黒き手枷の放浪者

    作者:のらむ


     とある繁華街の裏路地に、無精ひげを生やした無骨な男が寝転がっていた。
     ボロボロのジーンズと汚れた茶色のコートを身に着け、両手には強固な黒い手錠が嵌められている。
     この男の名は、赤道・達三(あかみち・たつみ)。
     どこかやる気のなさそうな表情をした赤道は、ぼうっと空を見上げていたのだった。
    「全く退屈な日が続くぜこの野郎……適当に喧嘩をふっかけても大抵はハズレ。いい加減強い奴と当たってもいーんじゃねえか?」
     ぶつぶつと呟き続ける赤道だったが、そこに数人の不良達が姿を表す。
    「おいおっさん、手錠なんか嵌めてなにしてんだよ。そういう趣味か? とにかくここは俺たちの場所だ。さっさと消えろよ」
     不良のリーダーが男にそう言うが、赤道は完全に無視して寝転がり続ける。
    「強者だけが集うバトルロワイヤルみたいなの誰か開いてくんねえかなー。もしくは素質のある奴が大量に闇堕ちしてアンブレイカブルだらけの世になってくんねえかなー」
    「おいおっさん、聞けよ」
    「弟子を取って鍛えあげる同胞がいるってのも納得だぜ……これだけ良い闘いが出来る相手が見つからなけりゃあ、自分で好敵手を作ってやるって話だな。理が適ってる」
    「聞けよおっさん! マジで!!」
    「これから何処にいくか……辻斬りみたいな真似しても良い闘いが出来るとは思えねえ。道場破りの旅でも始めるか?」
    「おいジジイ!!」
    「誰がジジイだゴラァァァァァアアアア!!」
     急にキレたジジイこと赤道は脚の力だけで飛び起きると、リーダーの鳩尾を蹴り飛ばし壁にめり込ませた。
    「唯の雑魚だからと無視してやったが……ジジイ発言は流石に無視できねえ。俺にジジイと言っていいのは絶世の美女だけだ!!」
     そして赤道は不良達に怒涛の勢いで蹴りかかり、次々と重傷を負わせていく。
    「あとこの手錠は趣味じゃねえ、修行の一環だ!! ……いや、それは結局趣味か」
     そう言って最後に残った不良の首に脚を絡ませ首をへし折ると、赤道はぶらぶらと歩きだす。
    「ったく、つまらねえ連中だぜ……もっと身体を鍛えろよ、ガキ共」
     そう言い残し、赤道は何処かへと去っていくのだった。


    「己の力を高め続け、常に強敵との殺し合いを渇望する狂気の武人、アンブレイカブル。今回私は、そんなアンブレイカブルについて予知しました」
     神埼・ウィラ(インドア派エクスブレイン・dn0206)は赤いファイルを開くと、事件の説明を始める。
    「事件を引き起こすのは、赤道・達三という名のアンブレイカブルです。赤道は、とある路地裏で寝ていたところに現れた数人の不良達に攻撃。怪我人はもちろん、死者も出ています。皆さんは現場へ向かい、赤道を灼滅して下さい」
     灼滅者達は不良が路地裏に訪れる数分前から、赤道と接触する事が出来る。
    「人払いはESPで十分でしょう。赤道も攻撃を仕掛けてくる灼滅者達を無視しませんし、何より十分な戦闘力を持つ灼滅者との戦いを望む筈です」
     そう言ってウィラはファイルをめくり、赤道の説明に入る。
    「アンブレイカブル、赤道・達三。彼は典型的なバトルジャンキーで、時に見境なく人々を襲撃し、多くの被害をもたらして来ました」
     そんな赤道はアンブレイカブルでありながら、拳を使った戦闘を全く行わないとウィラは説明した。
    「元々は拳も使っていた様なのですが、あえて両手に手錠をはめ、拳を使わない戦いと修行を続けてきた事により、彼は誰にも負けないと自負する足技を得るに至りました。そしてその修行は、今も続いています」
     赤道は自慢の足技と闘気を駆使して戦闘を行う。
    「赤道はそのやや鈍重そうな見た目とは裏腹に、非常に身のこなしが素早く、そして鍛え上げられた足技はいずれも強烈です。最早拳を使わず戦うという行為は、赤道にとってなんのデメリットにもならない様です。長い修行の甲斐はあったという事ですね……その被害は、計り知れませんが」
     そこまでの説明を終え、ウィラはファイルをパタンと閉じた。
    「説明は以上です。赤道の強くなりたいという思いは本物で、混じりけのないものですが……その過程で多くの人々が彼に被害を受け、命を落としてきた筈です。これまでの被害者や、その遺族の方達の為にも、ここで必ず倒してください……それではお気をつけて。皆さんが無事に、目的を果たせる事を祈っています」


    参加者
    九条・雷(アキレス・d01046)
    龍統・光明(千変万化の九頭龍神・d07159)
    夕凪・緋沙(暁の格闘家・d10912)
    小沢・真理(ソウルボードガール・d11301)
    クリミネル・イェーガー(肉体言語で語るオンナ・d14977)
    御火徒・龍(憤怒の炎龍・d22653)
    不動・大輔(旅人兼カメラマン・d24342)
    干支咲・巳織(蛇の巣ごもり・d35209)

    ■リプレイ


     アンブレイカブル赤道・達三が凶行を行うとある路地裏。
     灼滅者達はその凶行を防ぎ、赤道を灼滅すべく、その路地裏に訪れていた。
    「気に入らねぇからなんて理由で一般人に手をかけるのは許さないぜ!」
    「こんなの、鍛錬じゃなくてただの人殺しだよ……絶対にここで灼滅しないと」
     不動・大輔(旅人兼カメラマン・d24342)と小沢・真理(ソウルボードガール・d11301)は赤道を灼滅するという意思を固めた頃、灼滅者達の視界に寝転がる赤道が見えた。
    「また、またこれですか……だから臭いんですよ! 本当にDSKノーズは自爆技ですね……」
     御火徒・龍(憤怒の炎龍・d22653)は赤道から染み出す業の臭いに激しい嫌悪感を覚え、思わず顔をしかめる。
    「こんにちは。洒落た寝床をお持ちなのね」
    「はァい、灼滅者でェす。ねェおじさま、遊びましょうよ」
     干支咲・巳織(蛇の巣ごもり・d35209)と九条・雷(アキレス・d01046)が赤道にそう声をかけると、赤道は灼滅者達に目を向ける。
    「灼滅者? ……そいつは中々レアな連中だなおい。よくこの場所が分かったもんだぜ」
     そう言って身体を起こした赤道は飛び起き、灼滅者達と相対する。
    「まあ細かいことはええやろ。とにかくうちらと殴りあ……いや……闘いあおうや」
    「修行を重ね、さぞかし腕に自信があるとお見受けします。しかし私達灼滅者も、貴方に負けず劣らず自信はあります。お手合わせ願えませんか?」
     夕凪・緋沙(暁の格闘家・d10912)とクリミネル・イェーガー(肉体言語で語るオンナ・d14977)がそう声をかけると、赤道はニヤリと笑みを浮かべる。
    「願っても無いお誘いだな。退屈すぎて死ぬかもしれんと思ってた所だ……最近の灼滅者は随分と腕が立つって評判だしな。俺も最初から本気でいくぜ?」
     そして赤道は地面に脚を叩きつけ、同時に膨大な闘気を身に纏う。
    「手を抜いてくれるなんて思ってないぞ、当然な。だが最初から全力なのは、こちらもだ」
     龍統・光明(千変万化の九頭龍神・d07159)はスレイヤーカードを解放し、殲術道具を構える。
     そして闘いが始まった。


    「いきなりぶちかますぜガキども、あまりの威力にびびんじゃねえぞ!!」
     赤道は闘気を纏わせた脚で空を蹴り、放たれた衝撃波は灼滅者達を襲う。
    「この程度で誰が怯むか!!」
     仲間を庇い攻撃を受け止めた大輔が叫び、深紅の大刀『紅一文字』を構え赤道に突撃する。
    「お前は、持てる全ての力を以て叩き潰してやるぜ!!」
     そして放たれた超重量の斬撃が、赤道の胸を深く抉った。
    「まだまだ俺の攻撃は終わらないぜ!」
     大輔は武器を黒き十字架に持ち替えると、霊犬の『牙』と共に赤道に突撃する。
    「ここだ!!」
     牙が放った斬撃が脚を斬り、大輔が振り降ろした十字架が脳天を強く打った。
    「斬り裂く、九頭竜……龍ケ逆鱗」
     光明は漆黒の長刀を抜刀すると同時に自身の身体を回転させ、激しい斬撃の嵐で赤道を更に切りつけた。
    「ハッハー……久しぶりだぜ、この痛みはよ!」
     赤道は楽しげな笑みを浮かべると地を蹴り、鋭い回転蹴りを光明に放つ。
    「……ッ! 大事な仲間です、怪我させたりはしません」
     しかしそこに飛び出した緋沙が蹴りを受けとめ、赤道の身体に拳を打ちこみ反撃した。
    「この前のクズ、げふん、あれの時は冷静さを欠きましたからね……今日は冷静にいきます」
     龍は先日の激戦の記憶を思い出しつつ眼鏡を抑え、『パイルランチャー』を起動させつつ赤道との間合いを測る。
    「普通の人間でも足の力は腕の何倍もあるんです。ダークネスならどれほど倍加されてるやら……俺の役目はそのご自慢の脚を、原形留めない程ぶち抜く事です!」
     そして龍はジェット噴射で赤道の懐まで一気に潜り込むと、巨大な杭を赤道の脚に叩きこみ、削り取った。
    「痛ェ! このガキ俺の美脚になんてことしやがる!!」
     龍の一撃を受けた赤道はそのまま身体を回転させ、激しい蹴りの連打で龍に反撃する。
     その蹴りに龍の眼鏡が割れると、龍は目を剥き赤道を睨み付ける。
    「てめぇがしてきた事にくらべりゃ屁でもねえだろこの程度! 一々騒ぐんじゃねえよ!!」
     龍は至近距離から放った膝蹴りで赤道の顎を打ち、赤道の身体は鈍い音を立て壁に吹き飛んだ。
    「あ。……スペアがあって良かったですね」
     スッと懐からスペアの眼鏡を取り出しかけた龍は、元の落ち着きを取り戻していた。
    「今の膝蹴りは痛かったぜ……まあ俺の蹴りに比べれば大した事ねえけどな!!」
     赤道は再び空を蹴り、巨大な衝撃波を放つ。
    「これは結構痺れるわ……間違ってはいるやろうけど、この力は本物や」
     衝撃波を受けたクリミネルはビリビリと身体が痺れる感覚を覚えつつも、勢いよく突撃し炎の蹴りを放った。
    「結構火力が強いね……すぐに回復するよ!」
     真理はそう言いつつナイフを高く掲げると、そこから虚ろな夜霧を放ち、仲間たちの傷を癒していく。
    「おいおい、お前さっきから回復してばっかじゃねぇか。少しは殴りに来たらどうだ?」
    「うるさいわね、これが私の役目なのよ、クソジジイ!!」
    「…………」
     真理の突然のクソジジイ発言に赤道は少し虚を突かれた様だったが、突然笑い出す。
    「ハハハハハ! クソガキにクソジジイ呼ばわりされちまったぜおい! あと5年経ってから出直してきな!」
    「こんな可愛い女の子をクソガキ呼ばわりなんて、流石クソジジイはデリカシーの欠片もないわね」
    「ハハハハハハハ! 蹴り飛ばすぞこの野郎!」
     赤道はそのまま真理を中心とした後衛に突撃し、重く強烈な回転蹴りを放つ。
    「くっ……ここ!!」
     しかし真理はその蹴りに自身の蹴りをぶつけ威力を殺すと、闘気を纏わせた拳を突きだす。
    「お望み通り殴ってあげるわよ!」
     そして真理が至近距離から放った闘気の塊が赤道の鳩尾を打ち、赤道は地面を転がっていった。
    「いやァ、やっぱりいいねェアンブレイカブルって。馬鹿みたいに一途な所が特に。ただ、まァ、生憎あたしは灼滅者だし、きちんとお仕事するとしますかね」
     雷は転がって行った赤道を炎の纏ったヒールでで踏み砕き、肩を焼き焦がした。
    「年上を踏むなよクソガキ……」
     そうぼやきながら立ち上がる赤道に、巳織はゆっくりと歩み寄る。
    「足を鍛えるために腕を封じる。……ふふ、嫌いじゃないわよ、そういう趣向。強い人、好きよ?」
     でも、と巳織は言葉を続ける。
    「でも、ダメね。いくら力をつけたところで、あなたは相手の力を推し量る事すらできていなんだもの。武人が聞いて呆れるわ。その程度、虫にだってできるわよ」
    「ハー、こりゃ手厳しいな」
    「あなたは、そうね。例えるなら偶然拾った棒切れを振り回して喜ぶ子供と同じよ。……いらっしゃい、『僕』。おねーさんが遊んであげるわ」
     そして巳織がウロボロスブレイドを構え、蛇の様な瞳を向けると、赤道は手錠を嵌めた手でポリポリと頭を掻く。
    「俺も長い間生きてるが……ここまで徹底的に罵倒された事は中々ねぇな。『黙って聞いてりゃ調子に乗りやがって』的な台詞を言いたくなったのもこれが初めてだ」
     そしてトントンと地を蹴ると、赤道は巳織に突撃する。
    「まあいいぜ、俺が拾った棒切れは物凄い棒切れだって事を教えてやるぜ!!」
     そして赤道が放った蹴りが、巳織の身体に深く突き刺さる。
    「……んふふ、痛ぁい。とっても上手ね、とっても逞しいのね。素敵よ、この力だけは、すっごく好みのタイプ。……ねぇ、もっともっと攻めたてて?」
    「怖ぇよ!!」
     本能的に後退る赤道だったが、巳織が放った鞭剣に絡め取られ、全身を切り刻まれた。
    「くそ、ペースが崩される……だがまだだ、おっさんの底力って奴を見せてやるぜ」
     赤道は己の傷を癒すと、息を整え再び灼滅者達と対峙する。
     闘いは、まだ続く。


    「強くなる為に敢えて苦行を課す……その気持ちは良く解る。が、解るのは上を目指す気概だけだ」
     光明は漆黒の鞘に己の魔力を込め、赤道の胸に重い刺突を叩きこむ。
    「龍気の海へ沈め、九頭竜……龍崩衝」
     更に光明が赤道の胸に掌底を叩きこむと、流し込まれた魔力が赤道の体内で爆発し大きなダメージを与えた。
    「ゲホ、ガホ……ああ、中々面白い技を使うもんだな、ガキが……だが俺はシンプルイズベストの精神を忘れないおっさんだ!」
     赤道はそう言うと光明の真正面から突撃し、素早い上段蹴りを光明に叩きこむ。
     光明は苦痛に一瞬膝を付くが、すぐに立ち上がり己の龍気を操って行く。
    「創破の意味を知れ、九頭竜……龍癒翔」
     光明の身に纏った二つの龍が天高く飛翔し、光明の傷は瞬く間に癒された。
    「この隙に続くぜ!」
     光明の回復の直後に飛び出した大輔は、ブースターで加速をつけた蹴りで赤道の脳天を打つ。
     そして光明は長刀を鞘に納めると、居合いの構えで赤道に迫る。
    「咲き誇れ、閃刃流那龍……蓮華」
     放たれた居合いの斬撃は赤道の胸を斬り、飛び散った血飛沫で鮮やかな華が咲いた。
    「グッ……! やってくれるなおい……!」
     赤道は鬼気迫る表情で光明へ接近するが、そこに真理のライドキャリバー『ヘル君』が飛び出す。
    「邪魔だ!!」
     赤道はその機体を足で挟むと捻じり上げ、装甲を無理やり剥がし取る。
    「ごめん、ヘル君……!」
     真理は心を痛めつつも、真摯に仲間の傷を癒していく。
    「あんたがどれだけ修行を続けて来たかしらんけど、うちらの力はあんたのそれを上回る!!」
     クリミネルは鋼鉄の十字架『鈍色の墓碑(グレイブ)』をトンファー形態に変化させ、赤道に猛突する。
    「ウチには重い打撃もアンタみたいな脚技も無いわ……なら『全て』で相手するわぁぁぁぁぁ!!」
     クリミネルはとにかく素早さを重視したトンファーの連撃を全身に叩き込み、その動きを制限する。
    「グッ……! この!!」
     連撃を受けた赤道は後ろへ退がるが、不意に跳び上がるとクリミネルの首元に脚を着く。
    「……使こうたな?」
    「は?」
     赤道が首を折ろうとする方向にクリミネルは全力で身体を捻る。
    「うおぁぁぁぁぁぁああああ!!」
     そしてその捻じる勢いを利用した首での反り投げで、赤道の身体を地面に叩き落とした。
    「グハッ!! なんだそりゃあ、滅茶苦茶だぜ……」
    「ぜえ、ぜえ……ぶっつけ本番やったけど、案外なんとかなるもんやな……」
     クリミネルと赤道は立ち上がり、再び戦闘の構えを取るのだった。
    「ジジイ呼ばわりが気に入らないみたいだけど……それは確かにそうね。老獪した厚みも知性も無いあなたの様な愚者には、ジジイなんて呼称はもったいないわ」
     巳織は更に赤道に辛辣な言葉を投げかけつつ、大蛇の如き影を赤道に喰らいつかせる。
    「黙って聞いてりゃ調子に乗りやがってキック!!」
     赤道はふざけた口調ながらも強烈な蹴りを巳織に向けて放つ。
    「何度でも、防いで見せます!」
     しかし再び仲間の前に跳び出た緋沙がその蹴りを拳で受け止め、赤道と緋沙は正面から対峙する。
    「……中々良い盾役だ。自分の役割をきっちり理解していやがる」
    「ありがとうございます。私達が腕に自信があると言った事、嘘ではなかったでしょう?」
     緋沙は赤道にそう返すと、拳に闘気を纏わせていく。
    「わたしも、常に強さを求める事は良い事だと思います。でも、人の命を奪ってまで強くなるのは間違いだと思いますよ。強くなるという意味は、弱き人を護るために強くなるものなのですから」
    「悪いが、その考えは理解できないな。俺が強くなりたいのは、ただ単に強くなりたいだけだ。弱い奴の事なんて、考えた事もねえ」
    「……そうですか。わたしはそんな強さ、絶対に認めません」
     そして緋沙は拳に纏った闘気を雷へ変換させると、赤道との間合いを徐々に詰めていく。
    「そろそろくたばっとけ!!」
     赤道は緋沙に向けて下段蹴りで迎撃するが、緋沙は痛みに怯むことなく赤道の懐まで潜り込む。
    「私の怒りの一撃を、受けてみなさい!!」
     そして放たれた拳が赤道の顔面を打ち、壁に一気に叩き付けた。
    「更に一撃!!」
     緋沙は怒涛の勢いで赤道に迫ると拳を振るい、赤道の鳩尾を強く打ったのだった。
    「もういい加減終わりにしましょう。大人しくぶち抜かれて下さい」
     緋沙に続き追撃に出た龍は、ジェット噴射を伴う杭の一撃を赤道の胸に叩きこむ。
    「ゲホッ……! あぁ……こいつは中々、楽しい展開じゃねぇか」
     赤道は全身に多数の傷を負いかなり追い詰められている状況だが、それでも尚笑い灼滅者達に攻撃を仕掛けていく。
     赤道が放った激しい蹴りの連打が、灼滅者の身体を強く抉っていく。
    「あはは! やァん、強い強ォい! 手錠なかったらもっと強いのかなァ、ゾクゾクしちゃう! 殺したいくらいに素敵! 殺すけど!」
     蹴りを喰らった雷はその威力の強さに笑みを浮かべ、蒼き雷の如き闘気を拳に纏わせる。
    「明るく元気に殺すとか言うんじゃねえよ!」
    「今まで散々人を殺してきたおじさまに言われたくはないかな!」
     そして雷は赤道の真正面から飛び掛かり、電光迸る激しい拳が、赤道の顔面を殴り飛ばした。
    「ビリッと来たぜ……おっさんの蹴りでくたばっとけ!!」
     震えた頭を押さえ、赤道は高速の跳び蹴りで雷の肩を砕く。
    「やっぱり強いなァおじさまの蹴り! ただ残念ね、もっと殴りあっていたいのに……それじゃおじさま、最後の最後まで遊んで頂戴ね」
     激痛の最中で笑みを深めた雷は、赤道にトドメをさすべくその動きを見定めていく。
    「おいおい、おじさまことこの俺がこんな簡単に死ぬと思うか? 冗談じゃねぇ。俺はてめぇらを倒すまではくたばらねぇぞ!!」
     赤道は怒号を上げ、闘気から生み出した衝撃波を放つ。
     灼滅者達はその衝撃波を避け、あるいは受け止め、赤道に一斉攻撃を叩きこんだ。
     緋沙が放った鋼鉄の拳が脳天を打ち、
     クリミネルが振り下ろした銀爪が喉笛を裂く。
     真理が放った跳び蹴りが脚を砕き、
     光明が二対の長刀で両肩を切り裂く。
     龍が放った光の刃が胸を貫き、
     大輔が放った赤い斬撃が腹を斬る。
     巳織が放った大蛇の影が全身を喰らい、
     雷は赤道の胸倉を掴み上げ、全身の力を込める。
    「さよなら、おじさま。中々素敵な時間だったね、楽しかったよ」
     そして雷は赤道の身体を全力で投げ飛ばし、頭から地面に叩き落とす。
     周囲の地面が揺れる程の大きい衝撃が止むと、赤道は地面に倒れ込み上を見上げていた。
    「クソ、俺の負けか。ナイスミドルな俺も若いハチャメチャパワーには勝てなかったって事か…………俺を殺したんだ。精々上りつめて見せろよ、灼滅者」
     そう呟くと、赤道の身体は砂の様に崩れ落ち。消えていった。
     赤道を縛り力の糧となり続けていた黒き手枷が、乾いた音を立てて地面に落ちた。

    作者:のらむ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年11月30日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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