最期に叫んだ愛は

    作者:星乃彼方

    「ねえ、知ってる?」
    「何よ、また都市伝説の話?」
     夕日に照らされる教室の中で二人の少女が噂話に華を咲かせている。
    「またって、何よ。今度のはとってもロマンチックなのよ!」
    「……まあ、話だけなら聞いてあげるわ」
     話しなさいと、少し呆れた様子で話の続きを促すと、少女は目をキラキラと輝かせて話し始めた。
    「とあるカップルがトラックに轢かれたの!」
    「ちょ、それ嬉々として語ることじゃないでしょう!」
    「そんなことないよ。そのカップルはね、トラックに轢かれる直前に手を繋いだの。そして『ずっとずっと、君が好きだったよ』って言ったんだって-! ね、もう胸キュンでしょ! ロマンチックでしょう」
     黄色い声をあげる少女にもう一人の少女は冷たい目で見る。
    「でもそれ、結局死んじゃったんでしょう。ロマンチックでもなんでもないじゃない。それに死んじゃったなら、そんな事言って死んだなんて分かるわけないじゃない」
    「まったくこれだから、夢がないなんて言われるんだよ」
     得意げに人差し指を横に振って、自慢げに説明を始める。
    「そのカップルが死んでから出るんだってよ、その亡霊が。それでその亡霊が自分たちの死ぬ直前のことを繰り返すんだって」
     ま、その後はどうなるのかよく知らないけれどね。と説明する少女は相方の手を握りしめる。
    「と、いうわけでその亡霊を見に行こう」
    「見に行こうって言っても、そう簡単に出会えるわけじゃないでしょう?」
    「簡単だよ。その亡霊が出てくる現場で手をつないで囁き合えばいいの『ずっとずっと、君が好きだったよ』ってね」
    「ちょっと待ってよ、私たち女同士なのよ、それなのに……」
    「大丈夫、君には男の格好してもらうから」
    「なんで、私がそんなことしなくちゃいけないのよ」
    「あれぇ? よく学ランとかを羨ましそうに眺めながら、家ではそれを鏡の前で着て毎夜ポーズを決めているのは誰だったかしら?」
     意地悪そうな響きが込められた言葉に少女の顔はたちまち赤へと変わっていく。
    「なんであんたがそんなこと知っているのよー!!」
    「えへへ、秘密だよ~」
     楽しげな会話を楽しむ少女たちはまだ知らない。その亡霊を見た者はそれに殺されるということを。
     そして、その少女たちはもう二度と戻ってくることはなかったのである。
     
     
    「都市伝説に殺されてしまった一般人が二人いるの」
     須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)は集まった灼滅者たちに自分の予知を伝えた。
    「さっきも話したけれども、とある道路で轢かれたカップルがいるの。そのカップルが亡霊として出てくるという噂がサイキックエナジーによって実体化しちゃったの」
     それをみんなに倒してもらうのが、今回の目的なのだとまりんは言う。
    「都市伝説の出現条件はとある場所で一組の男女が手を繋ぎ合って、男の人が女の人を見つめながら『ずっとずっと、君が好きだったよ』と言って二人で後ろを振り返ること」
     そう言ってまりんは地図を灼滅者たちに提示する。そこは都内近郊の地図で横断歩道の真ん中と思われる場所に赤丸がつけられている。
    「既に女の子の二人組が都市伝説の犠牲となっているから、できるだけ早く事態の解決に動いてほしいの」
     まりんの言葉に灼滅者たちは力強く頷く。それを見たまりんも安心したように、話を続ける。
    「出現条件については男女でやるのがベストだとは思うけれども、同性同士でも片方が異性の格好をすれば成功するみたい」
     一応用意もしてあるわ、とまりんは男女それぞれの制服を机の上に置いた。灼滅者どうしが互いに目配せをしているのを気にする様子もなく、まりんは都市伝説の詳細を話し始める。
    「都市伝説として実体化しているのは、カップルである二人だけ。男の人の名前は拓夢、女の人の方は夢美、どちらも二十歳前後だね。倒さなきゃならないのはこの二人だけだけど、決して油断はできないの。あれだけ凄い愛の最期を見せ付けただけあって、連携や互いを思いやる力は強大みたい」
     拓夢の方は情熱的で、力強いインファイターで、バトルオーラを纏いストリートファイターに似た力を使うことができる。
     一方、夢美の方は乙女チックで、契約の指輪をはめてサウンドソルジャーに似た力を使うことができる。
    「それからもう一点注意ね。この都市伝説は拓夢が夢美のことを庇おうとして亡くなっちゃった訳で、もし夢美が先に倒れてしまうようなことがあれば拓夢は怒りに任せて襲い掛かってくると思うの」
     それはただ単に怒るだけではなく、威力が格段にあがるのだ、とまりんは告げる。
     そうしてまりんは灼滅者たちに改めて向き直る。
    「被害者たちの遺族の為にも、これ以上犠牲を出さない為にも、どうかみんなお願いね」
     まりんは頭を下げて、灼滅者たちを送り出すのだった。


    参加者
    レンヤ・バルトロメイ(天上の星・d01028)
    蘇方・飛鳥(月鷲・d01332)
    桜川・るりか(虹追い・d02990)
    柳瀬・高明(灰眼の疾鷹・d04232)
    鮎宮・夜鈴(宵街のお転婆小町・d04235)
    白藤・樂(狂音拡声器・d04514)
    フランツィスカ・メルケル(金色の吸血姫・d05798)
    ジョー・ビセット(蜘蛛・d08483)

    ■リプレイ

    ●初秋の恋模様
     上弦の月がゆっくりと西に傾きかけた頃、一組の男女が肩を並べて歩いていた。
     そのカップル――蘇方・飛鳥(月鷲・d01332)と桜川・るりか(虹追い・d02990)は自分達の足音を聞きながら歩いていた。
    「――ここでいいよ」
     横断歩道の前でるりかは呟くように言った。その言葉は語尾が少しだけ震えている。
    「そう……か」
     飛鳥の口調も歯切れが悪い。どちらの口調も胸に重石があるようなつっかえがある。
     それもそのはずだ、ここでさよならを言えば2人は遠くへ離ればなれとなるのだから。
     互いに言いたい事があるのに、それが言えない――そんなカップルの様子を物陰から眺める集団がいた。
    「おアツいのを頼むぜお2人さん?」
     そう、陰から二人を見守るのは柳瀬・高明(灰眼の疾鷹・d04232) だ。その隣では鮎宮・夜鈴(宵街のお転婆小町・d04235) が熱を帯びた表情で2人の行く末を見守っている。
    「人の噂で亡霊と化したカップルねぇ」
     白藤・樂(狂音拡声器・d04514)の呟きは初秋の風にかき消される。樂の緑の瞳は現場だという横断歩道を眺める。
    「んー、ロマン溢れる感じだなー」
     ジョー・ビセット(蜘蛛・d08483)は2人のやり取りを眺める。彼らも目の前の状況と同じだったのだろうか、と革手袋をはめながら思う。
    「恋愛事は苦手だから、2人には感謝してる」
     そう安堵するのはフランツィスカ・メルケル(金色の吸血姫・d05798) だ。
    「星が綺麗だ」
     こんな夜にこそ、この芝居は相応しいだろうと、レンヤ・バルトロメイ(天上の星・d01028)は空を見上げる。
     そんな観衆の様子をよそに、飛鳥とるりかは互いに見つめ合うのをやめて、少しばかり距離をおいた。
    「またね」
     優しく微笑むとるりかは飛鳥の返事を待たずに小走りで横断歩道を渡っていく。
    「まっ――」
     小走りで駆けていくるりかの背中を目で追う飛鳥の胸の中はずっと好きだったるりかへの想いが溢れだそうとしていた。
    「きゃ!」
     ちょうど、横断歩道の真ん中くらいでるりかは蹴躓いて、膝をついた。それが飛鳥の心にある最後の栓を引き抜いた。
    「るりか! 大丈夫?」
     るりかへと駆け寄って、手を差し出して起こす飛鳥。
    「あ、蘇芳さん……」
     立ち上がったるりかの潤んだ瞳が飛鳥を捉える。その瞳は飛鳥の胸のうちを穿つには十分なものだった。
    「るりか、実はね。ずっとずっと、君が好きだったよ」
     握った手を離さずにるりかの目を真っすぐ見つめて想いを告白する。るりかも頬を朱に染めて恥ずかしげに目を伏せた。
     だがつぎの瞬間周囲の空気が変質する。
     ゆっくりと飛鳥とるりかは振り返る。
    『アイ……シテ、る』
     そこには一組の血に塗られたカップルが2人の前に立ちふさがったのだ。
     だが、そのカップルにプリズムの煌きが矢となって襲い掛かる。
    「バトル、スタート」
     プリズムの十字架を生み出したレンヤは静かに微笑んだ。そのまま飛鳥、るりかの前に立って西洋風の籠手と弓を構える。
    「演技だと判っていてもドキドキしたよ。女優、男優、いけるんじゃない?」
     そう、冗談めかした調子でレンヤは2人に笑いかける。レンヤの後に続いて2人の様子を見守っていた灼滅者たちがカップルのもとに集結する。
    「さて、熱いダンスでもしましょうか、ってな」
     同じく冗談めかす高明は封印解除したバスターライフルをくるりと回転させる。真面目にしろと怒っているのかライドキャリバーのガゼルはガゼルに似た角で高明の尻を突っつく。
    「オレは、ユメを――」
     アイシテイルンダ。
     拓夢の慟哭が戦闘の合図となるのだった。

    ●愛の代償
    「どんなにロマンチックでも実害があるんだ、お邪魔虫させてもらうよ」
     拓夢らが動くよりも早く、行動に移したのはジョーだった。高速で繰り出される鋼糸が拓夢の体を切り裂く。しかし拓夢は、鋼糸の領域から一歩下がった為に傷はそこまで深いものではない。
    「ジャマ、する、ノか?」
     拳を握り、戦いのオーラを纏う拓夢が灼滅者たちに問う。
    「拓夢様も夢美様も、彼等の恋を悲恋に終わらせた、無情の不幸が憎いのでしょうね。同感ですの」
     なればこそ、と夜鈴は鋼糸を握りしめる。目の前の2人は倒すべき対象なのだと、夜鈴は自分に言い聞かせる。
    「怨嗟の連鎖、断ち切ってみせるのですわ」
     夜鈴の鋼糸を夢美へと向けて操るのと同時に言い放つ。
     させないと拓夢が動こうとするが、それを黒と白と赤で彩られた巨大な刃によって行く手を阻まれる。
    「こんなの全然ロマンチックでもなんでもないよ」
     鮮血の如き緋色を宿したるりかの刃が拓夢の体を斜めに叩き斬る。
    「王道ロマンスってのは白馬に乗った騎士様が颯爽と迎えに来てくれるって事だよ。あ、オヤツとおにく持ってるとなおいいかな」
    「それは少し違うんじゃ……」
     ぐらりと揺れる拓夢を前にして人差し指を唇に当てて首を傾げるるりかに、高明がつっこみをいれる。
    「タク――ッ!?」
     拓夢の方へと体を向けた夢美の足に鈍く光る鋼糸が絡みつく。
    「お婆様直伝の綾取りで鍛えた、鋼糸の技。おいそれと抜け出すのは不可能ですのよ」
     得意げに微笑む夜鈴が手を緩める様子はない。
    「ガゼル、そっちはお前にまかせるぜ」
     気を取り直した高明の言葉を受けて、荒々しいエンジン音で応じるガゼルは夢美の方へと走り出す。高明もバスターライフルの引き金に指をかける。
    「たかが噂に遠慮する必要は欠片も無ェんだよ」
     引き絞られた引き金と同時に放たれた光線は拓夢の体を貫く。だが、拓夢はそれにひるむ様子も無く灼滅者へと突っ込んでくる。
    「ジャマを……スルな」
     オーラを纏った拳が花火のようにフランツィスカへ炸裂する。
    「――ッ」
     体内を走り回る衝撃に思わず声をあげそうになるのを、喉元で押さえ込む。代わりにその叫びは生命を吸い取る刃に込めて、力の限りを尽くして拓夢を斬る。その動作には少しばかり緊張からの硬さが見えるが、それが戦闘に支障をきたすものではない。
    「タクム!」
     拓夢の元へと行こうとする夢美を樂と飛鳥が立ちはだかる。
    「邪魔はさせねえぜ」
     樂の右手に収まっている妖の槍に炎が宿る。
    「どいて! どいてヨ!」
     右の薬指にはめられた指輪から放たれる無数の魔法弾を樂と飛鳥がそれぞれ弾いて、夢美の意識を拓夢の方へいかないようにする。
    「そこカラ動くナ!」
     指輪の輝きが一際大きくなると同時に飛鳥には石化の呪いがかけられる。
    「死後も恋しい方と一緒にいられるなんて、少し羨ましいですわね。でも、どうせならもっと良い夢を見るべきですの。無念も憎悪も、此処においていかれると良いですわ」
     すかさず、夜鈴が吹かせた清めの風が飛鳥の呪いを静かに消し飛ばす。
     その風を吹かせた夜鈴はそれが2人の魂が浄化する事も同時に祈る。
    「動かないデってイったのに」
     歯を食いしばって、怒りをあらわにする夢美を更に挑発するようにガゼルが機銃で仲間の援護を行う。
    「告白をした後に事故で亡くなったのは、やるせない……でも!」
     仲間が夢美をひきつけているのを確認したレンヤは拓夢の足元に意識を集中させる。すると、ピシピシと音を立てながら、レンヤが意識を集中した箇所を中心に凍り始めてきた。
    「クッ」
     拓夢は自分の体が凍りつくのを目の当たりにしながらも、焦らず呼吸を整えようとする。そこに何かを感じ取ったジョーとるりかは攻撃の手を緩めない。鋼鉄の見えない糸と全てを粉砕する鋼鉄の塊が拓夢の体を痛めつける。だが、拓夢はるりかの刃の腹を掌で受け止めるとその勢いを殺さずに、鋼糸へと受け流す事によってダメージを最小限に抑える。
    「オレは、ユメを――ユメを護るんだ!」
     まるで自分の想いに呼応するように、体に纏ったオーラが更に大きくなり、拓夢の傷が癒えていく。
    「護るんだ!」
     その決意の慟哭が真夜中の空へと消えていく。一組のカップルの戦いはまだ続く。

    ●愛を叫ぶ
     戦いが始まって、既に数分が経過した。
    「ち、狙いが定まりにくい」
     己の攻撃が見切られ始めていると感じた高明はバスターライフルから手に持つナイフへと意識を集中させる。するとナイフを中心にドス黒い風が巻き起こる。
    「喰らいな」
     閃光一閃、振り払われたナイフは毒を帯びた竜巻となって拓夢の体を包み込む。
     灼滅者たちの立てた作戦は拓夢を集中攻撃で一気に倒し、それから夢美を倒すというものだった。夢美が持つバッドステータスの数々をどう対処するかが、この作戦の要であったが、そこは夜鈴の功績が大きい。
    「桜川様、今参りますわ」
     夜鈴が巻き起こす清めの風はメディックの効果も受けて灼滅者らに手厚い援護をもたらしている。
    「タクムを傷つけナイで!」
     夢美の指輪から放たれた魔法弾が樂に打ち込まれ、その行動に制限が施される。
     すばやくフランツィスカが周囲を見回す。すぐに動けるのは自分だと判断すると、首から提げたギターをかき鳴らす。
    「大丈夫か」
     短く一言だけ呟きながらも、力強いメロディで樂の体の痺れを取り除く。
    「ありがとな」
     爽やかに笑う樂は気を取り直して夢美の牽制を始める。
     こうして夜鈴のフォローをフランツィスカやるりか、飛鳥らがすることによって、灼滅者は思う存分に力を発揮して都市伝説と対峙することができていた。
     しかし、肝心の拓夢は想像以上に打たれ強く、更には自己回復と夢美の援護でなかなか倒れることはなかった。むしろ夢美の方は打たれ弱いのか、既に限界が見えかけてきている。それでもそこに止めをさしていないのは飛鳥の注意喚起のおかげだ。
    「ここだよ!」
     一瞬、夢美に気を取られた拓夢の隙をついたるりかの鋭い斬撃が拓夢の胸に血の華を咲かせる。
    「ウぅ、ユめ……」
     うめくような声で愛する彼女の名を呼ぶ男についに限界が訪れようとしていた。だが、拓夢は最後までその輝きを失わせないとばかりに、全力でレンヤとの間合いを詰める。
    「夢美ハ傷ツケさせな……イ!」
     強い決意は雷光の如きアッパーとなってレンヤの体を宙に浮かせる。
    「き、君たちも不本意でしょ、死んだことも、ここで他人を殺めることも」
     血を吐き出しながらも、宙に浮いたレンヤは拓夢の顔に手をかざす。その掌が光ったかと思うと、数本の光条が拓夢を貫いた。
    「オレ……ボくは、ボクは――!」
    「押せる!」
     強気に判断したジョーが両手を振り下ろす。それに従って左右の鋼糸が断罪の刃となって、拓夢の光をかき消した。
    「いやああああ!」
     夢美の絶叫が闇夜へと消えていく。
    「今直ぐ彼の元へ連れていってあげるからね……」
    「ウルサイ! アタシの、アタシの!」
     レンヤの言葉に耳を貸す様子もなく、夢美の指輪は一際大きな輝きを放つ。それはレンヤよりも近い夜鈴に向けられている。
    「くそ、間に合えよ!」
     夜鈴へと狙いを定める夢美に照準を合わせた高明が引き金を引く。銃口から放たれた光は一直線に伸びて、夢美の肩を打ち抜く。
     続けて無数の弾丸が夢美を包み込まんばかりに降り注ぐ。
    「るりか!」
    「うん、行くよ!」
     飛鳥のガトリング連射の援護を受けて、るりかは夢美の腕を打ち砕く。
    「クッ――!?」
     体勢が崩れた所にガゼルが機銃を放ちながら夢美に突撃する。尻餅をつく夢美にフランツィスカの剣が振り下ろされる。
     咄嗟に指輪で受け止めた夢美と刀を振り抜こうとするフランツィスカの2人が競り合う。
     フランツィスカは言葉を発する代わりに、歯を食いしばって、夢美を斬り伏せようとする。
     こめかみから流れる汗が口端にかかる。
    「アアアア!」
     悲しみの色を帯びた夢美の叫びは夢美の力となり、次第にフランツィスカを押し返し始める。
    「引くんだ」
     その声に反応したフランツィスカは刀に込める力を僅かに抜く。
     突然のことに、思わず姿勢を崩した夢美の目の前には白く光る刃の形。
    「好き好んでこんなんになったわけじゃねぇだろうに……今度は安らかに眠ってくれよな」
     目の前に立つ樂は妖の槍の先を夢美に向ける。
     穂先が光る。
     それは不可避の攻撃。
     だが、悲しみに染まる夢美は一瞬だけ微笑む。
     ザシュッ
     だが、その表情は噴き上がる鮮血でしっかりと確認することはできない。
     夢美が力なく倒れたことによって、戦いはようやく終わりを告げたのであった。

    ●永遠に別れぬ愛を
    「ごめんね、でもよかった。これで天国で、幸せになれるね」
    「もし天国に行けぬのなら、地獄で幸せになればいい」
     言葉は違えど、レンヤとフランツィスカは同じ想いを持って横断歩道の横に花を供える。
    「花言葉は変わらぬ愛ですの」
     そう言って献花する夜鈴の手の中には桔梗の花がある。
     灼滅者たちが献花の様子をジョーや高明、飛鳥らも見守る。
    「それにしても御二方は名演技でしたわね」
    「はわわ、やっぱり嘘とはいえ、愛の告白ってされるとどきどきするんだよね」
     夜鈴の言葉で思い出したようにるりかは頬を染める。
     その様子に微笑みながら灼滅者たちは帰路につくのだった。
     

    作者:星乃彼方 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年10月16日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 7
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