集結する光の軍勢~願うはその光の先へ

    作者:佐和

     幾つもの会社が入るビルの1フロア。
     そこの机に、黄色いスーツを着た青年が笑顔で腰掛けていた。
    「本当に、人の願いは面白い」
     眺める先にあるのは死体の群れ。
     このフロアに入っていた社員だったもの達。
     正確に言うならば。
     事務員の女性1人と、その女性をいじめていた社員達だったもの。
     報復のために殺された者と、結局は未来に絶望して自殺した者。
     青年は……グレインはその結末を眺めて嗤う。
    「さて次は、誰の願いを叶えようか?」
     そして笑顔のまま腰を上げ、外に出ようと足を踏み出した。
     その時。
     唐突に、グレインの前にまばゆい光が現れた。
    「……何だ?」
     目を細めながらも、訝しげにその光を見たグレインは。
     ふっと何かに思い当たったように表情を変える。
     そして。
     光が消え、元に戻ったフロアで。
    「そうだね。タカトの願いを叶えてあげよう」
     にっと微笑んだグレインはそう呟くと、再び足を踏み出した。
     先ほどまでとは違う目的を持って。

    「グレイン、タカトに篭絡、された……」
     教室の灼滅者達を見回して、八鳩・秋羽(小学生エクスブレイン・dn0089)はぽつりと説明を始めた。
     悩み迷う人に『願い事の穀粒』を与え、その願いを叶えようとするソロモンの悪魔、ウィッシング・グレイン。
     何度か秋羽が予知し、灼滅者達と邂逅した相手の動きが、また見えたという。
     だが今回は今までと違う。
    「クロキバ、倒したの、知ってる?」
     ベヘリタスの卵の事件で暗躍していた光の少年と、アンデッド化して白の王配下となったクロキバとの戦いに、灼滅者達が介入したのだが、その結果、見事にクロキバを討ち取る事に成功したと秋羽は告げる。
     それにより、白の王セイメイの計画に致命的なダメージが与えられ。
     そして、敵対していた光の少年『タカト』達の積極攻勢に繋がった、と。
    「多分、これ……無差別篭絡術」
     光の少年『タカト』は、拉致したラブリンスターの無差別篭絡術を利用して、多くのダークネスを配下に組み入れようとしているらしい。
     そのうちの1人が、グレイン。
     学園との『絆』がある黄色い悪魔。
     光の少年の狙いは分からないが、ここで戦力を減らすことができなければ、『タカト』を阻止する事ができなくなるかもしれない。
    「だから……グレインのところ、向かって欲しい」
     何度も見ているとはいえ、グレインは今までまともに戦ったことがなく。
     わずかな攻撃から、契約の指輪と鋼糸のサイキックを使うということしか分からない。
     また、積極的に灼滅者を倒そうとすることはなく、今回も、普通に立ち塞がれば『願い事の穀粒』たる配下にその場を任せて逃げようとするだろう。
    「どう対応するか、考えて……」
     あと分かっていることは、グレインが新宿橘華中学に向かおうとしていることくらい。
     ブレイズゲートたるそこに何があるのかも分からない。
     グレインを倒して、もしくは、倒さずにおいて、どうなるのかも分からない。
     不明なことが多い状況ではあるが、グレインと関わるチャンスであることは確かで。
    「どうか、悔いなき、願いを」
     紡がれた『絆』を見据えて、秋羽は灼滅者達にそう告げた。


    参加者
    羽柴・陽桜(こころつなぎ・d01490)
    マリア・スズキ(悪魔殺し・d03944)
    川原・咲夜(吊されるべき占い師・d04950)
    神木・璃音(アルキバ・d08970)
    杠・嵐(花に嵐・d15801)
    水瀬・裕也(高校生ファイアブラッド・d17184)
    枸橘・水織(あくまでも優等生な魔法使い・d18615)
    北南・朋恵(ヴィオレスイート・d19917)

    ■リプレイ

    ●願い、篭絡され
     屋上に出たマリア・スズキ(悪魔殺し・d03944)は、静かに人の流れを見下ろした。
     混雑という程ではないが、行き交う人の姿が絶える事はない道。
     だが脇の路地へと入れば途端に人の姿が消える。
     そんな立地を確認して、マリアは視線を横へと移す。
     グレインが姿を現すと言われた方向へと。
    「タカトって何者なんでしょ」
     ぽつりと呟いたのは、同じ方向を見ていた神木・璃音(アルキバ・d08970)。
     尋ねる言葉だが、その口調は淡々とした独り言のようで。
     それを証明するかのように璃音は誰の声も待たずに続けた。
    「まさかグレインさん迄篭絡されるとは……」
     それは隣の枸橘・水織(あくまでも優等生な魔法使い・d18615)と同じ気持ち。
     グレインと対峙してきた者達の多くが抱いている、酷くやるせない感情だ。
    「グレインが正しいか間違ってるか、みおには分からない。
     でもみおは、まだまだぶつかり合いたかったよ。本当の、グレインと」
     悲しそうな悔しそうな、複雑な表情で瞳を揺らす水織。
     水瀬・裕也(高校生ファイアブラッド・d17184)も、言葉を探すように目を伏せた。
     茶会の席でグレインと深く話した4人は、それぞれの想いを胸に、グレインを待つ。
     無言の空間を、冷たい風が駆け抜けていった。
    「……来た」
     道の端、まだまだ遠い地点に黄色いスーツ姿を見つけたマリアの囁きのような声に、皆一斉に視線を投げる。
     そして璃音は猫の姿となって、屋上伝いに地上へと跳び降り。
     水織も扉へ踵を返し、階段をぱたぱたと降りていった。
     裕也はじっと、少しずつ近づいてくるグレインの姿を見据えて。
    (「今の僕には、灼滅しか選べない」)
     できることの少なさに、その原因と思う無知な自分に、ふがいなさを思う。
     もっと知りたい。
     自分にできることを増やすために。
     何をすべきか知ることができるようになるために。
    (「グレインの事は手遅れかもしれないけど」)
     誓いのように強く思いながら、裕也は振り返り、マリアに頷いて見せる。
     そして、水織に続くように、階下へ続く階段へ向かった。
     1人残ったマリアは、ただ静かにグレインを見つめて。
     ある場所にまで近づいたのを確認し、合図となる連絡を入れた。

    ●願い、刹那の邂逅
     人の流れの間を縫って、グレインはゆったりと歩を進めていた。
     時折周囲に視線を移し、目に映る人々の様子を楽しむようにうっすらと笑みを浮かべて。
     胸ポケットにさした白薔薇と、柔らかな短い黄髪をふんわり揺らして、道を行く。
     と、その先に、流れの淀みができていた。
     人々が少し避けるように迂回するそこにいたのは言い合う2人の少女。
     背の高い短髪の少女が困ったように謝っていて。
     長い髪を2つに結わいた幼い少女は、納得できないようにその腕にしがみつく。
     グレインが近づき、その声がはっきり聞こえるようになったところで。
     幼い少女……北南・朋恵(ヴィオレスイート・d19917)は声を張り上げた。
    「お姉ちゃんはいつもそう、あたしとの約束守ってくれたことなんて1度もないもん!」
    「あたしだって忙しいんだ、お前の約束なんか聞いてられねーんだよ!」
     それに呼応するように叫んだ杠・嵐(花に嵐・d15801)は、小さな手を振り払う。
     些細なことから喧嘩した、普段は仲の良い姉妹……の演技。
     驚きと悲しみとに表情をこわばらせた朋恵から顔を背けるようにして嵐は踵を返し。
     その場から逃げるように駆け出し、グレインの腕にぶつかる。
    「おっと」
     だが嵐はそのことにすら気づく余裕がない体で、振り返ることなく走り去った。
     肩越しにそれを見送ったグレインは、俯いて肩を震わせる朋恵に近づく。
    「……お姉ちゃんなんて、死んじゃえばいいのに」
     紡がれたのは、小さな呟き。
     死の願い。
     聞き止めたグレインは少しその紫瞳を細めて。
     そのまま朋恵の横を通り過ぎ、何事もなかったかのように歩き続けた。
     足を止めなかったグレインに、朋恵は作戦の失敗を悟る。
     面識のない嵐と2人で姉妹の演技をしたのは、グレインの気を引き、人の少ない場所へ誘導するため。
     そして『願い事の穀粒』を与えたいと思うであろう場面を作りだすことで、配下たる穀粒を奪うためだった。
     だから灼滅者達はすぐに次の動きに移る。
     グレインを逃がさないために。
    「その子の願いを叶えないのですか?」
     まず行く手に立ち塞がったのは川原・咲夜(吊されるべき占い師・d04950)。
     エイティーンで姿を変え、近くで様子を伺っていた咲夜は、ESPを解除して以前会った時と同じ姿でグレインを睨みつけた。
    「覚えていますか? 私を。
     篭絡されついでに絆も奪われてたら忘れもしてそうですが」
     試すように尋ねれば、グレインは足を止めて咲夜を眺める。
     その答えを待たずに咲夜はひょいと肩を竦めて見せた。
    「ま、忘れられていようと、私は今回のような縁さえあれば十分。
     私には願うほど御大層なものもありませんし」
     そしてその手に杖を現し、グレインへと突きつける。
    「ただ、願いを叶えてくれた礼だけはしないと気が済まないってだけで」
     咲夜が思い出すのは、依頼で自ら死を迎えたある母親の姿。
     敵意に悔しさもにじませて対すれば、グレインは面白がるように笑みを深くし、ポケットに手を入れ何かを取り出す。
     その手に握られたのが『願い事の穀粒』であると察して、裕也は咲夜の隣に並ぶように飛び出した。
    「僕は、貴方に願いを叶えてもらいに来たんだ」
     仲間が揃う時間稼ぎとして考えたのは、そんな声かけ。
     茶会の時に、願いを言えなかったことを覚えているだろうかと思いながら。
    「その『願い事の穀粒』を使わないで貴方と対したい」
     本当の願いは今も言えないけれど、嘘ではない望みを告げた。
     傍らのビハインド・葉の存在を感じながら、北極星をモチーフにした三連石のペンダントを握りしめて答えを待つ裕也に、グレインは手の動きを止める。
     その横手から羽柴・陽桜(こころつなぎ・d01490)は歩み寄った。
    「あたしは、グレインさんに叶えてもらいたい願いとか、そういうのは、ないけど……」
     迷うように伏せていた顔を上げて、藍色の瞳に強い意志を湛えて。
     陽桜は以前より短くなった髪を確かめるように、首筋で左手をぎゅっと握った。
    「あたし、貴方と会って、考える事たくさんあった。
     貴方の願いの叶え方はあんまり好きじゃないけど、歪でも貴方なりの『ひと』への愛情は感じられたよ」
     だから、と想いを込めて願う。
    「憎らしいけど在るべき貴方に戻って欲しい」
     そんな陽桜の隣に、影が落ちて。
     エアライドで屋上からふわりと降り立ったのは、マリア。
    「この策に、かからないなら……死の願い、見過ごすなら……貴様はもう、蛇じゃない」
     傍らにマリアの霊犬を従え、静かにグレインを見据えて。
    「ただの、悪魔として……無意味に、死ね」
     告げた無表情の下に、かすかに残念そうな気配がある気もするが。
     例えそうだとしても決意が揺らぐことはないと示すかのように、毅然とマリアは佇む。
    「グレイン……何でタカトの願いを叶えようとしているの?」
     水織も歩み出て、そう問いかけて。
     演技をやめ、ナノナノのクリスロッテを伴って駆け寄る朋恵が殺界形成を発動させると。
     その足元に寄り添っていた猫も、璃音へと姿を戻す。
    「薫さんが言ってました。
     あんたが叶えるのは、心のどこかで『その結末』を望む願いだって」
     茶会をした喫茶店で、店主から最期に聞いた言葉を繰り返すと、グレインはゆっくりと璃音へ振り返った。
    「貴方がタカトの願いを叶えても……タカトが不幸になるとは思えない」
     その横顔に、水織は必死に呼びかける。
    「興味でも憎しみでもいい。
     みお……達になんかの感情があるなら、無差別篭絡術なんかに負けないでよっ!」
     グレインは宿敵たるソロモンの悪魔。
     そして自らと対極にいる魔法使いだと思う水織は、宿敵同士だからこそ確かな繋がりが、絆があると信じて叫ぶ。
    「初めまして、グレイン。
     ……あたしはあたし、あたしはあらし」
     戻ってきた嵐は、名乗るような解除コードを呟いて、姉らしい普段着から黒いローブにその服を変える。
     短い髪をかき上げると、左耳で菱形のピアスが赤く煌めき。
     振りかざした手を引き寄せる仕草の中に、クロスグレイブが現れる。
     それを優しく、愛しげに抱き寄せて。
    「タカトの願い。それを叶えて、あんたは満足?」
     ちらりとグレインに視線を投げた。
    「貴方は、人しか持たない願いが解放されて叶っていくのを見るのが、その物語を眺めるのが愉しいって言ってたよね」
     嵐の問いに続くように、裕也もその違和感を口にする。
    「タカトの願いも人のそれだったのかな? タカトも『その結末』を望んでいるの?」
    「タカトの願いは、本当にあんたが叶えるに値する願い?」
     璃音も小さく首を傾げて見せた。
     グレインの事を理解しきっているわけではない。
     深く理解しようとも思わない。
     でも、少なくとも、今までにグレインが願いを叶えてきた人達とタカトは違う。
     その確信が、今のグレインに対する大きな違和感となっていて。
    (「……だからこそ、絶対に止めないとっすね」)
     じっとグレインを見つめる璃音に、グレインの視線が流れる。
    「貴方の願いは、タカトに自分を捧げて叶うものなの?」
     そして、裕也のその問いかけに、グレインは目を見開いた。
     驚愕ともとれるその表情のまま、俯くように視線が下がって。
     静かに紫瞳を閉じ、立ち尽くす。
     だがそれもわずかのこと。
     再び顔を上げたグレインは、いつもの軽薄な笑みを浮かべ、楽しげに裕也へと近づいた。
    「なら、試してみようかな。タカトの願いと君達の願いとを」
     差し出された手に、戸惑いと警戒を見せながらも裕也が手を伸ばせば。
     その掌に8つの穀粒が託される。
    「……え?」
     驚く裕也から、しかしグレインはすぐに離れて、今度は朋恵と嵐を眺めた。
    「あれは僕のための演技だったのかな?」
     急な問いかけに、嵐は朋恵と顔を見合わせてから、グレインへ頷いて見せる。
    「面白かったよ。君の願いの先に『その結末』が見えてたなら、もっとよかった」
     朋恵に笑いかけながら、もうどうでもいいことだけど、と呟いて。
    「マリア。璃音。裕也。水織。嵐。後は名前を知らないけれど」
     グレインは天を仰ぎ、灼滅者達に声をかけると紫瞳を閉じる。
    「さあ、始めよう」

    ●願い、叶ったのは
     宣言と同時にグレインの周囲が煌めいて見えた。
     それに気づいたマリアの意を酌み、陽桜を庇って飛び出した霊犬が鋭く切り刻まれる。
     とっさにガードした朋恵の腕も、鋼糸に切り裂かれた。
     すぐさまクリスロッテがハートを飛ばし、裕也の護符が舞って。
     咲夜の魔法の矢とマリアの魔法弾がグレインへと降り注ぐ。
     場所を変えずに始まった戦いだが、殺界形成と、話かけで時間を稼げたおかげで周囲に一般人の姿はなく。
     少しほっとしながら、朋恵は脚に炎を纏うようにしてグレインへと駆け出す。
    「あたし、やっぱり思うの。願いは自分で叶えるものだって」
     陽桜はさくら・くるすを構え、先端の銃口を開きながら告げる。
    「だから、叶えるために、今できる事をしっかりやるの!
     諦めないよ、何もかも! あなたを倒すことも、全部!」
     光の砲弾と共に吐き出すのは、自分の思いであり決意。そして誓い。
     たくさんたくさん考えて、陽桜なりに出した答え。
     水織も、グレインと対峙したことで成長できたと思う自分を見せるように、魔法の矢を生み出す。
     それを相殺しつつ後退しようとするグレインに、嵐は追いすがり。
    「あたしはお前の事を知らない。でも、報告書を読んだ上で思った事があるんだ」
     黒いローブが伸びたかのように広げた影が、刃を象り襲い掛かる。
    「お前……心のどっかで、ハッピーエンドを願ってたんじゃねーの?」
     斬撃と共に問いかければ、返ってきたのは答えではなく石化の呪い。
     回復の手を向けた裕也は、ふと、呟いた。
    「貴方は解放されていく願いたちに何を見てたのかな?」
     ぎゅっと握りしめた掌に感じるのは穀粒の硬さ。
     託されたその意味を、語られなかったその願いを、考えて。
    (「グレインの願いは……終わる事、なのかな」)
     思ったそれが正しいのか、きっと聞いても答えはないだろう。
     言えない願い。その結末。
     叶うことが幸せなのか。
     叶わないことが幸いなのか。
     それはもしかしたら当人にも分からないのかもしれないけれど。
    (「……ただ願うなら、何も願わずにいられる事こそが、本当の……」)
     杖と魔力とを叩き込みながら、咲夜は思う。
     巻き起こった爆発の向こうで、グレインが逃走の素振りを見せれば。
     璃音が直刀を突き付けて行く手を遮り、逃げる余裕など与えないとばかりに陽桜が異形巨大化した腕で殴りかかる。
     灼滅者達の包囲網と数の利による手数の多さは効率的に働いていた。
     グレインの攻撃は重いが、それをものともせずに挑んでいく灼滅者達の攻撃もまた、グレインを着実に追い詰めていく。 
     メディックの回復という支援、そしてそれをカバーするディフェンダー陣の動きがあってこそ、重ねられる攻撃。
     でも、何よりも戦況を有利に進められている要因は……
     霊撃を飛ばす葉の背を見ながら、裕也は穀粒を握りしめた。
     中段から振り下ろされた璃音の日本刀に、朋恵が非物質化した剣の軌跡を合わせ。
     流星の如き煌めきを振り撒きながら跳び上がった陽桜は、その勢いのままに蹴りを放つ。
     たたらを踏むグレインの前へ、間髪入れずに咲夜が飛び込んで。
    「貴方が今まで叶えた願いと、その裏で潰えた願い。その全ての願いの礼だ」
     高速回転させた杭をねじ込むように撃ち込んだ。
     そこにマリアが静かに続く。
    「いつかの誓いを、今果たす」
     振り上げられたのは、異形巨大化した腕と、祈りのような自身の誓約。
    「……死ね、グレイン」
     その名を呼ぶのは最初で最後。
     一撃の向こうに消えゆく黄色い姿を、マリアは眉一つ動かさぬまま見つめた。
     璃音も無表情にその結末を見据えて。
     気だるげに瞳を伏せると、戦闘中は外していたヘッドホンを再びつける。
    「これで、終わり……?」
     陽桜がどこか呆然と呟いて、何かが抜けたようにその場に座り込む。
     それぞれに戦いの傷は刻まれていて、ダメージも少なくはない。
     しかし戦いの疲労感以上の何かが、陽桜の胸を覆う。
     朋恵も複雑な表情で、クリスロッテを抱き寄せた。
     裕也は、傍らに寄り添う葉に振り向きながら、ずっと握っていた掌を開く。
     そこに在ったはずの穀粒は、もうどこにもなかった。
     

    作者:佐和 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年11月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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