚かされてばかりでヘタレた場面を見せるが、その度にサーヴァントが盾となって援護する。主人もどうにか弱った相手に的を絞って、マジックミサイルとレイザースラストで攻撃した。
    「ビビ!?」
     戦いも佳境。
     敵の数は半数を下回り。あと一息といったところまで来ているが、その一息が険しい。ディフェンダーとして敵からの攻撃を受け続けたエイジは、除霊結界で固まった敵を攻撃してから音音の傍に寄る。
    「そろそろ交代を頼めるか?」
    「うん。分かったよ~、前に出るねっ♪」
     出来ればポジション変更は、なしでいきたかったが。ここで音音は、とっておきの女子力(物理)を発揮する。 
    「戦いこわ~い……」
     と言いつつ。
     隙を防ぐために、まずは自分からディフェンダーに移動。怯えた様子が嘘のように、笑顔でジャッジメントレイを放つ。
    「ビ!?」
     奇襲気味に殴られた形の相手は、不意を突かれ。その間にエイジは後ろへと下がって、安全を確保した。
    「特に弱ってる敵がいればその子を最優先♪」
     妨害能力付加の敵がいれば、付加数が多い敵を次に優先。
     音音は前衛として、如何なく女子力を振るい。エイジはダメージの重い者、バッドステータスを受けた者を率先して回復していった。交代はスムーズに運び、戦線は有機的に繋がり掃討へと向かう。
    「ビビビ!」
    「吹き飛ばす」
     普段は、おっとりとしたおぼっちゃん口調で優しい笑顔が印象的の朔夜だが、敵には人が変わったような荒々しさが現れる。ブレイドサイクロンで、列単位の敵を蹴散らし。体力を充分減らした相手には、確実な火力でトドメを刺す。
    「慄け咎人、今宵はお前が串刺しよ!」
     エリノアがバベルブレイカーのジェット噴射で飛び込み、バベルの鎖が薄くなる中心点を貫く。
    「……まぁタトゥーバットに咎人はなんか違うけどね」
     そんな呟きが届いたかどうか。
     杭を穿たれた蝙蝠の怪物は、串刺しとなったまま砕け散った。
    「ビビビッツ!」
    「攻撃は通さない」
     勿論、敵も最後の反抗を試みるが。
     悠花が一貫して仲間の壁となり。集気法での回復と、フェニックスドライブを前衛に施す。参三は祭霊光で回復。ヴィネグレットもフルスロットル。ジュリアンは自身にかかった催眠はシャウトで治癒し、キュアが追いつかない時はイエローサインで対処――そして、敵の動きの異変に気付く。
    「包囲を抜けようしている」
     孤児院の方ではなく、離脱のために。
     ジュリアンの言葉に、桔梗がいち早く反応する。
    「逃がさないぞ、この攻撃でも食らえ!」
     スナイパーとして。
     狙いすました一撃は、寸分違わず敵への軌跡を夜空に描き。最後の一匹は、月光の中で塵と果てた。
    「……終わった」
     誰ともなく、息を吐く。
     遮るものがなくなった空には、星々が燦然と輝いていた。
    「皆、大丈夫か。怪我人は居ないだろうか?」
    「私の気品高い勇姿は素晴らしいだろ?」
     全員消耗は激しいものの。ヘタレた醜態などなかったかの如く、参三などは気品高い振る舞いに戻っている。
    「もう、この周辺には敵の気配はないですね」
    「他の皆も撃退できているといいのだけれど」
     孤児院の者達は、この一夜のことを知る事もなく眠っていることだろう。
     灼滅者達は、警戒しながらも帰路につく。各所の仲間達の健闘を信じ。そして、次なる戦いを予感しながら――
    「お疲れ様でした。いずれ、また。戦場にて」

    作者:彩乃鳩 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年11月6日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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