ウナギ食べ放題!

     安田・花子(クィーンフラワーチャイルド廿・d13194)は、こんな噂を耳にした。
     『活きのいい鰻が暴れまわっている』と……。
     この鰻は都市伝説で、全身穴だらけの体で、その中に鰻を飼っているらしく、いつでもどこでも食べ放題!
     ほんの少し泥臭い事を除けば、病みつきになるレベル。
     ただし、鰻達は穴という穴に入り込んでいく習性があり、ドサクサに紛れてドジョウも混ざっているので要注意。
     その事も踏まえた上で、都市伝説を灼滅するのが今回の目的である。


    参加者
    美波・奏音(エルフェンリッターカノン・d07244)
    リリアナ・エイジスタ(オーロラカーテン・d07305)
    椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)
    卯月・あるな(正義の初心者マーク・d15875)
    カルナヴァル・ジンガムル(俺の指揮を見ろや・d24170)
    荒覇・竜鬼(一介の剣客・d29121)
    クラリス・カリムノ(導かれたお嬢様・d29571)
    音鳴・奈央(クレピトゥスの巫女・d34224)

    ■リプレイ

    ●都内某所
    「ひょっとして、お腹一杯、鰻を食べたいって、噂があったのかな、違う?」
     リリアナ・エイジスタ(オーロラカーテン・d07305)は不思議そうに首を傾げながら、仲間達と共に都市伝説が確認された住宅街に向かっていた。
     都市伝説は全身穴だらけで、その中に大量のウナギを飼っているようだ。
     しかも、そのウナギ達は凶暴な性格をしているらしく、穴という穴に入り込んでくるようである。
     そのため、都市伝説が確認された地域に住む一般人達が必要以上に警戒しており、後ろに立っただけでも『うひゃあ!?』と間の抜けた声を上げ、逃げ出してしまうほどだった。
    「よし、できる限り、ウナギを食うぞ!」
     カルナヴァル・ジンガムル(俺の指揮を見ろや・d24170)が蒲焼のタレと山椒を持参し、何となく気合を入れる。
     ある意味、ウナギ食べ放題。
     誰にも文句を言われる事なく、ウナギを好きなだけ食べる事が出来るのだから、決して悪い依頼ではない。
    「いよいよ、私のヒロインデビュー! エジプトのご当地パワーで悪を討つ!メロディウィンディ、華麗に活躍!」
     そんな中、音鳴・奈央(クレピトゥスの巫女・d34224)が高いところに立って、ビシィッとポーズを決めた。
     まわりには都市伝説に襲われた一般人達が倒れており、ありとあらゆる穴からウナギがひょっこりと顔を出していた。
     その光景は、まさに地獄絵図。
     それでも、あるなにはウナギしか見えておらず、食べる気満々のようである。
    「こんなにウナギだらけじゃ街が大変だよ! 正義の味方として何とかしないと! みんなで協力してウナギを捕まえようね!」
     卯月・あるな(正義の初心者マーク・d15875)が、興奮した様子でじゅるりと涎を垂らす。
     頭の中に浮かぶのは、ウナギの蒲焼を食べて、満腹状態になった自分の姿。
     その姿を想像するだけで、涎が止まらなくなった。
    「……でも、初めての相手が鰻の大群ってどうなの。陸の上とはいえ、あんなにヌルヌルピチピチしてるし……。でも、これも蒲焼きの……もとい正義のため」
     奈央が複雑な気持ちになりつつ、自分自身を奮い立たせる。
     色々とアレな気もするが、細かい事を考えたら、その時点で負けだろう。
    「と、とりあえず、大きなウナギを倒せばいいのよね……? 中にウナギやドジョウが沢山いて……何か色々と意味が分からないんだけど……危険な要素はなさそうよね……」
     クラリス・カリムノ(導かれたお嬢様・d29571)が、心配した様子で仲間達に確認をする。
     いまいち、よく分からないところもあるのだが、実際に都市伝説の姿を見れば、その問題も解決しそうである。
    「も、もしかして、あれかしら。う、嘘よね……? あんなグロテスクな……」
     そう思って辺りを見回していたクラリスの視界に飛び込んできたのは、想像を絶するほどグロテスクな都市伝説の姿であった。
     何となく可愛らしい姿を想像していたせいか、少なからずショックを受けているようだ。
    「うわっ、あの都市伝説……穴だらけでウネッて気持ちが悪い……」
     リリアナもドン引きした様子で、都市伝説に視線を送る。
     都市伝説の身体には無数の穴が開いており、大量のウナギがあちらこちらに出入りしていた。
    「おっ、こいつはなかなか活きのいい都市伝説だ。山姫の餌に丁度いい」
     それとは対照的に荒覇・竜鬼(一介の剣客・d29121)が含みのある笑みを浮かべ、殺界形成を発動させた。
     これで無関係な一般人を巻き込む事なく、ウナギ料理を堪能……もとい、都市伝説と戦う事が出来そうだ。
    「ま、まあ、ウナギ自体は普通みたいだし、問題はないだろ。そんな訳でまずはウナギの料理だ!」
     椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)が難しい事を丸投げにした上で、都市伝説の行く手を阻む。
    「本当に、俺の中で飼っているウナギが、普通のウナギだと思うのか? ありとあらゆる穴の中を出入りしていた、このウナギ達がっ!」
     都市伝説が思わせぶりな態度で、妖しくニヤリと笑う。
     そのせいか、ウナギ達が妙に黒光りしており、ウナギとは思えないほどの如何わしい臭いが漂っていた。
    「それに、陸の上なら鰻相手に遅れを取る事はないでしょ」
     美波・奏音(エルフェンリッターカノン・d07244)が楽観的に物事を考え、さらりと流す。
     その途端、奏音頭上にピコンとフラグが立った。
     だが、本人は全く気づいておらず、のほほんとした表情を浮かべていた。

    ●ウナギ
    「喜べ山姫、今日は馳走だ」
     竜鬼がウイングキャットの山姫に声を掛ける。
     山姫は表情が硬い上に、鳴き声すら上げないものの、何となくウナギに興味を持っているようだ。
    「ウナギは狭い所に入りたがる習性があるから、こうすれば、きっと……」
     あるなが警戒した様子で間合いを取りつつ、餌を入れたペットボトルをウナギ達の前に置く。
     それに気づいたウナギ達が、先を競い合うようにして、ペットボトルの中に入っていった。
     そのため、ペットボトルの中は、パンパン。
     今にも弾け飛びそうなほど、危険な雰囲気が漂っていた。
     それに合わせて、武流が光刃放出で、ウナギを仕留めていく。
     しかし、あまりにも威力があり過ぎるせいで、大半のウナギが細切れ状態。
     ここでウナギに手を加えて、レーヴァテインで焼いたとしても、大量の消し炭が出来るだけだろう。
     その横で、竜鬼が手慣れた手つきでウナギを捕まえ、持参したまな板の上に乗せ、ナイフを使って頭、胴体、尾の3つに分けた。
    「……そこまでしてウナギが食いたいのか。だったら、この場で蒲焼にしてやろう。ありとあらゆる穴に入ったウナギでも避ければなっ!」
     都市伝説が、やけにダンディな口調で、全身の体温を一気に上げ、竜鬼が捌いたウナギを蒲焼にしていった。
     それが都市伝説の体液(秘伝のタレ)と混ざり合い、香ばしい匂いが辺りにもわんと漂っていく。
    「だが、いいのか、本当に食べるのか! 色んな穴に入ったウナギだぞ!? しかも、それ……タレっぽく見えるけど、俺の体液だからっ! それでも、いいのか!?」
     都市伝説が確認するようにして、竜鬼達に視線を送る。
     しかし、竜鬼達が気にせず、蒲焼を食べまくり。
     あまりの美味さにそれ以外の事が、どうでも良くなった。
    「ば、馬鹿なっ! 色んな穴に入ったウナギだぞ!? それを食すとは……。ええいっ! 前言撤回! こうなったら、お前達にウナギの恐ろしさを思い知らせてやる!」
     そう言って都市伝説が、まわりにいたウナギ達を嗾けていく。
    「やだ、こ、この……ふああっ!」
     すぐさま、奏音が群がってきたウナギを払い除けようとしたが、トビウオの如く勢いで飛びかかってきたため、あっという間に全身ヌルヌル。
    「はぁん、ぬるぬる……虜になっちゃう……♪ ねぇ、お願い……」
     その感触に抵抗する事すら出来なくなり、発情した様子で武流の袖を掴む。
    「もしかしてそっち系を期待してたの? ごめん、食欲を優先して、ごめん!」
     それに気づいた武流が視線のやり場に困りながら、申し訳なさそうに謝った。
     だからと言って、奏音も理性を押さえる事が出来ず、武流を押し倒すようにして覆い被さった。
    「きゃあ、もう! 大人しくしてよっ」
     その間もリリアナはザルを持ってウナギを捕まえようとしていたが、あまりにも活きが良過ぎるため、なかなか捕まえる事が出来なかった。
     それでも、力づくで押さえつけようとしたが、余計にヌルヌルしてしまい、服の中にまで入ってきた。
    「ちょっ……、ああっ、ダメっダメだってっ! んん……、こんなの負けないし……」
     これにはリリアナも驚き、顔を真っ赤にしながら、ウナギと悪戦苦闘!
    「……いやっ! 何か凄くぬるぬるして……こ、来ないでっ! だめっ!あっちいってってば……! だ、誰か助けて!」
     クラリスも半ばパニックに陥った様子で、ナイフをブンブンと振り回す。
     しかし、ウナギ達は怯む事なく身体をクネらせ、クラリス達に襲い掛かってきた。
    「……きゃっ!? どこから……あんっ!」
     その途端、奏音が恥ずかしそうに悲鳴を上げ、後ろに倒れ込むようにして尻餅をつく。
     油断した拍子にウナギが密着したスーツの中に潜り込んできたらしく、何とも言えない感触に戸惑いながら、崩れ落ちるようにしてペタンとへたり込んだ。
     しかも、他のウナギまで群がるようにして、次々とスーツの中に入ってきた。
    「ひにゃっ……! つ、冷たいし、嫌な臭い……! あっ……、服の中にまで入って……!」
     クラリスも必死にもがいているものの、ウナギ達は容赦なく服の中に入っていく。
    「この状況で口を開けたら、中に飛び込んで来たりしてな!」
     そんな中、カルナヴァルが軽く冗談を言いながら、アングリと口を開ける。
     すぐさま、ウナギ達がアスファルトの地面を蹴りつけ、カルナヴァルの口めがけて飛び込んできた。
    「ちょっ、ちょっと待て! あっ、服の中はやめて! き、気持ち悪っ! やめろぉ! ソコは巣穴と違いますからぁ!」
     それに驚いたカルナヴァルが自分の口を塞ごうとしたものの、ウナギ達が服の中にまで入ってきたため、涙目になって悲鳴を上げた。
    「きゃ――! 来ないで――!! この服、露出が多いんだから!!」
     奈央もウナギを漁網で捕まえている途中に足を滑らせ、派手に転んだところで、ウナギ達の猛反撃に遭った。
    「ダメ! 目覚めちゃうから! ダメになっちゃうから~!!」
     その上、素肌を這い回られ、胸や尻の谷間に潜り込まれたせいで、身もだえしながら、妙な声を漏らしている。
     それでも、ヒロインにピンチはつきものだと自分自身に言い聞かせ、『ぬるぬるなんかに絶対負けない!』と心の中で宣言し、完全な負けフラグをピンと立てた。
     そのせいか、ウナギ達もヤル気満々になったらしく、興奮した様子で禁断の領域へと入り込んでいく。
    「ら、らめぇ~~~!!!」
     そのため、奈央はまったく抵抗する事が出来ず、崩れ落ちるようにして気絶した。
    「……ひゃん! コ、コスチュームの中に……こらーっ! ボクは魚篭じゃな……や、やだ、暴れるな!」
     あるなも大量のウナギに襲われ、パニック状態。
     その上、ウナギ達が背中から尻に回り込んできたため、絶体絶命の大ピンチ!
    「だめー! お尻だめー! 武流くーん、助けて――!! アッ――!」
     それに加えて、ウナギは暴れ馬の如く勢いで、禁断の領域へと入り込んできたため、あるながビクンビクンと身体を震わせながら、グッタリとして意識を失った。

    ●都市伝説
    「ねぇ、少しだけ……少しだけでいいから……」
     奏音が光刃放出でスーツを破り、潤んだ瞳で武流に迫る。
     だが、武流は食欲よりも、性欲。
     圧倒的なまでに、食欲が勝っていた。
    「……っと、都市伝説退治も忘れちゃいけないな」
     そのため、武流は小さくコホンと咳をした後、都市伝説に攻撃を仕掛けていく。
    「と、とりあえず何とかしないとね……!」
     クラリスも自分自身に言い聞かせ、攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
    「……うぐっ! まさか、俺の攻撃を仕掛けてくるとは……。俺はヌシだぞ。もしも、ここで倒したら、バチが当たるかも知れないぞ!」
     続けざまに攻撃を食らった事で、都市伝説も身の危険を感じたのか、クラリス達に対して警告する。
    「こんな目に遭ったのも、みんな……都市伝説が悪いっ!」
     しかし、リリアナは八つ当たり気味に、都市伝説めがけて鬼神変を叩き込む。
    「お、おい、正気かっ! バチが当たるぞ、祟りがあるぞ!」
     都市伝説がくるっと回って、脱兎の如く逃げ出した。
    「絶対に逃がさないよっ!」
     その行く手を阻むようにして、カルナヴァルがレイザースラストを放ち、都市伝説を追い詰めていく。
    「さて、都市伝説の丸焼きでも作りますかね」
     竜鬼が皮肉混じりに呟きながら、緋牡丹灯籠で都市伝説を丸焼きにする。
    「グワアアアアアアアアアアアア!」
     都市伝説は野太い断末魔を響かせ、香ばしい匂いを残すと、跡形も残す事なく消滅した。
    「ひょっとして……、終わったの!?」
     その途端、奈央がハッとした表情を浮かべて飛び起きた。
     都市伝説が消滅した事によって、ウナギ達も元に戻ったのか、先程までの勢いがなくなっていた。
     そのため、ウナギは捕まえ放題、食べ放題!
    「ううっ、お尻がぬるぬるだよぉ……」
     そんな中、ようやく意識を取り戻したあるなが、魂の抜けた表情を浮かべる。
     一瞬、ウナギも悪くないと思ってしまったが、そう思ってしまうのは、とてもイケナイ事。
    「お風呂に入って、もう今日は寝るわ……ぐすん……」
     そう言ってクラリスが、ぺたんと座り込む。
     そして、クラリス達はウナギを手土産にして、その場を後にするのであった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年12月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ