
●愛媛甘とろ怪人ラブアンドポーク
愛媛甘とろ豚。
ヘルシーな美味しさが特徴的な、愛媛県産のブランド豚。
愛しすぎたが故だろう。愛媛県にて活動を開始した怪人が一体。
「クーククククク。皆さん、ぜひ甘とろ豚を召し上がって下さいポー。美味しい美味しい、甘とろ豚ですポー」
名を、愛媛甘とろ豚怪人ラブアンドポーク!
愛媛アマトロ豚の顔を持ちタキシードに身を包んでいる怪人は、まずは愛媛を支配するのだと各地をめぐり、愛媛甘とろ豚の試食会を行っていた。
食べてもらえれば魅力が分かる、好きになってもらえる! ゆくゆくは世界征服に繋がっていくのだと信じて。
しかし……。
「その裏で、肉屋やスーパーに足を運んではその他の豚肉を強奪するという活動を行っている……でございますか」
買い物途中の一休み。商店街内のベンチに腰掛けメモを眺めていた石神・鸞(仙人掌侍女・d24539)は、愛媛甘とろ豚怪人と記されている項目を前に静かな息を吐き出した。
荷物をまとめると共に立ち上がり、歩き出していく。
「一通り仕事を終えましたらお伝えしに行きましょう。真実であるならば……」
解決策を導かなくてはならないのだから……。
●夕暮れ時の教室にて
「それでは葉月様、後をよろしくお願いいたします」
「はい、鸞さんありがとうございました! それでは早速、説明を始めさせていただきますね」
倉科・葉月(大学生エクスブレイン・dn0020)は鸞に頭を下げたあと、灼滅者たちへと向き直った。
「愛媛県でご当地怪人、愛媛甘とろ豚怪人ラブアンドポークが活動している事が発覚しました」
本来、ダークネスにはバベルの鎖による予知能力があるため、接触は困難。しかし、エクスブレインの導きに従えば、その予知をかいくぐり迫ることができるのだ。
「とは言え、ダークネスは強敵。いろいろとあるご当地怪人といえど、です。ですのでどうか、全力での戦いをお願いします」
続いて……と、葉月は地図を取り出した。
「皆さんが赴く当日のお昼ごろ、ラブアンドポークはこの駅前で活動を行っています」
活動内容は、愛媛甘とろ豚の試食会。
ラブアンドポークは食べてもらえれば魅力がわかる、好きになってもらえる。ゆくゆくは世界征服に繋がっていくと信じているのだ。
もっとも……。
「その裏で、スーパーやお肉屋さんなどに襲撃をかけては、愛媛甘とろ豚以外の豚肉を奪っていく……という活動も行っているようで……」
故に、決して見逃すわけにはいかない。
当日は試食会に混ざる形で接触し、強奪の事を糾弾すれば良いだろう。
幸い、姿も愛媛甘とろ豚の頭を持ちタキシードを着ている怪人、と言った特徴があるため、見間違えることもない。
「後は戦いを挑めば良い、という流れですね」
敵戦力はラブアンドポークの他、淑女風の配下が三名。
ラブアンドポークの力量は、配下が居る状態で灼滅者八名と五分程度。
防御面に秀でており、配下を庇いながら加護を砕く愛媛甘とろ豚右ストレート。身を固めながら放つ愛媛甘とろ豚愛の鉄拳。連続する打撃愛媛甘とろ豚ジャブマシンガン。そして、己と配下たち全てを癒やし攻撃能力を強化する愛媛甘とろ豚パーティー、といった技を使い分けてくる。
一方、淑女風の配下は攻撃特化。非常に脆いが攻撃能力が高い上に、高笑いで自らの力を高めた上で放つ必殺ビンタや、連続ビンタを仕掛けてくる。
「以上で説明を終了します」
葉月は地図などを手渡し、締めくくった。
「試食会だけならば、あるいは良かったのかもしれません。ですが、残念ながらそうではありませんでした。ですのでどうか、全力での戦いを。何よりも無事に帰ってきて下さいね? 約束ですよ?」
| 参加者 | |
|---|---|
![]() 神楽・美沙(妖雪の黒瑪瑙・d02612) |
![]() マルティナ・ベルクシュタイン(世界不思議ハンター・d02828) |
![]() 神凪・朔夜(月読・d02935) |
![]() 上名木・敦真(大学生シャドウハンター・d10188) |
![]() 壱越・双調(倭建命・d14063) |
![]() 央・灰音(超弩級聖人・d14075) |
![]() フレナ・ライクリング(お気楽能天気残念ガール・d20098) |
![]() 桜乃宮・萌愛(閑花素琴・d22357) |
●美味しい匂いのする場所へ
「豚肉かぁ……。豚トロって結構美味しいよね、確かに……」
お昼時。愛媛県の駅前を目指し商店街を歩く中、マルティナ・ベルクシュタイン(世界不思議ハンター・d02828)は霊犬、権三郎さんに向かって語っていた。
「ご当地怪人って、なんで地道にやってれば効果あるのに、余計なことやって爆死する奴多いんだろうね……」
主のいつになく真剣な語り口に驚いたのか、きょろきょろと周囲を見回していく権三郎さん。
マルティナは不満気な様子で唇を尖らせる。
「む、権三郎さん、失敬だね……。マジ失敬だね……マルティナだってちゃんと仕事するよ…?」
どことなく抗議する様子を見せていく権三郎さんに、マルティナは唇の前で指を振った。
「ちっちっち、分かってないなぁ……。どんな時も芸を忘れない、芸人の基本……」
結局同じ場所に戻っているとでも言うかのように、権三郎さんは小さな鳴き声を響かせた。
一方、神凪・朔夜(月読・d02935)は壱越・双調(倭建命・d14063)と話していた。
「甘とろ豚……名前だけでもおいしそうなんだけど、窃盗してまで広めようとするのはご当地怪人だからなのか」
「私もご当地怪人だったゆえ、名物にかける愛は理解できますが、かつての私がそうだったように、人に迷惑をかけるのは見逃しておけませんね」
双調は言葉を区切り、立ち止まる。
焼けた肉の美味しそうな匂いが漂っている駅前を見据えながら、促した。
「朔夜行きましょう。お仕置きしてあげましょうか」
「分かってるよ、兄さん。一緒にお仕置きしようか」
今回倒すべき相手、駅前で愛媛甘とろ豚の試食会を行っている愛媛甘とろ豚怪人ラブアンドポークと戦うための舞台を整えるため、灼滅者たちは行動を開始した。
お昼時、匂いに誘われてきた人々で賑わう試食会。
上名木・敦真(大学生シャドウハンター・d10188)は参加者を装う形で近づいて、仲間たちの様子を確認。
避難誘導を行う者、ラブアンドポークとの接触を目指す者……各々配置についていく様子を確認した後、衆目を自らに集める力を用いた。
人々の視線が一斉に、敦真へと集まっていく。
遅れて、愛媛甘とろ豚の顔を持ちタキシードに身を包んでいる怪人・ラブアンドポークが何事かと向き直ってきたから、傍らに佇んでいた神楽・美沙(妖雪の黒瑪瑙・d02612)が口元を扇子で隠しながら言い放った。
「やれやれ、よくもまぁ涼しい顔でおるものじゃな。自身の推す豚肉を広めるためにその他の豚肉を強奪しておいて、どの口が魅力を語るというのか」
「ポー!?」
「この人たちはドロボーデース! 自分たちの豚肉を広めるために他の豚肉をお店から盗んでるトンデモナイ人たちデース! 関わると一緒にケーサツのオセワになるかも知れないデース!」
フレナ・ライクリング(お気楽能天気残念ガール・d20098)が元気に畳みかけ、集まっていた人々をざわめかせる。
対照的に固まっているラブアンドポーク、及び作業を手伝っていたのだろう淑女風の配下三名をよそに、美沙が更なる言葉を告げた。
「罪多き者には関わらぬことじゃ。さもなくば、そなたらも闇に呑まれるぞ」
「商店街の方角に逃げて下さい」
人も多いが受け入れる店も多いだろうと、央・灰音(超弩級聖人・d14075)は商店街の方角を指し示した。
バツの悪そうな人々が次々と商店街へ向かっていく中、ようやく状況を理解したらしいラブアンドポークが声を上げていく。
「く、クークククク。何を藪から棒にポー。確かに他の豚肉を奪っている事は認めるポー。しかし、そんなまずい豚肉を売っている方が悪いのですポー。最初から食べないほうがマシなものもあるのですポー!」
「そんなにエヒメアマトロブタ? がジマンなら、ドードーとしてればいいデース。他のポーク盗んだりしたら台無しデース!」
すかさずフレナが反論し、火花散らして睨み合う。
さなかには避難誘導も完了し……舞台は整った。
昼食に湧いているはずの駅前、今だ美味しそうな匂いが漂っている場所で、愛媛甘とろ豚を巡る戦いが開幕する……!
●猛攻! 愛媛甘とろ豚軍団
機先を制する……と、朔夜がいの一番に踏み出した。
敵陣全てを射程に収めた瞬間に回し蹴りを放ち、激しき突風を巻き起こす。
「続け!」
「あまり、動かないで下さいね」
突風を浴び動きを止めた殺那を見逃さず、双調が巨大な十字架を突き立て数多の光弾を撃ち出した。
光弾を浴びた淑女たちは若干姿勢を崩しながらも駆け出して、一人が朔夜の懐へと踏み込んでいく。
間に、権三郎さんが割り込んだ。
権三郎さんが往復ビンタを受けていく中、マルティナがその横を抜け敵陣の中心にバベルブレイカーの杭を突き立てる。
「余った愛媛甘とろ豚は灼滅者が美味しくいただくので安心してね……」
言葉と共にトリガーを引き、衝撃波を放つ。
勢いに飲まれたか、高笑いしつつ右手を振り上げていた淑女が姿勢を崩した。
それでも……と無理やり放ってきたビンタを、桜乃宮・萌愛(閑花素琴・d22357)は杖で受け止めていく。
「……」
豚肉は美味しくてコラーゲンがあって美容に良くて好きだけど……敵となれば話は別。
戦闘で脂ギトギトで……と表情を歪めながら、弾いた淑女の懐へと入り込み杖を振るった。
肩をかすめた殺那に魔力を爆発させ、後方へとよろめかせる。
転ばせる勢いで、双調がその淑女の足下に銃口を突きつけた。
「させないポー!」
ラブアンドポークに割り込まれ、双調はその両足付近に弾丸を撃ち込んでいく。
「今です」
「ああ」
すかさず朔夜が駆け出して、足元に撃ち込まれていく弾丸に対処しているラブアンドポークの横を駆け抜けた。
腕を肥大化させ、ふらついていた織女へと殴りかかった!
織女は身をひねり、喉元に掠めさせるのみに留めていく。
しかし、かすめた衝撃を殺す余裕もないのか……くるりと数度回った後、仰向けに倒れ瞳を閉ざした。
機先は制したと、灼滅者たちは攻撃を重ねていく……。
「ポー……よくも可愛い配下を。だが、愛媛甘とろ軍団の実力はこんなものじゃないポー。一度パーティーを開いて立て直すポー」
ラブアンドポークの言葉に従い、一箇所に集っていく淑女たち。手渡された愛媛甘とろ豚を食べた後、勢いを増して灼滅者たちに襲いかかってきた。
灰音は最もダメージを与えている淑女のビンタを騎士剣で弾いて衝撃のみを感じた後、刃を非物質化させながら踏み込んだ。
淑女を引き寄せ立ち位置を入れ替えたラブアンドポーク目掛け、その刃を振り下ろしていく。
「今のうちに……」
言葉に従い、ラブアンドポークの横を抜けていく灼滅者たち。
一方、敦真は灰音に帯を差し向けながら、戦場全体へと視線を向けていく。
権三郎さんが淑女の攻撃を受けていた。
「怪奇煙……でも足りませんね。手の空いている方、治療補助をお願いします」
――それから、治療を施しては足りず手の空いている者に要請する、と言った状況が増えていった。
体勢が整った後、淑女たちの攻撃は力強く前衛陣へと撃ち込まれていく。ラブアンドポークもその小節で、時にはパーティーを開き、淑女たちをサポートした。
結果、手数が減り……二人目は中々倒せない状況へと陥っていた。
「それでも、耐えていけば……」
一人でも倒せれば覆せると、敦真は帯と煙、陣を使い分けて前衛陣を治療する。
陣による治療を受ける中、フレナは往復ビンタを受けているウイングキャットのコンゴーを横目に、権三郎さんへと向かっているもう一人……最も傷ついている配下の懐へと踏み込んだ。
「隙ありデス!」
踏み込んだ勢いのまま駆け出して、すれ違いざまに剣を振るい後ろ足を斬りつける。
直後、美沙が蛇腹剣を振るい虚空を切り裂いた。
生み出された刃は庇おうと動いたラブアンドポークの横を抜け、最も傷ついている配下をふっ飛ばした。
壁にたたきつけられたその配下は、地面に落ちるとともに昏倒する。
残る配下は、あと一人。
「さて……それでは、さっさと倒してしまいましょう」
灰音が素早く向き直り、剣片手に駆けて行く。
配下を早々に殲滅するために、その刃を振るっていく……。
●愛媛甘とろ豚を求めて
フレナの振り下ろした刃が、最後の配下を地に伏せさせた。
「後は怪人Onlyデスネー! 一気にAttackして行くのデース!」
勢いのまま振り向く中、コンゴーがラブアンドポークへと魔法を放つ。
魔法を受けながらも、ラブアンドポークは拳を震わせた。
「ポー……絶対に、絶対に赦しませんポー! 喰らいなさい、愛媛甘とろジャブマシンガン!」
言葉と共に、朔夜向かって駆け出した。
素早く萌愛が割り込んで、マシンガンの如きジャブを杖を回して受け止めていく。
「……」
担っている役目の違いか、あるいは庇う過程で呪縛も刻まれたか……ラブアンドポークの拳には、勢いがない。
あるいは、配下たちの放ってきたビンタよりも。
「……配下のはもっと痛かったですよ!」
萌愛は言葉と共に跳ね除けて、杖を構え直しながら踏み込んだ。
喉元に先端を突き付け魔力を爆発させたなら、ラブアンドポークはよろめきながら二歩、三歩と後退。
体勢を整えながら、口を開いた。
「ポー……なんで邪魔をするんですポー! 君たちも愛媛甘とろ豚を一口食べれば……」
「てか、他の豚肉を売れないようにするって、もうその時点で負けじゃん……。やべーって思わないと出ないもんね、その発想……」
言葉を遮るように、マルティナが鋭く指摘した。
反論するためか視線を向けてくるラブアンドポークの懐へと入り込み、足に炎を走らせながらハイキック!
腕によって防がれた直後、権三郎さんが斬魔刀を振るい脇腹の辺りを切り裂いていく。
さなかには敦真が萌愛に帯を差し向けつつ、頷いた。
「自信がないのもそうですが……ちょっと考えれば自分のやっていることが巡り巡って愛媛甘とろ豚のイメージを下げることになるとわかるでしょうに……」
「わからないから怪人、なのかもしれないけど……」
帯に抱かれていた萌愛は、静かなため息を吐きながら、杖を構えた。
「ポー……」
ラブアンドポークは言葉を失ったまま、拳を固く握りしめていく。
すかさず萌愛が踏み込んで、その拳を杖で受け止めた!
「この程度……!」
再びラブアンドポークを跳ね除けて、跳躍。
胸元にジャンプキックを撃ちこめば、ラブアンドポークはよろめきを抑えきれずにすっ転ぶ。
すかさず灰音が踏み込んで、非物質化させた剣で貫いた。
「決めてしまいましょう」
「他者を貶め己の地位を得ようとするものは、自ずと淘汰されていくが理じゃ。来世では改心するがよい」
呼応した美沙が踏み込んで、肥大化した拳で頭をぶん殴る。
加護を砕かれ、ぶん殴られ、眼を回していくラブアンドポーク。
それでもなお立ち上がっていく存在を前に、双調が足に炎を走らせた。
「私が抑えますから、決めて下さい」
「ああ」
双調が足を振り上げ脳天にかかと落としを刻んだ時、朔夜が懐へと踏み込んだ。
金烏と対になるといわれる兎の名を冠した杖をおもいっきり振り下ろした!
胸を強打した直後、魔力を爆破!
上からの衝撃に晒されたラブアンドポークはバウンドし、受け身も取れずに墜落し……。
「ぽ、ポー……」
ふらつきながらも立ち上がり、空を仰いだ。
「ポー……え、愛媛甘とろ豚は美味しいポー……他の豚よりも、ポー……だから、どうか、食べて……」
言葉を途切れさせるとともに倒れ、爆散。
後には何も残さず、この世界から消滅した。
戦いを終えた灼滅者たちは、各々の治療や元配下たちの介抱へと移行した。
しばしの後、元配下たちが元の生活に戻っていくのを見送った萌愛は、静かな溜息とともに呟いていく。
「ほんと、ただ振る舞うだけなら分かりますが……甘とろ豚を広めたいんなら、悪さをしちゃダメですよね」
その言葉に、頷く者は多い。
続けて、フレナが提案した。
せっかくだから食べていこう! と。
どんなものでも、食べてみなければ始まらない。
それは、愛媛甘とろ豚も他の豚肉も変わらない。
食べてみてこそ、違いが分かる。そのためにも、多種多様な豚肉が、食べものが必要なのだ。
| 作者:飛翔優 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
![]() 公開:2015年11月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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