芸術の秋。
武蔵坂学園の秋を彩る芸術発表会に向けた準備が始まろうとしてた。
全8部門で芸術のなんたるかを競う芸術発表会は、対外的にも高い評価を得ており、武蔵坂学園のPTA向けパンフレットにも大きく紹介されている一大イベントである。
この一大イベントのために、11月の時間割は大きく変化している。
11月初頭から芸術発表会までの間、芸術科目の授業の全てと、特別学習の授業の多くが芸術発表会の準備にあてられ、ホームルームや部活動でも芸術発表会向けの特別活動に変更されているのだ。
……自習の授業が増えて教師が楽だとか、出席を取らない授業が多くて、いろいろ誤魔化せて便利とか、そう考える不届き者もいないでは無いが、多くの学生は、芸術の秋に青春の全てを捧げることだろう。
少なくとも、表向きは、そういうことになっている。
芸術発表会の部門は『創作料理』『詩(ポエム)』『創作ダンス』『人物画』『書道』『器楽』『服飾』『総合芸術』の8つ。
芸術発表会に参加する学生は、これらの芸術を磨き上げ、一つの作品を作りあげるのだ。
芸術発表会の優秀者を決定する、11月13日に向け、学生達はそれぞれの種目ごとに、それぞれの方法で芸術の火花を散らす。
それは、武蔵坂学園の秋の風物詩であった。
●芸術の秋!
「ねーねー、秋といえば?」
いきなり飛鳥井・遥河(高校生エクスブレイン・dn0040)にそう問われ、きょとんとしながらも。
「やはり、食欲の秋か」
「お、食欲の秋は王道だな。あとは、読書の秋とか……スポーツの秋とかか?」
綺月・紗矢(中学生シャドウハンター・dn0017)と伊勢谷・カイザ(紫紺のあんちゃん・dn0189)は、首を傾けつつも答えるが。
「うんうん、確かにそれもだけどさー」
遥河は二人に頷きつつも、こう続けたのだった。
「秋といえば、芸術の秋! 今年も『芸術発表会』の時期がやってきたよー!」
武蔵坂学園で毎年行なわれている『芸術発表会』。
その部門は8つ。参加者それぞれが作品を作り上げ、披露し、競い合う。
まさに、芸術の秋に相応しい学校行事なのである。
「8つの部門か。俺は料理は得意だけど、飯は毎日作ってるから……『書道部門』とか、ちょっと気になるな」
「『書道』なら学校の授業でもやってるから、比較的誰でも馴染みのある芸術だな。文字の美しさ、文字から伝わる力、芸術性などを競うのか」
「うんうん、『書道部門』は、どんな文字をどう書くかは自由で、作品提出はひとり1枚。団体での参加はできない個人競技なんだけど、書く環境はお任せみたいだからさ。ひとりで静かに心を落ち着かせてじっくり書くのもいいし。クラスやクラブ、教室や部室でみんなで集まって、わいわい楽しくそれぞれの作品をしたためてもいいし。気分を盛り上げるために、和装とかで書いてみるのもいいんじゃないかなー」
「折角だからエントリーしてみるか。んじゃ、気分出すために和装で書いてみるかな」
「オレも小さい頃から書道習ってて、何気にイイカンジに書けると思うからさー。オレも一筆書いてみよーかなー」
「そうだな。わたしも、何か書いてみようかと思う。みんながどんな作品を書いたのか、発表会当日も楽しみだ」
そう、カイザや遥河や紗矢はもう一度、募集要項を確認する。
8つの部門のうちのひとつ――『書道部門』。
団体で行なうパフォーマンス書道などもあるが、武蔵坂学園の書道コンテストは個人戦で行なわれる。
半紙や書き初め用紙に書をしたため、一人一枚、締め切りまでに提出。そして審査の結果選ばれた作品が、発表会当日にPTAのおえらいさんから発表されるのだという。
参加要項や締め切りを守れば、書く文字や、作品を作成する環境は自由。
ひとりでじっくり書くのも良し。友達と同じ文字を書いて競い合うのも良し。誰かの顔をうっかり半紙代わりにしちゃうような、賑やかな環境で、それぞれ作品を作成するもまた良し。
教室でも部室でも、作成場所も自由。着物を着てみたり、ちょっとパフォーマンスしてみたりなど、雰囲気を楽しみつつ書いてみるのも、気持ちが入るかもしれない。
それに書道といえば、『和の心』であるが。日本語を書き慣れていない外国出身者でも、その『心』を『文字』に込めれば大丈夫。誰でも気軽に参加OKだ。
大切なのは、文字から伝わる『心』。
それぞれの文字力を、如何なく披露して欲しい。
――いざ、一筆入魂!
2015年の芸術発表会……貴方はどんな心の文字を、真白の紙にしたためますか。
●思いを綴る文字の芸術
季節は芸術の秋。この季節、今年も武蔵坂学園では様々な芸術が披露される。
芸術とは、個性や思いや自己など、それぞれが自由に『何か』を表現する行為。
豪快に力強く、美しく丁寧に、心行くまま自由に。
真白な紙にしたためられる、個性溢れる『文字』の芸術――それが書道。
さあ、貴方の今年の一筆を……いざ披露!
「今年一年はめっちゃ早かったな。もう発表会や」
まるでそんな2015年を表すかのように、大きな紙の上を颯爽と走る筆。
荒々しく、そして遊び心も忘れずに。
疾走感溢れる悟の今年の『文字』は――『さ』の一文字。
……いや、よく見れば。
大きな『さ』を作り出しているのは、敷き詰められた数多の小さな『さ』。
「人は独りやない皆で集まって駆けるんや!」
小さな文字が集まって作り出す、大きな一文字。
そして、毎年一文字ずつ。
今年で3年目となる悟の『文字』がしめすものは、彼にとって大切な……。
「ふふん♪ 楽しゅうなってきたで!」
ぐっと、楽しさと気合を再び筆に乗せて。勢い良く文字をしたためていく悟。
そして、味のある字に仕上がったやろか、と。
満足気に、完成した『さ』の文字を眺めるのだった。
学園に来て、早三年。
「書道部門に今年も参上。撫桐娑婆蔵たァあっしのことでござんす!」
今年も気合を入れて、娑婆蔵もいざ、筆を握る。
この三年で色々な経験を積んで。沢山の人と出逢い、揉まれてきた。
「学び取るべき事の多い精強な先達、気の置けねえ同輩、こんなあっしを仰ぎ見て下さる後輩、そんでもって毎日可愛くて仕方ねえツレである所の鈴音ェェェ!」
心静かにと思っていたのに、各人を思ってつい熱く声を上げてしまった娑婆蔵。
でも、その心をそのまま、筆に乗せて。
「この一字にブッ込んでやりまさァ!」
真白の紙にしたためたのは――『男』でも『漢』でもない、『侠』の文字。
「何故普通に書かねえのだと? 風変わりな字面の方が格好いいじゃァありやせんか!」
信義にあつく、強きをくじき弱きを助ける。そんな格好いい、男気の一文字!
今年は、書道部門に出品してみようと決めたものの……何を書けばいいのやら。
全くアイディアが思い浮かばない智以子は、少し気分転換を。適当に本を手に取っては、ぱらりと流し読み。
それからふと手に取ったのは、読み慣れた愛読書――読み古された、1冊の図鑑。
少しの気分転換のつもりが、少しではなくなったのも、ご愛嬌。
そして頁をめくるその手が不意に、ある場所で止まって。
「……そういえば、いつも使っている服にも、この名前を使っていたの」
心にパッと咲いたその『文字』を、智以子はさっと紙にしたため、部屋を出たのだった。
向かう先はそう、真白の紙に咲かせた文字と同じ――いつも手入れをしている、『寒牡丹』の花壇。
真白の紙を前に首を傾けているのは、いつもの体操服姿の少女。
「さて、何を書こうか……分からんな」
未空も、どんな作品にしようかと絶賛迷い中。
でもふと……書道部門の参加概要に記されていた言葉を思い出す。
「文字から伝わる『心』か……」
そう呟くやいなや、ポンッと手を打つ未空。
自分の『心』を文字に。
「そうだ私が今望んでいる事を文字にしよう」
未空が今望んでいるもの、それは!
「これだよ。これが一番欲しいんだよ。私は」
一番欲しいもの――そう、『お金』です!
全力で狙うは、書道部門の最優秀賞。
丁寧に硯で墨をすり、画数や書き間違いがないか入念にチェック!
そして。
「今の俺が書く字は、もう本当にこの字しかないな」
心を燃やし、いざ熱志がしたためる文字こそ――愛と魂を込めた『熱愛』の二文字。
恋に落ち、そして大切な人となった女性と。ゆっくりとだが、共に歩み始めた今。
選んだこの二文字は……誰に何と言おうと、嘘のない自分の魂を表す文字で。決して自分一人では書けた文字ではないから。
文字でも自分の思いを伝えられたらと、いざ、一筆入魂!
魂を込めて、情熱的に筆をふるう熱志。
目指すは書道部門のトップ、最優秀賞だけれど。
書きあげた渾身の二文字に込めた思いはきっと、必ず伝わるだろうし。
この『熱愛』は――大切な人だけの、とっておきの最優秀賞だろうから。
決して妥協はしない。
納得いく技量を得た確信を持てるまで、何枚でも休まず書き続ける!
毎日練習を欠かさず、体力も万全。いざ、作品の作成に臨むエイジ。
場所は、人気のない古寺。瞳を閉じて精神集中! 握る筆に気合を乗せて。
「ちぇえい! 一筆入魂!」
眼光鋭き瞳をカッと見開き、甲高い叫び声と共に――真白な世界にしたためられるは、『忍』の一文字。
闇に支配され続けてきた世界で、闇と戦う長き戦い。
我らも忘れず持ち続けなければならぬと……そしてやはり忍者として、迷わずこの一文字を記したのだ。
そんな魂を込めた一文字をしたため終えたエイジは。
「忍の一字は衆妙の門――」
苦しくとも最後まで戦い抜こう――そう眼前の一文字を胸に。筆を置き、ふっと息を吐いたのだった。
学園に来る前はむしろ、毛筆が普通だったという紅緋。
着物を纏い、気持ちを引き締めて。静まり返った道場で精神集中。
「それでは、一筆啓上、仕ります」
したためるのは一枚のみ。
最初にして最後の一枚に――『魂』の一文字を。
そして紅緋は、作品を書いている最中だという紗矢に声を。
「こんにちは、紗矢さんは何を書いたんですか?」
「ちょうど完成したよ。紅緋はどんな作品を?」
「私は久しぶりに本式の書を書きましたよ。授業だと好きなように書けなくて」
そして二人で一足早くお披露目会!
紗矢の作品は、甘い物好きな彼女らしい『金平糖』。
そして紅緋は自分の作品を眺める紗矢に語る。
「この世の万物に宿る、世界が世界である理由。因果律も、そこに魂がなければ意味を持ちません」
『魂』は、光と闇の交錯する空間。
自分たちシャドウハンターにとっての、もうひとつの世界だから。
力強く筆が運ばれるたび、リン、と赤い紐飾りの先の鈴が鳴る。
力を込めてしたためるのは、皆に伝えたいから――己れがここでこうして生きてるってことを。
命がそう思いを乗せ書く文字は、『感謝』。
力強いけれど、きちんと止め跳ね払いを心がけ、しっかり整った字形を。粗末な感謝なんて、伝わらないから。
病弱で長く生きられないだろうと言われていた命。
でも今、自分はここに生きている。
(「己れがこうしてここに居られるのは、己れの周りのいろんな人のおかげなんだ」)
だから……そういった人たちに向けて、この字を贈りたい。
そんな気持ちを込めて。白の着流しに墨が跳ねるほど、筆をふるっていく命。
今度は派手に咲き誇る為に。大いにこの生を謳歌するように、生き生きと。
「書こうと思う文字は決めているのですが、一人よりも、伊勢谷くんと一緒の方が上手く書ける気がして」
水花はカイザにそう声を掛けて。彼と共に、借りた和室で、いざ挑戦。
カイザと同様和装でとも思った水花だが、集中出来そうだから、いつも通りの服で。
正座し深呼吸をした後、丁寧に筆を走らせる。
ゆっくりと育むように――『絆』の一文字を。
隣に居るカイザとの絆を、感じながら。
「お、なかなかいい感じかも! ほらこれ、カイザの『魁』なんだぜ」
(「……彼も、そう思ってくれていたら嬉しいのですけれど」)
自分の作品の出来に満足気に笑むカイザと書を楽しみながらも、そう思う水花。
彼だけではなく、学園で出会った人々との『絆』を守りたい。
ベヘリタスにもタカトにも、奪わせない……二度と、失いたくないものだから。
したためられる字は同じでも、その文字に込められた思いは、一文字ずつ違うもの。
いつも首に巻いているマフラーは、畳んで横に置いているけれど。
かわりにきゅっと襷をかけ、僧衣の袖を纏め臨む皆無。
下敷きに乗せた半紙は文鎮でシワのない様に押えて。
精神統一するように、水を注いだ硯の上で、ゆっくりと墨を摩り続ける。
時間を掛けてすった墨液は、墨独特の良い香りが鼻をくすぐる、深くていい色合い。
その漆黒に筆を浸し、なじませて……静かに、いざ一筆。
一度は失われたと思ったこの命。だが今は、こうして誰かの為に戦える。
(「この生命の使いドコロがあるのだとしたら、平和を勝ち取る為に」)
その想いを託した皆無の一文字は――『生』。
白一色であった紙の上に、その一文字だけをしたためる。
無駄に達筆に……すべての想いを、この一筆に込めて。
桃は寮の自室でひとり、半紙とにらめっこして。
そして椅子に正座し、ひとつ深呼吸の後。息をする間もなく一思いに、漢字一文字をしたためる。
その文字は――やはり、『生』。
桃の目標は、いざ死ぬときに「最高の生だった」と言えるようになること。
生きるということ……『生』。それが彼女の心の一文字。
スサノオを封印したその身、いつまで生きられるかも分からないけれど。
(「でもいつ最後が来てもいいように、毎日精一杯楽しんで生きていきたい」)
そして……最後に、できたら。
自分のスサノオに「人の生は最高だったんだよ」って自慢してやりたい、と。
だからこそ、思いを込める文字は……この一文字、『生』以外にないと。
桃はやっぱり、そう思うから。
「たまにはこういう学業にも参加しませんとね」
芸術というよりも、自分に納得のいくものを書きたいと。
佐那子は、いつもの和服の上から気合のたすきがけをして、鉢巻を巻いていざ一筆。
趣向の凝ったものや面白いパフォーマンスは苦手。
だからこそ無理はせず、普通の書道で全力を尽くす心意気で佐那子は臨む。
そんな彼女が筆に込めるのも……生に対する思い。
数多訪れる、楽しい事や悲しい事。学園の皆や全ての人の生が、多くの彩で輝ける様に……。
そんな思いを乗せ、佐那子は書をしたためる――『彩雲』の二文字を。
そして自分の作品を完成させた後、色々な人の作品も見て周りたいと。
様々な書が飾られる発表会本番を、楽しみに思うのだった。
●共に、心を綴る
クリスも桃夜と一緒に、今年は書道に挑戦!
とはいえ、あくまで個人戦。
さてなにを書こうかな、と……そう墨をつけた筆を握ったものの。
「わわわ、墨が垂れる垂れる!」
トーヤこれどうすればいいんだ? と。
実はこれが初めての書道であるクリスは、早速桃夜にヘルプ!
そのヘルプに、勿論桃夜は張り切って。
「あれ? クリスは初めてだったんだ。じゃあ最初に手とり足とり腰とり書道のレクチャーを♪」
手とり足とり腰とり、レクチャーはお任せ!?
そして気を取り直し、改めて。
クリスが選び、半紙にしたためるその一文字は――『力』。
昔から、弱くて非力なのが嫌で、力が欲しかったけれど。
でも、武蔵坂に来てクリスが出逢ったのは、腕っ節だけではない『力』を持った人たち。
そして、様々な力がある人たちが集まること……それこそが、武蔵坂学園の『力』であって。
そんな学園に来る事が出来て、クリスはとても楽しいのだ。
それからクリスは、真面目に筆を握り半紙へと落とした桃夜へと、目を向ける。
「トーヤはどうだい? てか何書いた??」
桃夜が半紙に綴った文字、それは。
「あ、ちょっと寸詰まりみたいになっちゃった……」
ちょっぴりバランスは悪くなっちゃったけれど、大切なのは気持ち。
沢山の人に言いたいけれど、普段なかなか言葉にできない思い――『ありがとう』。
クラブの仲間、今まで出会ってきた沢山の人たち、ウィングキャットの可愛いパー子。
そして――どんな時でもずっと傍にいてくれた、大事なクリスに。
見た人たちに思いが伝わるような。気持ちをいっぱい込めた、心からの五文字を。
南守と梗花が書をしたためる場所はやっぱり、いつもの部室。
少し片付けた部室で、墨の匂いがこもらないように窓も開けて、心を落ち着けて……。
「ちょっと寒いか? うわ、梗花、そこの半紙飛びそうだ!」
「ええっと、何かで押さえて、の前に窓をなるべく閉めて……!」
半紙が風に飛ばされないよう、必死に阻止!
でも慌てて窓を閉めれば。何とか半紙も気持ちも、一応落ち着いて。
何を書くか悩ましいなぁ、思い出が沢山の部室で色んな言葉が浮かぶ南守はそう首を傾けるも。
気になるのは、半紙に練習している梗花の、その筆の道行。
そして瞳に飛び込んできたのは。
「……そっか、うん、いい言葉だな」
つい南守の口からそう零れるような、そんな言の葉。
蘇るのは……夏の終わり。
自分の手を握ってくれたその手を、今度は必死に握り締めた、あの時の感触。
『ただいま』――半紙に書かれたその言葉は、なによりもかけがえのない四文字で。
何を書くか悩んでいた南守が半紙に綴った文字は……そんな親友への応え。
言わせっぱなしにはしたくないから――『おかえり』、と。
なるべく見ない様にしていた親友の半紙に綴られた、そんなすてきなことば。
その隣に、梗花は自分のことばを並べて。
「こうして、二つ並べて映えることばっていうのも、なかなかないかもね?」
「まるで半紙同士も喋ってるみたいだな」
改めて、帰る場所のあることを……嬉しく、そして誇らしく思う。
「着ぐるみ、やっぱり着るのか?」
なんといっても【文月探偵倶楽部】……着ないわけがありませんよね!
分かっているけど呟いた咲哉の目の前にはいつもの如く、ヒーローっぽい赤いスカーフを靡かせ、目付きの悪い黒猫の着ぐるみ纏う直哉と。
「書の道の極意とは……! 楽しむことと見つけたり~っ♪」
がしがし墨を磨っている、ヒマワリ着ぐるみなミカエラ。
以前ならば、着ぐるみを着ることはなかっただろう。
だが今日の咲哉は……きりり忠犬らしいおめめの黒柴犬着ぐるみ着用!
でもやっぱり着慣れておらず、ちょっぴりソワソワしつつも。
「このふわふわ白猫なんてどうだろ?」
自分だけだと恥ずかしいから、一緒にと誘った真珠にも着ぐるみを!?
そして。
「着てみました、どうですか?」
「……偶には着ぐるみも悪くないな」
その可愛さに、思わず頬を緩めながらも呟く咲哉。
そんな様子に、兄貴も楽しそうだなと、直哉はニマニマしながらも。
「良かったら紗矢とカイザと遥河も一緒にやろうぜ。ついでに着ぐるみも着てみるとか?」
兄弟揃って、着ぐるみ布教!?
そして抵抗なくさくっと着ぐるみを着た紗矢たちと一緒に。
「まず、集中を高めるために! 踊りまーす!」
くるくる回るヒマワリ!?
そんなミカエラの粋な着ぐるみっぷりに、直哉も拍手!
……ていうか。
「そういや本題は書道だった」
そういえば書道です、書道! というわけで、まずは練習。
「笑顔が一番! 楽しくいこー!」
ミカエラがまず書いたのは、『笑』と『楽』。
続けて、『もふもふ』や『さんふらわあ』も忘れません!
そしてしばらく悩んだ後、咲哉がしたためたのは――『絆』の一文字。
馴染み深い文字だけど、改めて大切にしたいと思うもの。
仲間や家族、そしてすぐ傍にいる大切な人……真珠との間の固い絆。
それは確かに結ばれた、この手の中の温かな奇跡。その奇跡に感謝しながら、一筆に思いを込めていく。
「ラテンの♪ リズムで♪ 楽しく♪ 踊り♪ さあ、気合乗ってきたー!」
ミカエラも紗矢たちとともにノリノリで踊りつつ、いざ本番!
書く文字は――『着ぐるみ☆魂』!
そして直哉のダンシング着ぐるみ書道は、やっぱりヒーロー風!?
一筆入魂! 屋上からジャンプした黒猫が、巨大半紙に華麗に大筆を振るって。
「着ぐるみで、『繋ぐ未来』!」
文字に命を吹き込み、くるりと宙返り。最後はドヤ顔で決めポーズ!
世界がどんなに大きく動いても、大切な仲間達と過ごすこの貴重な毎日。
そんな日々を、こうやって、仲間と一緒にわいわい楽しみながら。
明るく楽しい未来へと――繋げて行きたいから。
●今年の栄冠は誰の手に
力作揃いの作品に難航する、PTAのおえらいさん達による選考会議。
「この作品の力強さや情熱は見ていて気持ちいいです。そしてこちらの作品のアイディアは、まさに芸術ですね」
「いやしかしやはり、正統派が一番! この作品の字形は、丁寧かつ非常に美しい」
「この作品には、込められた思いの強さがよく現れていますね」
それぞれの文字から感じる、参加者の心。
最優秀作品を決めるおえらいさん達の意見は、かなり割れたが。
「この墨の色の深さに、流れるような文字……素晴らしいですね」
「文字から、生き様をみせてもらいました」
最優秀賞の額縁に飾られたのは、皆無の作品――『生』の一文字であった。
2015年、武蔵坂学園芸術発表会。
今年の書道部門の栄冠は、皆無の手に!
作者:志稲愛海 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年11月13日
難度:簡単
参加:20人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 3
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