●長野県佐久市
佐久平駅前。新幹線は通っているけど人もまばらなその駅前にバスが一台止まっている。
バスの中も人はまばら。運転手ものどかな陽気にあくびを誘われ、大きく口をあけながら現在時刻を確認する。
昇降口に足音。ミラーを見れば、穏やかな顔をした僧が1人、ラーメン丼を托鉢でもするかのように持っていた。
思わず二度見する運転手。ラーメン丼から湯気たっているし、味噌ラーメンの匂い凄いし。
と、目が合った。直ぐに顔を戻すが、僧の方からゆっくり近づいてくる。近づかれると分かるが、何か、妙に、明るい。物理的に。
「新宿橘華中学へ行ってくれませんか?」
「ほぁっ!?」
どこだよそこ、という言葉を必死に飲み込んで再び振り返る運転手。そこで、明るいと思ったのはこの僧から後光がさしていることだと知った。いや決して禿げ頭が眩しいわけじゃなくて。
「どこですかそこ、何にしても行きませんよ」
「行かなければならないのです……安養寺ラーメンを広めるために」
「よく分かりませんが無理です」
困った顔の運転手。鼻腔を味噌ラーメンの匂いがくすぐる。
相変わらず微笑んだままの僧。顔を見上げていればどうしても後光が目に入り、ラーメンの匂いがして。なんだか、行かなきゃいけないような。
「行ってくれませんかね……? この安養寺ラーメン、馳走してあげますので」
「……仕方ありませんね」
大きくため息をつく運転手。
やがて走り出したバスの中。運転手も、乗客も。謎の僧から渡されたラーメンを美味しく啜る音が聞こえていた。
●教室
「光の少年、タカトって言ったっけ……で、えーと、彼と、アンデッド化したクロキバの戦いのことと、それに介入した灼滅者達がクロキバを討ち取ったことは知ってるかな」
田中・翔(普通のエクスブレイン・dn0109)の、今日のカップ麺は味噌ラーメンだ。
そしてその前には望月・心桜(桜舞・d02434)の姿。どうやら翔に呼ばれてきたらしい。
「……で、そのこととわらわが何の関係があるんじゃ?」
メモを取り出す翔。
「取りあえずそこは置いといて。クロキバを失ったことで白の王が弱体化。結果、タカトの方が優勢になったわけで、この機に乗じて拉致したラブリンスターを、無差別篭絡術を利用して、多くのダークネスを配下に組み入れようとしているんだよね」
こっちはこっちでさせるわけには行かないよね。と言う言葉に頷く心桜。だが頭に疑問符が浮かんだままである。
「ただ、ここまでは視えても、具体的な情報がなかなか視え辛くて……武蔵坂学園になんらかの関わりがあるダークネスなら結構視えやすいってエクスブレインたちの間では話されているんだけど」
「それで?」
翔が、そこで心桜を見上げた。
「実家に安養寺ラーメンなるラーメンがあって、それを広めようとするご当地怪人がいるかもしれないって言ってたよね」
「うむ。安養寺は信州味噌発祥の地と言われておっての。その味噌を使ったラーメンなのじゃが―――」
「視えちゃったんだよね」
沈黙に満ちる教室。翔が相変わらず無表情のまま口を開く。
「だから、安養寺ラーメン怪人が、タカトの配下に組み入れられるところが視えちゃったんだよね」
予想を立てただけで武蔵坂学園と関わりができてしまう判定のご当地怪人。それでいいのかご当地怪人。名前が売れればそれはそれで万々歳って受け取りそうなご当地怪人。
困惑する灼滅者達を傍目に、地図を取り出す翔。
「このご当地怪人は佐久平駅からバスをジャックして新宿橘華中学と言うところに移動しようとする。運転手も乗客も催眠状態になっていて、ただ言葉に従いながらラーメンを啜っているのが視えた」
「ラーメンを啜っている」
とは言え、軽い催眠状態なので身体を揺すったり叩いたりすれば直ぐに目を覚ます。
急いでいけばちょうど、発車のためにバスの扉が閉まる直前にたどり着けるだろう。運転手と乗客を救出し、怪人を逃がすことなく灼滅して欲しい。
怪人は僧の姿をしている。ラーメンが寺由来だからなのだろうか。
使用してくる技は以下の3つ。
1つ目。後光によって広範囲を催眠状態に陥らせる。催眠状態に陥ると妙にラーメンが食べたくなるおまけもついてくる。
2つ目。ラーメンを食べる。美味そうな表情良い匂いを散らしながらラーメンを食べることで、体力を回復するとともに相手を催眠状態に陥らせやすくする効果があるようだ。
3つ目。何か凄い勢いで叫ぶ。破邪かよく分からないけどとにかくこちらのエンチャントが広範囲にわたり剥がされる。
「うん、まぁ……今回は広めようと言うよりも、移動しようって目的が強いみたいだね」
これも無差別篭絡術の影響なのかな、と首を捻る翔。
「何にせよ、その怪人を止めてラーメンを頂かねば……いや、バスの運転手と乗客を救出せねばのぅ」
頷く心桜。
「……ただ、今回は、結構大規模な動きがあるうちの一つだから。皆気を付けてね?」
鳴り響くタイマーを止めながら、カップ麺の蓋をあけながら、翔はちょっと眉をしかめるのだった。
参加者 | |
---|---|
九湖・奏(たぬたん戦士・d00804) |
望月・心桜(桜舞・d02434) |
敷島・雷歌(炎熱の護剣・d04073) |
アレクサンダー・ガーシュウィン(カツヲライダータタキ・d07392) |
倉澤・紫苑(パンチングマシン・d10392) |
ハリー・クリントン(ニンジャヒーロー・d18314) |
十皇・天子(蒼天・d19797) |
奏川・狛(獅子狛楽士シサリウム・d23567) |
●なんだもう、なんだ
移動中の新幹線の中。敷島・雷歌(炎熱の護剣・d04073)が頭を抱えて座っていた。
「どっから突っ込めばいいんだよ!」
クワッ、と効果音が付きそうなぐらいに迫真の顔を上げる。
「絆なら何でもいいのかよあいつっていうかこれ絆か!? 灼滅者側が一方的に予測しただけだろ!!」
頷いたのは望月・心桜(桜舞・d02434)。
「流石敷島先輩なのじゃ。何という鋭いツッコミ」
「そこじゃねえだろ!!」
「心桜殿、止めるでござる。ここで無駄にツッコミニンポーを使わせて疲弊させるのは」
「忍法じゃねえよ!」
ハリー・クリントン(ニンジャヒーロー・d18314)が素早くフォロー(?)を入れるが逆効果。
その隣で、それはそうとして、と倉澤・紫苑(パンチングマシン・d10392)が己の頬に指を当てていた。
「絆……だっけ? タカトっていうのもよくわかんないよね」
「確かにそうですね。まだまだ謎な部分が多いです」
頷く奏川・狛(獅子狛楽士シサリウム・d23567)。さらに言葉を紡ぐ紫苑。
「無差別籠絡する相手にラーメンが入ってるなんて」
「そこは無差別だからこそでは……ラーメン?」
「……あぁ、怪人だったっけ」
「扱い酷くね!?」
「ああっ、またツッコミ力が減ってしまうでござる」
「もうそれはいい!」
項垂れて、いかんこれ俺がしっかりせんと……、と呟く雷歌の肩に置かれる手。見上げれば九湖・奏(たぬたん戦士・d00804)の苦笑が目に入る。良かったこの人はまともそうだ。
「しかしラーメンか……。聞くだけで腹が減ってきたな。通は醤油や塩が一番だというがわしは味噌のほうが好みだ」
アレクサンダー・ガーシュウィン(カツヲライダータタキ・d07392)の楽しみを含んだ声。
「安養寺ラーメンがどう言うのか、興味が尽きないです。軽く調べましたけど美味しそうですよね」
「でもさー、安養寺って名前しか聞いたことないけど、お寺は味噌の発祥で味噌ラーメンの発祥地ってわけでは……ないんだよね?」
「そのようですね。そのお寺発祥の味噌を使っているから寺の名前を付けているようです」
「それってどうなんだろうね。あ、でもラーメンは気になるなー」
「美味しいに決まっているじゃろう。ああ、今から楽しみじゃ……」
「わたしも楽しみ!」
十皇・天子(蒼天・d19797)の元気な声に、心桜の遠くなりかけていた目線と涎が垂れかけていた口元が元通りになる。
「ご飯沢山食べれるようにいつもより少なく食べてきたからバッチリだよ!」
「おお、天子嬢よ偉いぞ!」
「そう、時間稼ぎの為にも沢山食べるよ! 待っててね、わたしのラーメン!」
「流石じゃ天子嬢!」
雷歌の胃が痛む。奏の顔に困りの成分が強くなっていく。
顎をさすってその様子を見ていたアレクサンダーが、いや、だがしかしと言葉を挟んできた。
「この機会を逃す手はないぞ? なるだけ粘って替え玉を出来る限り注文してやろう」
「お前もかよ!」
怪人だけじゃなくてヒーローもこんなかよ!
「ハハハ、そう言う雷歌殿とて同じご当地ヒーロー」
「じゃねえよ!」
苦笑が強い笑いを向ける奏に応援を要請するツッコミの視線。
返答は静かに首を横に振られるだけだった。
●……先ずは一般人の避難優先ですよね
「……あっ、涎が」
狛さん、まだバスにすら乗り込んでません。現在の一同、駅に降り立つや否や猛ダッシュで駅前のバスに向かっているところ。
プー、と音が鳴り―――その直後、紫苑の足がバスの中に入った。
「間一髪セーフッ!」
途端、鼻に付く美味しそうな味噌の匂い。バスの前の方で、頭を光らせながらラーメン丼を持った僧が驚きながら振り返る。
「ふむ、美味そうな味噌の匂いに惹かれてやってきたが、なるほど確かに美味そうだ。店主……いや御坊わしらにもラーメンを頼めるかな?」
「そのラーメン超美味そう! 俺にもひとつ!」
「いいですよ」
アレクサンダーと奏の言葉に驚きの顔が笑みに変わった。チョロい。
「はいすいません運転手変わりまーす」
そしてラーメンが手渡される隣をやたらガタイのいいバス運転手、の恰好をした雷歌が通り抜けていく。
「え?」
「わたし大盛りで!」
「はいどうぞ」
一瞬注意がバス運転手に逸れたが、天子の言葉にラーメンに引き戻される怪人。
一方バス後部。
「ソオイ!!」
虚ろな目をしてラーメンを啜っていた乗客の視界が突如真っ暗になったと同時、頭が何か硬いものを強く被せられたような痛みが走る。
「ぶほっ!?」
「起きるでござる!」
さらにその硬いものの上から軽い衝撃と言い音。陶器の音と共に視界が戻る。
目の前には赤いスカーフで口元を隠した金髪のニンジャ。
「取りあえずラーメンは後にするでござるよ。危険人物がバス内にいる故、慌てずに脱出するでござる」
危険人物を見る様な目で見られながら冷静で告げるハリーに、何やってるんですかと呆れた狛の声。
「避難誘導でござる」
「いや、その丼ですが……」
目線の先には、先程ハリーが乗客に被らせたラーメン丼。
「ヘルメット代わりでござる」
「多分その被せられた衝撃で起きてると思うんですけれども」
直後、大きく動くが直ぐに、緩やかに止まるバス。何事かと僧が運転席の方に目を向けるが、心桜がその前にラーメンを啜りながら割り込んでいた。
「佐久は鯉こくも美味しいんじゃよな」
「今、バス止まりませんでした?」
窓に向けられる目。アレクサンダーが邪魔。
「ぴんぴんころりで有名で寿命も長いんじゃよな」
後部へ。
「みぃー! おかわりラーメン大盛りで御願いします!」
「いいですよ」
「ん、美味しいっ。味噌の味が特に最高だなっ♪」
「ありがとうございます」
天子の大きく掲げられた丼と、奏の身体が邪魔。それと奏の霊犬の響までラーメン食べてますけど多分霊犬は普通の犬じゃないから大丈夫。
「あ、この味噌ラーメンって何かオススメの食べ方とか組み合わせってあるのかな?」
「安養寺ラーメンの良いとこ教えてくれよ!」
宙から現れて注がれる大盛りラーメンと僧の顔を見る天子と奏。
「信州味噌ですね。味噌をたくさん入れるのです」
脳味噌が味噌になってそうな僧、もとい怪人の発言。
「信州味噌はやっぱりコクが違うんじゃよな」
扉を開く音が啜る音と心桜の言葉にほとんど掻き消される。だが吹き込む風は防げない。
「今、ドア開きませんでした?」
「こら聞いておるのか、怪人! とりあえずラーメン出すのじゃ!」
いいからラーメンじゃ! と、迫真のおかわり。心桜だけではなく、天子やアレクサンダー、奏と響も丼を差し出していた。
注がれるおかわり。紫苑の避難が終わる合図を窓の外から出す。
「はーい、みなさーん。ちゃんとついてきてくださいねー」
「おさない、かけない……」
外から微かに聞こえる避難誘導の声。
「……しなない? ですよー避難はこちらでーす」
ど忘れしてボケに走ってしまった言葉を自分自身でスルーしながら誘導を続ける雷歌の声。むせそうになりながらもラーメンを飲み込んで、心桜は一息おく。
「時に怪人よ」
真っ直ぐ、決して禿げ頭ではなくて後光が眩しくて目を細めつつ怪人を見つめる。
「よいか、ラーメンの激戦区は新宿じゃのうて渋谷じゃ!」
渋谷で生き残れるか試してから新宿に向かうがよい!
「なるほど、渋谷。ではここは渋谷と新宿同時に行くよう運転手に頼みましょう」
運転席に向かう怪人。
振り返る運転手。その顔は、雷歌のビハインドの紫電だった。
怪人が運転席傍の入口から霊障波で外に吹き飛ばされた。
「すり替えておいたでござる! これぞ忍法変わり身の術!」
何故かハリーが叫んだ。
●みんな、今回はわらわ、7杯は食べたいんでちょとだけ待っててね
バスに出るなり宣言する心桜さん。ぶれないにもほどがある。
「おねえちゃんすごーい! わたしも負けてられない!」
天子ちゃんは張り合わなくていいです。
そんな2人に後光と共に差し出されるラーメン。飛びつく2人を見て、アレクサンダーと紫苑も少し考えて頷いた。
「ワシにももう一杯」
「私にもくれない?」
ラーメンを啜る音が辺りに響く。その光景を見て、ご当地怪人はいつでもご当地怪人だな……と呟いた奏がはっと気がついた。
「み、みんなしっかり!」
そういう手にはラーメン丼。勢いよく啜って飲み込んでまた口を開く。
「ラーメン食べてないで灼滅しないと!」
奏の霊犬の響の目が光る。
「あれ、何で俺ラーメン食べてるんだろ?」
再度はっと我に返った奏が疑問符を浮かべて手元を見ながら、口に含んだラーメンを胃に送る。
「こ、これはツッコミをもボケにする驚異のゴコウニンポー!」
ずぞぞぞ。
「お前もしっかりラーメン啜ってんぞ!」
「これ美味いでござるね!」
「催眠かかってるかどうかどっちなんだよ!」
親指を立てて返すハリーはもう置いといて、炎を纏って怪人に詰め寄る雷歌。ハリーが口元に赤いスカーフ巻きっぱなしなのにどうやって啜ってるのとかもう考えないことにした。
「見損なったぜご当地怪人」
「何ですと?」
差し出されるラーメン越しに睨み付け、怒りか、後光が眩しくてか、目を細める。
「いついかなる時も布教の心を忘れず時に手段を選ばないのがお前らじゃねえのか。てめえらのご当地愛ってのはそんな手段で惑わされるもんだったのか?」
その程度のぬるい愛じゃラーメンだって美味くねえな!
見開かれる目、燃え上がる炎。催眠が効いてないことに流石に驚きを見せる怪人。
「ちなみに俺はファイアブラッドでご当地ヒーローじゃねえからー!!」
「え! 違うの!?」
最後に怪人には全く身に覚えがない全力の八つ当たり込みの炎の拳。今驚いたの誰だ。
灼滅者から引き剥がされるように殴り飛ばされた先に受け止める緑の影。宙を舞ったラーメンを綺麗にキャッチする心桜。スープが飛ぶ勿体ないのじゃ! とか言ってた。
怪人が後ろを振り仰げば、シーサーを模した仮面をかぶった緑色の甲冑の、誰だお前は。
「沖縄のシーサーのご当地怪人、シサリウムでグース!」
「狛は何言ってるんだよ!?」
「シサリウムでグース!!」
奏が全力で押し切られましたが中身は狛さんです。ヒーローなのに怪人とはこれ如何に。
「何という禍々しい気……。これは除霊が必要と見ました」
破ァ!!
お坊さんの喝に装甲の一部を剥がされつつ、狛は押とどまった。
「時にラーメン怪人。ラーメン顔になれるでグース?」
「残念ながら徳が足りないのかなれません」
「グースッ!!」
全力で島唐辛子のギターで殴りつけるシサリウムマジ酷い。
もうこれどうすればいいんだよ、と嘆く雷歌。その前にアレクサンダーがライドキャリバーのスキップジャックに乗ってやってくる。
「一先ず、これでも食って落ち着け」
止まる時に僧を撥ね飛ばしたけれど意に介すことなく、ラーメンを手渡すのだった。
●実は武蔵坂学園と何か深い繋がりがあったりするでござるか?
「名前しか聞いたことありませんね」
ハリーの質問にあっさりと答えながらラーメンのおかわりを渡す怪人。ほんとご当地怪人って奴は絆どうなってんだ!
ラーメンを啜るハリーの隣でラーメンを啜る狛。
「なるほどこれは確かに美味いでグース。シークヮーサーを入れればもっと美味しくなると思うでグース」
と言うことでシークヮーサーの皮が飛ぶ。僧の額を凄い勢いで叩き、さらに全員のラーメンの中に皮が入る。お前は怪人か! と言う声とそれでもラーメンを啜る音が響く。
「あっこれ美味いでござるね!」
「えー、俺はない方が……って!」
我に返る奏。
「駄目だ駄目だ催眠にかかってちゃだめだ! 俺にはやらなきゃいけないことがあるんだ!」
吹きすさぶセイクリッドウインド。必死に脳内で使命を言い聞かせて催眠を断ち切ろうとする。
そう、安養寺ラーメンを食べるって使命が……。
「あれ!?」
駄目みたいですね。
「お前らー気を確かに持てー!」
雷歌は叫びながら、回復のオーラを纏ってオヤジもとい紫電の頭に拳骨を落とす。吹き出るラーメン。
「失敬な、わらわは気をしっかり持っておるぞ、お腹もまだ大丈夫じゃ。あ、怪人ー。お土産頼まれておるゆえ、お土産パックも用意してくれぬかのう!」
「うーむ、味噌の濃さが無いとラーメンを食べた気にならないな。御坊、味噌の追加を頼む」
「わたしもおかわり! 啜ってないで早くして!」
天子ちゃんはいくら待ちきれないからってお坊さんの鳩尾に鉄鋼拳ぶち込むのやめてください。それと響ちゃんも尻尾振ってキラキラした目で怪人が手に持っているラーメン見つめないの。ほらご主人向こうで、響までラーメンまっしぐら!? とか言ってるよ。
ふーむ、と追加した味噌ラーメンを啜りながら考えるアレクサンダー。
「鰹出汁と相性が良さそうだな」
「ああ、そう言えばそのようなラーメンも聞いたことがあります」
「ほう。では早速実践だ」
鰹出汁スプラッシュ! 何故か僧の顔面にぶちまけられる鰹出汁ビーム! これには仏の顔も三度待たずブチ切れたようで、後光を反射する禿げ頭に青筋が浮かび上がる。
「ふー、腹ごしらえも終わったし、あとはあなたをどうにかするだけ!」
と紫苑が腹を軽くさすった後、軽快なステップを踏み始め―――消えた、直後、怪人の背中に衝撃。
「覚悟してよね」
にっ、と笑いつつ蹴り離れるその姿。入れ替わりに、アレクサンダーが今度はスキップジャックで突撃してくる。
「え、わらわはまだまだいけそ」
「いい加減にしろ!」
心桜に雷歌の拳骨が落ちる。集気法です。
「ツッコミニンポーがパワーアップして回復効果まで!」
「ねえよ!」
仕方ないのぅと腕を異形化させる心桜。天子の方を見て、口を開く。
「良いか天子嬢。鬼神変は、こう、ねじり込むように撃つべし!」
「ふぐぅ!?」
僧の右頬に異形フック。
「そうなんだ! それじゃ、いくよー!」
「おぼろっ!」
僧の左頬に更に叩き込まれる天子の異形フック。
容赦のなさと僧の強制的な変顔にうわぁ、と呟き、その真正面から通行止めの看板を叩きつける紫苑。良かった変顔は隠れましたね。
その怪人の腰を、後ろから抱え込む腕がある。
赤いスカーフがはためき、異形腕に挟まれた顔を引き抜くように、体重を後ろに持っていく。だが異形腕の力は強く、なかなか引き抜けない。
「あ、安養寺ラーメンダイナミックぅぅぅぅ」
必死に力を籠めるハリー。異形の間からすっぽ抜ける顔。
「でござ―――」
すっぽ抜けた勢いで、残像を描く速度でバックドロップが決まり―――大爆発。
少しして煙の中から回転しながら飛び出してくるハリー。
「これが、ケンポー安養寺バックドロップでござる!」
「さっきと名前違うじゃねえか!」
着地と同時に決めポーズをとったニンジャにツッコミニンポーが飛んで来たのであった。
作者:柿茸 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年11月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 5/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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