成道会な祝勝会~寂しいので誰か来てあげてください

    作者:一本三三七

    ●成道会と祝勝会はコンフリクトするが、偉い人にはそれがわからないのです
     第2次新宿防衛戦の勝利を飾った、灼滅者達。
     その喜びも束の間に、彼らの元に、黒い墨引きの招待状が届けられた。
     差出人は、第2次新宿防衛戦で共に戦った同盟者たる、天海大僧正である。

    「なになに、今回の勝利を共に祝うために祝勝会を行いたいだって?」
    「へぇ、気が利くなぁ」
    「でも、招待状が墨引きって……」
     殲術再生弾が抜けた心地良い疲労感と共に、灼滅者達は、招待状の中身を確認していき、微妙な表情で顔を見合わせた。

    「会場は、埼玉県の喜多院という寺院ね。たしか、天海僧正住職をしていたらしいし、一応関東だから」
    「えっと、喜多院の最寄り駅は川越駅らしいよ」
    「新宿から川越までは、40分弱みたいだね」
     スマホを弄りつつ検索する灼滅者達。
     祝勝会の場所としてはちょっと遠いが、行っていけない事は無いだろう。

    「なになに、僧侶羅刹達が、戦いの勝利と今後の友好を願って読経をしてくれるのかぁ」
     たのしみだなぁと棒読みで言う灼滅者。
    「釈迦の降魔成道を記念する法要が、ちょうど12月1日から8日くらいまであるらしいよ」
    「お近づきの印に、天海大僧正の、ありがたい法要にも参加させてもらえるらしいね」
     ありがたいねぇと、やっぱり棒読みで言う灼滅者。
    「成道会っていうんだ……読み方は、じょうどうえであってるのかな?」
    「それでいいらしいよ。まぁ、仏教においては、潅仏会、涅槃会と並ぶ三大法界らしいよ」
    「つまり、仏教界のクリスマスといって過言では無い……のかなぁ」
     顔を見合わせる灼滅者達。
     どちらともなく、ナイナイと手を振り合った。
     更に……、
    「料理も、精進料理食べ放題らしいよ」
    「ドリンクも、甘茶飲み放題」
     健康に良さそうだねぇと、呆れた表情で棒読みで言う灼滅者。

     なんともかんとも、盛り上がらない祝勝会であるようで、灼滅者達に残念な空気が流れるのだった。

    ●一方その頃、川越駅前
     川越駅には、『武蔵坂学園一同様、祝勝会式場→』という白黒の看板が設置されていた。
     その看板は、喜多院までの道順にあわせて、およそ20mに1本の感覚で設置されているようで、頑張って準備したんだろうなぁという様子が伺えた。

     そして、開場となる喜多院でも、多くの灼滅者の来訪に備えて、高級そうな精進料理が次々と運び込まれている。
     甘茶だって、最高級品だ。

     その準備の様子を見やり、天海大僧正は満足そうに大きく頷いたのだった。


    ■リプレイ

    ●紅葉の喜多院にて
     喜多院の境内を見回しながら、寺見・嘉月(星渡る清風・d01013)はふと呟いた。
    「ダークネスの面々と会食や祝勝会……そういえば、今まで無かったように思いますね」
    「ちょっと面白そうじゃないか。大僧正と親交を深めたいと思うよ」
     答えるように、志賀神・磯良(竜殿・d05091)がそう微笑む。宿敵である羅刹との会話が弾むかどうかは分からないが、興味がないと言えば嘘になる。
    「成道会は、仏教のクリスマスみたいなもの……なのか? 滅多にない経験も出来そうで、興味深い祝勝会になりそうだな」
     予想以上に多くの灼滅者で賑わう周囲を見回しつつ、樋渡・龍人(孤高の炎帝・d21595)も面白そうにそう言った。
    (「なんか……想像していたものと少し違う気がします……!」)
     同じく人の多さに驚く、シャル・ゲシュティルン(調べを識る者・d26216)。静かで慎ましい祝勝会になるかと思いきや、予想外の招待に興味を持った灼滅者は中々沢山いたようだ。
     とは言え、折角の誘いなのだから楽しもうと、彼らはさっそくお堂を目指す。
    「あの、写真を撮ってもいいでしょうか? 人の顔などは分からないように気を付けますので!」
     そう断りを入れてカメラ片手に駆け出した、神無月・佐祐理(硝子の森・d23696)。真っ盛りの時期を迎えた紅葉の庭園は勿論、名物の五百羅漢も見逃せない。
    「ここが喜多院なんだねー。素敵なところね、空」
    「寺院ってのは初めてだが雰囲気は悪くネェな、風流ってヤツか」
     しっかり腕を組んで歩きつつ、小沢・真理(ソウルボードガール・d11301)と蒼上・空(空の上は蒼き夢・d34925)は院内を見て回る。
     時折すれ違う羅刹たちが、慌ただしく動き回っている。恐らく、法要と会食の準備に大忙しなのだろう。これほどまでに多くの灼滅者が訪れるとは、どうやら向こうも想像していなかったらしい。
    「悪巧みしたりなんだりする余裕はなさそうね」
    「だな」
     ならばこれ以上カップルを装う必要もないだろうか……と、ふたりは顔を見合わせた。
    「僕は地獄合宿で此方側についたから、大手を振って参加できるね」
     そう言う敦賀・攸(高校生七不思議使い・d33379)も、清浄な空気を味わいながら楽しげに歩いていく。
    「何事も経験ですよね」
     関係が悪くないうちは、こういうことも悪くないと、琴月・立花(徒花・d00205)は折原・神音(鬼神礼讃・d09287)に話しかける。
    「ふふふ、楽しくできればいいのです」
     まったりと微笑む生徒の言葉に、立花も同意するように頷いた。
    「機会があれば、大僧正ともお話してみたいですね」
    「はい。神薙使いとしては気になります」
     緩やかに語らいながら、そうしてふたりは慈恵堂と呼ばれる本堂を見上げた。

    ●成道会
     慈恵堂の中では、僧侶羅刹たちがずらりと並んで法要に備えていた。
     彼らに先の戦いの感謝を述べつつ、ソフィア・ヤノクスカヤ(トリグラフ・d35288)は青い目をきらきら輝かせる。
    「日本のお経というものが私、楽しみで……」
     周りを見渡す限り、そういう意見の主は多くないようだが、別の視点からお経に親しみを覚えている者もいた。
    「祖父方がお寺の家系なんだよねぇ」
     懐かしそうにそう言うのは、佐々・名草(無個性派男子(希望)・d01385)だ。こういうお話って案外機会がないと聞けないしと、彼もまた法要を楽しみにしているようだ。
     一方、無常・拓馬(安定と信頼の全裸探偵・d10401)は、『成道会と全裸会って何か似てるよね?』という悟りを開いた(?)上でお堂に突入しようとして……。
    「俺の読経を聞けぇ――!」
    「去ねい!!」
     放り出された。読経性の違いのせいか、はたまたほぼ全裸に近いファッション性のせいかには、触れないことにしておく。
     ともあれ気を取り直して、厳かに成道会は開始された。
     僧侶羅刹たちに混ざって、九形・皆無(僧侶系高校生・d25213)が朗々とお経を読み上げる。
    (「アレを身に付ければ私も力を得られるのだろうか? いや、それ以前にどうやってアレを得ればいいのか……」)
     皆を守る力が欲しい。慈眼衆の刺青を見て、ふと湧いた思いに、僅かに声が乱れる。煩悩を振り切るように、皆無は再び読経に没頭した。
     それをじっと聞きながら、一橋・智巳(強き魂に誓いし者・d01340)はぼんやりと考える。
    (「……今、何ループ目?」)
     ガイドブックを読み、灼滅者にぴったりな気がしなくもない法要だと思っていた。だが、ありがたいお経も智巳の耳には同じ言葉の繰り返しにしか聞こえない。
     九条・九十九(リブレッタブルクジョン・d30536)も、足の痺れに耐えながら読経を聞いていた。常に真顔な自分の性質を、これほどありがたいと思った日があっただろうか。いや、ない。
    (「おじいちゃんのこの不器用なもてなし、嫌いじゃないけどな」)
     後で天海大僧正にもきちんとお礼を言おうと、九十九は思う。
    (「何故、どうして……どうして私はこの集まりに参加してしまったのでしょう」)
     ぼんやりと、日輪・紺菊(汝は人狼なりや・d30849)は考える。食べ放題という言葉に釣られたのが、尽きだったのかも知れない。
     欠伸を噛み殺し、ただ一点のみを見つめる彼女は今、ある意味無の境地にあるのかも知れない。
     やがて読経が終わると、天海大僧正のありがたい説法が始まった。
    (「ま、今宵ばかりは堅苦しい立場やらはなしにして、仏様に向き合いましょうかね」)
     神妙な顔をして、西原・榮太郎(霧海の魚・d11375)はそれに聞き入っていた。羅刹の説く御仏とは、法とは。そんなことを、榮太郎は考える。
    (「抹香臭いもここまでくると、いやアッパレな事ですね」)
     そんなことを思いつつも、逢魔・歌留多(黒き揚羽蝶・d12972)は真面目に耳を傾けていた。ダークネスが考える未来を知りたいと、歌留多は思う。彼らと、自分たちの間に残るのが血なまぐさい未来だけでは、悲しいから。
     そうして、長い長いお経とお話が終わり、天海大僧正が会食の席へ移ろうと皆を促す。が……。
    「しびれて立てない……」
     座布団の上で、刻野・晶(大学生サウンドソルジャー・d02884)が肩を震わせる。
     それを見て、刻野・渡里(大学生殺人鬼・d02814)は思わず周囲を見回した。案の定、晶と同じ目に遭っている灼滅者は多いようだ。渡里自身は、慣れのせいかなんともないのだが。
     とりあえず晶の足をつついてみると、『後で覚えてなさい』と睨まれた。

    ●ご挨拶申し上げます
    「此度の戦、御力を貸して頂き有難く存じます。このような場まで設けて頂き恐悦至極に御座います」
     袿姿の九条・御調(宝石のように煌く奇跡・d20996)が平伏し、丁重に挨拶を述べる。彼女に続くのは、上里・桃(生涯学習・d30693)。
    「私は灼滅者ですがダークネスとは戦う以外の交流をしてみたいと思っていたので、とても感謝しています」
    「仏教文化には前々から興味がありマシタシ、参加しないわけにはいきマセンネー」
     金剛・ドロシー(パッションライダー・d20166)が続けてそう言うと、僧侶羅刹たちも満足げに大きく頷いた。
     と、彼らに小此木・情(とうがん・d20604)と絡々・解(解疑心・d18761)が突撃した。
    「ねえねえお兄さん。やっぱりヘルシーで健康的だからこういうお料理するの?」
    「何コレめっちゃ肌ツヤ良くない!? 一緒に写真撮ろうよ! あっ撫桐君たち丁度いいから並んで並んで」
     きゃっきゃと騒ぎながら手招きする組員に応じて、撫桐・娑婆蔵(鷹の目・d10859)が彼らの方へと駆け寄る。
    「よござんす、並びやしょう映りやしょう」
     羅刹たちを囲むように縁側に並んで、はいチーズ! スマホ片手に、情は満足そうな笑みを浮かべた。
     伐龍院・黎嚇(ドラゴンスレイヤー・d01695)は、そんな仲間たちの姿をやや遠目に見守っていた。元よりここは敵陣の真っ只中。隙は見せられないと、黎嚇は密かに気を引き締める。
    「もし気ぃ悪くせんやったらやけど、一曲『敦盛』でもご披露しよか?」
     そう言いだした荒吹・千鳥(患い風・d29636)に、娑婆蔵がぎょっと目を丸くする。
    「そのセレクトどうなんでござんすか!?」
    「天海が『あの武将』だったならば、『敦盛』は聴き親しみつつも辛さ在り。……憎しみもあるのでしょうか」
     ぶっちゃけようとした内容を引き取るように、静闇・炉亞(刻咲世壊・d13842)が呟く。
    「まぁ、例え憎いとしても、それで感動を忘れちゃ不粋って奴ですよね」
     とは言え、その曲の名に周囲の空気が緊張を帯びたのは事実。僅かに逡巡する千鳥の前に、不意に野良・わんこ(世界大紀行・d09625)が飛び出した。
    「ならばここはちょっとひとつわんこが舞を披露しましょう!」
    「あ、ちょっと」
     黎嚇が止める間もなく、わんこは詠い舞い始める。完全に天海大僧正のいる方に向けての幸若舞に、羅刹たちが表情を険しくした。
    「素敵な舞ですね~。でも皆さん、そろそろ行きませんと、せっかくの会食に遅れてしまいますよ~」
     やんわりとそう言って周囲をたしなめる、雪乃城・菖蒲(紡ぎの唄・d11444)。彼女の言葉に何度も頷きつつ、五目・並(高校生七不思議使い・d35744)も菓子折りを抱えて僧侶羅刹たちに声をかける。
    「そ、その、すみませんでした。あの、もしお気を悪くされなければこれ、皆さんに……」
     できれば、何事もなく平穏無事に楽しみたい。そう思うのは、菖蒲や並だけではないだろう。ふたりの横から顔を出すようにして、高嶺・円(蒼鉛皇の意志継ぐ餃子白狼・d27710)が笑顔を見せた。
    「あ、わたしもお土産持って来たよ。仏道の人でも甘味は大丈夫な筈だよね?」
     言って差し出すのは、香りの強いスパイスは避けて作ったスイーツ餃子。問題ないと答えて、僧侶のひとりが丁重にそれを受け取った。
    「良かった。それじゃこれは俺から、どうぞ、羅刹の仲間で分けてください」
     熊谷・翔也(星に寄り添う炎片翼・d16435)も、風呂敷で包んだ3段重ねの重箱を別の僧侶の手に預ける。中身は4つの味が楽しめる手裏剣型クッキーで、翔也の手作りだ。
     華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)が、天海大僧正の前で深く頭を下げる。
    「御仏のご加護により、武蔵坂学園一同一人も欠ける事なく戦い抜くことが出来ました。心より深く御礼申し上げます」
    「うむ」
     頷く大僧正に、ニキータ・グーリエフ(ドゥエート・d34625)が歩み寄った。
    「……ん。ニホンブンカ、いい機会。招待、ありがと」
    「此度の宴でお前が日本文化を知ることができたならば、こちらとしても僥倖」
     返った答えに、ニキータは嬉しそうに頷いた。
     続いて、ヒナ・ジェネラルエレクト(ちっちゃな運び手・d04170)がたったかと大僧正の傍に近付く。
    「ブッディスト・アーチビショップの天海サン、祝勝会お招き頂きありがとうなの♪」
     まっすぐに天海大僧正の顔を見上げて、ヒナは無邪気にそう言った。
    「あの、天海大僧正のおじいちゃん、おじいちゃんの大切なありがたいお話、聞いてみたいです」
     羽柴・陽桜(こころつなぎ・d01490)もそう言って、小さく首を傾ける。無論と答えて、大僧正は会食の席を手で示した。
    「だが、まずは座して宴会を楽しむと良い。話し込めば長くなろう」
    「そうだな、料理を頂いて、ゆっくり話を聞かせて貰おう」
     蔵座・国臣(病院育ち・d31009)の言葉に、同じ【DLH】の荒谷・耀(護剣銀風・d31795)と貴夏・葉月(地鉛紫縁が背負うは終末論・d34472)が異論ないと頷く。
    「今日の料理とお茶は高級品と聞くし、味わっておきたいね」
     葉月の言葉に笑顔で頷いてから、耀は天海大僧正に一度向き直った。
    「……そちらは戦場で散られた方々も多いと聞きます。心からお悔やみ申し上げます」
     白々しいと言われるかもしれないと思いつつ、礼儀は尽くさねばと耀は思う。

    「此の度は新宿での戦いに際しての御助力と祝勝会への招待、誠に有り難う御座います」
     深々と頭を下げた後、そう言って霧島・絶奈(胞霧城塞のアヴァロン・d03009)は天海大僧正の目を見つめる。打算もあるのだろうとは思うが、それは決して礼を失する理由にならない。まして、あちらが一度義を果たしてくれたのであれば。
    (「……共存する方法は、あればいいよね」)
     羅刹たちを見ながら、今井・紅葉(蜜色金糸雀・d01605)は考える。
    「あ、あのっ」
     だから、紅葉は思い切って強面の僧侶に話しかけてみる。もっと彼らの姿を知りたいし、自分たちのことを知らせたいから。
    「この喜多院はエッちゃんがご当地パワーを戴いている場所のひとつ! と言うことはもはやエッちゃんと僧正はご当地愛で結ばれたマブだわ!」
     ぐっと拳を握って、江戸川・越子(自称小江戸の平凡な一般市民・d06524)が力説する。今度僧正の案内で院内を見て回ってみたいと目を輝かせる彼女を、天海は楽しげに見つめていた。
     室崎・のぞみ(世間知らずな神薙使い・d03790)は、祝勝会の料理を数品作らせてもらえないかと聞いてみた。
    「既に何人かの灼滅者が厨に出入りしているようだが」
     少なくとも、ダメということはないらしい。ならば早速彼らにまじって腕を振るおうと、のぞみは厨を目指した。
    (「戦勝祝いとして成道会はどうなんでしょうね?」)
     榊・那岐(斬妖士・d00578)は内心そう思わないでもなかったが、今回の助力と招待に対しては素直にお礼を述べる。
    「精進料理は大好きなので、楽しみです」
    「此度の料理は逸品を揃えてある。お前の口にも必ず合おう」
     自信満々にそう言う天海大僧正に、那岐は改めて頭を下げた。
    「勝利を祝うのとお釈迦様の悟りを開いた事の祝い……一緒にしてもバチとかはないっすよね!」
     大僧正が言うのなら、まあ、いいのだろうと、押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336)は祝勝会を素直に楽しむことにした。
     饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)もハリマと一緒にきちんと頭を下げた後、ふと気になったことを大僧正に訊いてみる。
    「そうだ、昔のこととか聞いてみたいな。安土城怪人と袂分かった切っ掛けとか」
    「うむ。昔語りは長くなるゆえ、宴席にて存分に話そう」
     しかし、安土城怪人とは元々仲間になったことはないと付け加える天海大僧正。成程と顔を見合わせて、ふたりは会食の席へと向かった。
     入れ替わるように、月影・木乃葉(奇天烈大百科・d34599)が、天海大僧正へ駆け寄る。
    「あの、後ででいいので手書きのご朱印とか書いてもらえますか?」
    「今でも構わぬよ。どれ、朱印帳を出すが良い」
     さらさらと書かれたご朱印を前にして、木乃葉は思わず瞬く。確かに達筆なのだが、若者文化を勉強したんだなぁと思わせる筆跡で、言うなれば微妙に芸能人のサインっぽい。
     心の中で苦笑しつつ、狩野・翡翠(翠の一撃・d03021)は天海大僧正に質問してみる。
    「今回の同盟で色々と条件を出してきた人も居ますが、それについてどう考えていらっしゃるのか、聞かせてもらえますか?」
    「『依』の同意なしに、『依』の身柄をどうこうする約束は出来ぬ。それは信義に悖る行為であるし、そのような行為を行うものを、お主達は信用せぬはずだ」
    「……それは、確かに」
     返答へのお礼を言って、翡翠はその場を後にする。
    (「人生どうなるかわからんもんだ」)
     かつて自分たちを追い返した男が今、自分たちを迎え入れている。そしてその時の仲間のひとりは闇堕ちし、あちら側にいる。
     記憶をなぞりつつ、丹下・小次郎(神算鬼謀のうっかり軍師・d15614)は手土産として栗入りのちまきを大僧正に手渡す。
     その品選びに込めた意味を察したのか、彼は微かに笑ったように見えた。
     続いて、紗我楽・万鬼(楽閻乃鬼・d14763)がにこやかに天海大僧正へと挨拶にやってくる。
    「初めまして天海大僧正猊下! あっし紗我楽の万鬼と申します昔羅刹でして! 今七不思議騙りのしがない噺屋ですよ」
     そう言って、万鬼は自分のメールアドレスを渡すことを忘れない。
    「では猊下お近づきの印に甘茶注ぎますぜ。灯屋の旦那が!」
     突然、万鬼に振られて驚きながらも、柳井・遼平(灯屋・d15735)は。
    「ささ、どうぞ一献」
    「うむ」
     感謝を込めた甘茶を献上する。
     それだけではない。
    「更に気がきいて供えもありましてね」
    「……おい、用意したのは俺だぞ、万鬼」
     京都の八つ橋を用意した月屋・優京(戯僻事・d15388)が小突けば。
    「用意したのは月屋の旦那ですけどね! ……てへぺろ! ややっこれは現世の御茶目って奴ですよ、猊下も如何ですか!」
     そうおどけて見せていた。
    (「ふふ、食いでのありそうな方が沢山」)
     百合ヶ丘・リィザ(水面の月に手を伸ばし・d27789)はそう思いつつも、表情には決してそれを出さずに天海大僧正へと話しかける。
     仮に、近く未来の奪い合いが待つとしても、それは今友好を捨てる理由にはならない。恐れも気負いもなく、リィザは上品に微笑んでみせた。
    「あ、拙者、一言だけ天海のじいさんに伝えに来たんでござるよ」
     ひょいと顔を出すなり、阿久沢・木菟(八門継承者・d12081)は親指を立てた。
    「ダークネスも大変でござるな……ドンマイ!」
     それだけ言って、木菟は爽やかに去って行く。

     周囲を見回し、伝皇・雪華(冰雷獣・d01036)はどこか実家にも似た落ち着きを感じていた。
    「ちょくちょく遊びに、ってか、気分転換に来てもえぇけぇ? よければまた説法とか聞かせてぇなぁ」
     言葉に、無論と天海大僧正は答える。
    (「我らの正しきあるべき関係なんて、誰にも分からないのかもしれない」)
     そう考えていた土岐・佐那子(朱の夜鴉・d13371)だが、今はこの場を楽しもうと思い直す。
    「やぁ、美味しそうな精進料理です。甘茶といい、意外に僧正とは趣味が合うのかもしれませんね」
    「お前たちのため、最高のものを用意した次第だ。存分に楽しむとよい」
    「ええ、この後に安土城怪人勢力との戦いも控えておりますので、充分に英気を養おうと思います」
     大僧正の言葉に頷いて、詩夜・沙月(紅華の守護者・d03124)がそう答えた。
    「それと……これを」
     言って手渡すのは、自身の連絡先を登録した携帯電話。特に拒絶することはせず、大僧正はそれを受け取った。
     そうして、天海大僧正や僧侶羅刹への挨拶を終えた灼滅者たちは、会食の席へと思い思いに集っていく。

    ●会食の席
     広い客間に所狭しと精進料理が並べられたお膳が用意されている。見た目は地味だが、お膳に並べられた品数は幾分、多いような気がする。
    「これがしょーじん料理と甘茶か」
     興味津々でお膳を覗きこむのは、柏木・イオ(凌摩絳霄・d05422)。
    「健康にも良いんだ? なら丁度良いかも!」
     イオは嬉しそうに自分の事を心配する者の事を思い出しながらも、美味しい料理に箸を入れていく。
    「ふへへー、いただきます。……あ、美味しい。甘茶もおいしい」
     桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・d13800)は、一生懸命用意してくれたと感じるお膳を前に、思わずずるいと呟く。わざとだったとしても、好感度が上がるようなこの行為に。
     その隣では、そんなお膳を訝しむのは、待宵・露香(野分の過ぎて・d04960)。ダークネスの作る料理なんて根本的に合わないのではと思っていたが。
    「これは安土桃山時代の料理奥義書に記された伝説の……!? まさか現代にこの料理が伝わっていたなんて……!!」
     どうやら、思った以上の料理が出てきたらしく、かなり驚愕している様子。
     一方、西場・無常(特級殲術実験音楽再生資格者・d05602)はというと。
    「精進料理、甘茶……なかなかの味だ。薄味ゆえに……高級感が伝わるぞ。それにしても……静かだ。静寂もまた音楽だというが……わかり、かけて……き……」
     料理を味わいながら、もう少しで眠りに落ちそうになっていた。
     この日の為にとめかし込んできたレイチェル・ベルベット(火煙シスター・d25278)は、甘茶を啜って一言。
    「う~ん、落ち着くぜ……」
     そんなレイチェルの視線は、何故か天海僧正の頭に注がれている。手がうずうずしているのは、気のせいだろう、きっと。
     甘茶で乾杯を終えたロジオン・ジュラフスキー(ヘタレライオン・d24010)も、羅刹と共に精進料理を楽しんでいる。
    「こうしていると、故郷の魔術結社を思い出しますねぇ」
     どうやら、ロシアの故郷にある新年を祝う会を思い出しているようだ。
     羅刹達から許可を貰って、自分達のお膳を縁側へと運んでいく。朝比奈・夏蓮(アサヒニャーレ・d02410)と渡橋・縁(神芝居・d04576)、高宮・琥太郎(ロジカライズ・d01463)の三人は、素敵な庭を眺めながら、料理を楽しんでいた。
    「冬のお寺ってのも結構良いモンだね。もうちょい早けりゃ落ち葉で焼き芋体験とかもできそうだったか」
    「ええ、冬もまた趣があって良いと思いますよ。お寺は寂の世界ですから」
     庭を楽しむ琥太郎と縁の隣で。
    「これ……本当に全部野菜で出来てるの……? もっと味が薄いのを想像してたから意外! 見た目も綺麗だなー」
     夏蓮は庭よりも料理に夢中のようだ。ふと、琥太郎が尋ねる。
    「すげぇ古い寺っつか、由緒ありそーな寺なんだけどどうなんだろ。2人ともなんか知ってる?」
    「お寺の御由緒ですか? とても歴史の長い寺院で、平安初期に建立されたと伺いました」
    「日光に家康公の遺骸を運ぶ途中ここで法要も行ったからここにも東照宮があるんだってさ!」
     縁と夏蓮が予め調べてきたことを教えてあげていた。
    「精進料理ってもっと質素なものかと思ってたんだけど、どれも美味しそう!」
     キラキラと瞳を輝かせながら、廿楽・燈(花謡の旋律・d08173)はふと、お茶に視線を落とす。
    「あ、これが『あまちゃ』っていうお茶なんだ。高級なお茶って味の違いがよく分からないんだよね……。うう、佐奈子ちゃん味の違いわかる?」
     そう、地味な小袖に道行を着て、優雅に食事する船辻・佐奈子(大和撫子のたまご・d01347)に尋ねた。
    「燈さん、甘茶は普通のお茶と違い、甘みがありますの。それと、精進料理はお肉やお魚を使わず、野菜や豆だけで作った料理ですわ」
     佐奈子の言葉に燈は、なるほどと呟いたのだった。

     場所は会場に戻り。
    「わわ、精進料理たくさんですの、ちーちゃん! こういうの準備してくれるの、何だか嬉しいですのー……ね?」
     シャーリィ・グレイス(五行の金・d30710)はそういって、吉武・智秋(秋霖の先に陽光を望む・d32156)を呼んだ。
    「ええ、リィちゃん。いろんな料理、並んでるよ。それに……薄味だけれど、しっかりと作られてて美味しい、ね。素材の味を生かしてる、っていうのかな。ヴァントレットさんは、どう?」
     智秋は共に来たヴァントレット・クロームハーツ(不信不盲の独蔑者・d32975)にも声をかける。
    「俺、精進料理は初めて食べるから楽しいよ。いやはや、すごい料理で目移りしちゃうね」
     どうやら、ヴァントレットも楽しんでいる様子。三人は笑顔でお膳をいただいてから、後で天海大僧正に挨拶しに行くようだ。
    「こ、これは匠の技ですよ! 師匠!」
     草薙・結(安寧を抱く守人・d17306)は出された料理に興奮気味だ。
    「その分なら、精進料理も大丈夫そうだね。あ、甘茶のお代わりのしすぎには気をつけて」
     結の様子に安心しながらも、志那都・達人(風祈騎士・d10457)は思い出したかのようにそう注意を促す。
    「ふぇ? そうなんですか? 甘茶の飲みすぎには注意、ですね。でもおいしい……」
     達人の話に頷きながら、結はほんわかと甘茶を啜るのであった。
     御門・心(日溜りの嘘・d13160)は、久坂・真守(緋蒼蓮華・d15552)と共に、甘茶と景観を楽しみつつ、天海僧正の見える位置をキープしていた。気を張り詰めている様子の心に真守は。
    「リラックス、りらっくす~!」
    「むぐむぐっ」
     その口に饅頭を入れて、リラックスさせていた。そのお蔭か、その後も穏やかな時間を過ごすことができたようだ。
    「きてよかったですねー、まもりん♪」
    「うむうむ。またどこか一緒に行こうねぇ、こころん!」
     葉新・百花(お昼ね羽根まくら・d14789)は、出された料理の量を見て、考えた。食べ放題とはいえ、男の人にはこの量は少ないと。だから。
    「えあんさん、もものこれとこれ上げるから食べて?」
    「え、くれるの?」
     エアン・エルフォード(ウィンダミア・d14788)もまた、少々物足りなさを感じていた頃合いに来た百花の申し出に喜んでいる様子。その心遣いが嬉しくて、こっそりとエアンは百花に笑いかける。
     しばらくして、甘茶を飲んでいる百花の様子にエアンが声をかけた。
    「今、眠っていただろう?」
    「っ!! ……ね、寝ていませんよ? ああ、甘茶美味しー」
     そういう百花にエアンは思わずくすりと笑うのであった。

     こちらは【あおぞら空想部】の面々。白石・作楽(櫻帰葬・d21566)の。
    「膝を少し離して踵同士をつけずに、爪先同士をつけて円を作る様にすると痺れにくくなるぞ」
     というありがたいアドバイスにより、正座での痺れを最小限に抑えられた……ようだ、たぶん。
    「美味しい胡麻豆腐だ。自家製、か?」
     料理の質に驚く作楽の向かい側では。
    「変わった味……癖になりそう、かも?」
     ノイン・シュヴァルツ(黒の九番・d35882)もどうやら、料理を気に入った様子。
    「精進料理ねぇ、そーいうのも悪くはないな。けど、毎回こんなの食べているのか? よし、それなら俺がとっておきの料理を紹介してやろう」
     そこで、料理を食べていた中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248)が、こんなこともあろうかと後ろから何かを取り出した。
    「じゃーん、焼きそばパンだ! 学園ではトップに入る食べ物なんだぜ! こんなこともあろうかと、1000人前作ってきたから、みんなでたべよーぜ! うははは、焼きそばパンパーティだ!」
     羅刹僧侶達は驚きながらもそれを受け取っている様子。
     と、そこにおずおずと久条・統弥(時喰みのディスガイア・d20758)が。
    「俺もこの天ぷらを作って来たんだ。良かったら受け取ってもらえると嬉しいんだけど」
     そっと自分で作った野菜多めの天ぷらを差し出した。無事、その天ぷらも受け取ってもらえたことで、統弥の顔にも笑みが零れる。
    「甘茶初めて飲みます……変わった味ですね。美容にいいと言ってました」
     つやつやーと呟く瀬川・蓮(悠々自適に暗中模索中・d21742)の横でも。
    「お茶なのに甘い……不思議な味ですね……。気分も落ち着いてきます……」
     ほんわかと七瀬・李緒(蒼月影舞・d00622)も甘茶を味わっている様子。
    「茶葉を頂けるなら、ちょっといただきたいなー」
     蓮が近くにいた羅刹僧侶に声をかけ、おねだり。そのおねだりに李緒とノインも加わったようだ。ごり押しが効いたのか、それぞれ一人分ずつ茶葉を貰えたようだ。
     【忍者学部】の二人もこの場にやってきているようだ。
    「ニホンオオカミの姿で行きたかったのだが……うむ」
     今回は高村・圭司(いつもニホンオオカミ・d06113)は、人間の姿で料理を食べている。
    「でも、食べ放題ならいいか。……ところでこれは肉なのか?」
    「うーん、オレにはわかんないけど、この豆腐に甘茶だっけ? すっげー美味いよ」
     その隣にいるエルメンガルト・ガル(草冠の・d01742)は楽しそうに料理を頬張っているようだ。
    「ねー灼滅者とこうやって一緒に居るのってどんな気分? 気分悪くなかったりしない?」
     食べ終わった後、近くにいた羅刹僧侶にエルメンガルトは前から気になっていることを尋ねて困らせていたようだ。
    「も、盛り上がってるな、天海……。折角なんで、俺たちも楽しませてもらうぞ。名付けて『精進料理を厳かにいただく会』だ」
     こちらは、桜庭・翔琉(徒桜・d07758)率いる【夢現】の一行。翔琉がそんなことを言っている。
    「厳かにいただく会、なので……ううん、厳かって、どう……?」
    「えと、厳かに……礼儀を持って残さず食べつくす……ということでしょうか?」
     首を傾げる井瀬・奈那(微睡に溺れる・d21889)とアイナー・フライハイト(フェルシュング・d08384)に。
    「この空気感を存分に楽しめばそれが厳か、そういうことだ」
     と、どや顔で翔琉が答えた。その隣では、青和・イチ(藍色夜灯・d08927)が幸せそうに。
    「お粥とか、蕪、大根が美味しい……。金柑も……甘さがなんか、優しいし……あ、くろ丸……霊犬の分も、ありますか?」
     と料理を食べながらも、しっかり自分の霊犬の分までもらっているようだ。
    「限られた食材で形にしないといけないから、とても勉強になる、よね」
     一方、アイナーは傍に来た羅刹僧侶を捕まえて、料理についていろいろ聞いてはメモしている。
     と、そのときだった。
    「お料理は誰が作っているんでしょう? まさか天海大僧正さん……?」
     そんな奈那の何気ない一言に、翔琉はなんとか堪えた隣で、イチは飲んでいた茶を吹き出していた。
    「ちょっとは愛嬌が出ていていい、かも……?」
     アイナーはそう頷くのであった。

     【梁山泊】所属の崇田・來鯉(ニシキゴイキッド・d16213)は、持て成されるばかりだと恐縮なのでと、自ら調理道具と材料を持ち込み、美味しそうなもみじ饅頭を焼いていた。
    「あ、焼きたてだから気を付けてね?」
     笹の葉を敷いた器に乗せた饅頭を受け取るのは、ヴァーリ・マニャーキン(本人は崇田愛莉と自称・d27995)。
    「ああ、わかった。次はあちらに運んでくる」
     落とさぬよう気を付けながら、僧侶羅刹達や参加している灼滅者達へと運んでいく。その間に、こっそりと料理のレシピを聞いたりするのも忘れない。一通り配り終えた二人も宴会の席に戻ってくる。戻ってきた二人を労った後、ゆっくりとまた料理を楽しむ。
    「うわ、この精進料理美味しいですね。里にいた頃も精進料理は食べる機会が多かったですが、こんなに美味しいのは初めてです」
     そう森沢・心太(二代目天魁星・d10363)が言えば。
    「うんうん、優しい味で美味しいよ! お豆やお野菜もふっくら煮えててイイカンジ♪」
     南谷・春陽(インシグニスブルー・d17714)も喜んでいる様子。
    「甘茶に精進料理もうまいな。……ううむ、うまい。うまいのだが……」
     どうやら、伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267)には少々物足りないようだ。特に脂ものが足りないらしい。だが、周りがこれだけ楽しんでいるのを見ると、それも言い出し辛い。ここは大人しく静かにおかわりしようと決めたようだ。
    「おお、静菜さんも食べましたね」
    「……えっ、そんなに時間経っていないのに、もう全種食べたのかって? 大丈夫ですよ、しっかり食べるのはこれからですから!」
     そこまで聞いてはいなかったのだが、結島・静菜(清濁のそよぎ・d02781)はどうやら、まだまだ食べるつもりのようだ。
    (「今回の招待はすごい感謝してる。……でもね、心配事があるんだ。ここにいる残姉が食べ過ぎて困らせやしないかって」)
     【現の夢】に所属する椛・深夜(月星虹・d19624)の心配は、見事に的中していた。
     正直に言おう、ある意味、そこは戦場のようだったと。
    「ごはんはーおかしはーいっぱいあーるかなっ! ねっ、あるかなー?」
     そう尋ねながら、席を陣取るのはエルカ・エーネ(おもちゃばこ・d17366)。目の前に並べられた精進料理に目を輝かせて、すぐさま手に取っていた。
    「お菓子に食事……それはあるとは思いますけど。精進料理ってヘルシーですから、食べ過ぎても大丈夫かもしれませんね」
     守部・在方(日陰で瞳を借りる者・d34871)が、そう言い終える前にそれは始まった。
    「これはどこ産の野菜ですか? おかわり。この甘茶も凄く美味しい。おかわり」
     月姫・舞(炊事場の主・d20689)が礼儀作法を守りながらも、食べて行くスピードは計り知れない。
    「はい、甘茶のおかわり持ってきましたよ」
     居なくなったと思ったフェリス・ジンネマン(自由謳う鳥の娘・d20066)は、実はこっそりと配膳の手伝いをしている様子。しっかり甘茶を貰うのも忘れていない。
    「おお、舞には負けないぞー」
     舞の食べっぷりにエルカも張り合っている様子。それを見た在方が二人を何とかしたいと思いつつもおろおろと何も出来ずにいるようだ。ついでに最初は止めようと思っていた深夜はというと、彼らの勢いで料理がなくなる前に自分の分を、と少し離れたところで、ちゃっかりしっかり食べていた。
    「面白い味なんだよー、もぐもぐ」
     乾杯を終えた後、精進料理を思いっきり食べているのは、イフリートの着ぐるみを着た垰田・毬衣(人畜無害系イフリート・d02897)。
    「ところで精進料理ってことは、お肉は……ないんだよね、きっと……あ、でもこのお豆腐美味しいー」
     ちょっぴり残念そうだが、美味しい料理を楽しんでいるようだ。
     和服姿で参加するのは、凪野・悠夜(朧の住人・d29283)。
    「……ねぇ、君ら慈眼衆って普段どんな事してるの? やっぱり仏道修行とかやってたりするのかな? もし良かったら聞いてみたいんだけど」
     料理を堪能しながら、近くにいた僧侶羅刹に声をかけていた。
    「……これ……どうやって食べるの……?」
     初めて見る焼き魚にシャオ・フィルナート(悪魔に魅入られし者・d36107)が困っていると、傍にいた僧侶羅刹が食べ方を教えてくれた。シャオは嬉しそうに微笑みながら。
    「ありがとう……」
     このコトバ、スキと、シャオはお礼を述べるのだった。
     きちんとした作法に疎い八重葎・あき(とちぎのぎょうざヒーロー・d01863)は、周りの様子を伺いながら、やっと料理に手を付け始めた。
    「あ……なんだか身体にやさしい味……」
     いただいた甘茶を幸せそうに飲みながら、あきは料理を完食していた。
     万が一の事を想定して警戒していた古海・真琴(占術魔少女・d00740)だったが、どうやら、それは杞憂に終わったようだ。和やかに行われているこの場に真琴はホッとしている様子。
    「あ、これはサツマイモですね! それにこの肉じゃがっぽいのも美味しいですね!」
     そのまま、料理を楽しんでいるようだ。
     甘茶で乾杯した後、ティノ・アークライン(一葉ディティクティブ・d00904)は、美味しい料理に舌鼓。
    「精進料理が食べ放題、って中々新鮮ですよね……あ、このごま豆腐美味しいです」
     良い機会なのでと、近くにいた羅刹僧侶に料理の事をいろいろと尋ねていたようだ。
    「なぜ精進料理にカレーがないのだ! 天海よ! 真の精進料理(カレー)を見せてやる!」
     そう言って、『高野豆腐のキーマカレー』『凍み蒟蒻のカレー』『蒟蒻と厚揚げカレー』『レンズマメのカレー』最後に『干ししいたけと高野豆腐のカレー』と大量の精進カレーを持ってきたのは、掘削・寧美(ネイビーさん・d01525)。
    「これが真の精進料理だぁっ!!」
     寧美の持ってきたカレーは意外と、羅刹僧侶達に喜ばれた様子。
     姿勢正しく正座をしている姿が様になっている宵闇・月夜(なぞる輪郭が狐を描く・d30974)。だが、茶の作法は知らない。
    「良かったら作法を教えてくれないか? 天海大僧正……いや、仲間のことをもっと知りたくてな」
     そう天海大僧正に願い出ているようだ。
     そして、影道・惡人(シャドウアクト・d00898)は。
    「なかなかクールで好みだぜ、こーゆーの」
     礼儀遠慮は一切なしのリラックスした面持ちで。
    「俺ぁ大豆や練りもんの料理が好きでな……ん、ごちになんぜ♪」
     ごろんと寝ころぶような状態で食事を取っていた。
     このように和やかな雰囲気で、灼滅者達は天海大僧正の用意した料理をしっかりと堪能したのだった。
     綾峰・セイナ(銀閃・d04572)は、この場を用意してくれた僧侶羅刹達に向かって、そっと頭を下げた。
    「今日は本当に楽しかったわ。またこういった機会があればお邪魔したいし、今後も友好な関係を築ければ良いわね」
     今後の友好を願って。

    ●武蔵坂=天海同盟
     大いに飲み喰い、宴会を楽しんだ灼滅者達。そして、その灼滅者達を見守る天海大僧正。天海大僧正の顔には満足の微笑が浮かぶ。
     それを確認し、甘茶の茶碗を置いた、十文字・瑞樹(ブローディアの花言葉のように・d25221)が、するすると、天海大僧正の前へと移動した。
    「楽しませていただいている」
     彼女にしては少し堅苦しく挨拶すると、瑞樹は天海大僧正に聞いてみたい事を口にした。
    「武蔵坂と共闘してどうだったろう」
     と。
     本音で語って欲しいという気持ちを視線に込めて言った瑞樹に、天海大僧正は、
    「この勝利に満足している。我らが手を結べば、光の少年でも敵ではない」
     と、莞爾として笑って答えたのだった。
     このやり取りを見て、数人の灼滅者達が集まってくる。
    「俺たちと貴方がたは灼滅者とダークネス。本来相容れない。今後、どうなるか知らぬが、この瞬間においては同盟を組めてよかったと思っている」
     赤城・碧(強さを求むその根源は・d23118)がそう口にすると、天海大僧正は、鷹揚に頷く。
    「この瞬間が長く続く事を祈るとしよう。灼滅者とダークネスが相容れなくとも、全ての灼滅者とダークネスが殺しあわなくてはならないという法は無いのだから」
     その言葉に、タシュラフェル・メーベルナッハ(白茉莉昇華セリ・d00216)も、賛意を表す。
    「確かに、あなた達が、一般人を巻き込むような事件を起こさない限りは友好関係を維持できるわね。期間限定ではあるけれど、その関係が永遠に続いても、私達は困らないのだから」
     然り、然りと、相槌を打つ天海大僧正に、レオン・ヴァーミリオン(鉛の亡霊・d24267)が言葉を継ぐ。
    「灼滅者の中には結構、ダークネスと共存できないかって人いるんだよねぇ」
     バカバカしいと笑う奴も多いが、オレは好きなんだ、そういうの……と続けるレオンに、天海大僧正も大きく頷いた。
     そんな友好的な場を見てか、興守・理利(赫き陽炎・d23317)と、万事・錠(ハートロッカー・d01615)は、釘を刺すのを忘れなかった。
    「同盟は良いと思います。ですが、おれ達は、学園の仲間を失う事になれていないのです」
     と。それは、武蔵坂学園の価値観を伝えると同時に、
    「闇堕ちした仲間である、刺青羅刹の『依』を説得する機会を与えて欲しい」
     という願いでもあった。
     依については、別の場所で祝勝会を開いているのだから、成否は別として、説得しようとする者はきっといる。
     だから、この願いは、行為の許可というよりも、説得したとしても同盟は維持して欲しいという願いであったろう。
     天海大僧正は、少しだけ難色を示したが、武蔵坂の事情を勘案して助言してくれるものを用意してくれれば、構わないと答えてくれた。
     だが、依以上の適任はいないのでは無いかと付け加えてはいたが……。
    「依については、最終的には、彼女の意志ですよね」
     御門・那美(高校生神薙使い・d25208)は、依についての話をそうまとめると、天海大僧正に彼女が最も知りたい事を問いかけた。
     それは、
    『武蔵坂学園の灼滅者に何を求めているか?』
     というものであった。
     だが、この答えは、聞くまでも無かったかもしれない。
    『安土城怪人との決戦の助力』
     それが、天海大僧正の答えであったのだから。
     若生・めぐみ(歌って踊れるコスプレアイドル・d01426)も、その答えは当然と考えたのか、安土城怪人との決戦支援は必ず行わせると請け負った。
     彼女の個人的な保障に、どれほどの価値があるかは判らないが、天海大僧正は、よろしく頼むと頭を下げたのだった。
     天海大僧正との同盟については、おおむね好意的な雰囲気で話が進む。
     勿論、片桐・公平(二丁流殺人鬼・d12525)は、
    「もし私達を騙すようならば、……いかなる手を尽くしても、あなた方を殺すことになるでしょう。一時の共闘で照準がブレるほど、私の銃撃は甘くありませんよ」
     と釘を刺すのは忘れなかったけれど。

    ●安土城怪人決戦支援
     めぐみが、安土城怪人との決戦への支援を約束した事で、天海大僧正の周囲には、安土城怪人との決戦について論ずる灼滅者達が集まってきた。
     まずは、空月・陽太(魔弾の悪魔の弟子・d25198)が、口火を切る。
    「僕は、少し疑問があるんだ。何故、そこまで安土城怪人にこだわるのだろうか?」
     探るような言葉は、隠された目的があるのではと疑ってのものだろう。
     これに答えたのは、天海大僧正ではなく、灼滅者達であった。
    「こだわる理由は、因縁だよね」
     柿崎・法子(それはよくあること・d17465)は、そう言うと、彼女の考えを披露した。
    「以前ボクの友人の軍師が貴方と出会った時に安土城怪人とは宿敵で雌雄を決する為と聞いたのですが、貴方が明智光秀……天海大僧正ならば安土城怪人とそれに付き従っているグレイズモンキー、彼らはもしかして戦国武将、織田信長と豊臣秀吉なのですか?」
     天海大僧正は、この問いに対して、因縁である事を認めつつも、戦国武将の件は違うと答えた。
     法子は少し意外そうな顔をしたが、嘘ではなさそうだとして引き下がる。
     安土城怪人が織田信長であるというのは、さすがに無理のある推測であったかもしれない。
     代わりに前に出たのが、文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)達4名。
     咲哉は、安土城怪人との因縁について詳しく話して欲しいと頼む。
     緋薙・桐香(針入り水晶・d06788)は、更に加えて、刺青羅刹について質問をする。
     他の刺青羅刹たちは、天海大僧正と同じ立場であるから、安土城怪人とは因縁があるのでは無いか。
     ならば、共に戦えるのでは? と。
     2人に対して、天海大僧正は、昔語りを始めた。
     その因縁話は、かなり長くて眠くなったが、要約すると、以下のようなものであった。
     天海大僧正と安土城怪人は長い間戦いつづけてきた。
     だが、天海大僧正の軍勢は、安土城怪人との決戦に敗れ、勢力を減退させてしまう。
     安土城怪人はその隙に、周辺のダークネス勢力を飲み込み急速に勢力を拡大してしまう。
     敗北した周辺のダークネス達は、安土城怪人に対抗するため、天海大僧正を頼ってきた。
     軍勢の再建の為に、天海大僧正は、彼らを受け入れたが、その時に『安土城怪人の打倒を最優先とする』事を約束することとなったのだそうだ。
     この約束で配下となったものは特に有力な者が多く、天海大僧正が安土城怪人の打倒を諦めたならば、組織を乗っ取って、天海大僧正を廃する事すら躊躇わないだろうというのだ。

    「つまり、安土城怪人との因縁は、配下の者達の因縁であり宿敵であるということですのね」
     桐香は、納得したように言う。
     天海大僧正のような理性的なダークネスが、因縁に固執して戦い続けるというのは、不自然に感じていたが、その因縁が配下達の意志であるというのならば、やむをえないのだろう。
     同時に、他の刺青羅刹が安土城怪人と敵対していない理由も理解したのだった。
     ちなみに、同行していた平坂・月夜(常闇の姫巫女・d01738)は、天海大僧正と咲哉と桐香との真面目な話に気圧されて、お口が挟めずに、じーっと話を聞いていた。
     そして、もう一人のミカエラ・アプリコット(弾ける柘榴・d03125)は、苦労しているんだね、天海大僧正の肩をもんであげるのだった。
     天海大僧正の肩は、鉄板でも入っているように硬かった。

     因縁について、おおまかに理解した灼滅者達は、更に話を続けた。
    「安土城怪人を打倒するという目的を達成した後、組織はどうなるんだ?」
     そう問いかけたのは、シグマ・コード(フォーマットメモリー・d18226)。
     安土城怪人打倒のために集まった組織であるのならば、勝利後にどうなってしまうかを確認するのは重要な事だろう。
     その質問に、天海大僧正は、
    「安土城怪人を打倒するのならば、配下となるという約束であるから、以後は、私の方針に従って行動する事になる」
     と答えてくれた。
     天海大僧正が、安土城怪人打倒を目指すのは、有力な配下を臣従させる為という側面もあるようだ。
    「つまり、安土城怪人打倒後の行動は、天海大僧正に一任されているということですか?」
     砂原・鋭二郎(高校生魔法使い・d01884)が確認する。
     それに天海大僧正が頷くと、比良坂・柩(がしゃどくろ・d27049)が鋭二郎の問いを引き継いだ。
    「ならば、キミは、安土城怪人を倒したあと、どうしたいの?」
     と。
     武蔵坂学園との約束は、安土城怪人と戦う所まで。
     ならば、その後の意志を確認する事は重要だろう。
     これに対して、天海大僧正は、
    「安土城怪人の打倒が成れば、早々に動く必要は無くなるであろう。当然であるが、武蔵坂の灼滅者達と戦う理由も無い」
     と答えた。
     天海大僧正の勢力は、これまでの戦い、今回の戦い、そして、来るべき安土城怪人との決戦で大きく消耗する事が予測される。
     勝利後は、勢力の建て直しのために戦いを控えるというのが、妥当な所だろう。
     この説明に皆が納得している所で、嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)が、声をあげた。
    「逆に、安土城怪人に負けて追い詰められたらどうしようか?」
     と。
     勝った時の話ばかりでは無く、負けた時の事も考える必要があるのは当然だ。
    「一緒に西教寺に篭って玉砕でもしてみます? ヤベェウケる」
     更に、そう面白そうに続けた絹代に、天海大僧正は真面目な顔で、こう答えた。
    「光の少年をも下した、我らが敗れるとは思えないが……。もし、共に玉砕するまで戦おうというのならば、我等にも異存は無い」
     その答えに、絹代は少し意外そうに、だが、満足そうにニカっと笑ったのだった。

     こうして、同盟に関する話がまとまったのを見て取って、精進料理を食べつつ話を聞いていた、東雲・菜々乃(読書の秋なのですよ・d18427)が、カメラを持ってやってきた。
     どうやら、クルーズ船『K.H.D』の中間達と一緒に記念写真をとりたいようだ。
     夏目・サキ(暗くて赤くて狭い檻・d31712)ももぐもぐと料理を食べつつ、やってくる。
     パーティーに記念写真はつきものだろう。
     場を盛り上げようとしてスベッた、迦具土・炎次郎(神の炎と歩む者・d24801)は、流阿武・知信(炎纏いし鉄の盾・d20203)にドンマイと慰められながらやってくる。
     そのスベッた炎次郎のギャグについて、どこが面白かったかを解説して止めを刺していた、ヘイズ・レイヴァース(緋緋色金の小さき竜・d33384)も、いそいそとやってくる。
     安土城怪人イコール織田信長説が否定されたのは残念だが、まぁ、それはそれ。今は、パーティーを楽しもうという心意気のようだ。
     そして、カメラをパシャリ。
     天海大僧正を囲んでの、記念写真は……。
    「天海大僧正、目、瞑っちゃってますよー」
     そして、もう一度、カメラをパシャリ。
     更に、サインももらって、菜々乃がお礼を言うと、天草・水面(神魔調伏・d19614)も、一緒にサインをもらいつつ、天海大僧正に、平和になったら、武蔵坂の歴史講師をして欲しいとお願いをした。
     生きた歴史の教科書のような、天海大僧正に歴史を習うというのは、なかなか楽しそうだろう。
     天海大僧正も、平和な世の中になるのならば、それも世かもしれないと応じてくれた。
     その後、写した写真を見せて後で印刷して送りますねと、挨拶して離れようとする、クルーズ船『K.H.D』を、天海大僧正は呼び止めた。
    「この写真とやらを、もう一枚とってもらえないだろうか」
     と。
     天海大僧正は、この会場で影ながら自分を警護してくれた者達と、共に写真をとりたいと申し出たのだった。

    「いや、オレは、【PKN】の面子が来ていないから他にやる事が無かったというか……」
     長姫・麗羽(シャドウハンター・d02536)は、そう言いながら。
     紅羽・流希(挑戦者・d10975)と、九条・泰河(祭祀の炎華・d03676)は、
    「私達は一枚岩というわけではないので、警戒は当然の責務です」
    「この会で、少しだけでもわかりあえたと思う。その和を紡いでいくためにも、必要なことだから」
     そう言いつつ、天海大僧正に招かれてやってくる。
    「一枚岩の組織では、逆に信用できないだろう。何故ならば、手のひらを返す時にも異論がでないのだから。武蔵坂のように、多くの意見を持てるからこそ、仲間として信頼が置けるのだよ」
     天海の言葉からは、武蔵坂という組織を良く理解している事が見て取れる。
     おそらく『依』から、武蔵坂について、様々な知識を得ているのだろう。
    「多少ズレてはいましたが、これだけ礼を尽くしてくれたのならば、警戒くらいは当然よ」
     忍長・玉緒(しのぶる衝動・d02774)も、ツンとした表情でやってくる。
     最後に、四天王寺・大和(聖霊至帝サーカイザー・d03600)が加わって、パシャリと記念写真。
     この写真も送りますねと菜々乃が言えば、武蔵坂学園の友誼の証として、寺に飾らせてもらうと、天海大僧正は請合った。
     大和は、その言葉に、
    「それは光栄です」
     と礼を言うと共に、ロード・ビスマスなど、第2次新宿防衛線で散ったダークネスの為に、敵味方関係なく経を読んでくれるように、天海大僧正に願った。
     その願いを聞いた、天海大僧正は、再び読経を行う為に立ち上がった。

    ●真日本の歴史
     大和に請われて、戦場に散ったダークネス達に経を唱えた天海大僧正が、席に戻ると、今度は、日本の歴史について語りたいという灼滅者達が集まってくる。
     天海大僧正に歴史の講師になって欲しいと頼んだ、水面の言葉が呼び水になったのだろう。
     まずは、
    「お久しぶりです」
     と挨拶して話を切り出したのは、不動峰・明(大一大万大吉・d11607)。
     日本史マニアとして、語り合うために、ここに来たらしい。
     バベルの鎖に隠された本物の歴史、日本史マニアの心が震えないはずは無い。
     その明の期待にこたえるように、小早川・美海(理想郷を探す放浪者・d15441)が、ハイハイと手をあげた。
    「江戸時代、徳川幕府設立も天海大僧正のやった事っていう話だけど、徳川幕府の代々の将軍もダークネスだったの?」
     続けて質問しようとする美海に、橘・芽生(焔心龍・d01871)が質問をかぶせる。
    「私も質問いいでしょうか? おしゃかさまも、ダークネスだったのです?」
     なかなかグローバルな質問であるが、この質問に加えるように、アレクサンダー・ガーシュウィン(カツヲライダータタキ・d07392)は、更に加えて仏教の教えについて聞く。
     400年前の高僧である、南海坊天海の見解は、とても興味があるらしい。
     更に、折角だからと、神田・熱志(ガッテンレッド・d01376)が、余興として『教えて天海先生』をやろうと提案。
     次々と質問が舞い込んだ。
     さっそく、余興を提案した熱志は、北町奉行の同心だったという祖先の話を聞こうとする。
     熱志に同行したマリィアンナ・ニソンテッタ(聖隷・d20808)は、余興とかご迷惑をかけてすみませんと、袋入りのチョコを天海大僧正にプレゼント。
     その後、桃野・実(水蓮鬼・d03786)と紫乃崎・謡(紫鬼・d02208)の2人は、慈眼城のガラシャについて質問し、エレナ・フラメル(ウィザード・d03233)は、戦国時代の武将達にダークネスがいたのかどうかを質問した。
    「ワタシの見解では、天草四郎は、灼滅者だったんじゃないかって気がしてるのよ」
     それらの質問に、天海大僧正が答えようとしたとき、外道院・悲鳴(千紅万紫・d00007)が核心を得た疑問を提示した。
    「妾は、少し不思議に思うておるのじゃが……。何故今の世にお主の逸話が伝わっておるのじゃ? 本来ならバベルの鎖によって、歴史に名が残らんと思うのじゃが……」
     それは、まさに、核心をつく疑問であった。
     もし、彼女の言葉が正しいなら、真の日本史とはいかなるものになるのだろう。
     日本史マニアの明などは、不安と期待を込めて天海大僧正の答えを持つ。他の皆も同様で、天海大僧正の周囲が緊張で満ちる。
     そして、その張り詰めた空気を破るように、天海大僧正は頷いた。
    「素晴らしい考察だ。その考えは、おおむね正しい」
     その天海大僧正の答えに、歴史に興味をもっていた灼滅者達はどよめいた。
     天海大僧正の説明によると、1600年代前半から『分割統治』が始まった事で、それ以前のダークネスが関わった痕跡などを、覆い隠す作業が行われたのだそうだ。
     様々な史跡や遺跡について、整合性のある説明が可能な、真実ではない歴史。
     この造られた歴史に反する遺跡や史跡は破壊され、その歴史を補完するような資料が、新たに作られる。
     この作業によって、世界史や日本史といった歴史が完成したらしい。
    「ならば、歴史は全て嘘なの?」
     悲痛な叫びを上げた一部の灼滅者達に、天海大僧正は安心するようにと伝えた。
     歴史を捏造したダークネス達にとっても、完全に全て創作するのは難しく、真実とならない範囲で、実在のダークネスや実際に起こった事件が記述されているらしい。
     実際の歴史を元にした、歴史小説のようなものであろうか。
     更に、分割統治以降については、正しい歴史が残っている為、徳川幕府の将軍などは、全て一般人であり、ダークネスは背後から間接支配をしている。
     シャカなどの古代の偉人達は、題材となったダークネスは存在するが、その足跡は歴史とは違うものになる。
     戦国大名なども、その逸話の中には、強力なダークネス同士の戦いを元にしたものがあるが、基本的には創作の話になる。
     細川ガラシャは、安土城怪人との戦いで敗れた有力なダークネスで間違いは無い。分割存在となってしまったが、救えるならば救いたいと考えている。
     スサノオ壬生狼組も、安土城怪人との戦いの時代から天海大僧正の部下であり、新撰組は、幕末の京都の騒乱を収める為にスサノオ壬生狼組が後見した一般人の組織であるらしい。
     などなど、灼滅者達のそれぞれの質問に天海大僧正は答えを返してくれたのだった。
     その労をねぎらうように、守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289)は、正式な作法にて、お茶をたてて天海僧正に供したのだった。
    「千利休が説いた作法だから、捏造されたものかもしれませんけれどね」
     そう言う結衣奈に、天海大僧正は、作法よりももてなす心が一番であると答えたのだった。

    ●現代のダークネス勢力図
     天海大僧正により、世界のそして日本の歴史が捏造であるものと判明し、灼滅者達は、大いに驚いた。
     だが、考えてみれば当然の事であった。
     歴史は勝者が作るという言葉の通り、勝者であるダークネスが歴史を作ったというだけなのだから。
     ならばと、次に、天海大僧正に話しかけたのは、現在のダークネス達の勢力に関する疑問を持つ灼滅者達であった。
     ダークネス組織から見た、他のダークネス組織の情報を得る事は、今後の武蔵坂の活動に大きな益をもたらすだろう。
     その彼らの問いに、天海大僧正は、情報の取り扱いについて注意を促した。
     その注意とは、
    「尋ねた答えが真実とは限らない事を忘れてはならない。
     そのダークネスが真実を知らないかもしれない。
     そのダークネスが真実を知っていて嘘をつくかもしれない。
     真実を知らないダークネスが更に嘘をつくかもしれない。
     一面的な真実を真実の全てであるように語っている事も、ままあるだろう。
     もともと、多くのダークネスは、公平な観点で真実を知ろうと志すものは少ないのだ。
     そのような志を持つものは、闇堕ちする事が稀であり、仮に闇堕ちしたとしても、その美徳を失ってダークネスとなるのだから。
     多くのダークネスは自分達に都合の良い意見を、真実だと信じているため、真実を知ることは無く、真実を知るダークネスは、その高い知性ゆえに深い思慮を持ち、自分達に都合の良いように情報を操作するのだ」
     というものであった。
     この注意は、つまり、自分の話す事も鵜呑みにするなという事にもなるが……、
    「これから話す情報が、真実であるか否か。それは、現時点で証明する事はできない。
     だが、これから話す情報が真実であった事が証明されれば、我等と武蔵坂の信頼関係が深まり、虚偽であれば信頼関係に亀裂が入る。
     つまり、我等が武蔵坂との信頼関係を深めようとしている事を、信じるのならば、この情報に価値がでてくるだろう。
     信じるか否かは、お前達にすべて任せよう」
     と、灼滅者達にその真偽の判断を任せたのだった。

     最初に質問を投じたのは、エイジ・エルヴァリス(邪魔する者は愚か者・d10654)ら、-Feather-の面々である。
     エイジは、シャドウの実験について問うた。
     シャドウは今後の脅威となるのは間違いない。その情報を共有するのは有益である筈だから。
     だが、天海大僧正は、有益な情報は無いと首を横に振った。
     四大シャドウの一角、絆のベヘリタスが崩れた今、歓喜のデスギガスの参謀であるアガメムノンは必ず動くだろう。
     だが、このアガメムノンがどのように動くかは全く予測する事ができないというのだ。
     アガメムノンは、歓喜のデスギガスを喜ばせる為に行動するのだが、歓喜のデスギガスがどのような事を喜ぶかが全く判らないのだそうだ。
    「話を聞くだけで、嫌な感じでござるな」
     エイジは、自分で尋ねたことではあるが、シャドウの今後の動きを非常に不気味に思うしかなかった。
    「ケツァールマスクって今何をしてるんだろうね」
     と聞いたのは、幸・桃琴(桃色退魔拳士・d09437)。
     だが、さすがの天海大僧正も、ケツァールマスクの近況については知らなかったようだ。
     最近のケツァールマスクは、業大老門下のシン・ライリーに協力した後、タカト配下となったシン・ライリーとの抗争に敗北。
     その後、ラブリンスター配下のロード・ビスマスの誘いで組織の建て直しを行おうとしたが、ラブリンスターの絆が奪われた事で、配下としたであろうアイドルレスラーも離散した……だろう事までわかっているが、これ以上の近況を、天海大僧正が知っている可能性は、確かに無さそうだ。
    「鞍馬天狗、朱雀門高校、うずめ様との付き合いはあるの?」
     と尋ねたのは、アンゼリカ・アーベントロート(黄金少女・d28566)。
     鞍馬天狗とは友好関係にあるので、いざとなれば助力を期待できるが、鞍馬天狗側にも都合があるので、必ずでは無い。
     逆に、鞍馬天狗から助けを求められれば、できるだけ救援を送りたいが、武蔵坂との友好関係に響くようならば救援する事は出来ないだろうと、天海大僧正は答えた。
     また、朱雀門については不可侵の盟約を結んでおり、友好関係にあると天海大僧正は続ける。
     武蔵坂との同盟についても『依』を通じて、朱雀門に説明しているらしい。
     うずめ様とは交流が途絶えているようだが、これは、うずめ様が軍艦島と共に移動している事を考えれば、おかしな事ではないだろう。
     戒道・蔵乃祐(プラクシス・d06549)は、アメリカンコンドルをはじめとするご当地幹部について、説明を求めた。
     アメリカンコンドルは、鞍馬天狗や天海大僧正とも敵対関係にあったのだから、何か情報を知っているだろう。
     だが、日本の京都周辺を拠点としていた天海大僧正は、グローバルジャスティスについては、あまり知識は無いようだった。
     日本に侵攻してきたアメリカンコンドルとは数度やり合ったが、安土城怪人との戦いを優先していた為、大規模戦となる事は無かった。
     日本のご当地幹部である、ザ・グレート定礎は、宿敵である安土城怪人の後ろ盾のような存在である為、天海大僧正にとっても敵となるが、直接干戈えた事は無いらしい。
    「つまり、安土城怪人を追い詰めれば、グレート定礎が救援に来るかもしれないという事ですか。ザ・グレート定礎は、第2次新宿防衛戦でも、業大老や白の王に協力していた。いずれ、戦わざるを得ない相手かもしれないですね」
     蔵乃祐は、来るべき安土城怪人との戦いについて、警戒を強めるのだった。

     天方・矜人(疾走する魂・d01499)は、そのものズバリ『サイキックハーツ』について、知っている事が無いか問いかけてみた。
     だが、残念ながら、天海大僧正の知識に、サイキックハーツについての情報は無いという事だった。
     矜人は更に、
    「では、戦闘存在タロットの骸とは何か」
     と食い下がったが、それについても明確な答えは無かった。
     殲術道具の元になったものを造ったのはシャドウであるという話を聞いた事があるので、もしかしたら、それに関するものかもしれないというが、確証は無いそうだ。

     ヴィント・ヴィルヴェル(旋風の申し子・d02252)は、第2次新宿防衛戦で敵にまわった白の王の動向について情報を求めた。
     天海大僧正からは、白の王が慎重に勢力を拡大させている事を説明された。
     白の王は、多数のノーライフキングの迷宮を繋ぎ合わせ、大規模な拠点とする技術を得たらしく、近日中に、最大規模の地上拠点を現出させる可能性がるようだ。
    「おそらく、その拠点は『富士』となるだろう。だが、拠点となる前の富士をいくら探索しても、ノーライフキングの迷宮を探し当てることは不可能。事が起こるまで、座して待つしかない」
     天海大僧正のその言葉に、ヴィントは不承不承頷いた。
     札幌迷宮戦のように、迷宮を地上に出してくるというのであれば、確かに対策は難しいだろう。
     無堂・理央(鉄砕拳姫・d01858)は、第2次新宿防衛戦で灼滅したブエルの残した言葉について質問する。
     サイキックエナジーの枯渇で動けなかった者の復活は遠くないという言葉だ。
     これに対して、天海大僧正は、可能性は高いと答えた。
     ダークネスであるブエルの言葉を信じるかは信じないかは各自の判断となるが、ソロモンの悪魔の意図的に活動を抑えているのでは無いかとは、天海大僧正も考えていたらしい。
     本来であれば、より多くの有力なソロモンの悪魔が活動していてもおかしくないので、活動できる状態になった有力なソロモンの悪魔が、ブエルに情報を収集させつつ機会を伺っていたと考えれば辻褄が合うらしい。
     逆に、爵位級ヴァンパイアなどの情勢をブエルが掴んでいたという可能性は低く、あくまで、ソロモンの悪魔に関してのみの情報だろうと推測しているようだ。
     住矢・慧樹(クロスファイア・d04132)は、ラゴウの配下と思われる狼型眷属を、天海大僧正配下が足止めをした事件についての説明を求めた。
     こちらについては『依』が発案した作戦で、眷属によって一般人が被害に遭うのを防ぐことで、武蔵坂学園との友好を深める一助になればという理由だったらしい。
     友好組織である朱雀門高校からも要請があったようで、一挙両得というという作戦だったらしい。

     天海大僧正の返答が、真実とは限らない。
     天海大僧正が真実だと考えているが、そうでは無いかもしれないし、天海大僧正がわざと虚偽を言っている可能性もある。
     それでも、天海大僧正と直接話した灼滅者達は、少なくとも頭から否定するべきではない情報だと感じ取り、丁寧な返答に礼をしたのだった。

    ●そして未来へ
     ひとわたり、灼滅者達の疑問に答えた天海大僧正は、今度は灼滅者達から話を聞くことを望んだ。
     今回の祝勝会に備えて、武蔵坂学園の常識を『依』から教えられ、話しやすい態度や口調について、いろいろと指導されたらしく、その成果を知りたいようであった。
    (特に口調は、フレンドリーさが大切と厳しく指導されたらしい)
     だが、それ以上に『依』からの情報以外で、武蔵坂の灼滅者の生の声を聞く事も、重要であると考えているのだという。

     そう話を向けられて、灼滅者の一人、木元・明莉(楽天日和・d14267)が、まず口を開いた。
    「俺はダークネスも灼滅者もどちらもが居ない世界が一番なんじゃないかと最近よく思うんだ」
     世界が一般人だけならば、ダークネス事件も起こらない。
     ダークネス事件が起こらないならば、灼滅者だって必要ないのだ。
     その明莉の言葉に、合瀬・鏡花(鏡に映る虚構・d31209)も自分の考えを天海にぶつけてみた。
    「私の一族はダークネスこそ本物で人はそれを封じる為の仮初の人格に過ぎないと考えていたんだよ。だが、光の少年タカトという存在は、その考えを否定したのだ。人が仮初の封印なら分割できるはずがない。そも封印なのだから人の魂なんてあるはずもないでは無いか? ダークネスとは、人とは、なんなのだろう」
     天界大僧正は、明莉と鏡花の話を興味深く聞くと、おもむろに口を開いた。
    「スサノオという例外はあったとしても、我々ダークネスは、一般人が闇堕ちしてダークネスになるのは当然、それは、蛹が蝶になるような変化でしかないと本能的に感じてしまい、それ以上考える事はほとんど無かったようだ。
     だが、そうであるならば、光の少年は、蛹と蝶が同時に存在していた事となり、矛盾が生じるであろう。
     ダークネスと一般人が別の存在であるのならば、一般人だけの世界というのも、ありえない話では無い……のか。
     灼滅者の考えには、やはり、驚かされる」
     天海大僧正は、思慮深くそう語った。
     2人の話した考えは、天海大僧正にとっても、興味深い考えであったらしい。
     考え込む天海大僧正に、鏃・琥珀(ブラックホール胃袋・d13709)が、
    「参考になるかどうかわからないけれど」
     と前置きし、ダークネス達が闇堕ち前の人間の時の意識をどう考えているのかと質問した。
     一般人とダークネスが同一人物であるか否か、それを考える上で、人格の連続性は非常に大きな要素だろう。
     琥珀の問いかけに、天海大僧正は、更に考え込む。
    「闇堕ち前の人格との連続性か……。それは、確かにある筈だ。全く無ければ、闇堕ちした瞬間に知識も言葉も忘れ赤子となってしまう。だが、それは、一般人として生きた情報を、ダークネスが学習しているだけであるのか違うのか……」
     考え込む天海大僧正に、琥珀は、灼滅者の中には、自分の中のダークネスからの呼び声を聞いた者がいると説明する。
     もし、これが本当ならば、別人格である可能性が強まるのではないか?
    「確かに、ダークネスになったばかりの者は、過去の人間の価値観も同時に持つ場合がある。
     この時は、人間としての考えを感覚的に『闇堕ちする前の人間の言葉』として受け取る事があるらしいが、徐々にその感覚は消えていく為、一過性のものだと考えられている」
     琥珀の意見に、天海大僧正は首を捻る。
     心の中の葛藤を、別々の人格のように受け取る事はおかしくは無い。
     別人格と第三者が話すことができない以上、証明する事はできないだろう。
     琥珀は、少し残念そうに、天海大僧正の意見に頷いた。

     話が途切れた所で、鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)は、折角、天海大僧正が灼滅者の話を聞きたいという事だからと、自分が戦う理由について話しをした。
     すべての灼滅者を代弁するのでは無く、自分の個人的な思いであるが、何故か、それを知ってもらいたいと思ったのだ。
    「昔は生きる為の仕事だった。だが今は……、正直大義名分はどうでもいい。ただ、自分の周りを壊したくない。居場所が欲しいだけなのかもしれないな」
     と。
     少し喋りすぎたと脇差は言ったが、天海大僧正は、脇差の言葉を真摯に聴いてくれた。
     そして、
    「私もまた、居場所の為に戦っているのかもしれない」
     と答える。
     配下達との約束を守り、安土城怪人と戦うのは、自分達の組織を維持するため。
     自分達の組織を居場所とするのならば、まさに、居場所を守るための戦いといえるかもしれない。
    (「それが、天界代僧正が戦う理由なんだな……」)
     その話を聞き、安曇・陵華(暁降ち・d02041)が小さく頷く。
     自分は『人である為に戦っている』と考えていたが、それもまた、人の中に自らの居場所を求めていたのかもしれない。
     自分と脇差と天海大僧正、共通点は多くないが、その根底に流れるものの一つは、同じものなのかもしれない。
     陵華は、そう考えつつ、目の前の肴に手を伸ばしたのだった。

    「いろいろ話を聞けて良かったわ」
     祝勝会の最後を締めるように、氷月・燎(高校生デモノイドヒューマン・d20233)が声をあげた。
    「ダークネスと灼滅者、立場は違えど話は出来る。話が出来るならば、わかりあう事もできるやろ」
     そういうこっちゃと言う、燎の言葉に、天海大僧正も灼滅者も頷いた。
     話は出来ても話が通じないものもいるだろうが、そんなのは、人間同士でも存在する。
     重要なのは、そうでないものがいるという事実だ。
     白いカラスが一匹でもいれば、カラスが黒いという命題は否定される。
    「だから、俺達は、未来に向かって考えるんや」
     人とダークネスの共存、そのような未来が存在しえるか否か。
     そう言う燎を補足するように、片倉・純也(ソウク・d16862)が口を開く。
    「かつては、ダークネスが人間を支配する共存が存在しました。しかし、これから考えるべきは、ダークネスと人間と灼滅者が共存する世界。それがどんなものになるかわかりませんが、きっと、その答えは見つかる筈です」
     だから、これからも、一緒に考えていきましょう。
     純也は、そう言うと、真剣な表情のまま付け加えた。
    「そうですね、次は、安土城怪人との戦勝祝いの時になるでしょうか」
     天海大僧正は、その純也の言葉に、微笑んで同意したのだった。

    作者:一本三三七 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年12月21日
    難度:簡単
    参加:176人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 3/素敵だった 26/キャラが大事にされていた 21
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