クリスマス2015~ムサシザカメリクリライブ!

    作者:黒柴好人

    「ぬおああああああ!!」
    「しっかりしろ兄弟! 傷は――」
    「へっ……自分の体の事は自分が一番解るってな……」
    「だが!」
    「それに、自分の心配をしたらどうだ……? お前もこの時期は……」
    「あ、オレ彼女できたんだ」
    「おごっふぉああああ!!」
    「兄弟ィィ!!」
     武蔵坂学園も12月になり、すっかり冬の様相を呈してきた頃。
    「……あのやり取り、いつも見ますね」
    「仲いいんだね、あの2人っ」
    「確実に片方命取りにきてますが……」
     なんとなく合流した高見堂・みなぎ(中学生エクスブレイン・dn0172)と観澄・りんね(高校生サウンドソルジャー・dn0007)は、なんとなく学園内を歩いていた。
     他愛もない話に花を咲かせていると、みなぎが思い付いたように「それはそうと」と切り出した。
    「……そろそろクリスマスですが……りんねさんはなにかご予定でも?」
    「クリスマスかぁ。私はいつも通りな感じかな」
    「……いつもというと、コレですね?」
     そう言いながらみなぎは一枚のチラシを取り出した。
    「こ、これは!」
     
     すっかり毎年恒例となったクリスマスライブ。
     もちろん今年もやりますとも!
     参加自由、事前申し込み不要、楽器・ジャンル・経験不問。
     でも折角のクリスマスだからクリスマスに関した楽曲大歓迎!
     とにかくクリスマスは音楽で楽しみたいポップな仲間を大募集!
     場所は学園内の体育館。
     音響設備や照明はいつものごとく気合が入ったモノを導入予定!
     バンド演奏からオペラまで、なんでもござれが今年のコンセプト。
     今すぐクリック!

    「くりっく?」
    「クリック」
    「とにかくもちろんいますぐさっそく参加しなくちゃ!」
    「……まだ日はありますが、応援していますよ」
    「ありがとうっ! こうしちゃいられないね。仲間を探しに行かなくちゃ!」
    「一緒に参加する……ですか?」
    「うん! 音楽はみんなでやると楽しいんだからっ!」
     こうしてりんねはライブ当日に向けて駆け出し――間もなく廊下は走るなと通りすがりの教師に叱られるのであった。


    ■リプレイ


    「今年のオープニングアクトも【les cadeaux】にお任せ!」
    「ヒャッハー、3年目もロックでゴザル!」
     セットリスト無用のクリスマスライブ。
     今回も一番に乗り込んできたのはガールズバンドのles cadeaux!
    「今年は最初っから激しく行くよ! 皆付いてきな、『Don't stop at RED』!」
     智のドラムが宴のはじまりを告げ、爆音が会場を包み込む。
     まずは上品な透け感のあるレースがあしらわれたドレスに革のブーツで足元を引き締める千波耶が一歩前へと出る。
    『胸たぎらせた今日の夜に マイクを握り音を交わした』
     こうして気心の知れた仲間とクリスマスに歌や音を重ねるのも恒例になり――様々な想いを巡らせながら千波耶はギターを弾き、歌う。
     千波耶が視線を流した先、紫姫が彼女のそんな心の内を受け取るように頷き。
    『雪も溶かすこの熱が 私達の歌走らせる』
     清楚な純白のドレスを舞い踊らせながら強い意志を込め、歌を滾らせる。
     キーボードの音階も高揚し、それが目覚めの鐘の如く全員の声が重なっていく。
    『騒いで歌えば誰もが楽しい グラスを握れ飲んで語れ』
    『手を握ったら暖かな熱が 皆の想い走らせる』
     万感の想いと熱をコーラスに乗せた紫姫。
     余韻を残し、しかし曲はサビへと加速していく。
     ウルスラは紫姫と視線を交わし、いよいよもってギターを爆発させる。
    『夜の街には光が灯り 行きかう人の顔は綻ぶ』
     まさしくこぼれる笑顔の少女たち。揃いの雪のように白いドレスが輝く様は神秘的で、力ある姿だ。
     軽やかな足運びで下がったウルスラは、紫苑の肩をぽんと叩く。
     白の中に咲く真紅のベースが幾音にも重なった声で応じると、奏者の紫苑も歌で応える。
    『今日は聖夜ひとよのお祭り 止めるな誰も止まらない』
     パートが終わる紫苑から視線を受け取る智。
    『歌さえ今日は起きてみる物さ 真っ赤なアイツも忙しない』
     ストロークを止める事なく歌い続ける智の額には汗が光るが、自然と笑みが溢れる。
    『今日は聖夜ひとよのお祭り 疲れて夢に浸るまで』
     また全員で声を揃え、可憐でロックなショーはこれにて――。
    「ハレルヤ! 最高のクリスマスに感謝を!」
     いや!
     今年も【武蔵坂軽音部】の葉月たちがles cadeauxのステージに乱入だ!
    「武蔵坂軽音部ー! みんながんばれーっ!」
    「les cadeauxも負けないでください!」
     客席からのシリェーナと律希の声援も一段と大きくなる。
     律希は楽器を演奏できる友人たちを羨ましく思う事もある。しかし、こうして応援する事はステージと一体になって楽しんでいる事に他ならない。
     そんな心の内が聞こえたのか、千波耶と錠が2人に笑顔を向け、口を動かす。
     律希もまた微笑み返し、シリェーナは全身を使って盛り上げるのだった。
     ステージではギター兼ボーカルの朋恵、そして三味線を操るまり花が紫苑、ウルスラと背中合わせに競うように、語らうようにただひたすら弾きまくる。
     ドラムブレイクに突入すると、先行し疾走する智に対して強い打撃を加え、そして重ねていく錠。
     短い間だが、間違いなく観衆を震えさせたブレイクにハコのテンションは増大。
     続くキーボードの時生、ピアノのイチが紫姫、そして千波耶のギターと相対する。
     ストリングスで広く道を築いた上にピアノが跳ね、力強くも流麗なサウンドが突き抜ける様は耳にも心にも爽快極まりない。
    (「……初心者だからこそ、心を込めて演奏しないと」)
     仲間たちの演奏に耳を奪われそうになりつつも、イチは懸命に丁寧な指運びで旋律を紡ぐ事に専念する。
    「さぁこのあとも盛り上がっていこー!」
    「後は任せな!」
     紫苑とハイタッチを交わし、葉月がマイクを構える。
    「演目は『続・ナノナノ様の伝説』!」
     去年の『ナノナノ様の伝説』の続編にあたる今回。
     やはりクリスロッテが張り切って飛び出そうとするのを朋恵が抱き寄せる一幕を挟み、錠たちの演奏に乗せて葉月が歌い出す。
     愉快な旋律で夢を見ていた主人公。
     希望に溢れていた。いたのに、しかし現実はそれを否定する。
     緊迫に沈む音階。しかし――。
    (「想いは届きますぇ……自分の足で走れば、届ければ、必ず」)
     まり花の三味線が、そのビートを加速させる。
     寒さに震える冬の夜、必死に足掻き走るように。
    (「嗚呼! もう、あの娘は目前や!」)
     想いは撥に乗り、がむしゃらに弾き鳴らす。
     まり花の音を引き締め支えるのは時生。
     三味線とストリングス系の音は意外な程に調和が成立するのだ。
     そしてイチもまた低音と高音をうまく使い、世界と感情を広げている。
     本人は自分はまだ初心者と言うが、もうその域は脱しているだろうと時生はあらためて思わされる。
     主人公の心音とも思えるビートを刻むのは錠。
     葛藤し、躍動する姿を描けるのはドラムを操る錠の技量によるところだろう。
     クライマックスに差し掛かり、舞台は恋人と共に過ごす聖夜へと。
     葉月とのツインボーカルを務めた朋恵が恋人のパートを歌い上げ、「ナノナノさまが見える」と笑い――終ぞ主人公には見えなかった。
     ひとつの伝説を表現した彼らに惜しみない賞賛が贈られる。
    「メリークリスマスですっ!」
     喝采の中、手を振る朋恵たちをドラムセット越しに見る錠は、やがて見上げ目を細めた。
    「今日はやけにライトが眩しいぜ……」
     口角を上げ歯を見せる錠は、最高の仲間たちの下へと走った。

    「皆さーん、こんばんはー!」
     サンタ風のコートを纏った【SWEET SOUNDZ】の瑠璃の呼び掛けに元気な声が返ってきた。
    「2015年もこの季節が! このイベントがやってきましたよー!」
     ベースを軽く撫でながらMCを盛り上げていく。
    「さあ、この生ぬるい冬を吹き飛ばす勢いで、最初から最後まで! 熱く迸って行きましょう! よろしいか!」
     歓声に瑠璃は畏まったように頭を下げた。
    「然らば、最後まで! 刮目してご覧あれ!」
     直後に響く亮太朗のドラム。
     今日はサンタ服に白いつけヒゲな定番スタイルで登場。
     小6になり段々と筋肉もついてきたようで、迫力やパワーにおいて去年よりも大きな成長を見せている。
    「悪いこと、全部吹っ飛ばしていこう!」
     イントロの間に全力で飛び出す見桜。
     チェックが特徴的なロンドンパンク風にサンタ帽子という出で立ちで歌い出す。
     名物になりつつあるリードギターのハンナが空飛ぶ箒を使用した飛翔奏法を披露する。
     サンタ風なワンピースにロングブーツで可愛らしくも大人らしさも演出したハンナ。目を引くだけでなく、彼女の操るギターの腕もまた心を惹きつける。
     瑠璃も負けじとベースを弾きながらヘドバンを繰り出し、あるいはクールに踊り出す。
     少年の長い髪が描く軌跡は、不思議と神秘的。
    「OK! 瑠璃!」
     視覚にも賑やかな演奏の中、『きっと明日は晴れるかな』。
     歌う見桜も全力の喉で観衆の期待に応える。
    「私は1年前、去年のクリスマスに学園に来て初めてライブをしたんだけど、それよりは上手くなってるつもり」
     1曲目が終わり、ギターを手に取りながら見桜が静かに語る。
    「頑張った分だけ良くなると思うし、楽しくなると思うんだよね」
     だから。
    「次の曲はボクのパーカスにもこうご期待!」
     あれこれと多様な楽器を持ち出してきた亮太朗が、ハンナが瑠璃が並び――SWEET SOUNDZの次の曲がはじまった。

    「あるところにやんちゃなお尋ね者がおりました」
     ギターをぽろぽろ語るりんね。
    「それを追う少女銃士が2人。いよいよお尋ね者を追い詰め――【路地裏歌劇】開幕です!」
     緊迫感のあるギターに乗るサーベルが奏でる剣戟の音。
     リズミカルな金属音と共に登場したのは一とリュシール、そして徹。
     彼方一とリュシールが本気にも思える、しかし打楽器のリズムで剣を交え。
     此方徹はブーツを鳴らし、霊犬の鉄とくるくる踊るように殺陣を演じる。
    「さあお尋ね者一、今日こそ逃がさない!」
     銃士・リュシールは、剣先を少年に突き付ける。
    「つまみ食い、髪の毛への悪戯、スカートめくり……日々の恐るべき悪行の報いを受けて貰うわよ!」
    「そうだそうだお尋ね者めー!」
     同じように剣を向ける徹。
     羽根付き帽子ならぬキャンディケーン付き帽子は見習い銃士のしるし。
    「その程度でお尋ね者にされたんじゃたまらないぜ。祝福された聖なる夜、良い子に――」
     一は不意に床を蹴りつけた!
     刹那、リュシールとの距離をゼロにし、
    「届けようじゃないか」
     反応し切れなかったリュシールは頬に暖かくて柔らかい感触を覚えた。
     つまり、ほっぺにちゅー。
    「勿論オレにだけどな!」
    「……へ、あ、待ちなさい!」
     突然の事に動揺するリュシールが立ち直る頃には一はとっくに逃げていた。
    「リュシール! こっちむいて!」
    「それよりも追いかけて――」
     徹の呼び声に振り返ると。
    「ん」
     背伸びした徹の顔がすぐそこにあって――ほっぺにちゅー。
    「ちょっ……な、なにこれ!?」
    「もらっちゃった!」
     いたずらっぽく笑いながら徹は一とは逆方向へ脱兎の如く駆け出した。
     左右を見比べ逡巡し、
    「あ、後で覚えてらっしゃい!」
     少女銃士は赤面しながら2人に増えたお尋ね者を追うのだった。

    「サヴァ、穂乃佳! いかがかしら、この大観衆!」
     舞台袖で大きく腕を広げる雛。
    「この場は穂乃佳を立派なスクール巫女アイドルとしてデビューするべく用意されたにも等しいわっ!」
    「ふぇ、私巫女さんなの……アイドル違う、です……」
     突如アイドル宣言された穂乃佳は、雛の背中に隠れるように身を縮めている。
    「大丈夫! さぁ、今宵ホノカチャンの鮮烈なアイドルデビューを飾りませう!」
    「うゆ……こんなミニスカふりふりの服で……人いっぱいの所、なんて……」
    「雛ちゃんの思いつきだから仕方がないのです。何せ名前もごご」
     咄嗟にエステルの口元を塞ぐ霊犬のおふとん。
    「そういうわけだから、エステル!」
    「むきゅ、ホノカチャンはセンターでぐいぐいっと~」
    「えっと……センターって何……です? あ、押さないで……あぅあぅあぅー」
     両サイドを固められ、3人はステージへ!
     客席は閑散と……しているわけもなく、美少女たちの登場に大勢の観客が沸き上がっていた。
     雛とエステルは愛想を振り撒き、心を掴んだところでアイドルソングを歌って踊る!
    「あぅ、おどるの、よくわからない、の……あぅあぅ、見えちゃうの、です……」
     顔をまっ赤にしておどおどするしかない穂乃佳に、さり気なく近づいた雛がそっと耳打ちする。
    「ホノカチャン!」
     それは雛鳥の囀りにも似た、聞いた者を「もう俺ダメになるかもしれない」と思わせる素敵な囁き。
     それを天使の如き笑顔で、何回も聞かされれば、
    「あぅ、あいどるに、されちゃう、です……私、あいどる……?」
     この通りである。
    (「雛ちゃん、何囁いてるのかな。呪文?」)
    「ホノカチャンは、可愛いよー!」
     エステルの疑問は、雛のコール返し「可愛いよー!」大合唱にかき消された。

     アイドル風の揃いの和装を着た2人の青年が舞台袖にいた。
     その一方、時兎は座り込んで唇を尖らせていた。
    「聡士は歌って踊れるアイドル殺人鬼だからいーけどさあ、俺は別にそういうんじゃ……」
    「ここまで来てまだゴネるの?」
     何やら不穏なアイドルだが……聡士はひとつの案を出す。
    「これが終わったら静かなところで殴り合おうよ。手合わせ。どうかな?」
     そんな褒美で釣られるわけが、
    「やる」
     あった。
     かくしてステージに立つ聡士と時兎。
    「Are you ready?」
    「Let's have a blast」
     彼らが披露する和の要素を混ぜ込んだクリスマスソングは愉快で楽しく、時折セクシー。
     聡士は扇子を、時兎は舞傘を得物に見立て、殺陣のような演舞をも魅せる。
     小気味よく動き翻弄する聡士を、大きく緩やかな振る舞いであしらう時兎。
     美しく息を呑むような殺陣は、舞傘が広がると同時に終わりを告げた。
     戦いの行方は傘から舞い飛ぶ紙吹雪のみぞ知る。
    (「何だかんだでしっかりやり遂げてくれるんだよね……時兎?」)
     開いた傘を正面に据え、聡士に顔を向けている時兎。
     その表情に――聡士は親指を立てて返した。

     【だぶるいちご】は裳経・いちごと黒岩・いちごの双子美少女アイドルユニット!
     2つほど相違点はあるが。
     今回はミニスカサンタ姿で元気いっぱいにクリスマスソングを歌い上げたのだった。
    「みんなありがとー!」
    「次は『妹たち』の演奏を楽しんでくださいね♪」
     その後一緒にどうですか、と袖から顔を出していたりんねに振り返ろうとした、その時。
    「あっ!?」
    「ちょっ、いちごちゃん!?」
    「うわわ!」
     何もないところで足を滑らせ、黒岩・いちごはもう一人のいちごとりんねを巻き込みながら派手に転んでしまった!
    「す、すみません!」
    「もー、あまりサービスはしないんだからね?」
    「あはは。いちごさん、慌てすぎだよ?」
     2人を押し倒すように馬乗りの形になっていたいちごは慌てて離れ、赤面しながら退場していった。
     怪我もないようで安心した観衆は「眼福眼福」「タワー建設いいぞ」などと笑っていたが……まぁ、知らぬが何とやらというし。
     気を取り直して、りんごと翡翠がステージに登場する。
    「ささ、恥ずかしがらずに、楽しみましょう♪」
    「楽しみではありますけど……この格好は恥ずかしいですよ!?」
     お揃いのチアサンタは露出もそれなりなワケで。
     しかしステージに立った以上はそうも言っていられない。
     意を決した翡翠はりんごを追いかけるように踊り出し、りんごは応援歌を歌いながら翡翠を引っ張っていく。
     曲の終盤にはすっかり慣れ、動きも機敏になった翡翠。
    「いきますよ、はいっ♪」
    「はい! ……って、ええ!?」
     完璧に動きをトレースしていたため、足を高く上げたりんごの動きも真似してしまった。
     勿論、アンスコで完全に防御しているのだが。
    「もっと高く上げて♪」
    「も、もっとですかー!?」
     そんなドタバタも好評を博したようで、
    「今日はありがとうございました、りんごさん♪」
    「素敵でしたよ、翡翠さん♪」
    「き、急に抱きつかないでくださいよー!?」
     観衆も引っ括めて盛り上がったのだった。
     続く悠花はギターを担いでの参上。
    「さぁりんねさん、音楽しましょ♪」
    「やろうやろう、悠花さんっ!」
     待ってましたとばかりにギターを構えるサンタ風コートを着たりんね。
     定番のナンバーでギターセッションを楽しむ悠花たち。練習の成果はバッチリのようだ。
    「誕生日にした話ありましたよね? そこで! 今日はわたしがギターでりんねさんにボーカルやってもらいましょー!」
    「おお! ついにこの時がっ!」
    「他にもりんねさんの歌声聞きたい人は手伝ってくださいねー!」
     そんな悠花の呼び掛けに、
    「それなら混ぜてもらうよー、悠花ちゃん!」
    「お手伝いしますよっ!」
     だぶるいちご推参!
    「よーし、それじゃ聞いてね! 私の歌を!」
     りんねが、今!

     ステージ上にサンタの格好をした猫がいると思ったら、それは流希。
     床に置いた器用にエレキギターの弦を爪で弾いたりしている。
     本人曰く「細かい事は気にしたら負けですよ……」とのこと。
     あ、ギターの上で踊り出した。
     気になる……。
    「さーメリクリメリクリ! 寂しいロンリー共、仲間連れ、熱々カップル分け隔てなくアタシことサンタは音楽の祝福を届けるぞ!」
     押し売りのようなノリなのは周サンタ。
     毎度お馴染みフラメンコギターと白い袋を担ぎ、
    「その袋、ちょっと赤くない?」
    「気のせいだ! 今日は2人のサンタでロックなプレゼントを進呈だ! 返品は受け付けないぞ!」
    「きっと後悔はさせないよっ!」
     首を傾げるりんねと共にクリスマスキャロルでひと暴れ!
    「灼滅者の誇りと栄光を!」
    「私たちの学園に祝福をっ!」
     アリスがりんねとのセッションに選んだ曲は武蔵坂学園校歌、その大胆にもロックアレンジを加えたものだ。
     ダークネスに支配された暗澹とした世界。
     武蔵坂学園と灼滅者の登場により、世界に強烈な一音を響かせる。
     戦いは激化の一途。しかしその先には輝く未来が――。
     全てをギターで表現し切った2人は、拳を合わせ微笑んだ。
     
     【シュテルスノウ】のライとシャオは、中性的な声質を十分に活かしたステージを繰り広げていた。
     悪魔の男の子をイメージした黒い衣装のライ。天使の女の子をイメージした白いワンピースに長いウィッグ(リングスラッシャーを頭上に浮かばせたり)も装着したシャオ。
     対照的な2人がキーボードを弾きながら歌うクリスマスソング。
     オペラをも思わせる高音の効いたデュエットが特徴的。
     ところが曲が後半に差し掛かるにつれ、原曲のそれは徐々にクールなアレンジが織り込まれ変身していく。
     変身したのは曲だけではない。
     ライとシャオはプリンセス、スタイリッシュモードを発動して――。
     今度はライが天使の女の子、シャオが悪魔の男の子に!
     最終盤。シャオの蒼い一閃が光輪を砕くと、まるでダイヤモンドダストのような光の粒子が一帯に降り注いだ。
    「これが俺たちからの!」
    「みんなへの、クリスマスプレゼント……」

     ――幻想的で騒がしく、賑やかなクリスマスの夜は更けていく。

    作者:黒柴好人 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年12月24日
    難度:簡単
    参加:35人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 6
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