カードで伺う未来への足がかり

    作者:一縷野望

     彼の髪と同じ色のラシャ布を滑り円描くはタロットカード。
     すんなりとした指で纏め6枚落とし7枚目をテーブルへ。更に6枚落とし14枚目と15枚目を左右に。
     機関・永久(リメンバランス・dn0072)が配するカードを、頬杖ついてじーっと見据えるのは灯の瞳。
    「標さんは……現在」
     ぺらり。
     現れたのは『隠者』の正位置。
    「精神を満たす、質の高いモノを求めて、いる」
    「確かにね」
     神妙に頷く灯道・標(中学生エクスブレイン・dn0085)の前で、永久は左と右のカードをあけた。
     左は『正義』の逆位置、右は『運命の輪』の正位置。
    「……結構明らか、ですね」
    「うん、ボクもカード見ててなんとなくそー思う。左がダメで、右がオススメって感じだよね」
     こくり。
     厳かに頷くと永久は勿体つけたように一呼吸、そして一気にしゃべり出す。
    「左の『日本初上陸! ドカ盛りクリーム☆ハイパーパンケーキエクセレント』は、感情の儘全部食べた結果、胃もたれに襲われるとかそんな、感じ」
    「右の『ぷち贅沢気分♪ シュワシュワチーズケーキ』は?」
    「運命の出逢い」
    「そんなに?!」
     こくり。
     厳かに頷くと永久。
    「標さんにとっては感動の、味。食べると思いがけない幸運に恵まれる、かも」
     ――どっちのスイーツ食べると幸せ? そんな占いの結果が出ました!
     
     ……とまぁ、本日誕生日の永久は、こんな風にみんなを占いたいらしい。
     もちろん、占う内容は依頼者次第。例えば「どっちの進路がいい?」とか、個人的なコトであればどんな内容でも歓迎だ。
    「二者択一以外にも、悩んでる物事を解決するヒント、とか……来年の運試し、とか……そういうのも、できますよ」
     もちろん当たるも八卦当たらぬも八卦だけれど、と控えめに添える。
    「しかし、占わせろってのも、面白いね。普通逆じゃない?」
    「……もう、過去が無いって嘆くのは止めようと、思って。だから、みんなの未来を、覗き見たい。未来を」
     学園に来て2年が過ぎた。
     その間、取り戻した記憶はごく僅か、でも――。
    「虚ろじゃないとも、気がついた」
     関わってくれた誰かがくれた『欠片』は、自分の心の根っこに満ちて『機関永久』という誰かを構築してくれる、未来へと。
    「皆さんの、悩みを解決したいとか、綺麗な話では、なくて……俺のワガママなん、です。占いたいって」
     誕生日だからと口元を小さく崩す永久へ、標はにいっと笑う。
    「いいんじゃないかな。じゃ、さっそく人を集めてくるね」
     ガタリと立ち上がり駆け出す少女を見送って、永久はカードを纏めると静かに誰かの訪れを、待つ――。


    ■リプレイ

    ●垣間見たモノ
    「永久ちゃん、お誕生日おめでとう♪」
     パッと心が掬い上げられるような存在感が印象的だった。
    「現状は『正義』――結月さん、みんなが楽しめるよう誰かに偏らず、気配りしてるん、ですね」
     真剣に聞く結月の題目は『研究会を盛り上げるためには?』
    「将来の懸念は『恋人・逆』で空回りとか相手を考えすぎて却ってわからなくなる…」
     顰められる眉を安心させるように永久は視線を合わせた。
    「『星・逆』が出てる、から…皆、結月さんが好きで集まってる…背伸びしすぎないで、今ある雰囲気大事にがいいと思い、ます」
    「ありがとう、アドバイス大切にするね♪」

     星空ブックマーカーを天井に透かし闇色の瞳は「ありがとう」と弾む。
     とにかく運動が苦手との香乃果。
    「成程…現状は『吊られ男・逆』です。頑張ってもダメで途方に暮れる…足の怪我にも、気を付けて」
    「どうすればいいのでしょう」
     イメージが湧かない惑いはカードにも出る。
    「『教皇・逆』は、自己流だと限界があるという、意味。キーは『力』…スポーツ得意な人、身近にいませんか?」
     思い当たる誰かを探す眼差しを支えるように。
    「香乃果さんは頑張れる力はもの凄く持ってる、から…誰かにコーチについてもらうのがオススメ、です」

    「しっくり収まります。ありがと」
     木彫りの椿をなぞり響からの箱を再び開く。
     ――大好きなパートナーともっと仲良くなるには?
    「『世界・逆』二人の仲…落ち着いて、ますね。慣れすぎるコト、怖い、ですか?」
    「会えない日が続くこともあって…」
     傍に居るのを当たり前にしてしまうと寂莫が募るかも、しれない。
    「未来は『太陽』…輝きに満ちて、ます。不安は素直に打ち明けて、みたら?」
     キーカードの不吉さに息を呑むも永久は首を振る。
    「『死・逆』は、いいカード。太陽も此も『蘇り』を暗示して、ます。崩壊に絶対負けない、永遠の絆」

     よろしくお願いしまーすっなお辞儀に永久はいい意味で肩の力を抜く。
    「問題って程深刻でないけど、いい?」
    「勿論」
     ――不満はない、だからこそ好きな人に出来る事は?
    「『戦車』若さに満ちた恋にお互い、充実」
    「そ、そうかな」
     照れた頬で浮かべるは彼のやんちゃな笑顔。
    「未来は『月・逆』…不安は晴れる、暗示。彼にリードを任せると吉、です」
    「重荷じゃない?」
    「ひよりさんの存在が彼の張り合い。できるコト…キーカードが『吊られ男』だから…」
     ぐと身を乗り出すひより。
    「もし彼が躓いた時は献身的に支えてあげて、ください」

    「『人もダークネスも、無益に命を落とさない世』を得る為の、忠言を聞いてみたくてね」
     己の生き方とは交差しにくいと理解った上での問いに永久は口元を崩す。
    「ああやはり難しい問題…『節制・逆』」
     人超えた英知の逆位置とは素直過ぎると謡は小さく吹きだした。
    「未来は『審判逆』手厳しい、ですね」
     騙される…それでもキーは『恋人』
    「裏切られても愛を注げとは、無茶振りもいいところだね」
     謡がますます笑み深くするから永久も珍しく声出し笑う。
    「是も思い出の一欠けになれば、幸いだよ」
     おめでとうのパズルピース型クッキー。
    「ありがとう、ございます」

    「緊張しますけど…」
     裄宗のくれた穏やかな誕生祝い、礼と共にカードを滑らせる。
     灯籠流しに託したかの人の願いと誰かに託されたであろう願いについて…漠然としているけれど。
    「大丈夫、占いってそういうモノ。俺も…形ない過去を掬おうとしたのがきっかけ、です」
     つまりはそこから未来を見ようとした永久へ眩しげに微笑む裄宗。まるであの夜のように。
     七不思議使いとして貫く不安、答えは見つかってるとつつくは『月・逆』
    「迷いは晴れて、ます」
    「そうかもしれません」
     嘆くのを止める決断を常に真摯に抱けば『塔』のトラブルは呼ばぬと『世界・逆』が語る。

     ――僕自身が過去を振り切って前に進むための方法。
     追い出された憎悪は、未だ。
    「その濃い熱、正直羨ましい、です」
     ごめんなさいと慌てて唇にのせ。
    「『太陽逆』は孤立。未来は『塔』…友を疑う、破滅」
     斯くも雄哉の故郷への不信は根深く、そのままだと予想通りの顛末を辿るだろうとカードも告げる。
    「キーは『愚者』…拘りを手放し、全てから自由になるよう勧めて、ます」
    「手放す、ですか」
     憎悪燻る場所に手をあてる雄哉へ永久は瞼おろしぽつり。
    「赦す必要はないん、です」
    「――」
    「目を背けるようで嫌かもしれない、けど…一度離れて自身を俯瞰してみては、どうでしょう?」

    ●二つに一つ?
     ――手放したくない気持ちと、縋らず前を向かねばという気持ち。琥界と暮らした箱根の生家をどうすべきか?
     しっくり手に馴染む湯飲みを撫でながら永久は作楽の迷いに耳を傾ける。
    「作楽さん、手放す不安と冷静にならないとって気持ちの板挟み、でしょうか?」
    『隠者逆』から、手放した場合は『死・逆』/手元に置くと『法皇・逆』
    「カードは手放すコト勧めて、ますね」
     死の逆位置は再生、好転。
    「手放すのは確かに一つの終わり、けどそこからの出発は明るい、です。手元に置くと気持ちの立て直しの失敗の、暗示」
     カードを見つめる作楽へ、でも…と永久は小さく笑む。
    「手放し難い気持ちも、わかります」

     大学卒業後の進路――家業の魔法使いを全うする知識研鑽から人の役に立つか、図書館にて人々と本の出会いの一助となるか。
     ニコの真摯な思い受け止めカードに籠める。
    「これは…確かに決め難い、ですね」
     身を乗り出したニコへ「どちらも良いカード、です」と永久。
    「現状の『法皇』は落ち着きと慈悲。そして人の役に立とうというニコさんの意志の強さ、感じます」
     魔導研究の道は『太陽』
     図書館の道は『死・逆』
    「前者はやり応えありで繁栄と充実の暗示。後者はまさに進路変更からの成功を示すカード、です」
     どちらか一方へ押せず困ったように詫びる永久へ、いやとニコは手を翳した。

    ●手が届く人と
     それぞれの占い時は席を外す姉弟、まずは姉シアンから。
     ――あたしの今後の在り方。
     学園生活重視の自分と戦闘重視の弟。心配で依頼行きを増そうか迷い、
    「あの子が戦うのは、あたしを守る為…」
     だから落とし所を知りたい。
    「『愚者・逆』…無茶じゃないか不安、ですか?」
    「かも」
     首を振るシアンへ未来示す『節制』を指さす。
    「重ねた純粋な想い、自信を持っていい、です」
     シアンは確かに安らぎを与えている。
    「『運命の輪』転換のカード、試しに違う行動をするのは、吉」
    「ありがと、ハッピーバースデー永久くん☆」
     入れ替わり七星はサシェを姉の瓶詰めキャンディに添え「おめでとう、ございます」と控えめに。そして開口一番の「姉の健康運」に永久は微笑む。
    「いい、弟さん」
     シアン健康『世界・逆』
     彼の勝負と健康『吊られ男・逆』と『女帝』
    「シアンさん、心身に疲れ溜まってそう」
    「どうすれば…?」
    「新鮮に感じる所に連れだして、あげて」
     例えばいつもと違う帰り道とかでも十分。
    「来年は大きな勝負は避けた方が、いい」
     悪い停滞、だが健康運はバッチリ。
    「気力体力共に、充実」
    『女帝』が支えてくれる姉に見えて、七星は早く2人で結果を分け合いたいと、思った。

    「…モニカ、最近創作にはまっていて」
     ――まだ作品未満の彼ら、喜劇と悲劇どちらを目指せばいい?
     永久は二枚目以降に首を捻る。
    「モニカさん、他のコト悩ん…ごめんなさい」
     現状は『星』で創作への希望が充実。
     喜劇は『女教皇・逆』
     悲劇は『隠者・逆』
    「喜劇は集中力が続かない、悲劇は身につかない…でも『星』は向いている、と」
     人になぞらえた方がしっくりくるとは伏せて。
    (「振り回す癖に叶わぬ思い抱く彼と、不安で自己肯定低い彼女――性別逆だけど」)
     おろおろするモニカを余所にミストラルは永久の耳元へ。
    「僕は…そうだな」
     ――モニカの隠し事は良いか悪いか、問い詰めるべきか否か。
     隠し事の部分だけ聞こえ肩震わせる水鳥…確かに翳りを隠している、けれど。
    「現状『太陽・逆』」
     永久は声を潜める「永続しない恋に怯えてないか」と。彼はますます笑みを深める。
    「未来は『運命の輪・逆』不安定な恋」
     何処までも怯えている。
    「太陽逆は間違った判断、変化の好機を示す運命の輪が逆さま…」
     問い詰めは凶。
    「キーは『審判』」
     裁かれるとしたら明らかに罰せられる方だと肩竦めるミストへ、永久はようやく口元を緩める。
    「愛に奇跡が、起こる」

    「自分で自分のことは占えないから今回はすごく助かる」
     樹の傍ら拓馬が頷いた。
     今まさに2人取り巻くトラブル解決のとっかかりが欲しい、と。
    「現状は『女帝』…この問題は、樹さん主導、ですか?」
     更にキーで『女教皇・逆』が出ているのも暗示的だ。
    「素直になれないのが原因だってわかってるんだけど…」
     自分ばかりがワガママなのも嫌と続くのに永久はキーを示す。
    「プライドの高さが解決を阻む…素直さは味方、です。これはきっと、お互いに」
     ――距離を置いた方がいいのだろうか? 2人の問いかけが重なった。
    「未来の『運命の輪』は良き転換を示す、カード。考えた上での変化は最終的な、幸せに」
     逆に否定的な距離置きは止めた方が良いと永久は締めくくった。

    「…女性らしく、ねぇ」
    「す、少しは気にしてたんだよ!」
     彼の前では女性らしくありたいと日々勉強の里桜に「今のままでも十分」と勇騎は素。女心理解され難し。
    「確かに、今でも十分魅力的、です」
     到達者示す『審判』
    「憧れる女性のアドバイスは吉と、でてます」
     未来は『塔・逆』
    「キーの『魔術師』と合わせると――イメチェンでモテ過ぎてトラブルを招く、でしょうか」
     目を剥く勇騎と焦る里桜。
    「魔術師は気の合う相手も指し、ます…勇騎さんは本当に心根の女らしさ惚れ込んで、ますね」
     ただ変化を阻むカードはないので相談しながらなら大丈夫と締めくくる。
     ――勇騎は『現状の安定を追求するか』『誠実さや堅実さを追及するか』の二者択。
    「…あまり悩み過ぎないように、な」
     秘密と言われ気遣う眼差しの彼女。だから大切にしたい、そのための最善はどちら?
    「『隠者』…この件に関して思慮深くありたい、です?」
     頷く勇騎に永久は『安定』側をめくる。
    「ここでも『魔術師』…里桜さん関連でしたら、本当に感性ぴったりの好相性、ですね」
     更に思い切ったアタックは吉と小さく唇を崩す。
     逆に『堅実』は『星・逆』
    「自分の設定した理想が高くて自信喪失の暗示、です」

    「い、いいだろ! 僕だって女子だぞ?」
    「成程…」
     幼なじみの朔之助を史明はじー…スポーティで爽やか男子ないつもの恰好に。
    「成程?」
     疑問符ついたー!?
    「何か言いたい事あんのか? ん?」
    「では恋愛で」
     吹きだしながらも折角だから現状と来年とキーをとめくる。
    「現状は『法皇』…深く広い愛、見守り」
    「ああ…」
     史の幸せを祈るばかりな自分その物で惹きつけられる。
    「来年は『戦車・逆』…恋愛を掴みかねて焦る、暗示」
    「そっか難しいな…」
    「キーは『正義』で落ち着いて。現状は良カード、きっと朔之助さんの向ける心は正しい、です」
     続けて史明――中々現状打破出来ない恋愛問題。さりげないアプローチも隣の彼女に届かないと暗に。
    「現状は『恋人・逆』…空回り」
    「ああ」
     体全体で溜息の史明へ永久は頬を緩める。
    「でも未来は『太陽』で明るい、です。オープンな交際が、吉。健康美溢れる人との…」
    「はい秘密タイム」
    「なんだよ?!」
     おみみ塞ぎつつ『太陽』の暗示が朔之助を指してるようでちょっとにやけてみたり。
    「キーは『戦車』…いけいけオラオラ、です」
     永久も口元に手をあててこっそり。スピーディかつ積極的なアプローチを目指せとぽそり。
    「有難う、自信でたよ。そして」
     おめでとう!

    「想希へのクリスマスプレゼント、何でもえぇって言いよるし」
    「そりゃあ何もらっても嬉しいんだから…」
     頬を朱に染め想希は咳払い。
    「な?」
     ちら見後、誰かの力添えで一所懸命になれる大切な彼の好みを丁寧に。
    「あ、カードも『迷わず自由に選んでくれた物が嬉しい』って出て、ます」
     現状『愚者』自由。
     未来『月』懸念は迷い。
    「キーは女教皇…知的で心高める書物とか、どうでしょう? 悟さんの感受性、特に鋭くなって、ます」
    「おおきに」
     そして想希も――クリスマスデートで一番盛り上がれる場所。
    「悟こそ俺の選ぶ場所が…」
    「想希とやったら何処でも幸せやから」
    「ほら」
     この先を誓い合える場所と聞き、尖った唇が照れた所で想希は指を包む。
     現状『太陽』充実、祝福。
     未来『皇帝』頼りになる男性、責任感。
    「想希さん…幸せ、ですね――悟さんは想希さんの判断、信頼して、ます」
     なので読み解きはやはりキーの『世界』で。
    「海外旅行が吉…でも急、ですよね。横浜とか神戸…異国情緒感じられる所なら、他でも」
     お礼、悟は生姜紅茶と金平糖、想希はアップルシナモンマフィン。
    「ありがとう、ございます」
     幸せのお裾分けで作れた未来抱え、永久はふわり。

    ●未だ来ぬ――
    「こう、昨年までわりと将来描くことができかなったんだよね、ワタシ」
     過去に目隠しされていたかの如く――なら、さくらえと占者は近しい。
    「総合は『恋人』…あ、恋が中心って暗示では、なく」
     恋愛運を敢えて「いい出会い」と言い換え口元崩したさくらえへ告げる「何事も愉しみ過ごせそう」と。
    「仕事運の『皇帝』は責任感が認められて、大きな件を任されるかも、です」
     最後は、新たなモノが生まれるか?
    「『星・逆』だから、巡り会えても理想を押しつけすぎるとか…気を付けて」
     果たして何を軸に理想を描いてしまうのか? 自問自答覆い隠し礼告げ席を立つ。

    「恋愛と来年の運試しとうーんとね…美味しい物探したいんだけど…」
    「正確な方角じゃなく、雰囲気で」
    「うん。恋愛は、美味しいもの持った王子様が迎えにきたらいいなあって」
     屈託なさに吹きだせば「変かな?」と傾げられた首。
    「いえ」
     笑顔であけたのは『皇帝/太陽/悪魔』
     王子様は高級感あるお菓子が好き、太陽だから『東』?
    「あと…王子様と違う人に誘惑され、ないで」
    「美味しい物くれる人も気をつけて見ないとかな?」
     カードを持ち上げ、るりかは「綺麗」とほわり。
    「幸運告げるフォーチュンテラー」
    「少しでも、お役に立てれば幸い」
     るりかは美味しい物を食べた時の破顔で返す。

     点数関係なく、このままのセンスでいて欲しい(美術教師談)
    「褒められて、ます。カードも『愚者』ですし」
     美術と音楽、自由なままで。
    「演劇関係は…『死・逆』です進路変更が良かった」
     七不思議かと、勇介は破顔し饒舌さが増した、内容は。
    「女の子の機微って、難しいよ。どうも求めることと、ずれちゃって」
     ぱたり。
     めくれたカードに永久は吹きだす。
    「ご、ごめんなさい…余りにまんま、で」
     ――女帝。
    「あはは…」
    「そんなに笑わなくても」
     照れつつおめでとう、アラザン連れたシトロンの紅茶。
    「これからも少しずつ、機関先輩に輝きが降り積もるように、って」
    「ああ…いい香り、です」

    「占いは信じない方なのよね」
     そんな歌菜の瞳は「お手並み拝見」ときらり。
    「気象予報士は先行き明るい『星』…独創的な勉強法が吉。恋愛は――不倫、絶対ダメ」
     真顔。
    『法皇・逆』は中年との不実。余りに真剣なので歌菜はぷーっと吹きだしてしまった。
    「思いやりない男、です。こいつ」
    「あはは…気をつけるわー」
     メモする文字も笑って遊ぶ。
    「灼滅者生活は…押しの一手」
     自信溢れる王様『皇帝』は決意の力強さを裏書きするようで。
    「一人でも多く助けたいって気持ちで邁進、ゴーゴー…です」
    「ありがと」
     そして――おめでと。瓶詰めクッキーを手渡し破顔。

     更に重なる「おめでとう」に、永久は紫苑をぱちりと瞬かせる。
    「みんな、ありがと」
     お祝いとプレゼント抱きしめて瞳眇めた。そうして1人1人へ切り直しカードを選ぶ。
    「沙紀さんは、もうすぐ集中力が高まると思い、ます。努力は無駄になりま、せん」『隠者』
    「俺、愚者好きだから、嬉しい、です。チェーロさんの来年は希望で、きらきら」『星』
    「いーよ。矢宵さんの全体運は…魅力が増して変身のチャンス、かも? 苦手克服、とか」『女帝』
    「…はじまりの場所、言葉、音…夜音さんが探し尽くしたトコに、新しいきっかけがある、かも」『魔術師』

     なこたとたま、指の動きを追うのが猫のようで。
    「でたカードは『吊られ男』『世界』『悪魔』――なこたさん、頑張ってきたん、ですね」
    「はい、頑張り出したですよ」
    「きっと結果、出ます。努力した人が至る『世界』は大団円。でも、誘惑に負けないように、です」
     一つ一つ真剣に頷きお礼、そして…。
    「…実は僕も占い出来るですよ」
     瞼に紅隠したまをもふもふ…永久も似た眼差しで、待つ。
    「出ましたです!」
     ――永久さんの未来は皆で笑ってる、ですよ。
     見よう見まねの占い言葉に、皆からもらった欠片が輝きだす。
    「それ、すっごく嬉しい」
     本来の言葉使いと手放し破顔に、なこたもシャボン玉が風にのるようにふわりふわり。
    「Happy Birthday永久さん」
     皆から再び三度の祝福に、16になった青年はもう一度「ありがとう」とくっきり微笑んだ――。

    作者:一縷野望 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年11月26日
    難度:簡単
    参加:30人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 3
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