きやがれツボ押しマン

    作者:空白革命

    ●ツボ押しマンの噂
    「ねえ聞いた? この辺にツボ押しマンが出るって噂」
    「なあにそれ変質者?」
    「道行く人を捕まえてはツボ押しするんだっ――あふん!?」
     なんかクネクネしてたおっさんが、木の棒かなんかで突っつかれた。
     腰のイイカンジの所を突かれたせいでくねっと曲がり、膝から崩れ落ちる。
    「なんということだ。実在していたのか……!」
     いきなり口調を変更したおっさんは、腰を押さえて振り返る。
     そんな彼の肩のイイカンジの所にツボ押しマンの親指が!
    「あふん!」
     

    「あふん」
     自分で肩のイイカンジのところをぐりぐり出来るツボ押しアイテム(100円均一のやつ)を駆使しながら、須藤・まりん(高校生エクスブレイン・dn0003)はそんなふうに説明した。
     なんでも、都市伝説『ツボ押しマン』が実体化して道行く人のツボというツボを押しまくっているそうな。
     ツボ押しマンはその名の通りツボを押してくる正体不明の大男だ。なんか顔に布袋被ってるし息も荒いけどたぶん人間かなんかだと思うが、それ以前に実体化都市伝説である。
    「このまんまじゃ道行く人たちがことごとくくてっとしちゃうよ。社会がくてっとしちゃうよ! みんな、あとはたの――んんっ」


    参加者
    メリーベル・ケルン(プディングメドヒェン・d01925)
    東谷・円(ルーンアルクス・d02468)
    桃野・実(水蓮鬼・d03786)
    皇樹・零桜奈(漆黒の天使・d08424)
    ミカ・ルポネン(暖冬の雷光・d14951)
    マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・d21200)
    ペーニャ・パールヴァティー(羽猫男爵と従者のぺーにゃん・d22587)
    天原・京香(信じるものを守る少女・d24476)

    ■リプレイ


    「すやぁ……」
     メリーベル・ケルン(プディングメドヒェン・d01925)が涎垂らしたどや顔でくてーんと眠っていた。
     場合に寄っちゃ車も通るような路上で、しかも夜中に眠るとか正気の沙汰ではない。
     ……正気の沙汰ではないとか言っておきながら、メリーベル氏ならやりかねないとおも思えるこんな奇行。
     しかしスヤってるのは彼女だけでは無かった。
    「むにゃあ……」
     東谷・円(ルーンアルクス・d02468)がコントローラー持って寝落ちした人みたいにブロック塀にもたれて爆睡していた。
     その向かいではミカ・ルポネン(暖冬の雷光・d14951)が実際びーた持ってうつ伏せに爆睡している。
     メリーベル氏と違うのは霊犬ルミの白いふっかふかの毛皮を枕にしているところである。
     とはいえ彼らだって路上で24時間耐久モン○ンおうぎょんぎょ百匹釣るまで帰れまテンスペシャルとかやっていたのかも知れないし、クリスマスに彼女と遊べないから寂しさを紛らわせている人たちかもしれなし。
     と思いきや。
    「ふぁにゃあ……」
     桃野・実(水蓮鬼・d03786)が霊犬クロ助をがっしり抱っこして眠っていた。身体を丸くして路上のど真ん中で眠るその姿勢には正直男らしらすら感じるが、これだって24時間耐久わんこ抱っこ大会の参加者だったのかも知れない。
     いっぽうで。
    「むにゅう……」
    「ふやぁ……」
     皇樹・零桜奈(漆黒の天使・d08424)が天原・京香(信じるものを守る少女・d24476)を乳枕にして寝ていた。
     二重の意味でありえない寝相だが、なにかっつーとダイレクトにエロいハプニングをキャンセルされ続けてきた彼女ら(彼女ら!)がついに規制の枠を超えたのかもしれない。このゲームは全年齢指定から18禁指定にシフトしてしまったのかもしれない。もしそうだったら非常に困るが。
     だが安心して欲しい。
    「らめぇ」
     マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・d21200)がうつ伏せで尻を突き上げた姿勢で顔を真っ赤にして涎と涙のあとをそのままにBL本の表紙みたいな格好で寝てい――全然安心できねえ!
     どこの層に向けてるんだこのお話は! 事務所から下ネタNG出てる人もいるんだぞ!
     そんな不安と期待(期待?)が入り交じる中、ペーニャ・パールヴァティー(羽猫男爵と従者のぺーにゃん・d22587)は大の字かつ仰向けで、ネコを枕にぐーすか爆睡していた。
     なんかちっちゃい壷が周辺にごろごろ転がっている。
     その一つを手にとって、ペーニャはむにゃむにゃ言った。
    「これがほんとの壷惜しまん」
     あっこいつ寝てないな!?

     さて、いい加減何が起きたのか気になったことと思う。
     彼らはなぜ12月の路上でお布団もなしに爆睡しているのだろうか。
     凍え死ぬか起きるかのチキンレースをしているわけではないし、雑な集団自殺でもない。
     その真相を探るべく、小一時間前まで時間を巻き戻してみよう。


    「俺はツボ押しマン。絶妙にイイカンジのツボを押して相手をくたっとさせる都市伝説だァ!」
    「え、なにこいつ。誰も尋ねてないのに自らの素性を全部語ったんだけど」
    「制作スタッフ手ぇ抜きすぎだろ。誰も止めなかったの?」
     円とミカが戦慄していると、ツボ押しマンはどこからともなく大量のマッサージグッズを取り出し全ての指という指の間に挟んで装備した。
    「貴様もくったくたにしてくれるわ!」
    「できるものかしら。この……最強伝説をもつメリーベル・ケルン大権現に!」
     メリーベルが渾身のどや顔で振り返った。わざわざ背中を向けてスライドしながら出てきてからのシャフ度返りである。
     斜め上に出てくるテロップ。
     『説明しよう! あれは一年前に現われた野生の足ツボマッサージを千切っては投げ千切っては投げ獅子奮迅の活躍を見せたのだ! そんなメリーベル・ケルンさんの活躍を今回も目に(メリー)焼き付ケルンだ!』
    「なんかテロップに不本意なダジャレが加わってる!」
     慌ててテロップ(と言うか自主的に用意したプレート)を手に取るメリーベル。テロップには『ぷれぜんてっどばいペニャーニャ』と書かれていた。自分で名前間違えてる。
     メリーベルはうにゃーと言ってテロップを膝で割り、ツボ押しマンへと突きつけた。
    「ふっ、ツボ押しマンとかいって要はマッサージを名目にセクハラしたいおっさんでしょ。まあ私ほどの美少女ともあればそんなスケベ心がもりもりするのも無理からぬことあっふん!?」
     超高速で脇へ回り込んだツボ押しマンに腰をぐっと押され、思わずかがみ込むメリーベル。
     そこから背負い投げの要領で投げ倒され、足を掴み上げるアンクルホールドみたいな姿勢にもっていかれた。
     まだ何の関節も極めてないのに涙目でタップするメリーベル。
    「や、やめなさい! 乱暴するつもりでしょ! バラエティ番組みたいに! バラエティ番組みたいに!」
     暴れるメリーベルの足の裏に、ツボ押しスティックをぐりっとやった。
    「内臓やってますねこれ」
    「あびゃああああああああああああああ!!」
    「腎臓」
    「くっころおおおおおおおおおおおおお!!」
     そこからは一方的な試合だったと、目撃者は語った。
     プライバシーに配慮して顔と声を編集したインタビュー映像をご覧頂こう。
    「『メリーベルさんはやられ放題って感じでしたね』」
     モザイクのかかった顔と合成音声をかけられ、ウィングキャットを撫でながら語るP氏。
    「『普通は一千万。とれるときには五千万の時もありました』」
    『手口のほうは?』
    「『昔と一緒です。でもオレオレ詐欺に注意しようっていう呼びかけをする警察のフリをするのが効果的でしたね。注意してくる人が騙してくるとは思わないっていうか』」
    『それでもATMを使えば怪しまれるのでは?』
    「『最近はATM使いませんね。直接手渡しするか、コンビニとかでプリペイドカードを買わせるんです。百人くらいで十万ずつ巻き上げれば一千万でしょ?』」
    『どういった方法で選んでいますか?』
    「『パソコン教室とかに潜入して、人の言うことほいほい聞いちゃうような老人を――』」
    「番組変わってるゥ!」
     地面を必死にタップしながら叫ぶメリーベル。
    「なんで私のインタビューがオレオレ詐欺のドキュメンタリーになってんのよ! もっと私を映しなさあたたたたいたいたいいたいそこだめんぎゃあああああああああああ……あふう」
     くたっと脱力するメリーベル。
     なんかどや顔のまま涎垂らして爆睡した。
    「レベル50以上の灼滅者をこうも簡単に。強いな……」
     実はきわめてシリアスな顔をしながらヨガマットを路上に敷いた。
     小柄な黒柴霊犬のクロ助を横倒しに寝かせると、頭をお腹をなーでなーでしたあとそっと身をひいた。
     そこへやってくるツボ押しマン。
    「はーいいい子ですねー。桃野クロ助くんですねー、お父さんの言うこと聞いて偉いですねーよしよし」
    「おとうさん……?」
    「こっちはルミちゃんですねー。えらいですねー」
     白い大型霊犬のルミをなーでなーでするツボ押しマン。
    「ふえてる……」
     するとツボ押しマンはクロ助たちの肉球をゆっくり押しはじめ、順番に根元までもみほぐすと肩と首の位置に木の棒を押し当てて柔らかくぐりぐりしはじめた。
    「室内飼いのワンちゃんは首と腕が特別に凝るんですねー。野生ではあまり使わない筋肉ですからねー。長い時間見上げた姿勢で固定していたり、頻繁にお手をしたりするとここが凝るんですねー」
    「「へー……」」
     体育座りで話を聞く実とミカ。
     一方クロ助たちはたちまち目をほそーくしてぶすーぶすーと鼻息を荒くしたかと思うとやがてゆっくりとした腹式呼吸で眠り始めた。
    「はっ、しまった。ルミの声を録音するのわすれて――」
    「さあ次はお前ダァー!」
     キャラを思い出したかのように叫ぶツボ押しマン。
     どこの部族だってくらいの蟹股かつ両腕振り上げ姿勢でぴょいーんと飛びかかると実をホールド。
     あぐらをかいて後ろから抱きしめているだけにしか見えないが実はいくつかの関節が極められているという、プロレス界におけるサブミッションの神が考案したっちゅう隠し技で固定されていた。
    「くっ……無駄だよ、俺はツボなんか……ふぁあっ!?」
     首から肩甲骨にかけてのラインになんかでこぼこしたローラーみたいなやつを転がしただけで実は奇声をあげた。
     その往復がなんともいえない刺激だった。強すぎず弱すぎず。しかしピザカッターのように鋭く押しつけられているはずの刺激は実の脳をかき混ぜた。
     かっくんと脱力してクロ助の横に倒れる実。
    「ククク、ツボ押しの前には無力だったようだなァ!」
     手でにぎにぎすることで自主的にツボを押せるとかいう木彫りの熊さん人形を握りながら語るツボ押しマン。
     ミカは思わず半歩後退した。
     横に並ぶ円。
    「これヤバくない? 絶対ボクたち大変なことになるって」
    「どうかな。肩こりほぐれてよくない?」
    「この期に及んでポジティブすぎる!」
     ミカは全力のボディランゲージを交えながら叫んだ。
    「いい!? このツボ押しマンは絶妙に相手のツボを押して『ツボ押しに屈したりなんてしない』とか言ってる人を速効でくっころさせる奴なんだよ!? 日頃ゲームで首とか腰とか凝らせてるボクらなんてどこ刺しても飛び出す黒髭危○一髪ゲームじゃん!」
    「でもあれ飛び出したら勝ちなんでしょ?」
    「そういうこと言ってんじゃないの! 円が襲われたらひとたまりも――」
     とか言ってると、シュインとか音をたててツボ押しマンが円の背後に瞬間移動してきた。
     手刀を首にガッでやるツボ押しマン。
     すると円は一瞬で膝から崩れ落ちてスヤァした。
    「円ー! ツボ押しマンに『無料でマッサージしてくれる親切な人』くらいのつもりでプレを書くからこんなことに! 背の伸びるツボ押してとかいうからこんなことにー!」
     がったがった揺するが、首の一番いいところを押され長時間のゲームプレイで凝り固まった筋肉をほぐされた円は急速に良くなった血流によって身体はぽかぽかになり脳に血が巡りここぞとばかりに回復しようとした脳があの、あれがこう、あの、あの、とにかくくっそ眠いのだ!
     力尽きた円をそっと寝かせて向き直るミカ。
    「下ネタNGの人はこれが限界か。親友の仇はボクがとる! さあかかってこ――スヤァ」
     ミカの背後シュインからの首ガッでスヤァした。
     思えば弱点は全く一緒だった。
     奴は四天王で最弱、みたいな顔してミカたちを惜しむペーニャ。
    「遅くまでス○イプしながらイカのゲームしてるからこんなことになるんですよ。所であのイカタココンビ、絶対私の座を狙ってませんか。私負けられない! イカよろしくー」
     出番を使い切ったとみられるペーニャがスライドアウトしていく。
     残されたのは零桜奈と京香、そしてマサムネの三人だけである。
     ぺろりと舌なめずりするツボ押しマン。
    「ここからはついに成人指定世界に突入だぜェ! 女は最後だ。まずは男からトロットロにしてやるゼェ!」
    「くっ……」
     両手を胸に当てて半歩さがる零桜奈。
     ツボ押しマンはズッキャズッキャと変な足音をたてながら近づき、両腕を高く振り上げそして――。
    「あえぎ声をあげろおおおおおおおおお!」
    「んああああああああああああっ!」
     マサムネの腰と腕を高速でマッサージし始めた。
     スルーされ、真顔で停止する零桜奈。
    「いい声で啼きなぁ!」
    「ら、らめぇ!」
     木の棒でできたシンプルなツボ押しがマサムネの乳首周辺を優しく時に力強くもてあそんだ。
     デコルテラインのリンパ溜まりや胸筋の根元とかを乳首周辺って表現するこの強引さに震えよ!
    「おっと、そろそろ欲しいんじゃないか? 尻によォ!」
    「ち、ちがう、オレはそんなの……」
     尻に伸びる手。
     マサムネはうつ伏せで布を噛みしめながら粗い息を漏らすのみ。
     そしてツボ押しマンの硬くて太い棒はマサムネの尻(の左右にあるくぼみからちょっと上のあたり。座り仕事が多い人は腰骨からちょい下にあるここを両手の親指で押してみよう)を突いて突いて突きまくる。
    「ら、らっ、めぇ! おしりが、おしりがこわれちゃうよぉおおおおおおおおおお!」
    「……」
    「……」
     依頼中のエロ担当を担ってきた老舗の京香先輩が、無言で立っていた。
     もう、下野声の男が『おしりがこわれちゃうよぉ』まで言った依頼で何ができるというのか。
     全裸になっても勝てる気がしない。
     外から見えないのをよしとして『爆乳を揉む』くらいのことは書ける零桜奈先生でもこれを上回るのは難しかった。
    「くっ、今度こそラジオのネタが増えると思ったのに」
    「京香、混乱して、おかしなこと言ってる……」
     親指を噛む京香を、横目で見る零桜奈。
     そうこうしていると、マサムネの処置を終えたツボ押しマンがBL本の挿絵みたいになったマサムネを放置して立ち上がった。ちなみに挿絵ピンはお待ちしておりません。こんなの手がけられるのえまる御大くらいしかいないからね。
     身構える京香と零桜奈。
    「零桜奈!」
    「うん……」
    「こうなったら、『遊びは終わり、ここから先はバトルパートよ!』のパターンでいきましょ!」
    「うん……」
    「私は(自分から見て)右から、零桜奈は左から攻めて!」
    「うん、(相手から見て)左からだね」
    「戦闘開しゃむん!?」
     京香はあろうことか零桜奈を押して転倒した。
     ハッとして顔をあげる二人。
     ツボ押しマンは大量のツボ押しグッズ(振動機能のついたもの含む)を掲げて立っていた。
    「さあ、ツボ押しタイム!」
    「壺推しタイム!」
     後ろに立ったペーニャが巨大な壺を後ろから頭にソォイした。砕け散る壺。
     白目を剥いてぶっ倒れるツボ押しマン。
    「おっと、ポットり落として割ってしまいましたよ。壺(ポット)だけに!」
     ネコ(バーナーズ卿)を抱っこして振り返るペーニャ。
     その足下ではツボ押しマンが完璧に灼滅されて消えていた。

    「そして、今に至るわけですよ」
     むっくりと起き上がって、ペーニャは言った。
     カッと目を見開く京香。
    「じゃあ私たちがこうなったのはなんで!?」

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年12月21日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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