ミニスカサンタさんが夢と希望をくれる依頼

    作者:空白革命

    ●ミニスカサンタだが!
    「わかってあげたい、あなたの孤独。暖めたげたい、あなたの心。今年もこの季節が――」
     雪結晶を模したようなタンバリンを持ち、両腕をクロスさせる。
     しゃりしゃりと鳴らしながらゆっくりと、しかしのびのびとそれを天に掲げた。
     サンタのようなもふもふのついた帽子。
     サンタのようなもふもふのついた服。
     しかしヘソ出し肩出しミニスカルックの、冬の寒さに喧嘩売るようなクライマックスフォームである。
     もちろんボディは。
     もちろんボディは。
     筋肉モリモリ、マッチョマンの変態だ!
    「キタアアアアアアアアアアアアア!」
     
    ●ミニスカサンタが女だとは、言っていない!
    「ウワアアアアアアアアアアアアアアアア!」
     サン・クロース(戦うミニスカサンタ・d32149)は説明用に出された紙芝居を台座ごとひっくり返した。
    「ナニコレナニコレなによこれ! 下りだけ見ると私が出てるのかなーと見せかけて途中から正体を現わすそのアニメ的な手法ナニコレ!」
     頭を抱えてぶんぶん振り回すサン。本物のミニスカサンタ(美少女)である。去年あたりからデビューしたミニスカサンタである。
     ひっくり返った紙芝居をたたむ須藤・まりん(高校生エクスブレイン・dn0003)。
    「これが今回実体化した都市伝説、ミニスカサンタマンだよ」
    「ミニスカサンタマン……」
     
     説明しよう。
     ミニスカサンタマンとはミニスカサンタの服を着た筋肉モリモリマッチョマンである。
     道行く人に夢という名のバックドロップや希望という名のアルゼンチンバックブリーカーや一夜の奇跡と名付けたフェニックススプラッシュをくらわせてくる変態である。
    「たおさなきゃ! みんな、力を貸して!」
     サンちゃんは燃えるような使命感と共に、ぐっと拳を握りしめた。


    参加者
    橘・樹月(ヴァイスガーデン・d00641)
    来栖・律紀(ナーサリーライム・d01356)
    望月・心桜(桜舞・d02434)
    篠宮・遥音(海緒の瞳に映るものは・d17050)
    ヴィンツェンツ・アルファー(ファントムペイン外付け・d21004)
    ヴォルペ・コーダ(宝物庫の番犬・d22289)
    サン・クロース(戦うミニスカサンタ・d32149)
    櫻井・聖(白狼の聖騎士・d33003)

    ■リプレイ

    ●まだ続けるっていうのかよ、クリスマスなんかを!(宇宙世紀に言いそうな台詞)
     夜の町を橘・樹月(ヴァイスガーデン・d00641)は歩いていた。
     コートのポケットに両手を入れ、顎を上げる。
    「もうクリスマスイブどころか、クリスマスだって過ぎていますよ。世間は年末の準備で大忙しで、チキンもケーキも売っていない。それでもこの寒空でミニスカートをはいて腹を出すなんて、立派な職務精神だ。とてもまねできませんよ、そんな変態行為」
     乾いた笑いを浮かべる樹月。女性ファンのためにもう何カットかとっておきたいなと思うところだが、樹月は急に語りをやめて咳払いした。
    「……」
     クリスマスといわず一年中このカッコしてる本物中の本物、サン・クロース(戦うミニスカサンタ・d32149)が体育座りしてこっちを見ていたからである。
     都市伝説に関しては寒さ感じないんだろうなで済むが、彼女の場合はガチである。ガチっていうかガチガチである。歯が。
    「変態は、取り消してもいいですかね」
     嫌味な樹月もクリスマス(ロスタイム)くらいは譲る。というか、百パー善意でミニスカはいてる人を責める程酷い奴では無い。
     その空気を察してか、望月・心桜(桜舞・d02434)が元気よくぴょいーんと飛び出してきた。背負った袋からナノナノ(ここあちゃん)が顔だけ出している。
    「わらわ、この前テレビで見たのじゃ! ミニスカサンタのパンツは見ていいって!」
    「それは嘘だと思う。見せても苦しくないパンツははいてるけど」
    「わらわのパンツは見せないぞ?」
    「見ない見ない。衣装似合ってるわよ」
    「そうか! ここあもか!」
    「なの!」
     きゃっきゃする心桜たち。なんと微笑ましい光景だろうか。篠宮・遥音(海緒の瞳に映るものは・d17050)は足下のぽち(霊犬)をなでこなでこしながら、ほんわかした気持ちになっていた。
    「季節は外してしまいましたけど、あんな風に笑い合えるなら……ミニスカサンタもいいものかもしれませんね」
     とかなんとかリプレイのシメみたいなことを言っていると。
    「なら遥音ちゃん、着ちゃいなYO」
     過剰に軽いノリでヴォルペ・コーダ(宝物庫の番犬・d22289)がスライドインしてきた。
     水着を売るためにあるような全身型ハンガーを手に。
     ミニスカサンタルックをつけて。しかも胸から上がないワンピース型(背中にカイロ入れておけるやつ)である。
    「……」
    「おっと遥音ちゃんに着せる服をそこらのお店で買ってきたと思われちゃこまるね。スリーサイズにピッタリのオーダーメイドさ。遥音ちゃんが着てくれるなら俺は幸――」
     ライターで火をともす遥音。
    「バーニンッ!?」
     慌てて火を消すヴォルペを見下ろして、遥音は前言を自主的に撤回した。
    「私が何を言いたいかわかりますか」
    「ごめん遥音ちゃん、クリスマスだからってはしゃいじゃったよ。そうだよね……サンタはなってもらうものじゃない、自分がなるものだ!」
     コートを脱ぎ捨てる。するとどういう構造か知らんけど一瞬でヴォルペはミニスカサンタ(さっきの遥音用と同じやつ)にチェンジした。
    「……」
    「イカれたサンタを紹介する! まずは俺、ヴォルペおいたん! そしてクリス・リッキー」
    「いえええええええええええええ!」
     来栖・律紀(ナーサリーライム・d01356)がアニメの水着回で両肘両膝を追って海へ飛び込む人みたいなポーズで飛び込んできた。
     当然のようにミニスカサンタだった。
     当然のように鼻血を吹いていた。
    「ミニスカサンタ祭りの会場はここですね!? ボクにもプレゼントくださああああああい!」
    「そしてヴェンツェエエエエンツ!」
    「夢という名のバックドロップを貰うんじゃない。バックドロップという夢をもらうんだ」
     近くのカフェからドアをがちゃっと開けて出てくるヴィンツェンツ・アルファー(ファントムペイン外付け・d21004)。
    「さあ皆、夢と希望を分かち合おう」
     ナチュラルにバカを晒している律紀やヴォルペが可愛くみえるくらい、色々こじらせた変態が現われた。
    「そして最後にいいいいいいいい!」
    「ミスター・サンタアアアアアアア!」
    「キタアアアアアアアアアアアアアア!」
     サッカーでゴールをきめた選手みたいなテンションでミニスカサンタマンがスライディングしてきた。
     両手にはジングルのベルが握られ、りんごんりんごん打ち鳴らしている。
    「イエス! SA・N・TA!」
    「「SA・N・TA!」」
    「「SA・N・TA!」」
     完全にできあがったサンタ祭りの会場に。
    「……えっと、うん」
     櫻井・聖(白狼の聖騎士・d33003)が比較的ガチな格好で現われた。
     ガチっていうか、聖サンタニコラウス氏を信じているタイプの格好で現われた。
    「聖なる夜に、精神衛生上ないものを見せつけられると、こまるかな、うん……あとクリスマスは、そういうイベントじゃないよ……うん」
     両手を合わせ、樹月の方を見る。
    「そう思うよね」
    「……」
     樹月は眼鏡を中指でなおし、ついっと顔を背けた。
    「やっぱり変態ですね」

    ●ウィーウィッシュアメリクリスマス!(マウントポジションで人を殴りながら)
     悲報、既にリプレイ五割。
     ゆえに、巻きで行くぜ!
    「サンタドリーム!」
    「ぬんがっふ!?」
     ヴォルペは意味不明の断末魔と共に冷たいアスファルトに叩き付けられた。
     ブリッジ姿勢で白目を剥いてぴくぴくするヴォルペ。それをスマホ撮影する心桜。
    「ちょ、ちょっと……大丈夫ですか?」
     ここあちゃんとぽちにひゃんひゃんなのなの(傷口を手でなでなでする行為をさす)されるヴォルペに、遥音は駆け寄った。
    「遥音ちゃん、見ていてくれたかい……俺のスタイリッシュなミニスカサンタアクション」
    「全部編集カットされてますけど」
    「そうか、見てくれたか……ふふ、最後に、お願いをしてもいいかな」
    「先輩……」
    「遥音ちゃんもひゃんひゃんなのなのしてくれる?」
    「しません」
    「ひゃん!」
    「黙ってください」
    「ひゃんひゃん!」
    「黙れ」
     遥音は速やかにトドメをさしつつ、ミニスカサンタマンへと向き直った。
     いざカット編集された戦闘の続きを腕を異形化させたところへ。
    「サンタフォーチュン!」
    「しゃんぜりぜ!?」
     律紀が頭からアスファルトに叩き付けられていた。スマホ撮影する心桜。
    「あ、あの先輩鼻血が……」
    「大丈夫、元から☆」
     軽く池がでいるくらい鼻血を放出しながら、律紀はいい笑顔で親指を立てた。
    「ふふ、でも恥ずかしいな。度重なる戦闘でボクらのサンタコスはボロボロだよ。全裸一歩手前っていうか、ほぼ全裸だよ」
    「言わなければなかったことにできそうな事実をなぜ口に出したんですか……」
     しかし被害担当の変態たちがやられた今、誰がサンタの夢と希望を引き受けるのか?
     いやいる。まだ僕たちには希望がある。
     そう!
    「苦痛が僕を助けてくれる」
     ヴェンツェンツ(こじらせマゾ)だああああああああ!
     今日はほぼ出番ないなと察したエスツェットはカフェテリアでティータイムである。
    「みんな夢や希望をいらないという……だから僕がもらうんだ。こんな寒い時代に抱きしめてくれる人がいる。それだけで僕ハグッ!?」
    「サンタミラクル!」
     ヴェンツェンツがアスファルトの大地へ逆さまに突き刺さった。スマホ心桜以下略。
     フシューと白い息を吐き出すミニスカサンタマン。
    「これで全ての変態は倒れた」
    「一番マズいのが残ってますけどね」
     変態たちを路肩に破棄した樹月は改めて戦闘態勢をとった。
     ポケットから出した手は黒い手袋に覆われ、全ての指から糸が伸びている。しかしてその手袋は彼のポケット内に溜まった影業であり、伸びる糸もまた影である。
    「プレゼントくらいは用意しているんでしょうね。あったとしても受取拒否をさせてもらいますがっ」
     高速で接近。爪を繰り出すかのように腕をふると、伸びた糸がミニスカサンタマンを切り裂いた。
    「はっ、これはチャンスかの!?」
     ヴォルペたちの惨状をスマホアプリで呟いていた心桜はハッとして顔をあげた。
    「おっとだめじゃだめじゃ。わらわは傷ついた仲間を回復(撮影)するって決めきーじんへーん!」
     振り向き鬼神変。
     それはミニスカサンタマンに直撃し、彼はお空を回転しながら飛んでいった。
     バレーのトスみたいな要領でもっかい打ち上げる遥音。
    「そちら、行きましたよ」
     キッと合図を送る遥音。送られた側のサンはキリッと顔を作り……。
    「ミニスカサンタがお好き? 結構。ではますます好きになりますよ! さあさどうぞ、ミニスカサンタのニューモデルです。変態でしょう? ンアアおっしゃらないで。パンツが白。でもレースなんて見かけだけで肌は透けるしすぐ脱げるわほつれるわ、ろくなことはない。筋肉もたっぷりありますよ。どんな体格の方でも大丈夫。どうぞ殴ってみてください。いい筋肉でしょう、余裕の音だ。馬力が違いますよ」
    「一番気に入ってるのは」
    「何?」
    「ミニスカだ」
    「ベネッツ!?」
     飛んできたミニスカサンタマンに激突してぶっ倒れるサン。
    「く、しまった。コマンドーネタに集中するあまり……なんて相手なの」
    「そこに苦戦したのはサン嬢だけじゃが」
    「でも……フフ、恐い? 当然よ、ミニスカサンタの私に勝てるもんですか」
    「それ死ぬフラグ」
    「恐くなんか無いわ! ギターなんていらない、ルドルフもよ! 野郎ぶっころがしてやああああああああある!」
     うおーと言いながらタンバリン掲げて飛び込んだサンちゃんが。
    「サンタヘブン!」
    「シュワルツ!?」
     膝蹴りで吹っ飛ばされた。
    「フラグを立てすぎたんだよ、うん」
     それまで黙って状況を見守っていた聖がようやく動いた。
     半獣化した腕でミニスカサンタマンの頭を掴むと、ウルフアイアンクローでぎちぎち締め付けた。
    「サンタさんの服は防寒具なんだよ。ミニスカは……ともかく、マッチョマンが着るものじゃないよ、うん」
     聖はミニスカサンタマンをぼかすか殴ると、ぐるぐる振り回して投げ放った。
     地面に突き立ったミニスカサンタマンズに激突する。
    「ハッピー」
    「メリー」
    「「クリスマス!」」
     樹月のシャドウパンチ、そして心桜と遥音の鬼神変パンチ、更には聖のウルフパンチが炸裂し、ミニスカサンタマンズはお空の彼方へ飛んでいった。

    「うっ……僕は、気を失っていたのかな。希望にあふれた夢を、見ていた気がする」
     頭を押さえて起き上がるヴェンツェンツ。
     だくだく血を流したサンがにっこりと笑った。
    「変態は去ったわ」
    「随分寒くなりましたね。帰りましょう」
    「ええ……」
     樹月と遥音も、彼の回復を確認して帰路につきはじめる。
     頷く聖。
    「これで今年のクリスマスも、平和になったね。うん」
    「暖かいものを食べて早く帰るのじゃ。年越しの準備で忙しい時期じゃからのう」
     コートを羽織り、ぴょんぴょん跳ねて道を行く心桜。
     そんな彼女たちの空には、ミニスカサンタマンズの笑顔が浮かんでいた。
     三人分。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年12月28日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 4/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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