ドミノペンギン、現る!

     鳥飼・砂羽(サンクトゥス・d29667)は、こんな噂を耳にした。
     『自らドミノになって倒れて遊ぶペンギンがいる』と……。
     このペンギンは都市伝説で、常に群れで行動をしており、綺麗に整列して獲物が現れるのを待っているようである。
     だが、先頭のペンギンを倒したら、最後。
     そのまま勢いをつけてドンドン倒れていき、まわりにいる一般人達を巻き込みながら、最後尾にある家を全壊させたりしているようだ。
     それが原因でトラブルが絶えず、被害者達が『お、押すなよっ! 絶対に押すなよっ!』と言って警告をしているのだが、先頭のペンギンが『早く押して……』とばかりに瞳を潤ませてくるため、その誘惑に負けて思わず押してしまうようである。
     そういった意味で、都市伝説は強敵。
     迂闊に攻撃すれば、ドミノのように倒れていき、何処かの家が全壊してしまう恐れがあるため、都市伝説の本体を見つけ出し、攻撃を仕掛ける必要があるだろう。
     ちなみに本体のペンギンは妙にゴツイ体型で、家を破壊するために巨大なハンマーを持っているため、見つけ出す事はそれほど難しくないはずである。
     そういった事も踏まえた上で、都市伝説を灼滅するのが今回の目的である。


    参加者
    乾・舞斗(硝子箱に彷徨う者・d01483)
    夜鷹・治胡(カオティックフレア・d02486)
    神楽・慧瑠(戦迅の藍晶石・d02616)
    双海・忍(中学生ファイアブラッド・d19237)
    水無月・詩乃(稟武蒼青・d25132)
    ヴァーリ・マニャーキン(本人は崇田愛莉と自称・d27995)
    焼杉・ひよ(きらきら星を追いかけて・d28160)
    鳥飼・砂羽(サンクトゥス・d29667)

    ■リプレイ

    ●都内某所
    「……ドミノみたいに倒れるペンギンさんの都市伝説ですか」
     双海・忍(中学生ファイアブラッド・d19237)は事前に配られた資料を読みながら、仲間達と共に都市伝説が確認された場所に向かっていた。
     都市伝説はペンギンの姿をしており、一列に並んで『早く押して!』と言わんばかりの表情を浮かべ、誰かが押すのを待っているようだ。
    「白と黒の……転倒遊戯。ドミノペンギンですか……。まあ、どう見てもトラップにしか見えませんが、量産されても困るので、ここで一発ネタとして終わって貰いましょう」
     そう言って乾・舞斗(硝子箱に彷徨う者・d01483)が、電信柱に上って都市伝説を探す。
     都市伝説は建築途中のマンションの前に立っており、その後ろには沢山のペンギンがズラリと並んでいた。
     それを確認した後、ペンギンが並んでいる場所を、手に持った地図に記していく。
    「ぴょっ、ペンギンさんいっぱいいるでち! きれいにならんでてすごいでちー!」
     その地図を頼りにして焼杉・ひよ(きらきら星を追いかけて・d28160)が、ハイテンションでペンギン達に近づいていった。
     ペンギン達はいかにも押してくれと言わんばかりに並んでおり、何かを期待するような眼差しをひよ達に送っている。
    「ペンギン、いっぱい、ならぶ、かわいい。さわも、ドミノ、おす、して、みたいな。……けど、おうち、こわれる、ダメ。少し、ガマン」
     鳥飼・砂羽(サンクトゥス・d29667)が、自分自身に言い聞かせた。
     その間もペンギン達が瞳を潤ませ、『早く押して!』と言わんばかりに可愛らしさをアピールした。
    「幾らこっちを見ても駄目ですよ」
     そう言って舞斗がペンギン達を並べ直そうとする。
     だが、ペンギン達は、倒れる気満々。
     ほんの少し触れただけでも、勢いをつけて倒れていきそうな雰囲気だった。
    「一体、誰がこんな危険な都市伝説を生み出したんだ……!」
     夜鷹・治胡(カオティックフレア・d02486)が、警戒した様子で間合いを取っていく。
    「まぁ、珍しく……と言ったら変かも知れませんが、随分と可愛らしい都市伝説でございますね。そこから引き起こされる惨状は可愛らしさとは、無縁の酷い状況で驚かされますが……。しかも、どこかの芸人が思い浮かばれるようなシチュエーションという事から押されるのは、確定的でございますし……」
     神楽・慧瑠(戦迅の藍晶石・d02616)がペンギン達を見つめて、呆れた様子で溜息を漏らす。
     そんな中、ペンギン達は我慢の限界に達したのか、だるまさんが転んだ的なノリで、ジリジリと距離を縮めてきた。
    「それにしても、何というか和む光景だなあ。いや、被害を受ける人からすれば、違うんだろうが……」
     ヴァーリ・マニャーキン(本人は崇田愛莉と自称・d27995)が複雑な気持ちになりつつ、ペンギン達に視線を送る。
     そのため、ペンギン達は微動だにしないものの、ウイングキャットのカイリが異変に気付き、いつでも猫パンチを繰り出す事が出来るような状態になっていた。
    「可愛いペンギンさんをドミノ倒しにするのは抵抗ありますけど……倒れる姿もそれはそれで可愛いのでしょうね。一羽でいいので持ち帰れないでしょうか?」
     水無月・詩乃(稟武蒼青・d25132)がペンギン達に視線を送り、殺界形成を発動させる。
     それに合わせて、忍が警戒した様子で、サウンドシャッターを発動させた。
    「さいしょの、ペンギン、目、うるうる、かわいい。もって、帰る、ダメ?」
     砂羽も一緒になって、瞳をウルウル。
     しかし、ペンギン達は都市伝説によって、作り出されたモノ。
     故に、ペンギンであって、ペンギンではない異質の存在。
     例え、持ち帰る事が出来たとしても、都市伝説を灼滅したのと同時に消滅してしまうのがオチである。
    「ともあれ、被害が広がらないうちに何とか致しましょうか」
     そう言って慧瑠が怪力無双で、先頭のペンギンを退かそうとした。
    「あっ! ひよ、おしたいでちー!」
     焼杉・ひよ(きらきら星を追いかけて・d28160)がウズウズした様子で、先頭のペンギンを押そうとする。
     それに気づいた先頭のペンギンが、わざとらしく後ろに倒れ、他のペンギンも不自然なほどの勢いで、次々と倒れていく。
    「ところで逆側から押したら、どうなるんでしょうね?」
     そんな中、慧瑠が黒い笑みを浮かべ、先回りをすると、逆側からペンギンを勢いよく押した。
     それが原因でペンギン同士がぶつかり合い、途中からまったく動かなくなった。

    ●都市伝説
    「ごらあああああああああっ! 反対側から押したらダメだろうがああああああああああ」
     次の瞬間、巨大なハンマーを持った都市伝説が、イラついた様子で慧瑠達の前に現れた。
     どうやら、途中でペンギンが止まってしまったため、ここまで文句を言いに来たようである。
     しかも、色々な意味でヤル気満々らしく、慧瑠達に制裁を加えるべく、ハンマーの素振りをし始めた。
    「……かわいく、ない、ぷぅ。でも、これ、せなか、おしたら、どうなる、かな」
     そんな中、砂羽が都市伝説の後ろに回り、興味津々な様子でつつく。
    「なんだ、お前は?」
     だが、都市伝説は全く倒れず、殺気立った様子で巨大なハンマーを振り上げる。
    「まさか、そのハンマーでわたくし達を殺る気ですか?」
     慧瑠が警戒した様子で、素早く身構えた。
     その途端、まわりにいたペンギン達まで、身を強張らせる。
    「だったら、どうする? 素直に死ぬか!」
     それと同時に都市伝説がハンマーを振り下ろす。
     間一髪で慧瑠は攻撃を避けたが、まわりにいたペンギン達には、ヒヤヒヤモノ。
    「……って、こんなところでハンマーを振り回したら危ないだろ」
     すぐさま、ヴァーリが二次被害を防ぐため、怪力無双でまわりにいたペンギン達を退かしていく。
     ペンギン達もハンマーで叩き飛ばされたくなかったのか、何処かホッとしている様子である。
    「ひよ、あんぜんなところにいどうするでちー!」
     ひよもぴこぴこしながら、ヴァーリの後をついていく。
     そこには沢山のペンギン達が集められており、ひよもどこか幸せそうである。
    「こ、これはなかなかの強敵だな」
     それを目の当たりにした治胡が、ペンギン達を眺めて、ゴクリと唾を飲み込んだ。
     ……思いっきりダイブしたい。
     もしも、それを実行したら、どれほどのもふもふ感に包まれる事か。
     その上、都市伝説が作り出したペンギン達は、本物と比べて妙にもふもふ。
     ぬいぐるみのような触り心地なので、色々な意味で誘惑に襲われた。
    「戦って勝てない相手では無いですが、ドミノの大暴走は避けたいですね……」
     その間に舞斗が都市伝説を威嚇しつつ、ペンギン達を守るようにして陣取った。
    「おいおい、何か勘違いをしてねーか。ペンギンは倒すためにあるんだぜ!」
     都市伝説が邪悪な笑みを浮かべて、再び巨大なハンマーを素振りする。
     今度はペンギン達にも当てる気満々で。
     隙あらば、突っ込んでいく勢いで。
    「それでは……、行きますっ!」
     そう言って忍がうつし世はゆめ(ビハインド)と共に、都市伝説に攻撃を仕掛けていく。
    「だったら、お前から叩き潰してやる!」
     それを迎え撃つようにして、都市伝説が巨大なハンマーを振り下ろす。
    「一体、どこを狙っているんだ?」
     その攻撃を軽々と避け、ヴァーリがウイングキャットのカイリと連携を取りつつ、一気に間合いを詰めて都市伝説に鬼神変を叩き込む。
    「そう簡単には当たりませんよ」
     それに合わせて、忍も都市伝説の死角に回り、クルセイドスラッシュを放つ。
    「ペンギンさんを叩きのめすのは心が痛みますけど、街を壊させるわけにはいきませんね」
     詩乃も自分自身に言い聞かせ、都市伝説に黒死斬を放つ。
     それでも、都市伝説は怯む事なく、ハンマーを振り回して、反撃を仕掛けてきた。
    「やらせませんよっ!」
     すぐさま、舞斗が一瞬の隙をつき、都市伝説に影縛りを仕掛ける。
     その途端、都市伝説の動きが封じられ、持っていたハンマーがゴトリと落ちる。
    「たのしませてくれてありがとーでちー!」
     それに合わせて、ひよがお礼を言いながら、都市伝説に殴りかかっていく。
    「グッ、グワアアアアアアアアア!」
     その一撃を食らった都市伝説が血反吐を吐き、崩れ落ちるようにして倒れ込み、跡形も残さず消滅した。
    「ちっこいペンギンの方が強かったぜ、色々とな……」
     そう言って治胡が、クールに決める。
     まわりにいたペンギン達も、都市伝説と一緒に消滅してしまったらしく、まるですべてが幻だったような錯覚を受けた。
    「……ペンギンさん、やはり全部消えちゃいましたね。七不思議使いでしたら、お持ち帰りできたのかもしれませんが……」
     詩乃がゆっくりと辺りを見回した後、残念そうに溜息をつく。
    「ちょっぴり、ざんねん」
     砂羽もションボリとした様子で肩を落とす。
     何となく想像はしていた事だが、色々な意味でショックである。
     そして、砂羽達は『ペンギン達を、もっともふもふしておけば良かった』と心の中で思いつつ、その場を後にするのであった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年12月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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