●小学校の校長ってのは何かと変な噂をつけられるもの
誰が言ったか知らないが、とある小学校の校長はアンドロイドだという噂がたっていた。
どう考えたってそんなワケないが、いつも笑顔で尚且つ早朝から深夜までずっと学校でなにかしらの仕事をしている熱心な姿にロボ感を見たのだろうと思われる。あくまで親しみメインの噂である。
それだけならいいが。
実際に出ちゃったらもうヤバい。
何がヤバいかって超ヤバい。
『オハヨウゴザイマス!』
下手なロボットダンスみたいにかくかくした動きの校長が、ジェット噴射で校庭に着地した。
そのボディはメタリックな艶をもち金属のように硬そうだ。
口が両手の光線発射装置を空に向け、謎の光線を放つ。
夜の空に光が走り、雲間を照らす。
『キョートーセンセイ!』
『ハイィ!』
一声呼ぶや否や、プールが割れて教頭先生が飛び出してきた。
普通の教頭と違う所はデカさが三倍くらいあることと、なんか見た目がロボ臭いところである。ロボといってもなんかドラム缶にスパナみたいな手がついたやつで、すげえ昔のロボ感を引きずっていた。
しゅごーと炎を吹いて校庭に着地すると、教頭は腹や頭のミサイルポットを露出する。
『キョウモゲンキニガンバリマショウ!』
●どう見ても教頭が噂のあおりを食らっている
「ムムム、見えます見えます……メタル校長とロボ教頭がみえま……ナニコレ!?」
遥神・鳴歌(中学生エクスブレイン・dn0221)は水晶玉を二度見した。
「えっとね、えっとね、小学生の噂話が実体化してメタル校長とロボ教頭が出現したんだって。夜に現われたからまだいいけど、朝までに倒さないともう何がどうなるか分かったもんじゃ無いよね」
メタル校長とロボ教頭は実体化都市伝説である。
空を飛んでビームを放つメタル校長と、頑丈で沢山のミサイルを放つ戦車みたいなロボ教頭の二人(?)組みだ。
ロボといっても本当に機械で動いているわけではないので、倒し方は普通の都市伝説と変わらないことは付け加えておこう。
「それじゃあみんな、あとはよろしくね!」
参加者 | |
---|---|
姫神・巳桜(イロコイ・d00107) |
佐久間・嶺滋(罪背負う風・d03986) |
結束・晶(片星のはぐれ狼・d06281) |
上里・桃(生涯学習・d30693) |
白川・雪緒(白雪姫もとい市松人形・d33515) |
坂東・太郎(もう寮母さんでいいです・d33582) |
白峰・歌音(嶺鳳のカノン・d34072) |
ウィスタリア・ウッド(藤の花房・d34784) |
●半ブレイズシナリオ状態
「赤ききつねと」
「緑なたぬき」
「と、青いウサギカレー!」
「やめてっ、なんか危ないネタに発展しそうだから、二重の意味で!」
白いイタチ(オコジョ?)のウィスタリア・ウッド(藤の花房・d34784)が着ぐるみをはぎ取った。
ぷるぷる首を振る白峰・歌音(嶺鳳のカノン・d34072)。
「どうした白いオコジョうどん」
「原型まるで無いじゃないの」
「ふう、まったく」
坂東・太郎(もう寮母さんでいいです・d33582)はこめかみに指をあててやれやれキャラを気取ってみた。
「まがりなりにもいち学校の危機だっていうのにふざけるんじゃありません。校長がメタルなんだよ?」
「あなた真っ先に混ざりに行ったでしょ」
「バナナ用意しましたけど、滑ります?」
「すべらない」
そうですかーと言ってバナナもぐもぐする白川・雪緒(白雪姫もとい市松人形・d33515)。
四人の様子を横目に、佐久間・嶺滋(罪背負う風・d03986)はほんのりと遠い目をした。
「なんだろうこの空気。ブレイズシナリオ?」
「最近こういう機会増えましたよねえ。一緒に入りやすくなったと言うか、うちの人たち連れてきたらこんな風になるのかも」
Jaeger(いえーがーって読むらしいですよ)のことをふと思い返す上里・桃(生涯学習・d30693)。
「あらあら、クラブに関係なく依頼で一緒になったら仲間でしょ」
「むしろここから始まる友好関係だってある」
姫神・巳桜(イロコイ・d00107)と結束・晶(片星のはぐれ狼・d06281)が背中合わせでヨーヨーとか折り鶴とか構えていた。
「完璧にマッチングしてる人たちが言っても説得力ないんだよ! なんだそれ! スケバン!? デカ!?」
「教師とバトルするっていうから、夜の校舎で窓ガラス壊して回るようなスタイルでないと」
「普段優等生な私たちとて、盗んだバイクで走り出すこともあるのだよ」
「時代考証を完全に無視したな」
「ふふふ……」
桃はニヒル(と自分では思っている)に笑って夜の校舎を見上げた。
「今日は、熱い夜になりそうですね」
●さっくりしていってね!
『オハヨウゴザイマス!』
ジェットで飛んだメタル校長が校庭の夜空を駆け抜ける。
「出たわね」
「『校長先生のお話』はキャンセルさせてもらおうよ」
攻撃姿勢に入った巳桜と晶。
そんな二人を遮るように、ロボ教頭がプールを割って出現、ずずーんという地響きと共に立ち塞がった。
『ハイィ!』
巨大なドラム缶ボディの至る所から砲門が開き、次々にミサイルを発射する。
「ミサイル戦ならダイナマイト転校にお任せ!」
桃が胸を張って現われた。
大量の光線を発射してロボ教頭と弾幕を張り合う。
張り合いつつ、足でぽちっとラジカセのスイッチを押した。
『説明しよう! ダイナマイト転校生とは二度の留年を経て未だに小六の十四歳である! タトゥーを入れるわ喧嘩に明け暮れるわ夜中に学校来るわでドロップでクローズな小学生なのである!』
「なんか自分で自分を説明し始めたぞ」
教頭に放火するという割とガチな非行に走っていた嶺滋。ナレーションに耳を傾けてみる。
『しかしその素顔は小六の年末というスパロボ終盤参戦キャラみたいな転校をしてきたせいで微妙に他人との接し方が分からずつい奇抜なキャラを作ってしまった子なのだ!』
「かわいそう!」
「ちっちゃい頃からの悪ガキで触れる者みな傷付けます――だぜ!」
「説明聞いた後だともう見てらんねえよ! 口調もブレてるし! 無理してるんだろ!? 無理して不良デビューしてるんだろ!?」
桃の肩をがたがた揺する嶺滋。
その一方で巳桜たちはロボ教頭に挑みかかっていた。
「シャーリィ、隠れててね。行きましょ晶」
「よし……」
晶は真っ赤な木刀を肩に担ぐと、ロボ教頭へとダッシュした。
地面が次々に爆発する中を駆け抜ける二人。
足下までくると木刀を叩き付け、晶の肩を踏み台にした巳桜は高く跳躍して鉄パイプを振り上げた。
「行くわよ、マジフォースブレイク!」
「それ用法あってんのか?」
律儀にツッコミを入れる嶺滋をよそに、ロボ教頭の頭をべっこんとへこませる巳桜。
ロボ教頭は爆発を起こして身体を傾けた。
『ハヒィ! アマクダリサキィ!』
「なんだかわけのわからないことを……でもチャンスです、歌音さん!」
「よっしゃあ!」
亀の形したカタパルトからばびゅんと発射される歌音。箒を取り出すとそれに跨がってメタル校長の後ろについた。
『ロウカヲハシッテハイケマセェン!』
背面ビームを放ってくるメタル校長。
歌音は身体を傾けてギリギリ回避すると、闘気を円形にしたものを発射。メタル校長はそれをきりもみ回転しながら回避していく。
「歌音ちゃんだけでは分が悪い。援護するんだ!」
太郎はキリッとした顔でエプロンを装着すると、ブリの切り身を七輪において手際よく内輪でぱたぱたやり始めた。
「太郎ちゃんなにしてるの? ごはん?」
「見て分からない?」
「さっぱりですけど。バナナありますよ? ミキサーにかけます?」
「かけない! それより雪緒ちゃんロボ教頭押さえてて、歌音ちゃんの援護するから」
「いいですけど……」
雪緒はへやーとか言いながらロボ教頭に殴る蹴るの暴行を与え始めた。
その間に太郎はコンロにかけたお鍋にひと焼きしたブリと桂剥きにした大根を入れて煮物にし始めた。
「それは」
「ブリを一度焼くことで臭みを取ることが出来るんだ。こうして昆布だしで煮込んでブリ大根を作る」
「そうではなくて」
「夜霧隠れの説明を見ても『夜霧を展開する』って意味が分からないから実際に霧っぽいものを展開して雰囲気を出しているんだ」
「聞きたい説明はそれでしたけどやっぱり釈然としません!」
もくもく広がる煙と湯気(どっちも霧じゃない)を展開しはじめる太郎。
そうやってできたスモークの中から、せり上がり式にウィスタリアが現われた。どこにせり上がり構造の舞台装置があったのかは知らないし知りたくない。
「よっ、お藤!」
「藤えもん!」
「藤姉!」
瞑目し、マイクを握りこむウィスタリア。
目をカッと開くと共に、小指を親指を顔の横でビッと立てた。
「――キラッ!」
●だれか桃さんと二人組に……あっ先生と組もうか?
「うおおおおおおおおくらえええええええ! ダイナマイト不良転校生ローリングセンチメンタルロンリーキーック!」
『ショクインカイギイイイイイイイ!』
ロボ教頭の頭(らしきもの)が桃のキックによって吹き飛んでいく。
「ふっ、また破壊しちまった。オ(↑)レ(↓)の手は人を傷付けることしかできない……」
「やめて!? 傷ついてるのはキャラ作ってる知ってるこっちの心だから! そしてなにより気づいてるのは……お前だろ!」
びしりと指を突きつける嶺滋。桃はわたわたと両手を振り回した。
「そっ……そんなことはないませんぜ!」
「口調混じってんじゃねえか!」
ロボ教頭にクレームの手紙(ハガキ)をさくさくさしていく作業を続けながら嶺滋は言った。イケメンの顔と中村声で言った。
「確かに周りになじむのは難しいかもしれない。奇抜で近づきがたいキャラを作って友達ができない理由にしたいのも分かる。14歳はそういう年頃だ。けれどな……」
カットインつきで振り返る嶺滋。
「そのままのお前を好きでいてくれる奴が、いるだろ!」
「そのままの……じぶん……!」
胸をきゅんと押さえる桃。
まわりでおこる爆発。
飛び交うミサイル。
降り注ぐビーム。
でてくる霧。
「あの人たち、演技に夢中で周りの状況が見えてないわねマブダチ」
「巳桜、不良言葉の用法が間違っている。斬新な語尾のようになっている」
「過剰請求(マジ)」
「斬新なビジネスワードのようになっている!?」
「愛羅武勇(ジュテーム)」
「二段階の変換が必要になっている!?」
「素手喧嘩(マドモアゼル)」
「それに至ってはただの間違いだ巳桜。慣れない言葉遣いはやめるんだ!」
「そうね……」
巳桜は耳にかかった髪をかきあげると、腕を異形化させた。
「でもせめて、スケバンらしく協力攻撃と行きましょ」
「スケバンらしいかはともかく、委細了解。タイミングは任せるよ」
言いつつ、二人は一瞬だけ腰を屈め、大地を蹴ってロボ教頭へと突っ込んだ。
赤い二本のレイラインが空中に刻まれ、ロボ教頭を貫いて天空へと跳ねる。
拳を突きだした巳桜と足を突き刺した晶。
二人の後ろで、ロボ教頭は大爆発を起こし始める。
『ピイイイティイイイイエエエエエエエエエエ!』
崩れゆくロボ教頭。
それを見下ろし、歌音はぐっと拳を握った。
「あとはメタル校長だけだ! 藤姉!」
ちょうどそれが、『キラッ!』のタイミングだった。
『山葵飛行』
歌:ウィスタリア藤子。
詞:いつものひと。
「抱きしめて! 山葵の――」
暫くウィスタリアがアイドルソングを歌って踊るさまをご想像ください。できるものならな!
「なぜかしら、聞いているだけでドッグファイトに強くなれそう」
「俺はなんだか胸がこう、なんかになる。けしからん気持ちになる」
「中の人補正?」
「それだけではあるまい。みたまえ……!」
空を指さす晶。オーラを全身に纏った歌音が無数のビームをジグザグにかわしながら大量のリングを一斉発射した。納豆かなってくらいに複雑な軌跡が夜空に刻まれていく。
「ひゃっほー! 夜空の覇者はオレだぜー! 調子上がってきたー!」
メタル校長の放つごんぶとビーム。
歌音は飛行形態から箒を外して戦闘形態へシフト。自由落下によってビームを回避すると、飛行しつつ地面に足をつけられる形態へチェンジした。
「あれは! 可動膝関節有翼地面効果支援形態!」
「太郎ちゃん、通称をそのまま使えないからって正式名称はお行儀が悪いで――ひゃあ!?」
暴風を纏って真横を突っ切っていく歌音に、雪緒は大きく煽られた。
お腹からなんかぐちょぐちょしたやつを放って攻撃していた大カエルさんの七不思議がひっくり返る。
砂塵を受けて顔を庇う太郎。
「だが常に飛行しているメタル校長には有利なはず。そうだよな林ィ!」
振り向く太郎。
ウィスタリアが居たはずの場所……には誰も居なかった。人型の点線が点滅するのみだった。
「あれウィスタリア御大は?」
「あそこですよ太郎ちゃん」
くいくいと袖を引き、雪緒が空を指さした。
白目をむいたウィスタリアが歌音の足にひっかかって一緒に飛んでいた。
それに気づく歌音。
「あっ」
よそ見した結果メタル校長に激突する歌音。
「「あっ」」
そしておこる大爆発。
「「ああああああああああああああああああああああああ!!!!」」
夜空に光る星。
浮かぶ歌音の笑顔。メタル校長の笑顔。そして白目をむいたウィスタリア。
「無茶、しやがって……」
なお、普通に落ちてきた二人を雪緒は大カエルさんでぽよんと受け止めた。
こうして学校の都市伝説メタル校長とロボ教頭は灼滅された。
しかし子供は噂話が好きなもの。
いずれ新たな校長伝説が生まれ、それは実体化するだろう。
その時に戦えるのはそう……灼滅者たちだけなのだ!
作者:空白革命 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年12月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 7
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