メイドばかりの舞踏会

    作者:三ノ木咲紀

     色とりどりドレスがかかった貸衣装の間を、舞子は踊るように見て回っていた。
    (「次のダンスパーティーには、一番の衣装で踊るんだ」)
     楽しい未来予想に、自然と足元も弾む。
     舞子は親の影響で社交ダンスが趣味で、ダンススクールに通っていた。
     いつもお決まりの仲間と踊っていたのだが、今度クラスの友達が秋のダンスパーティーに来てくれることになったのだ。
     クラスメイトに簡単なステップを教えたり、どんな衣装を着るかおしゃべりしたり。
     楽しい時間はあっという間に過ぎて、とうとう明日はダンスパーティー当日。
     少し離れたところでは、来てくれる友達が楽しそうにドレスを試着している。
     舞子も、早く選んで試着するんだ。
     明日は、絶対に素敵なドレスで踊るんだ。だって……。
    「憧れのユウスケ君が、来てくれるんだもん……!」
     恥ずかしそうに一人はしゃいだ舞子の目に、一着のメイド服が飛び込んできた。


    「……舞子ちゃんはそのメイド服に魅入られちゃって、ドレスみたいなメイド服でダンスパーティーに行ったの。そしたらクラスメイト達もみんな魅入られちゃって、夜な夜な集まってはメイド服舞踏会を開いてるんだって」
     北澤・瞳(覇謳曖胡・d13296)は心配そうに首を傾げた。
    「いちおうクラブ活動、ってことにはしてるみたいなんだけど、踊ってる最中に先生が止めようとしたら、すごい勢いで脅されたって」
    「このドレスっぽいメイド服、間違いなくフライングメイド服や。このままやったら、いつ被害者が出てもおかしくないさかい、行って灼滅したってや!」
     舞子たちが踊っているのは、ある地方都市の中学校。使われていない教室を勝手に使って、放課後踊っている。
     参加している学生は七人。どこからか手に入れたメイド服姿だ。
    「まさか……男子もメイド服?」
     恐る恐る手を挙げた灼滅者達に、くるみは頷いた。
    「そうみたいや。恐るべきドレスメイド服の魅了力! ってところやね。舞子はんが憧れとったユウスケ君がパートナーで、他の人よりもちと強いさかい、気ぃつけたってや」
     舞子は仲間を欲しがっているため、メイド服姿で『躍らせて』と言えば仲間に入れてくれる。
     メイド服を着ていない人も、『見学させて』と言えば中に入れてくれる。ただし、声掛けはなかなか聞き入れてもらえなくなる。
     踊りながら舞子に声を掛け、メイド服やダンスの素晴らしさを褒め称えれば、嬉しくなって弱体化する。
     逆にダンスやメイド服を否定するような声を掛けると、むきになって襲い掛かってくる。
     周囲の七人はフライングメイド服に魅了されているため、避難させることはできない。
     舞子の号令で襲い掛かってくるが、能力は大したことはない。
     KOするか、舞子が着たフライングメイド服が倒されると意識を取り戻す。
     舞子のポジションはメディック。サウンドソルジャーに似たサイキックを使う。
     ユウスケのポジションはディフェンダー。WOKシールドに似たサイキックを使う。
     強化一般人の内、三人はクラッシャー。三人はスナイパー。
     エアシューズに似たサイキックを使う。
    「踊るんは楽しいやろうけど、淫魔に魅了されて踊るんは違うと思うで。きっちりフライングメイド服を灼滅して、舞子はん達を正気に戻したってや!」
     くるみはにかっと笑うと、親指を立てた。


    参加者
    米田・空子(ご当地メイド・d02362)
    北澤・瞳(覇謳曖胡・d13296)
    莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600)
    阿久津・悠里(キュマイラ・d26858)
    クラリス・カリムノ(導かれたお嬢様・d29571)
    静守・マロン(シズナ様の永遠従者・d31456)
    陸・舞音(高校生ご当地ヒーロー・d35449)
    ノーヴェ・カルカブリーナ(地中海風メイド・d35635)

    ■リプレイ

     広々とした殺風景な教室は、まるで舞踏会のような雰囲気だった。
     男女問わず、メイド服だということを除けば。
     優雅な教室をそっと覗き込んだ静守・マロン(シズナ様の永遠従者・d31456)は、メイドたちの舞踏会にため息をついた。
    「男子まで誘惑するとは、恐ろしいであるなフライングメイド服!」
    「本当に。まさか本当に宿敵絡みの魔の舞踏会に誘われるなんて……」
     マロンの隣で教室を覗き込んだ北澤・瞳(覇謳曖胡・d13296)も、思わず眉間に人差し指を当てた。
     中で踊る生徒は八人。そう大した戦力ではないとはいえ、人数が多い。
    (「大変そうだけど、皆を必ず救ってあげなくちゃね……」)
     決意を新たにしたクラリス・カリムノ(導かれたお嬢様・d29571)は、閉められたドアをそっと開けた。
     ドアが開く音に、全員踊りをやめてクラリスに注目する。
     視線を浴びながら、クラリスは会釈した。
    「素敵なメイド服の人達が集まっているわね……。私も見ていっていいかしら……?」
     にっこりと首を傾げるクラリスの隣から、米田・空子(ご当地メイド・d02362)が教室に入った。
    「空子も躍らせてくださいっ!」
    「まあ、入部希望者? あらあらまあまあ、八人も?」
     次々と教室へ入る灼滅者達に、舞子は目を丸くした。
     戸惑う声に、莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600)は舞子ににっこり微笑んだ。
    「その服、とっても可愛くてお似合いですね。ダンスも上手で見とれちゃう。私、下手なので少し教えてくれませんか?」
    「喜んで!」
     同時に放たれたサウンドシャッターに気付かない様子で頷く舞子に、瞳はエプロンドレスの裾を持ち上げて一礼した。
    「ドレスコードはメイド服なのね♪ フリル付エプロンドレスにレース付カチューシャ。イギリス英語ではピナフォアドレスにホワイトプリム。可愛い名前よね♪」
     裾を持ち上げてくるりと一回転した瞳に、舞子は目を輝かせた。
    「あなた、お詳しいのね! 部員が八人も増えるなんて、感激ですわ! ねえ、ユウスケ君!」
    「そうだね、舞子ちゃん」
     うっとり微笑むユウスケに微笑み返した舞子は、サッと手を挙げた。
    「さあ、踊りましょう! 今日はワルツの日なの! 皆さんは、パートナーがいるつもりで、腕を上げて踊ってね」
     曲が変わり、別のワルツの曲になる。中世の舞踏会を思わせる優雅な曲が、教室を満たしていった。 
     ゆったりとした曲調のワルツに、今まで黙っていた陸・舞音(高校生ご当地ヒーロー・d35449)は優雅に踊り出した。
     一人でも見事に踊る舞音は、メイド服の裾を華麗に翻しながら舞子へと近づいた。
    「いいですよね、こういうゆったりしたテンポの踊りも」
    「本当に。ワルツは素敵ですわ。優雅な気持ちになれますもの!」
    「そう! それに私たちだけで、この緩やかな時間を独占している気分になれますし」
     語り合う舞音と舞子は、にっこり微笑み合った。
     優雅な曲調のワルツは続き、阿久津・悠里(キュマイラ・d26858)は若干居心地の悪さを覚えていた。
    (「……どうにも落ち着かないね、こういう服は。早いところ、いつもの服装に戻りたくなる」)
     そう思いつつもメイド服の裾を翻して踊る悠里は、舞子に声を掛けた。
    「上手なステップだね、お姫様。それに可憐な良い服だ。一手ご教授頂けるかな」
    「ありがとう! 後で教えて差し上げますわね」
     にっこり微笑んで踊りを続ける舞子に、ノーヴェ・カルカブリーナ(地中海風メイド・d35635)はたどたどしくシャドーでステップを踏みながら声を掛けた。
    「舞子ちゃんのメイド服、素敵ですね」
    「あなたのメイド服も、とても素敵よ。良く似合っていますわ」
     微笑み合うノーヴェと舞子の隣から、空子が舞子に声を掛けた。
    「空子はクラシックメイド服派ですが、ドレスメイド服も素敵ですね! ご主人様が着るドレスと、従者が着るメイド服が合わさり最強に見えますっ……って!」
    「そうね……って、あらあら」
     自分の足に躓いて転んだ空子は、照れたように髪に手をやった。
    「えへへ、やっぱりダンスは難しいですね」
    「そうですわね。でもだからこそ、踊れるようになると嬉しいんです!」
    「それにこのメイド服! フリルやスカートがかわいいのは元より、ダンスを華麗に踊ることを阻害しない機能美! 素晴らしいのである!」
     天真爛漫に微笑むマロンに、舞子は頷いた。
    「本当に! メイド服がこんなにも素敵なドレスだなんて、知りませんでしたわ!」
     得意げにメイド服の裾を翻す舞子に、クラリスは踊りながら近づいた。
    「本当に綺麗なメイド服ね……。素敵だと思う。それに、メイド服にも色々なバリエーションがあるのね……可愛いわ」
    「このメイド服に出会えたのは、きっと運命なのですわね」
     得意げに微笑む舞子に、クラリスは踊りをやめた。
     一斉に踊りをやめる灼滅者達に、舞子は不審そうに踊るのをやめる。
    「あなたたち……。どうしまして?」
    「舞子さん……。普段そんな口調じゃないよね?」
    「え?」
     驚く舞子に、空子は続けた。
    「舞子ちゃん、もっと普通におしゃべりするよね?」
    「そ、そんなこと……」
     口ごもる舞子の目を、舞音は真っ直ぐ見つめた。
    「舞子さん。ダンスとは、自らを表現する手段ですよね。 だから、あなた自身のリズムで踊って欲しい」
    「それに、男子には男らしい衣装でリードして欲しいわね?」
     首を傾げる瞳に、舞子は大きく首を振った。
    「そんなこと、ありませんわ! メイド服こそ、一番のドレス! 分かってくださらないのなら、入部は認めませんわ!」
    「――さあてそれでは、もう少しアップテンポに。ハードナンバーで踊ろうじゃないか」
     叫ぶ舞子に、悠里はととんと爪先でステップを踏んだ。


     悠里は竜巻のような勢いで一転すると、腕に纏った獣の如き巨腕型祭壇を構えた。
     縛霊手から展開する除霊結界に、とりまきのクラスメイド達は思わず動きを止めた。
    「皆さん、あの方々にお帰り願って!」
    「はい、部長!」
     舞子の命令に、クラスメイドの男子が飛び出してきた。
     大きくジャンプした男子は、スカートが翻るのも構わずに空子に向けて飛び蹴りを放った。
     蹴りが空子に突き刺さる直前、空子のナノナノ・白玉ちゃんが飛び出した。
    「ナノ!」
     飛び出した白玉ちゃんに、ダンスシューズが突き刺さる。
    「白玉ちゃん!」
    「ナ、ナノ!」
     空子の呼びかけに応える白玉ちゃんは、大ダメージを負ったもののまだ元気だ。
     男子がクラッシャーで女子がスナイパーか。
    「本物のメイドキックを、教えてあげます!」
     空子はスカートを翻しながら大きくジャンプすると、ジャンプステップを放った男子に向けて蹴りつけた。
     ハイヒールが男子に突き刺さり、吹き飛ばされた男子はそのまま壁に突き飛ばされて動かなくなる。
    「さあ、行くわよ……!」
     気合を入れたクラリスは、純白真銀のナイフを構えた。
     刀身から生み出される白い霧が、灼滅者達を包み込む。
    「頑張りましょう……!」
     夜霧で淡く遮られた視界に、クラリスは仲間に声を掛けた。
     クラリスの夜霧の影から、クラリスのナノナノ・ドリームメアがきゅーっと体を縮めた。
    「ナノ!」
     ぽぽん、と戻ったドリームメアの体から、しゃぼん玉が飛び出す。
     しゃぼん玉は狙い違わずユウスケに向かい飛んでいくと、ダメージを与えて弾けて消えた。
     クラリスが放った夜霧隠れに、想々は安堵の息を吐いた。
     メイド服はかわいいのだが、普段着ない服に落ち着かない気分にさせられる。
     皆で着ているから恥ずかしくはない。そう自分に言い聞かせても、気持ちは別物だ。
    「う……。やっぱりちょっと、照れが」
     フリルエプロンを引っ張る想々だが、戦闘中はそうも言っていられない。
     想々はスカートと土色の髪を翻しながら**Dear**を開いた。
     放たれる魔法が、男子を巻き込む。
     男子に放たれる魔法の前に、ユウスケがトレイを展開した。
    「皆! 頑張るんだ!」
     トレイから放たれる光が、前衛を癒す。
     元々華奢なユウスケは、メイド服が妙に良く似合っている。
     少女のような姿のユウスケに、男子がホッと息を吐いた。
    「すまねぇ、ユウコ!」
    「誰がユウコだ!」
    「ユ、ユウスケ君は私のなんですからね!」
     地団駄を踏む舞子に、マロンは指先をこめかみに当てた。
    「ユースケ殿がやけに似合って、恋心が変な風になる前になんとかしないとであるな!」
     縛霊手を構えたマロンは、ユウスケに向けて霊力を放った。
     マロンが放った霊力は、狙い違わずユウスケを捕らえる。
    「シズナ様! メイド服が本来なんたる物か、共に教えて差し上げるである!」
     マロンの声にシズナは頷くと、霊撃を放った。
     マロンに呼応して放たれた霊撃に、ユウスケは眉をひそめて大きく手を振った。
     霊力を振りほどいたユウスケに、マロンは油断なく目をやった。
    「メイド服は! 男の夢とロマンなんだよ!」
     一声吠えたクラスメイドは、炎を乗せたステップをクラリスに向けて放った。
     迫る炎の蹴りを、ノーヴェのビハインドが受け止めた。
     炎を受けながら飛ばされるビハインドの影から、ノーヴェは天星弓に矢をつがえた。
    「これで、終わりですよ」
     ノーヴェの声と共に、百億の矢が前衛に降り注ぐ。
     流星群のような無数の矢が収まった時、ユウスケ以外の男子は全員床に伏せていた。
     女子の一人が、その場でくるくると回り出した。
    「踊らないなら、帰ってよ! 円舞曲キック!」
     リーダー格の女子から放たれた暴風を伴った蹴りが、前衛を巻き込みながら叩き付けられる。
     女子に呼応するように、隣にいた少女もまた回り始めた。
    「ユキちゃんが踊るなら、私も!」
     一緒になってくるくる回る少女の蹴りが、竜巻のように巻き上がる。
    「あ、じゃあ私も……」
     おずおずと回転した三人目のクラスメイドが、三撃目の竜巻を起こす。
     三連続の舞い上がる風に、前衛が大きなダメージを受ける。
    「皆! 大丈夫?」
     瞳はメイド服の裾を翻しながら駆けつけるとバイオレンスギターを奏でた。
     優しい音楽が鳴り響き、傷ついた前衛を優しく癒していく。
     瞳の音楽と調和するように、舞音のギターが掻き鳴らされた。
     調和し、共鳴する音楽は前衛の傷を塞ぎ、不調を取り除いていった。
     美しい音楽には耳も貸さず、舞子は今にも倒れそうなユウスケの手を取ると、踊り始めた。
    「ユウスケ君は、倒れちゃダメですよ」
     優雅なワルツはユウスケの傷を癒していく。
     その様子に、舞音は眉をひそめた。
     舞子のフライングメイド服は、確かに可愛い。
     しかし、メイド服に魅了されているのは正常とはとても言えない。
     女の子の恋心を利用するなんて許せないことだ。
    「舞子さんの想い、取り戻してみせます」
     決意も新たに、舞音は手を握り締めた。


     敵味方が睨み合う中、ノーヴェは倒れた男子に駆け寄った。
     怪力無双を使い、二人同時に肩を貸すと、倒れた男子の隣に寄りかからせる。
    「ここで、休んでいてくださいね」
     ノーヴェの声に、三人は目を覚ましかける。
     そこに、静かな風が吹き抜けた。
    「ごめんね、眠って……!」
     クラリスが放った魂鎮めの風が男子の頬を撫で、再び眠りに就かせる。
     ほっと胸を撫で下ろしたクラリスは、ふと自分のメイド服を見た。
     少し落ち着いて見てみても露出度が低いためか、それほど恥ずかしいという気持ちにはならない。
    「良かった……」
     スカートの裾を少しつまんだクラリスは、顔を上げると油断なく舞子を見た。
    「あなた達、どうしてこんな酷い事をするの?」
     悲しそうな目で訴える舞子の視線を受け止めて、舞音は一歩前へ出た。
    「舞子さん、ダンスが好きなんでしょう?」
    「ええ!」
    「だからこそ、舞子さん自身の「リズム」を取り戻して欲しいんです。……ダンスとは、自らを表現する手段だから」
     舞音の真摯な訴えに、舞子は思わず肩を竦めた。
    「ダンスが好き。メイド服も素敵。両方好きじゃ、駄目なの?」
    「メイド服とは誰かの為に尽くす者の制服! お主も誰かを想って最初は着た筈である!」
     指をビシッと突きつけるマロンに、舞子はクラスメイトに命令した。
    「あ、あの人たちを追い出して!」
    「はあい!」
     リーダー格の女子が律儀に手を挙げると、飛び上った。
     重力を纏った蹴りが悠里に突き刺さる。
     蹴りを受けた悠里は、着地した女子には目もくれず、ユウスケに狙いを定めた。
     ととん、と再び爪先でステップを踏み、竜巻のような勢いで一転。
     除霊結界を警戒したユウスケに、手裏剣が突き刺さった。
     毒に濡れた手裏剣を手挟んだ左手が翻り、雨のごとくユウスケに突き刺さる。
     手裏剣を追いかけるように、悠里の翼猫・ウナの魔法がユウスケに放たれた。
     激しく踊るような戦いに、悠里は翼猫を見た。
    「……ああ、これだね。やはり私には、可憐で可愛い踊りよりも、こちらのほうがよく似合う。そう思うだろう、ウナ?」
     魔法を放ち終えたウナは、きょとんとした顔で、うなんな、と鳴いた。
     ウナの声にひょいと肩を竦めた悠里は、高らかに手を挙げた。
    「――さァ、ハッピーエンドを始めよう!」
    「これが本物のメイドビームです!」
     腕を構えて放たれた空子のメイドビームが、ユウスケに突き刺さる。
     肩を押さえたユウスケは、怒りに満ちた目で空子を睨む。
     そこへ、想々の翼が引き裂いた。
    「そろそろ舞踏会は閉幕ですよ!」
     翼にも見えるダイダロスベルトをまともに受けたユウスケは、堪えきれずに倒れ伏す。
     その姿に、舞子は叫び声を上げた。
    「ユウスケ君!」
    「メイドとは何たるかを、教えるのである!」
     マロンが放った除霊結界が、女子たちの動きを阻害する。同じ技を放とうとした女子が、身動き取れずにうずくまる。
    「ダンスは、こう踊るのよ!」
     軽やかに踊りながら後衛を攻撃する瞳の足元で、霊犬の庵胡が軽快に飛び跳ねた。
     瞳とお揃いのメイド服を着た庵胡は、子犬のワルツを踊るように尻尾を振りながら六文銭を放つ。
     ご主人様は私が守るのよ、と言いたげな庵胡との連続攻撃を受けた女子たちが、何もできずに倒れ伏す。
    「さあ、畳みかけましょう!」
     舞音が放った蛇咬斬が、舞子のメイド服を切り裂く。
     メイド服が引き裂かれ、裸の舞子が倒れ伏すのに、さしたる時間はかからなかった。


     倒れた舞子が目覚める前に、クラリスは再び魂鎮めの風を放った。
     眠りに落ちる舞子に用意したドレスを着せ、他の女子たちと共にノーヴェが壁にもたれかけさせた。
     これで、目覚めた時には練習に疲れて眠ったのだと思うだろう。
    「ユウスケさんに、振り向いてもらえるといいですね♪」
     ユウスケと仲良く寄り添って眠る舞子に、空子はそっと語り掛けた。

     とある中学校に通う舞子は、友人たちと一緒に今も熱心にダンスレッスンに通っている。

    作者:三ノ木咲紀 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年11月29日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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