『智』を身に宿す殺戮者

    作者:のらむ


     人気も無いとある山の中を、巨大な肉塊が転がっている。
     その肉塊は、人間の死体やダークネスの残骸を巻き込みながら徐々に大きさを増していき、ついにとある廃墟の洋館、その中心にある寂れた庭園で動きを停止した。
     程なくして、ズブズブと肉塊が蠢いたかと思うと、その中から人型の何かが吐き出された。
     全身に漆黒の鎧を纏い、手には赤塗りの大鎌を構えた男。
    「…………ここは?」
     男はいまいち状況が把握できていない様子で、辺りを見回しながら首を傾げる。
    「…………そうだ、私はスキュラ様に忠誠を誓う『智』の犬士。この命に代えても主の命に従うが私の役目」
     鎧の胸元に埋め込まれた『智』の霊玉を触り、男、六六六人衆は思い出したように呟いた。
    「だが、まだ力は完全で無い様だな」
     そう言うと男は大鎌を構え直し、勢いよく横に薙いだ。
     すると、大鎌から放たれた黒き波動が、轟音を立てながら洋館の壁を消し飛ばした。
    「……この程度か。いや、時が経てば徐々に力を得られるだろう」
     そして名も無き男は、不意に空を見上げる。
    「主からの呼びかけは無い……すぐにでも側で仕えたい所だが、仕方ない。今は己の殺戮技術を磨き、何時でも主の役に立てる様備えておくとしよう」
     生まれながらにして主を失った男はそう呟き、何処かへと去っていくのだった。


    「かつて武蔵坂学園に灼滅されたダークネス、『大淫魔スキュラ』。彼女は生前各地に犬士の霊玉という仕掛けを残していました。それは予備の犬士を創りだすという厄介な仕掛けなのですが、それが今になって発動している様です」
     神埼・ウィラ(インドア派エクスブレイン・dn0206)はそう言って赤いファイルを開き、事件の説明を始める。
    「今回生み出されるのは、『智』の霊玉を持つ六六六人衆です。名はありませんが、彼はとても忠誠心が高く、そして犬士の名に恥じぬ力を秘めています」
     現場はとある深夜の廃墟の洋館。灼滅者達が現場へ訪れた時点ではそこには大きな肉塊しかないが、この段階で倒してしまうと霊玉はどこかへ飛び去ってしまう。
    「つまりその六六六人衆が生まれた後に、皆さんは戦闘を仕掛ける訳です。が、この男は誕生後しばらくは力も弱いままなのですが、時間が経つにつれてその力は増していきます」
     必要なのは、短期決戦。もしも戦いが長引いてしまえば、誰かが闇堕ちでもしない限り勝利は出来なくなるだろうとウィラは説明する。

    「そして当の六六六人衆ですが、彼は殺人鬼のサイキックと咎人の大鎌のサイキックを使用します。主の物である自分自身を傷付けようとする者には、躊躇無くその命を刈取ろうとするでしょう」
     六六六人衆は非常に攻撃寄りの能力らしく、闘いが長引けば長引く程その威力は凶悪になってくる。
    「かなり厄介な相手だとは思います。ですが皆さんで協力して、どうにか短期決戦に持ち込んで下さい」

     そこまでの説明を終え、ウィラはファイルをパタンと閉じた。
    「説明は以上です。この六六六人衆は、八犬士の空位を埋める為創られた存在です。仮に力で現存の八犬士に及ばなかったとしても、野に放てば、多くの人々の命が奪われることは間違いないでしょう。彼の殺戮技術の糧として、多くの人々の命が失われる訳にはいきません……お気をつけて。皆さんが無事に、全員で帰ってくる事を祈っています」


    参加者
    華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)
    神條・エルザ(クリミナルブラック・d01676)
    エルメンガルト・ガル(草冠の・d01742)
    ジュラル・ニート(デビルハンター・d02576)
    黒乃・璃羽(ただそこに在る影・d03447)
    槌屋・透流(トールハンマー・d06177)
    廣羽・杏理(ソリテュードナルキス・d16834)
    八宮・千影(白霧纏う黒狼・d28490)

    ■リプレイ


     大淫魔スキュラの手によって各地にばらまかれた霊玉。そしてそこから生まれだす、『智』の六六六人衆。
     灼滅者達はこの六六六人衆を早期に灼滅する為、とある洋館の庭園を訪れていた。
    「久しぶりだなあ、霊玉のダークネスを相手にするの。これって一体どれくらいあるんですかね、他に」
    「随分と多くの数を残していた様だな。大淫魔の残した脅威はまだまだ尽きないか……ならばその罪は、どこまでも滅ぼし続けなければ」
     廣羽・杏理(ソリテュードナルキス・d16834)と神條・エルザ(クリミナルブラック・d01676)はいつでも戦闘を行える様態勢を整えながら、肉塊が現れるのをじっと待っていた。
    「本調子になれば厄介だし、今の内に倒せるなら、頑張るしかないね」
     八宮・千影(白霧纏う黒狼・d28490)がそう呟いた時、ゴロゴロと何かが転がる様な音を、灼滅者達の耳が捉えた。
    「あ、気色悪いものが転がってきました。あれですね。皆さん、準備はいいですか? そろそろ幕開けですよ」
    「智の犬士なら、賢い闘い方をしたりするのでしょうか。忠誠心が強いようですし、主が既に倒されている事は話さない方が面倒にしなくていいと思います」
     華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)と黒乃・璃羽(ただそこに在る影・d03447)は殲術道具を構えながら、目の前に転がってくる肉塊を待ち受ける。
     そして庭園の中心で動きを止めた肉塊は、ズブズブと蠢いていく。
    「霊玉……対決するのは何度目だったかな。まあいくつ出てきても、ぶち抜くだけだが」
     槌屋・透流(トールハンマー・d06177)がそう呟くと、肉塊の中から漆黒の人型、『智』の霊玉を持つ六六六人衆が吐き出された。
    「…………貴様らは、誰だ」
     生まれて間もない六六六人衆だが、目の前に立ち塞がる灼滅者達の敵意と殺意は、敏感に感じ取れた様だった。
     手にした赤き大鎌を振り上げ、その刃を灼滅者達に向ける。
    「ドーモ。生まれたばっかな所申し訳ないけど灼滅させてもらいますねっと」
     ジュラル・ニート(デビルハンター・d02576)は影の触手を放つと、男の腕を絡め取る。
    「オレ達は灼滅者だ! 忠義心ツヨイのはイイことだけど、物騒だから止めさせてもらうな!」
     そしてエルメンガルト・ガル(草冠の・d01742)は剣を構えると、男の身体を切り裂いた。
    「…………俺はスキュラ様に忠誠を誓う『智』の犬士。灼滅者如きに灼滅される程、安い命は持ち合わせていない」
     漆黒の鎧に覆われ表情こそ見えないものの、犬士の全身から溢れだすピリピリとした殺気は、灼滅者達に伝わった。
     そして、闘いが始まる。


    「華宮・紅緋、これより灼滅を開始します」
     紅緋は片腕を赤く異形化させると犬士に突撃し、巨大な拳で脳天を打つ。
    「とにもかくにも攻撃だな。短期決戦……出来るとイイナ」
     ジュラルは巨大な十字架を構えると銃口を犬士に向け、銃身に光を集束させていく。
     そして犬士の動きを静かに見定めると、一気に引き金を引く。
    「ここだ」
     そして放たれた光の砲弾が、犬士に直撃し大きな爆発と共に身体が凍り付いた。
    「流石にまだ力は戻らないか……だが、灼滅者を相手するには事足りる」
     犬士は凍り付いた片腕を無理やり動かすと大鎌を掲げ、灼滅者達の頭上から無数の刃を降り注がせる。
    「クッ……万全で無い状態でこの威力か。智の犬士と言うより血の犬士って感じだわコレ」
     刃を身に受け切り裂かれたジュラルは傷を抑え、刃を変形させたナイフを構えて犬士の背後に回り込む。
    「予備ってわりにはなんかすごい強いが……これ以上面倒な事にならない内に倒さねえとな」
     そして振り下ろされた刃が、犬士の背をズタズタに引き裂いた。
    「キミを外の世界に出す訳にはいかないからね。ここで倒させてもらうよ」
     杏理は巨大なバベルブレイカーを付きだすと、純銀の杭が犬士の胸を打ち吹き飛ばした。
    「短期決戦に至らなければ、誰かが欠けねばならない……そんな事、絶対に起こさせるものか」
     エルザは、二度と目の前で仲間を闇に堕とさせはしないと、強い覚悟と共に攻撃を仕掛ける。
     光り輝く剣を携え、真正面から犬士に突撃する。
    「中々の気魄だ。だが、俺をそう簡単に屠れるとは思うなよ」
     エルザを待ち受けた犬士は大鎌を振り降ろし、エルザの身体に深い傷を刻み込む。
    「……まだ、まだだ」
     強烈な一撃に堪え、エルザは剣を振り降ろした。
     そして放たれた光の斬撃が、犬士の鎧を砕き皮膚を裂いた。
    「先程の台詞、そのまま返そう……私達を、そう簡単に屠れるとは思うなよ」
     そしてエルザは闘気を纏わせた蹴りの連打を放ち、犬士を地面に叩き落とした。
    「確実に削っていきましょう」
     璃羽はその隙にリングスラッシャーを投擲すると、体勢を立て直していた犬士の足を斬りつけた。
    「私も出るか……誰が相手だろうと、ぶっ壊す」
     透流はエアシューズをフル駆動させると、爆発的な推進力で戦場を駆け廻る。
    「チョロチョロと鬱陶しい」
     犬士は咎を纏わせた大鎌で横に薙ぐと、巨大な黒き波動が透流を中心とした後衛を襲う。
    「そう簡単に当たってはやらないぞ。この場において狩る側なのは、私達の方だ」
     透流は智を蹴ると高く跳び上がり、波動の上を飛び越え攻撃を避ける。
    「……ぶち抜く!!」
     透流は犬士の頭上でガトリングガンの引き金を引くと、激しい炎が纏った弾丸が犬士に降り注ぎ、全身を貫き焦がす。
     そして着地と同時に地を蹴った透流は犬士との距離を取る。
    「更にもう一撃。喰らっておけ」
     そう言って透流が放った無数の帯が犬士の全身を貫いた。
    「やっぱり段々攻撃がハゲシくなってきてるな! オレが立っている限り仲間をやらせはしねえぞ!」
     エルメンガルトは剣を振るい祝福の言葉を解放すると、仲間たちの傷を瞬く間に癒した。
    「呪われし狼姫の牙、その身に受けてもらうよ」
     は全身に纏った白き炎を燃え上がらせ、足元の影を覆う。
     すると足元の影が灰色に変色し、巨大な狼の形に変形させた。
    「灰狼、創出」
     そして飛び出した灰色の狼は、大きく牙を剥いて犬士の飛び掛かり、その首元に喰らいついた。
    「…………離れろ」
     犬士は静かに呟くと全身から膨大な殺気を放ち、狼を掻き消すと同時に灼滅者達の身体を蝕んだ。
     その間も千影は犬士の動きを観察しながら、攻撃の隙を伺っていた。
    「そろそろ敵の攻撃がキツくなって来る頃……今の内に、もっと畳み掛けておかないとね」
     千影は額当ての円盤を『黒狼姫』の名を持つ銃に装着すると、機械音と共にガトリングガン形態へ変化した。
    「弾雨、散華」
     ズガガガガガガガガガガ!!
     千影が円盤を回すと、轟音と共に大量の弾丸が放たれ犬士の全身を貫いた。
    「……まさかここまでやるとはな、灼滅者。だが俺の力も充足しつつある。死ぬ覚悟をしておけ」
     犬士は徐々に満ちていく力を感じながら、大鎌を構えなおす。
     犬士が身に纏う殺意は、徐々にその濃さをましていた。

    ● 
    「……あまり時間はかけていられない。私は攻撃に徹しよう」
     タイムキーパーを務めている透流は時間を気にしつつも、攻撃あるのみと犬士に肉薄する。
     そして至近距離から放った無数の弾丸が、犬士の鎧を打ち砕く。
    「力が完全でない予備の八犬士ですらこの力だと言うのですから、本当に霊玉と言うのは厄介な代物ですね……」
     璃羽は心の奥底から集めた暗き想念を集束させ、漆黒の弾丸を形成する。
    「予備の予備とか、他の徳も出てきたりしないといいのですが……それに、もしも各文字が徳を意味しているのなら……いえ、今は目の前の敵に集中しなければいけませんね」
     そして璃羽は弾丸を撃ち放ち、犬士の胸を撃ち貫いた。
    「我が主に害成すものは、殺す。絶対に」
     犬士はそのまま死の力を宿す斬撃を放ち、璃羽の身体を切り裂いた。
    「……! 流石に強烈ですね……だけど、まだ倒れはしません」
     深い傷を負った璃羽は殺人注射器を構え、犬士の正面から飛び掛かる。
    「あなたの命、少し分けて貰いますよ」
     そして璃羽が付きだした針は犬士の心臓に突き刺さり、そこから生命エネルギーが吸収されていった。
    「立ち振る舞いに変化はありませんが、この犬士の体力もかなり削れてきている筈です。このまま押し切りましょう」
     璃羽は仲間たちにそう呼びかけ、自らも気を引き締め直した。
    「勝ちの目がある内に、な。奴の攻撃もそろそろ厳しくなってきた頃だ」
     ジュラルは遠距離から十字架を構え狙い撃つと、犬士の肩を直撃し吹き飛ばした。
    「………………」
     犬士は無言でのまま、殺意をみなぎらせた大鎌を薙ぎ、黒き波動を灼滅者達に放つ。
    「グ……痛っ、いってえな! この野郎早くくたばれ!!」
     仲間を庇い波動を受け止めたエルメンガルトは犬士にを睨みつつ、構えた縛霊手に霊力を込めていく。
    「オレは絶対にお前より早くくたばってやらないからな!!」
     そしてエルメンガルトが撃ち出した淡い霊力の塊が、璃羽の身体を癒し浄化させた。
    「今度はオレの番だ、六六六人衆!」
     エルメンガルトは犬士にそう言い放つと、刃を非物質化させた剣を構え、犬士に突撃する。
    「オマエの魂、根こそぎ削り取ってやる!!」
     そう言ってエルメンガルトが放った斬撃は、犬士の胸を貫通する。
     その刃は犬士の肉体を傷つける事は無かったが、その魂を深く傷つけ、かなりの苦痛を与えていた。
    「グ……!!」
     その痛みには流石に堪えたのか、犬士は後ろに退がり一瞬膝を付く。
    「今だ! とにかく攻撃するんだ!!」
    「分かったよ。……呪創弾、炎呪」
     千影は生成した赤き弾丸を中に装填し、放たれた赤い散弾が犬士に更に傷を与える。
    「意識の無い内に灼滅出来れば、欠片も可哀想な気持ちが湧かないだろうに――そんなのはこっちの身勝手だけれどさ」
     杏理は目の前の犬士に、若干の哀れみの視線を投げる。
    「ただ『悲しいことに』、戦うこと、相手を傷つけることは、とても愉しい」
     そして杏理は片腕を竜の如く巨大異形化させると、犬士の正面から接近する。
    「主の為に生まれ、そして主を妄信する君は、きっと信じないだろうけど……君の仕えるべき主は、君の生まれる前からいないのさ。残念な事に」
    「なにを馬鹿な……グッ!!」
     杏理の言葉に僅かに動揺した犬士は、杏理が放った猛撃に顔を打ち砕かれ、そのまま地面に叩きつけられた。
    「……我が主は偉大で聡明なお方だ。下らぬ虚言を吐くな」
    「……そうだね。例え主がいようと居まいと、キミはここで灼滅される。確かに些細な事かもしれない」
     そして杏理は足元の影を荊の如く変形させると、一気に犬士を覆い尽くす。
    「生まれたての君に、トラウマなんかあるんだろうか」
     犬士を飲みこんだ影の荊は、確かに犬士の精神を蝕んだ。
     その眼に如何なるトラウマが映っているのかは、誰にも分からない。
     と、その時。透流の懐から、アラームが鳴り響く。
     3回目のアラーム音は、13分経過の合図だった。
    「これまでの経験上、恐らく残された時間は僅かだ……何としても、倒しきるぞ」
     エルザはそう仲間たちに呼びかけると、灼熱の蹴りで犬士の身体を灼く。
    「流石にもう回復してる余裕はありませんね。とにかく攻撃あるのみです!」
     紅緋は赤い霧の様なオーラを拳に纏わせながら、犬士と正面から相対する。
    「…………こんな場所で私は死なん。私はまだ、主の顔すら拝んでいない」
     灼滅者達は序盤から攻めを重視した戦法を行っており、六六六人衆の体力は相当削れていた。
     更に前衛を維持する灼滅者達の活躍もあり、深い傷を負う者も少なく無いものの、未だ灼滅者達は全員立ち続けていた。
    「ここまで来たら、多少の無茶も必要ですね……絶対にここで灼滅しますよ!」
     そして紅緋は犬士の懐まで潜り込むと、至近距離から無数の赤い拳を放つ。
     怒涛の連打は犬士の全身の鎧をも貫通し、確実にダメージを与えていった。
    「グッ……!! 八犬士が、灼滅者に負ける訳には……!!」
    「……その攻撃は、もう効きません!!」
     犬士が振り下ろした大鎌を、紅緋は赤く異形化させた腕で防ぎきる。
    「後少し……あと少しで私の力は、お前らのそれを遥かに上回る……!!」
     全身傷だらけの犬士はそう呟き、大鎌を振りかざす。
     そして降り注ぐ無数の刃。
     灼滅者達はその刃を避け、あるいは受けきり、犬士に一斉攻撃を叩き込んだ。
     杏理が振り下ろした銀の刃が胸を抉り、
     璃羽が放った光輪が首元を斬る。
     ジュラルが振るったナイフが背を切り裂き、
     エルメンガルトが放ったビームが全身を焼く。
     エルザが振り下ろした光の刃が肩を斬り、
     透流が放った炎の弾丸が全身に突き刺さる。
     千影が放った影の灰狼が腹に喰らいつき、
     紅緋は拳に赤い影を纏わせる。
    「これで、お仕舞い!」
     放たれた拳は犬士の胸に突き刺さり、拳に宿った影は魂をも砕いた。
    「ス……スキュラ様……申し訳ありません……」
     犬士はついに力尽き、バタリと地面に倒れ伏す。
     そして全身がどす黒い不定形な霧になったかと思うと、次の瞬間には霧散し、完全に消滅しきっていた。
     残された『智』の霊玉が地面をコロコロと転がったが、璃羽が手を触れようとした瞬間、完全に砕け散っていった。


    「スキュラの残滓は消滅したか……ギリギリの戦いだったが、どうにか目的を果たせて良かった」
    「そうだな。霊玉から生まれるダークネスとの対峙はこれで3回目だが……そう簡単に慣れるものではないな」
     闘いが終わり、エルザと透流は微かな安堵の表情を浮かべた。
    「犬士の霊玉……やはり回収は難しいようですね」
     璃羽は若干不満げに呟きつつも、とりあえずおやつに何故か激辛唐辛子を食べていた。
    「しかしまあ、仕えるべき主が死んでから生まれるなんて、ある意味可哀想な奴だったかもしれんね、こいつも」
     闘いが終わり、ジュラルはトマトジュースで一服しながらぽつりと呟いた。
    「ただ、彼はその事を知らなかったし、知らせても全く信じていなかったからね。それが真実だと確信する前に僕達に倒されたのは……まあ、ある種の幸いというべきかな」
     杏理は殲術道具を封印しながら、坦々と呟いた。
    「ま、とにもかくにもオレ達の勝ちってコトだな。いやー、何度も意識飛びかけたけど、案外身体は丈夫なもんだね!!」
     積極的に攻撃を受けかなりの傷を負っていたエルメンガルトだったが、なんとも気楽な様子で笑っていた。
    「さて、それではもう帰りましょうか。霊玉から生まれたダークネスは、私達が確実に灼滅しました」
    「ん、そうだね。全力で戦ったからけっこう疲れちゃった」
     紅緋と千影はそう言って戦場を後にし、一同もそれに続く。

     霊玉から生まれた名も無き六六六人衆は、こうして灼滅された。
     未来に奪われていたであろう多くの命を救った。
     灼滅者達はその大きな戦果を手に、学園へ帰還するのだった。

    作者:のらむ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年10月31日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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