月影さやかに

    作者:水上ケイ

     月がその薄い影を座敷に落とす。
     庭に面した襖は開け放たれて、みすぼらしく破れていた。古い畳の上に一人の着物姿の少女が座っていた。長い黒髪、病かと見まごう白く美しい肌。
     さくらんぼの唇からは、今一筋の紅い血がたらりと糸をひく。
    「おかあさま……おかあさまはやっぱり清花を見捨てなかったんですね」
     正座した膝の上で清花の白い指が猫の体を抱く。
    「でも清花はどうしたらいいんでしょう。猫さんとお友達になりたかったのに、しんでしまいました……でもお腹がすくんです……」
     清花はうつろに庭を眺めてぶつぶつと呟き、その瞳は深紅をたたえて宙を見つめる。
     荒れ果てた庭にも月光が踊っていた。
     

     こほん、と小さく咳払いして、鞠夜・杏菜(中学生エクスブレイン・dn0031)は集まってくれた皆さんにお辞儀した。
    「新米エクスブレインのまりや・あんなといいます。どうぞ宜しくお願いします!」
     多少は緊張気味だが、はきはきした口調でそう挨拶すると、杏菜は早速事件の説明を始めた。
    「今日は、一般人が闇堕ちしてダークネスになりそうな事件を解決して欲しいんです」
     
     この少女の名前は清花というらしい。生き別れの母親が闇堕ちして、彼女も道連れにヴァンパイアに感染してしまった。
     杏菜は説明を続ける。
    「この母親の方がどこにいるかは不明です」
     だからこの際気にしなくてよい。ヴァンパイア二人を相手にするのは相当に大変なので、そこは不幸中の幸いだと杏菜は言った。
     今、清花は荒れ果てた空き家にいる。元は相当裕福な屋敷のようだが、何か事情があって家人はちりぢりになったようだ。
    「おそらく、ここに昔、清花と母親も住んでいたのかもしれませんね」
     杏菜は準備していたマップを灼滅者達に渡して場所を示し、一般人はいないが野良猫はいるかもしれないと言った……。
     空き屋敷は清花の他誰もおらず、侵入も横の木戸から簡単に入れる。木戸を入れば荒れ果てた庭で、清花がいる座敷の縁側はすぐにわかる。ちなみに戦闘に支障のある障害物はない。
    「この清花さんは、ダークネスに堕ちながらも、まだ普通の人間としての意識が残っているようです。できたら、説得して、助けて、学園に連れてきてあげて下さい」
     清花がこの屋敷にいる今のうちに接触してほしいと杏菜は話す。
     また、清花が使える能力はダンピールのものとそっくり同じだ。ダークネスは強力だが、上手く説得できればその力はきっと弱まるはずだ。
    「どちらにしても、清花さんとの戦いはさけられないでしょう。闇堕ちしかけている彼女はどんな説得をしても、最終的には皆さんを敵とみて仕掛けてきます」
     杏菜はちょっとだけ、言葉を切った。
    「戦って、倒してあげてください。清花さんは灼滅者として生き残るか、それともダークネスとして滅びるかもしれませんが……どちらにしても、彼女を救うことになると思うんです」
     だから戦闘は全力で行って下さいと杏菜はきっぱり言った。
    「どうか清花さんを助けてあげて下さい。皆さんならきっと大丈夫って信じてます!」
     どうぞ宜しくお願いしますと、杏菜はぺこり頭を下げた。


    参加者
    花色・燈子(はなあかり・d00181)
    氷美・火蜜(銀のフランメ・d00233)
    水無月・礼(影人・d00994)
    楪・颯夏(風纏・d01167)
    殺雨・音音(Love Beat!・d02611)
    刀崎・剏弥(古色蒼然たる執事見習い・d04604)
    波織・志歩乃(夢見る幸せの鳥・d05812)
    ホイップ・ショコラ(中学生ご当地ヒーロー・d08888)

    ■リプレイ

    ●月影の屋敷
     月光に蒼く街が沈む夜だった。
     荒れ果てた屋敷の木戸に添えた楪・颯夏(風纏・d01167)の手も、なめらかな月の色。キィと音を立てて軋む古い戸をくぐって、武蔵坂学園の8名は雑草が生い茂る庭に足を踏み入れた。すると、
     みゃあ、みゃ。
     どこからともなく、猫の声がする。潅木の陰で幾つかの金色の瞳が光った。猫達が未だに居ついているらしくて、花色・燈子(はなあかり・d00181)は少し感心した。
    (「清花さんは余程ねこさんを大切に扱っていたのかもしれませんね。とてもお優しくて、寂しがり屋さんだったのでしょう……」)
     颯夏が猫を遊ばせようとまたたびを与えている。
    「お前たちは此処に居ろよ」
     颯夏は小さく息をついて清花の事を考えた。こんな寂れた庭で、何を思って過ごしてたのか、今何を思って佇んでるのかと思うと、な……。
     猫達から離れ、彼等は草を踏み分けた。
     かさりこそり。
     殺雨・音音(Love Beat!・d02611)の足元でも微かに草が鳴った。ちょっぴり怖いとか、逃走されないようにとか、音音は色んな事を考えていたけど。
    「月が綺麗な夜だね」
     清花を見つけた時、自然に声をかけていた。
     青白いお人形みたいな顔が灼滅者達の方を向く。
     水無月・礼(影人・d00994)が、その視線を受け止めてゆっくり話した。
    「こんなところで一人でどうされました?」
     穏やかな声だ。清花を怯えさせない様に礼は心を砕いた。囲んだりせず、丁寧に、返答を強いらず、と。
    「誰……?」
     ひとときの間の後、細い声が応える。
     氷美・火蜜(銀のフランメ・d00233)は縁側の清花と同じ目線で問いかけた。
    「あのね、私は火蜜っていうの。お名前、聞いてもいい?」
    「清花。おかあさまを待っているの」
     後半は礼への答えだろう。闇堕ちのせいか妙に感情のない声だと彼は思う。その横で、燈子がきちりとお辞儀をする。
    「こんばんは、清花さん。燈子と申します。あの、その、猫さん……」
    「あ」
     不自然に曲がった亡骸を清花は思い出した様に撫で始めた。
    「もう動かないの。清花がお腹すいたから」
     猫の話をすると表情が揺れた。
    (「やはりまだ、清花さんは完全に闇に堕ちてはいないのですね……」)
     燈子は優しく話を続ける。
    「猫さんを傷つけてしまった事、悲しく思うお心があるなら、どうかご自分を強く保って下さい」
    「……強く。ええ、清花はおかあさまから力をもらった。とても強いのに暗いんです。そんな暗い所に清花は行きたくない。どうしておかあさまが清花にこの力を下さったのかわからない。どうしたらいいのかわからないの」
     灼滅者達は不安定で混乱している少女を見守った。彼女はダークネスの貴族たるヴァンパイア。その力は強大で侮れぬはずだ。それなのに、清花はか弱く幼く見えた。
    「ねー?」
     そんな清花に、波織・志歩乃(夢見る幸せの鳥・d05812)がのんびり明るく声をかける。まるで教室の、隣の席の子にするように。
    「あなたはきっと苦しいんだと思うのー。どうしたらいいか分かんなくて、悩んじゃって。それって一人だからじゃないかなー」
    「……」
    「だからわたしたちと一緒に悩もー? ネコさんとお友だちになる方法も、清花ちゃんとお友だちになって、一緒に考えたいなー!」
    「清花と一緒に? お友達?」
     表情がまた揺れる。闇が少しだけ遠くなる。
    「あたし……ネオン達、あなたを助ける為に来たの。同じ闇の力を持ってるから、分かる」
     清花が真っ直ぐに音音を見た。
    「突然で難しいだろうけど、騙されたと思ってネオン達を信じて。闇に抗うお手伝い、するよ!」
     夜空を雲が流れる。
     月光が翳る。
    「……でも闇に抗うとはおかあさまに抗うこと」
     一転、清花の中のダークネスが無表情に語る。おそらくは自分の心の内に。
     灼滅者は導こうとする。
     燈子と、音音も一生懸命話した。
    「宜しければ、私達と一緒に学園へ行きましょう。お友達になりましょう……寂しい時は傍に居たり慰めあったり、馬鹿やって騒いだりしましょう」
    「清花ちゃん、心配しないで。ネオン達がお友達になるから」
    「お友達。欲しい。行きたい。でも……」
    「如何したらいいか分からない、か……」
     低く声が響いて清花が顔を上げた。
    「あぁ、申し送れた。俺の名は刀崎剏弥と言う、以後宜しく頼む」
     刀崎・剏弥(古色蒼然たる執事見習い・d04604)はぶっきら棒だが几帳面に挨拶をした。
     鷹揚に頷いたのは、清花の中のダークネスだろうか。
    「お腹が空いたと言う顔をしているぞ? 先ずは空腹をどうにかしなければな」
     剏弥はそう提案し付け加えた。
    「食事を共にすれば仲も深まろうと言うものだが、もし……食物では無く血を欲しているのなら、俺のもので良いならば与えよう」
     清花はそれを聞いて、完全に表情を失った。猫をひざからおろして立ち上がり、縁から庭に下りてくる。
    「この力を得てからは、人さえ良い匂いで、とても美味しそうなのです。剏弥、貴方は何て優しい方……」
     ヴァンパイアは、生物の生き血を喰らうことで生命を保つ。
     音音も自分の血をあげてもいいって思っていたけど、今は嫌な予感がした。ホントにこのか弱そうな子が敵だって気がした。
     もう堕ちるかも、と颯夏も思った。
     ジャマーの礼は冷静に一歩さがり、志歩乃はとんがり帽子をぎゅっと被り直した。ホイップ・ショコラ(中学生ご当地ヒーロー・d08888)は手早く藪から顔を出した猫を追い払う。さすがに戦闘が始まれば、猫は近づいて来ないだろうと願いつつ。
     白い指を剏弥の喉に這わせ、清花はフンフンとお行儀悪く鼻を鳴らした。脈打つ血管に爪を当てて、いい匂いと囁く。その姿は獲物を弄ぶダークネスらしくて。
     そこに、声が飛んだ。
    「清花さんは本当は友達が欲しいですの? でも今はどうすればいいか忘れかけてしまってるのでは?」
     ホイップが真剣に自分の思いを言葉にする。
     音音も叫んだ。
    「その力、抑える方法を知らないと、自分でも気付かないうちに誰かを傷付けてしまうよ。例えばその、猫ちゃんみたいに!」
     清花がぱっと剏弥から離れる。
    「人を食事にするのは怖かった。だからおかあさまを待っていたのに。おかあさまの力は清花をおかしくするのに。清花はもういや。怖いことを忘れてしまいたい」
     少女の口から言葉が迸った。
    「……あのさ、それならボクらと一緒に行こう。毎日賑やかで怖い事もなくなるさ」
     颯夏がゆっくり言葉をかけた。一緒においで、と皆は口々に誘う。
    「猫さんのお墓、一緒に作ろう?」
     火蜜も話した。
    「私達と、友達になってくれる? もう、寂しい思いはさせないから」
    「一緒に行ってもいいのですか?」
    「もちろんだ。清花が望むなら、俺達は清花と共に在ろう。猫達の事、これからの事、そして母君の事を共に考えよう」
     剏弥も真摯に救いの手を差し伸べた。堕ちきってしまう前に呼び戻してやらなければ、と。
    「皆さんと……」
     この時、清花は闇堕ちに抗おうとしたに違いない。
     だが闇へ誘う力は強く、再び彼女の瞳を昏くする。
    「けれど……おかあさまの力がこの身に宿り」
    「……ん、そうか。母ちゃんの存在をその身で確認できたのは良かったのかもしれないけど」
     颯夏が呟く。
     けど、堕ちてしまうのは、な。
     まだ引き返せるなら手を差し伸べたいが、その為にはあの闇を倒すしかなさそうだ。一緒に清花も滅びるか、あるいは灼滅者となって生き延びるか。そういう世の習いを颯夏はかみ締め、静かに鋼糸の手触りを確かめた。
     月が雲に隠れ、また姿を現す。
     冴え冴えとした青い光が旧い庭に満ちた、その時。
     灼滅者達がさっと間合いを取った。
    「お……かあさま」
     頬に一筋の涙のあとを残して、ヴァンパイアが顔を上げる。
     刹那、獲物を求めて清花は月夜に舞った。ダークネスの緋色の影が一瞬月明かりを遮り、惑いなく剏弥を斬る。
     鮮血が庭土に飛散し、月夜の庭は忽ち戦場と化す。
     音音が慌てて天星弓に癒しの矢をつがえた。催眠を警戒し、志歩乃は音音に守護の印を付す。
    「守ってー、護符の力よー!」
     そして燈子は、この時確信していた。娘を闇に突き落とす母親にはもう救いの手は届かないだろうと。何とか清花は救いたいが、皆の思いが届いていれば、きっと彼女の心はまだダークネスの中で戦い続けているはず……。
     だから今できる事は一つだけ。燈子の天星弓から風の刃が吹き出して激しく渦を巻き、ヴァンパイアを撃つ。
     火蜜はダークネスの側面に回り込んでいた。
     ――お母さんとの繋がりが感じられたら、嬉しいよね。でもそれは……愛じゃないの。私達が、救わなきゃ。
     振り向いた清花の紅い眼差しを捕らえて火蜜は炎熱の短剣を構える。

    ●光と闇
    「おいで。私が滅ぼしてあげる」
     二つの影が交差して、ヴァンパイアの薄い身体から炎が噴出した。
     めらめらと夜が燃える。
    「この炎で、清花ちゃんを照らすの……!」
     火蜜がいつもは疎んでいる力が、今は必要だった。
     灼滅者達は攻めた。
     ホイップが突撃し、異形巨大化した片腕を思い切りダークネスに振り下ろす。
    「こうなって、清花さん自身が一番辛いはずですの。だから絶対に清花さんを闇堕ちから救って見せますの!」
     この声が、この気持ちが届いて欲しい。もしもまだ清花の心がそこにあるのなら。
     クラッシャーの重い一撃が清花の胴を薙ぐが、細い腰は見かけによらず強靭だ。
     礼は終始冷静に動いていた。預言者の瞳を発動し、流れるような動きで影を操る。人型にも見える影は敵を捉えて液状の不定形にぐにゃりと歪むのだ。時に縛り、時に惑わせる影を操って礼は清花を狙ってゆく……今も。
     ひらり。振袖が翻る一瞬の、細いボディを狙って礼は影を放った。
     誰もが見切られぬ様技を織り交ぜ、敵の行動阻害を狙って戦う。
     剏弥も魔槍を軽々と手にして言った。
    「清花の孤独、戸惑い、怒り……全てぶつけてしまうと良い、その悉くを受け止めて見せよう」
     放つ技は旋風輪、剏弥はディフェンダーだった。受け止めるというその覚悟に嘘はない。もう清花に言葉は届かないだろう。剏弥はただ妖の槍の一撃に祈りを込めた。
    「行こう、楓太郎!」
     颯夏が鋼糸を放ち、霊犬の楓太郎が飛び出す。サーヴァントの一撃に続いて呪糸が敵を絡めとった。
     灼滅者達とダークネスが月夜を駆ける。
     颯夏は清花の視線に射抜かれたが、次の瞬間、ヴァンパイアが引き裂いたのは霊犬だった。
    「あーん、清花ちゃん怖~いっ!」
     メディックの音音が回復を飛ばす。
     荒れ果てた庭に超常の力が炸裂する。
    「貫け、魔法の矢ー!」
     志歩乃が懸命に攻撃を放ち、詠唱圧縮された力を清花にぶつける。
    (「いつだってがんばるんだから、負けないんだからねー!」)
     ヴァンパイアの怒れる瞳はしばしば剏弥を捕らえた。視界を塗りつぶす赤は血の霧か敵のオーラか。だが剏弥は仲間に支えられていた。
     燈子がすぐに風を呼んで呪を祓う。メディックの音音のほかにもキュアを使える者は多く、灼滅者達に油断はなかった。
    「剏弥さん、頑張ろー!」
     志歩乃は防護符をしゅっと投げてあげる。
    (「何の、この程度……!」)
     剏弥は吼えた。
     だがヴァンパイアも、八人を相手にしてはそうそう無事ではいられない。清花は肩で息をつき、夜風にはためく袖は千切れていた。
     燈子はその様子に胸を痛めながらも、天星弓を握り、神薙刃を撃つ。カミの風刃が魔を切裂いた。
     ……必ず救って差し上げたい。差し伸べた手を、握って欲しいのです。
     その願いは恐らく皆のもので。
     火蜜が走り、挑発して清花の攻撃を誘った。
    「そんな攻撃で……私の炎を、消せる、の?」
     炎熱の一撃に清花が燃え上がる。よろめきながらも魔炎の中からダークネスが緋色逆十字を放った。
     凄まじい痛みと催眠の刻印が火蜜を蝕む。
    「わーっ。でも大丈夫だよぅ~」
     音音が自分もどきどきしながら、癒しの矢を放つ。メディックの癒しは強力だ。清花ちゃんそんなの似合わない。早く元に戻ってよぅ……。
     清花は今や満身創痍でだらりと腕を下げた。
     ホイップがはっとした。
    (「エンチャントはまずいですの!」)
     ホイップは、ヴァンパイアが不思議な程自己回復を使わない事に気づいていた。これは清花のささやかな闇への抵抗なのだろうか。
     だがヴァンパイアは癒しの技を使う事なく再び剏弥を攻撃し、彼はするりとそれを避けた。
     よろめくヴァンパイアにホイップが迫り、鬼神変が炸裂した。
     ダークネスの能面の様な面がふいに歪み、苦痛と悲しみが入り混じる。
     図った様に脇から礼が影業を放った。
    「おかあさま。清花はお友達を、傷つけたくありません……」
     清花は空に向かって呟くと、糸が切れたようにぱたりと倒れた。

    ●学園への誘い
     皆は倒れた清花に駆け寄った。ダークネスらしさはすっかり消えて、顔色はずっと良くなっていた。
    「たぶん10分もすれば意識が戻るはずですの」
     ホイップがほっと息をつく。
     清花は灼滅者として生き残ったのだ。彼等は一人の少女を闇から救った。
     横たわる清花の傍らで、颯夏が霊犬をねぎらった。……楓太郎もよく頑張ったな。ボクを守ってくれてありがとな。
     戦いが終わった庭に秋の夜がしんと満ちた。
     心地よい夜風と虫の音に誘われるように、清花は目覚めた。
     礼が持参したクッキーを差し出す。
    「良かったらどうぞ」
    「ありがとうございます」
     清花はかぷり。そして花の様に笑った。
    「わぁ美味しいです」
     人の血はもう欲しくない、そんな嬉しい笑顔だ。
     ホイップが握手、と手を出す。
    「清花さん、これから友達になってくれます?」
    「はい」
     握り返された手が暖かい。
     志歩乃も清花の手をとり、音音は早くもおでかけに誘う。
    「言ったとおり、みんなお友だちになりたいんだよー」
    「ね~、今度可愛い服着て、一緒にお出かけしたいなぁ~」
    「はい! ぜひにです」
     女子達は明るく盛り上がり、火蜜達は猫の墓を作るのを手伝った。
     それも一段落した所で礼が問う。
    「ところで、清花さんはどこか行くあてがあるのですか?」
     俯いて首を振るところに、礼は誘った。
    「良かったら学園へ来ませんか? 住むところも食事なども心配いりません」
    「え?」
    「あなたと似たような力を持つ人が大勢いますし、友達も出来ると思いますよ。……もしかしたら、お母さんの情報が入るかもしれません」
     清花の表情がぱっと明るくなり、深々とお辞儀をする。
    「お願いします。清花をそこに連れて行って下さい」
     彼等の活躍の結果事件は解決し、武蔵坂学園は新たな灼滅者を迎える事になった。
    「清花ちゃんも、疲れたでしょ?」
     火蜜が声をかけた。
    「一緒に帰ろう、ね?」
     月影さやかに揺れる家路を、辿るは9人。

    作者:水上ケイ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年9月30日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 14/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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