集結する光の軍勢~R.I.P.

    作者:六堂ぱるな

    ●光の陥穽
     東京と埼玉の境を奥へ行った、人里離れた川べりで、全ての裾がほつれた真紅の旗を手にした少年が武術の練習に明け暮れていた。流れるような演武の末、少年が呟く。
    「どんだけ腕あげたらシンとまともに戦れっかな……」
     その時、まばゆい光が少年の目の前に現れた。
     光をまじまじと見た少年の瞳が焦点を失って、呟く。
    「……タカト……のために」
     光が消えると、少年は河川敷から上がって最寄りのバス停へ向かった。折よくやってきたバスに乗り込み、運転席の傍へ歩いていく。
    「なあ、『新宿橘華中学』に行ってくれよ」
    「何を言ってるんだ、君は」
     この手の悪ふざけはいちいち相手にしていられない。少年の手が金属でできた運転席の保護棒にかかり、ぐにゃりと曲げるまでは、運転手はそう思っていた。
    「悪ぃけど、急いでんだ。『新宿橘華中学』にまっすぐ向かってくれよ」
     熱に浮かされたような少年の威圧に、逆らえる者など存在しなかった。

    ●陥る不壊者
     教室にやってきた灼滅者たちに一礼し、埜楼・玄乃(中学生エクスブレイン・dn0167)は少しばかり話が長くなる、と告げた。
    「先日の作戦で、光の少年とアンデッド化したクロキバとの戦いに介入した灼滅者たちは、見事にクロキバを討ち取った。これは白の王セイメイの計画に致命的なダメージを与えたと思われる」
     問題はこの一件でセイメイが弱体化し、彼と敵対していた光の少年『タカト』らの攻勢に繋がったとみられることだ。
    「光の少年『タカト』はラブリンスターを用いて無差別籠絡術を使い、多くのダークネスを配下にしようとしている。彼の力なのか知らんが、この作戦は予知が断片的すぎて阻止が難しい」
     しかし。武蔵坂学園に関わった事があり、なんらかの『絆』があるダークネスならば、かなりの確率で予知ができる――そう聞いて、鷹嶺・征(炎の盾・d22564)が眉を寄せた。
    「もしかして、五十嵐・威吹なんですか?」
    「そうだ。シン・ライリーから離反するのではという予測を貰っていたが、こんな形で起こるとはな」
     五十嵐・威吹が最初に学園の生徒と接触したのは昨年の3月だった。11月には武人の町に現れ、学園の生徒と模擬戦をしている。彼が灼滅される事案に介入し、手を組んで六六六人衆の川島を灼滅したこともあった。
    「彼はバスジャックをして『新宿橘華中学』へ向かう。運転手と二人の乗客を救出し、彼と戦って阻止してくれ」
     『阻止』という言葉を図りかねた征が見返すと、玄乃は表情を消して続けた。
    「ここで戦力を減らせなければ、光の少年『タカト』を阻止できなくなる可能性がある。五十嵐・威吹を灼滅して貰いたい」
    「灼滅、ですか」
    「彼を行かせてはならない。光の少年『タカト』はきっと何か、事件を起こす。『タカト』に魅入られた彼を戦力にされるわけにはいかん――手が空いていたら、対応を願う」
     資料を配り、玄乃は灼滅者たちに目礼した。


    参加者
    稲垣・晴香(伝説の後継者・d00450)
    七瀬・遊(烈火戦刃・d00822)
    風宮・壱(ブザービーター・d00909)
    桜倉・南守(忘却の鞘苦楽・d02146)
    日輪・かなめ(第三代 水鏡流巫式継承者・d02441)
    天宮・黒斗(黒の残滓・d10986)
    鷹嶺・征(炎の盾・d22564)
    カルム・オリオル(ヒッツェシュライアー・d32368)

    ■リプレイ

    ●奪われたもの
     天に雲がたれこめはじめた田舎道をバスが走ってくる。
     辺りはまばらに家が立ち、倉庫や空き家も多い。道路工事の看板と、車線を塞ぐように設置した赤いパイロンが路面に並ぶ。
     道路で立ち塞がる風宮・壱(ブザービーター・d00909)を前に、バスは明らかに速度を落とした。桜倉・南守(忘却の鞘苦楽・d02146)が双眼鏡をのぞく目を細める。
    「気付いたな。風宮を轢いてまで行くつもりはなさそうだけど……五十嵐は乗客から離れて、運転席の横にいるよ」
     その言葉に稲垣・晴香(伝説の後継者・d00450)は唇を湿した。不測の事態に対応するための遊軍である彼女は、桃色のパーカーに黒いスパッツと動きやすい格好だ。
    「止まれ!」
     壱にしては強めの言葉に、壱の相棒・きなこが驚いたように毛をふわっと逆立て、バスが彼の手前10メートルで停止する。
     強行突破するなら力ずくで止めるつもりだった日輪・かなめ(第三代 水鏡流巫式継承者・d02441)が、バスの横から近付きながら叫んだ。
    「この先通行止めなのです。タカトさんのところへは行かせませんなのですよ!」
     運転手が自分の隣に立つ少年を怯えたように見やる。かなめと反対側から近付きながら、カルム・オリオル(ヒッツェシュライアー・d32368)も挑発した。
    「どこ行くんや。どっか行く前に僕らの相手して貰えるか」
    「悪いけど、この先には行かせられない。通りたいなら私達を倒してからにしろ」
     天宮・黒斗(黒の残滓・d10986)も倉庫の陰を出て声を張り上げる。
     少年――五十嵐・威吹が運転手に声をかけると、昇降口の扉が開いた。威吹と入れ替わりに前の乗り口からバスの中へ踏み込みながら、七瀬・遊(烈火戦刃・d00822)はちらりと威吹へ目をやった。
    (「アイツと会うの、約1年ぶりか」)
     頭を一振りして、バスの中の不安そうな三人に声をかける。
    「バスジャック犯を止めに来たんだ。避難するけど立てるかな、婆ちゃん?」
    「ほんとかい、怖かったわあ」
     お婆さんが遊の手を借りて立ち上がると、運転手が青ざめた青年に駆け寄った。バス後方の避難口を破って入った南守も男性二人を庇って立つ。パニックの心配はなさそうだ。
     威吹が避難の邪魔をしそうにないことに安堵しながら、鷹嶺・征(炎の盾・d22564)も壱に並んで威吹の前に立った。真っ直ぐ、眼をそらさず見る。
    「お久しぶりです、五十嵐さん。あの時は共闘でしたが、今回はあなたを止めに来ました。お相手、してくださいますよね。……戦いましょう」
    「タカトのとこ行く前に手合わせしよう、今度は全力で!」
     一言一言、はっきりした口調で告げた征、決意を込めた壱を、旗を担いだ威吹は胡乱げに一瞥しただけだった。
    「どっかで会ったか?」
     その一言で、灼滅者たちは凍りついた。
     半年前の遭遇では、彼は以前に会った灼滅者を覚えていた。タカトによる籠絡、いや、もはや洗脳は、威吹から過去に縁のあった者の記憶を消し去っているのか。
    (「威吹とは、もっとちゃんとした戦いをしたかったんだけどな……」)
     タカトの悪趣味な趣向に黒斗が拳を握り、知る由もない威吹は山の方へ顎をしゃくった。
    「急いでんのによ。バス壊れたら大変だし、離れた場所でやろうぜ」

    ●此岸と彼岸
    「ほな、はじめよか」
     人払いも済ませた一行は、南守が音を断つとカルムの宣言と同時に激突していた。
    「いっきますよー! 水鏡流……雨龍鵬ぉぉぉ!!」
     真紅のリングコスチュームに変じた晴香のエルボースマッシュをかわした威吹が、頭上に舞ったかなめの蹴り下ろしをまともに受けた。続いたきなこがもふもふの身体を宙で億劫そうに伸ばすと、衝撃が威吹の足回りを襲う。
    「あの日『腕上げとけよ?』って言われてから、お前はオレの目標のひとつになったんだ。見てろよ、今日は全力で勝ちに行くぜ!」
    「知らねーっての!」
     標識を振りかざした遊から距離をとった威吹にカルムがバベルブレイカーを叩きつけ、我慢がならなくなった黒斗が苛立ちも露わに魔力の弾を撃ちこんだ。
    「何で大人しく術に嵌ったりしたんだよ! バカ! せめて顔合わせた皆との事くらいは思い出せってんだ!」
    「はあ?」
    (「もう少しマトモな状態の彼とやりあってみたかったけど……今はもう詮無いことかしらね」)
     せめて意に沿わない破壊に手を染める前に、引導を渡してやるしかない。吐息をつく晴香の傍らを抜け、征が破邪の輝きを宿した斬撃を見舞ったが、紙一重のバックステップでかわされた。指輪で慎重に狙い、魔力弾を撃ち込んだ南守が壱に声をかける。
    「無理すんな……って言っても無駄だよな。フォローは任せろ、全力で行こうぜ!」
    「ありがと南守。ヨロシクね」
     自身に盾の加護を重ねた壱が応え、かなめを襲う威吹の拳の前に飛び込んだ。
    「なあ、強くなっただろ? 今はそう簡単に折れてやらないからね!」
    「面白え!」
     腹にめりこんだ雷光迸る威吹の拳を、渾身の力で押し返す。
    「……タカトがどうとか関係ないんだ。戦って殴り合って、そういう縁だろ最初から」
     思いがけない壱の言葉にかなめが目を瞠った。
     本音を言えば、まだ戦いたくはなかったけれど。続きを飲み込んで、橙色に輝く『Brave Heat』で殴りかかる。
    「俺は灼滅者でお前はダークネスだから!」
    「殴りあうんなら誰でも同じだろ!」
     最初から五十嵐・威吹と灼滅者たちは、相容れぬ立場でしかなかった。
     だけど『ケンカ』に夢中の威吹の笑顔は、武人の町で会った時と同じで懐かしくて。
     何を奪われたって変わってないよ、お前も俺達も――そう、壱は思う。
     魂も絆も、今ここにあるのが全部だ。

     威吹と正面から戦う選択をした一行の損耗は激しくなった。
     威吹の攻撃力を抑える手に乏しく、命を擦り減らすような削りあいに陥ったのだ。
    「貴方のファイトスタイル、個性的で素敵よね」
     跳び退る威吹に晴香が組みついた。リーチのある相手には密着戦が定番だ。威吹を閂で持ち上げるとバックドロップへ持ち込む。
    「だけど、プロレスラーとして『華』では負けてないわ!」
    「悪くねえな!」
     後頭部から叩きつけられ、跳ね起きた威吹が鋼も打ち砕く拳を返す。
     戦いに飢え、戦いのためならば道理も善悪もないのがアンブレイカブル。
     彼と違う結末へ至る道があったかもしれない。けれど可能性も術もタカトに断たれてしまったことに、死角から斬りかかりながら南守はやり場のない怒りを覚えていた。
    「こんな会い方はしたくなかったけど……やれる事をやるしかないんだよな」
    「お前をこの先に行かせるわけには行かんのや」
     カルムはかつて威吹と邂逅した友人に頼まれている。必ず助けて、灼滅してくれと。
    「水鏡流が発勁の奥義!! 天地神明ッ!」
     気合い一閃、かなめの双掌打で気を叩き込まれ、威吹の回し蹴りが唸りをあげた。名の通り嵐のように前衛を薙ぎ払う。庇い手が間に合わず、かなめが苦鳴をあげて膝をついた。堪え切れなかったきなこが風に巻かれて消える。
    「貴方にとってシン・ライリーって何者? ただの敵、ではない筈よね……?」
     立木に叩きつけられた晴香の問いを聞き流した威吹だったが、問いは重ねられた。
    「シン・ライリーには会えましたか」
     どこまでも真っ直ぐに見つめる目。征の影から影の鎖が、しゃらしゃらと音を立てて威吹を追う。彼を捉えると鎖の先の刃が噛みあい、巻きつき自由を奪う。
    「……シン?」
     突然、威吹の殺気が消えた。
    「いや、シンの招集には間に合わなかった……けど、セイ、ここで何してる?」
     棒立ちになった威吹の様子に、黒斗と遊は攻撃の手を止めて顔を見合わせた。

    ●風は乱れて
     頭を抱えた威吹が呻き声をあげる。影を引かせ、その肩に征が手をかけた時だった。
    「触んじゃねえ!!!」
     絶叫とともに雷光をまとった威吹の拳が、傷の嵩んだ征の鳩尾を抉る。内臓が潰れる音を聞きながら、征の身体はカルムをかすめて吹き飛んだ。正気に戻った時間は1分もない。
    「あっぶないなぁ……お返しや」
     駆動音をあげるカルムのバベルブレイカーが、威吹に杭を打ち込むと捩じ切らんばかりに肉を引き裂く。軽やかに威吹の背後に踏み込み、黒斗が滑らかな斬撃を見舞った。脚をもつれさせた威吹の背を、『Black Widow Pulsar』がざっくりと引き裂く。
    「せめて満足させてやりたいと思ってたけど……自分の魂忘れたヤツなんて、もう知らねー! さっさと灼滅されちまえ……っ!」
    「だからなんだよ、おまえ!」
    「鷹嶺!」
     遊が征に駆け寄った。意識不明間違いなしに思えたが、身体を震わせた征が身じろぎすると、咳き込んで跳ね起きる。
    「……こちらの都合で共闘を持ちかけ、こちらの都合で灼滅を狙う。本当に自分勝手なものだ」
     征の呟きは遊にしか聞こえなかった。
     納得はいかない。けれど、それでも引くわけにも、負けるわけにもいかない。だからこそ全力で戦わねばならない。倒れてなどいられない。
    「……潰しておかねえと、おまえらタカトの邪魔になるな」
     傷を凌駕した征を見て、威吹の瞳が底光りした。植えつけられたタカトへの忠誠の為なのか、アンブレイカブルの本能に火がついたのか。
     手にした旗が翻り、巻き起こる血まじりの暴風が前衛を引き裂こうと襲いかかる。
     咄嗟に征がかなめを庇い、避け損ねた壱と晴香が衝撃で身を折った。征の陰から飛び出したかなめが威吹の懐に飛び込む。
    「あーたたたた……ほぁた!! 絶招『驟雨』なのですッ!!」
     肩から胸へ、骨まで擦り潰すような拳の嵐。よろけた胸に、綺麗な姿勢をキープした晴香のドロップキックがまともに入った。砂塵を巻き上げて後方へ滑る。そこへ征が飾り気のない漆黒の十字架で威吹に殴りかかった。
    「タカトの為に働くとか、つまんねーこと言うなよ」
     血と炎にまみれた威吹が振り返ると、標識を赤く輝かせた遊が目の前に迫っていた。
    「お前は、戦って食べて寝ることに脳を100%使いきってりゃ良いんだよ! それがオレ達が知ってる五十嵐威吹だ!」
    「このっ……!」
    「行け、風宮!」
     南守の手が三七式歩兵銃『桜火』のボルトハンドルを引いて、戻す。次の瞬間、威吹の膝を光条が撃ち抜いた。跳ねる薬莢の紫煙を巻き込み壱が遊と同時に仕掛ける。
    「今度こそカレーと激マズのラーメン食べに行くぞ!」
     炎噴き上げる壱の蹴撃と渾身の力を込めた遊のスイングは、したたかに威吹をとらえた。
     衝撃が地響きをたてて山道を抉り、威吹の身体が陥没する地面に倒れこむ。

    ●証された魂と絆
     どっと壱が膝をついた。威吹がまだ立ち上がるなら、今度こそ覚悟しなくてはならない――身の内の闇が、壱の意を察してざわりと蠢く。
     大の字に倒れた威吹が乾いた笑い声をあげたのは、その時だった。
    「いいけど俺金ねえからな、イチ?」
     弾かれたように顔をあげた壱が、遊が、征が。仲間が威吹の顔を食い入るように見る。
    「ありがとな、ユウも。頭スッキリした。腕あげたなー」
     征の時と同じ――今度こそ確信した。タカトのあまりにも強い洗脳は、彼と縁の深いものが強く訴えてやっと、一時その枷が外れるほどのものなのだ。
     威吹は再びタカトの支配に引き戻されるだろう。だが、もう時は残されていない。
     起き上がれない威吹の全身から滴る血は、風にさらわれるように消えていく。
    「新宿橘華中学には何があるんです?」
    「わかんね。来いってだけだからな」
     黒斗に支えられながら身を乗り出した征の問いに、威吹は困った顔で首をひねった。
    「お前とは、正気の時に僕も戦ってみたかった」
    「ケンカならいつでも買うぜ?」
     唇を噛むカルムに軽口を返す威吹の側へ、よろけながら行って遊は笑いかけた。湿っぽい空気は苦手だし、威吹も望みそうにない。
    「なあ、その優勝旗オレ達で預かっても良い? いつか武蔵坂まで取りに来いよ。その時はまた思いっきり戦って、終わったら美味い飯食おうぜ」
    「……その旗は、お前とともに戦い、共に生きてきた証なんやろう」
     気遣わしげにカルムが呟く。しかし威吹の返事は明るかった。
    「……いいぜ、預けとく。ケンカの後の飯はイチのオゴりらしいしな」
    「やっぱり俺のオゴりなの? 五十嵐けっこう食べるよね?」
     壱がぼやくと、威吹と遊が声をあげて笑った。くたびれた優勝旗が威吹から遊の手に渡り、遊が拳を掲げると、威吹は拳を合わせた。武人の町での別れのように。
    「またな、五十嵐」
    「おう」
    「約束だよ、またね」
    「またな!」
     壱に笑って頷いた威吹の姿が、幻のようにかすんだ。
     目を開けていられないほどの風が唸り、つむじ風が雲を割って空へ奔る。
     その風に巻きあげられるように、遊の手の中で真紅の旗はほどけ、重さを失った旗棒が跡形もなく消えた。人間だった威吹の残滓でもあった旗は、主と運命を共にしたのだ。

     征が威吹の消えた跡へ向かい、無言で柔道の試合の後のように礼儀正しく立礼をする。
     見守っていた黒斗が吐息をもらした。
    「こんな形ではなく、本来の五十嵐さんとお手合わせ願いたかったなのです」
     かなめが悄然とうつむいて、威吹と自分の血にまみれた手を握りしめた。
    「自分のためでなく、見ず知らずの誰かのために戦って勝負を楽しめない……そんな結果は五十嵐さんも不本意だったんじゃないでしょうか」
     ハンチングの鍔に手をかけてつむじ風を見送り、南守は壱へ目をやった。空を見上げる彼の背中に声をかけられない。
     壱の言ったとおり、これはダークネスと灼滅者の戦いだ。けれど仲間と威吹との間には少なからぬ縁があった。他者の絆や魂を奪い、意のままにしようというタカトに怒りが湧き上がる。
    「……彼を、弔ってやりたいわ」
     威吹の消えた跡を見つめて、晴香がぽつりと呟いた。

     人が容易に近付けないある山の中腹で、小さな墓標が青空を仰ぐ。
     『義に殉じた若き不壊者、ここに眠る』。
     晴香が刻んだ標の下に眠る骸はなくとも、五十嵐・威吹という魂があった証に。

    作者:六堂ぱるな 重傷:風宮・壱(ブザービーター・d00909) 鷹嶺・征(炎の盾・d22564) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年11月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 10
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