カップルブレイクシスターズ

    作者:飛翔優

    ●我ら羅刹三姉妹
     クリスマスから大晦日、お正月にバレンタイン……年の瀬も年の始も、イベントには事欠かない。
     カップルたちは浮足立つ。
     街中は、熱を帯びた幸に満ちていく……。
     無論、無縁な者もいる。
     中にはそれが気に入らない者たちもいる。
    「……恨めしい」
     片目を艶やかな長髪で隠した女は一人、恨みがましそうな視線をカップルたちへと向けていた。
     傍らに立つロリータ風衣装に身を包んでいる一見だけなら少女に見える……よく見てみればそれなりの年齢の女性とわかる者は、にこにこ笑顔を浮かべたまま口を開いた。
    「右を見ても左を見てもカップルカップル……ほんと眩しい眩しい、眼がやられちまいそうな光景ですねぇ……きゃはっ」
    「……どうせ私たちは」
     その隣に立つ長身痩躯の女性もまた、深く肩を落としていく。
     静かなため息を吐いた後、皆一斉に頷いた。
    「こんな恨めしい光景は……」
    「破壊、破壊、しやがらないといけませんね、きゃはっ」
    「……まあ、殺しても虚しいだけだとは思うけどさ……」
     女性たちは三者三様な足取りで、カップルたちに近づいていく。
     視線を向けられるなり、様々な方法で殺していく。
     額から除く、黒曜石の角をきらめかせながら……。

    ●夕暮れ時の教室にて
     灼滅者たちを出迎えた倉科・葉月(大学生エクスブレイン・dn0020)は、リュカ・メルツァー(光の境界・d32148)の予想によって導き出された光景がある。
     前置きした上で、説明を開始した。
    「とある街で三体の羅刹が暴れる……そんな光景を察知しました」
     戦いが続くに連れて、激化していく戦い。その流れについていけなくなったダークネスが、手を組むことがある。
     今回の羅刹たちも、そのパターン。三体で手を組むことで実力を補い合いながら、心のままに暴れている。
    「無論、放置するわけには行きません。退治してきて下さい」
     続いて……と、葉月は地図を取り出した。
    「皆さんが赴く日の午前十時。羅刹たちはこの、恋人たちがよく利用するという繁華街にやって来ます。目的は……といいますか」
     今回相手取る羅刹の名は、マリ、クリス、スー。全員女羅刹で、カップルに恨みを抱いている……というか嫉妬しているという特徴を持つ。
    「あるいはたまたま訪れただけかもしれませんが……ともあれ、羅刹たちはこの場所にいるカップルを殺戮する……見えたのはそんな光景、ですね」
     故に、その付近で待ち構え、後の話す羅刹たちの特徴を手がかりに探し、先手を取って仕掛ける必要がある。幸い、姿はとても特徴的な上に付近にはカップルしかいないため、すぐに見つけることができるだろう。
     或いは、カップルを装い囮を担っても良いかもしれない。
     後は人払いを行い、戦いを挑めば良いという流れになる。
     敵戦力は、マリ、クリス、スーの系三人。三人で灼滅者八人と優位に渡り合える程度の力量で、総員鬼神変を使えるという共通点を持つ。
     マリの姿は、片目を艶やかな黒髪で隠している女性。恨みがましい幽霊のような性格。
     妨害役を担っており、髪を伸ばして複数人を捕まえる、怨念じみたオーラを放ち複数人を威圧する……といった行動を取ってくる。
     クリスの姿は、ロリータ風衣装に身を包んでいる一見だけならば少女に見える見た目をした女性。自分を可愛らしく見せようとする性格。
     治療役を担っており、メルヘンマジックと称する力で仲間の傷を癒やし、毒などを浄化する。手に持つ杖で地面を叩く事で衝撃波を放ち複数人の加護を砕くメルヘンマジック(物理)を用いてくる。
     スーの姿は、長身痩躯の女性。諦め癖の付いている暗い女性、と言った性格。
     攻撃役を担っており、相手を掴んで何度も叩きつける、自らの力を高めながらの突撃……と言った攻撃を仕掛けてくる。
     各々担当する役目に特化するような力を持っており、それを声を掛け合いながらの連携で更なる力へと高めてくる。その辺りを留意して戦いを挑む必要があるだろう。
    「以上で説明を終了します」
     地図などを手渡し、締めくくりへと移行した。
    「嫉妬自体はエネルギーになる事もある感情で、悪いものではありません。しかし、他人を害してもなにかが変わるわけではありません。どうか、全力での戦いを。何よりも無事に帰ってきて下さいね? 約束ですよ?」


    参加者
    椎木・なつみ(ディフェンスに定評のある・d00285)
    佐藤・志織(大学生魔法使い・d03621)
    央・灰音(超弩級聖人・d14075)
    ガーゼ・ハーコート(自由気ままな気分屋・d26990)
    八宮・千影(白霧纏う黒狼・d28490)
    リュカ・メルツァー(光の境界・d32148)
    秦・明彦(白き雷・d33618)
    アクレルド・ガージウェー(赤い忠犬・d35934)

    ■リプレイ

    ●幸せに満ちる街中で
     世界を明るく照らし暖める陽光を、遮ることのできるものはいない。鮮やかなスカイブルーを保ち続けている空の下、クリスマスムードに染まる街は穏やかな温もりに満ちていた。
     聞こえてくるのは弾んだ調子のクリスマスソング、家族連れの愉しげな会話、恋人たちが愛を囁く声。時には美味しそうな匂いのする方角へ、時には明るく呼びこむ声に誘われ、店の中へと消えていく。
     秦・明彦(白き雷・d33618)と共に街を歩く佐藤・志織(大学生魔法使い・d03621)は、眩そうに目を細めた。
     今年のクリスマスは平日。社会人やアルバイターには微妙に惜しい日程。だからこそ、一生懸命スケジュールを調整していちゃいちゃしているのを邪魔してはいけない。そもそも、クリスマスがなくなったら薄い本が捗らなくなってしまう。
     創作にとって、クリスマスネタがどれだけ重要なイベントか。自らのリア充など二の次、まさに呼んで字の如く二次元の次!
    「……うむ」
     満足気に頷いた後、周囲へと視線を送る。
     不幸を一身に背負ったような三人組の女性は、いない。
    「……それにしても、なんか遠回しな羅刹さん達ですよね。自分の欲望に正直に生きるのが羅刹さんたちの種族特徴。ナイスな男子を逆ナンなり襲うなりしてしまっても良いでしょうに。それが出来ないって、どこか乙女な方々なんですかねぇ」
    「……そうかもな」
     明彦は、どことなく複雑な様子で瞳を伏せた。
    「この手の殺戮を行うダークネスに対しては、質したり、問い詰めたりするところだが……哀れ過ぎて、しかも有害極まりないので、声を掛ける気が起こらないと言うか……」
     明彦自身、恋人はいる(囮役の相方にと誘ってきた志織ではない)。
     ならば、恨みの対象にされる前にさっさと灼滅するほうが後腐れがないのではなかろうか?
     二人はそれぞれの思考を巡らせながら……傍から見れば恋人というよりも兄妹や友人といった様子を保ちつつ……捜索を続けていた……。

     手に伝わる温もりは、大切な人が与えてくれるもの。
     自然と表情が緩むのははよく知る存在だから。
     ガーゼ・ハーコート(自由気ままな気分屋・d26990)はアクレルド・ガージウェー(赤い忠犬・d35934)と共に街中を、弾んだ調子で練り歩く。
     すれ違う人々には力を用い、羅刹たちの出現予測場所から離れるように仕向けていた。
     抗えぬ力に促され、人々は自ら遠ざかる。あるいは、戦闘の余波が届かぬだろう店の中へと身を隠す。
     二人と志織たちだけが、弾んだ調子で街を歩く存在として残されて……。
    「……」
     殺意に満ちた視線を感じ、ガーゼは落ち着いた調子で視線を向けた。
     片目を長い髪で隠した女、ロリータ風衣装に身を包んでいる少女、長身痩躯の女性……羅刹・マリ、クリス、スーの三人が、恨みがましい視線を向けてきている。
     ガーゼは静かな笑みをたたえたまま、アクレルドに耳打ちした。
    「……」
    「え? 笑顔で、ですか?」
     戸惑うアクレルドに頷き返し、満面の笑みを羅刹たちへと差し向けた。
     同様に笑顔を向けていくアクレルド。
     驚いたように目を見開いた羅刹たちの顔が、憤怒に染まる。
     愉しげに眺め、ガーゼはつないでいた手を話し、アクレルドの頭を軽く撫でた。
    「んじゃ、期待してるよー、アーク」
    「あ、はい」
     前衛を担える位置へと移動していくガーゼ。
     明彦たちを含め、集って来る仲間たち。
     変わらず向けられている殺意の視線。
     変わらぬ調子で見つめ返し、アクレルドは小首を傾げた。
    「えっと、そんなに仲がよろしいのなら、お三方で過ごせばよいのでは……?」
    「……恨めしい、厭味ったらし言ったらありゃしない」
    「え? クリスマスは家族で過ごしますよね?」
     きょとんと目を見開きながら、アクレルドは続けていく。
    「バレンタインはプレゼントは贈りますが、男性が告白するイベントがメインイベントでは?」
    「日本に外国文化を持ち込むんじゃねーよめりけ……コホン。日本とは文化が違うのですよー、きゃはっ」
    「……なるほど、国によって違うのですね」
     うんうんと頷き、武装を整えていくアクレルド。
     一方、ウイングキャットのイオを呼び出したリュカ・メルツァー(光の境界・d32148)はあざ笑う。
    「おーおー女三人でおでかけか? 寂しいもんだな」
    「……」
     すぅ……っと、スーが静かに目を細めて腰を落とした。
     央・灰音(超弩級聖人・d14075)も剣を横にかまえていく。
    「……負け犬? しまった声に出してしまいました」
    「恨めしい……」
     どことなく気のない灰音、舌打ちを刻んでいくマリ。
     八宮・千影(白霧纏う黒狼・d28490)は銃を構えながら、小さく唸る。
    「ん~……、恋愛事はまだよくわからないけど、笑顔でいれば男の方から寄ってくる、と聞いたことがあるよ」
     羅刹たちの中で、笑顔を浮かべているのはクリス一人。クリスの、張り付いたような笑顔だけ。
    「それに、腹いせで暴れる感覚もよくわかんない、かな。そんな時は美味しい物を食べれば幸せな気分になるし、ね」
    「きゃはっ、それは恵まれてるからなんだぜこのやろう」
     一方的に火花を散らされるような会話を交しているうちに、双方準備は整った。
     恋人たちを、街の平和を守るための戦いが、晴れやかな青空の下で開幕する……。

    ●嫉妬に満ちた三姉妹
     椎木・なつみ(ディフェンスに定評のある・d00285)が右手を掲げた時、青い光が世界を満たす。
     誘われるようにして、スーがなつみに向かい駆け出した。
     道中、肥大化したスーの拳。
     なつみは体を軽くひねり、胴に軽く掠めさせるのみに留めた上で足ばらい。
     片方は掠めた拳の衝撃が足へと伝わり、片方は軽い浮遊感を覚え、弾きあうようにしてよろめいた。
     掠めた場所から伝わる、鈍い痛み。なつみは瞳を細め、姿勢を正し……、なおもスーを見据えていく。
    「その程度の勢いしかないから、殿方をお誘いすることもでいないのではないでしょうか?」
    「……」
     拳を握り、瞳を細めていくスー。
     一方、灰音は大地を蹴った。
     クマが浮かんでいるようにも思える瞳で灼滅者たちを見回しているマリの懐へと踏み込んだ。
    「行きますよ……! イブの日に独り身三姉妹もとい行かず後……げふん」
    「うーらーめーしーやー……」
     怒りに輝く瞳を見据えながら、雷を宿した拳を突き出した。
     左肩へと掠めさせ、マリを二歩ほど後退させていく。
    「危ないスーのためのメルヘンマジック! きゃはっ」
     クリスの声が響き渡り、世界を星にキャンディ、花に猫……ポップでキュートな輝きが満たした。
     視線をなつみへと向けていたスーが、我に帰ったかのように他の灼滅者たちを見回し始めていく。
     輝きを吹き散らすかのように、志織が激しくギターをかき鳴らした。
    「さあさあ、まだまだ戦いは始まったばかりですよ!」
    「恨めしい……その明るさが恨めしい……」
     音色に内包されている力をぶつけられ、よろめく様子を見せたマリ。
     直後にはその艶やかな黒髪が伸び、前衛陣へと向かっていく。
     明彦は左腕を縛られるも、軽い動作で振り払った。
    「彼女達の悲しみをさっさと終わらせよう。その方が彼女たちの為でもある」
     拳に雷を宿しながら大地を蹴り、スーの横を抜けてマリの元へ。
     勢いを乗せた拳がマリの右肩へと打ち込まれた時、スーがマリへと……明彦へと体を向けた。
     即座になつみが踏み込んで、スーの進路を塞いでいく。
     体を丸めながらの体当たりを、オーラで固めた両手の手のひらで受け止めていく。
    「あなたの相手は、この私です……!」
    「まあ、加護は砕かせて頂きますが」
     なつみが押さえ込んでいる横合いから、灰音が非物質化させた剣を振り下ろした。
     非物質化した刃は力そのものを、宿した加護すらも打ち砕いていく。
    「まだまだこれからだよー、メルヘンマジック! きゃはっ」
     直後、世界を再びポップな光が包み込み。
     マリの表情が、若干だけれど良化していく……。

     スーが攻撃を、マリが妨害を、クリスが回復を担当している羅刹たち。
     スーの攻撃は主になつみが引き受け、傷を重ねながらも押さえ込むことができている。
     一方、マリの妨害は激しく、アクレルド一人で治療するには心もとない。他の仲間達が治療をサポートし、結果として手数が減る機会が増えている。
     その分、倒してしまえれば楽になるはずと、灼滅者たちは攻撃を重ねていた。
     集中されれば、クリスの治療も追いつかないのだろう。マリの動きは、灼滅者たちと同様にどんどんどんどん鈍くなる。瞳に宿る力もまた、弱々しい物へと変わっていく。
     恨みがましい瞳が前衛陣へと向けられていく中、視界の外に立つ千影は銃に額当ての円盤とガトリングのパーツを装着。
     砲塔をマリに突きつけた。
    「呪われし狼姫の牙、その身に受けてもらうよ。弾丸、散華」
     円盤を回すと共に放たれた弾丸が、マリの体を貫いていく。
     踊るかのようによろめいたマリは、恨みがましく空を仰ぐ。
    「うらめしや……この世界に、うらめしや……」
     糸が切れた人形のように倒れ、消滅していくマリ。
     クリスとスーが漂わせている空気に、更なる殺気が宿っていく。
     涼しい顔で、千影は二人に語りかけた。
    「おねーさん達、元は良いのだからもっと笑顔でちゃんとした服装したほうがいい、と思うよ」
    「余計なお世話だこのやろう、きゃはっ」
    「これで……」
     一方、アクレルドは優しい風を招き、マリの残した呪縛を浄化する。
     激しい呪縛がなくなった以上、状況は徐々に良化していくはずと、灼滅者たちは更なる勢いで攻撃を仕掛け始めた。
    「……」
     言葉なく、ただただ瞳に怒りを宿すスーはリュカに向かい、体を丸めながらの体当たりを放っていく。
     リュカは縛霊手をはめた腕で正面から受け止めた。
    「自分勝手な奴らだな。人の幸せ妬んだりするから自分たちに幸せが来ねえんじゃねーの!」
     瞳を細めるとともにはねのけて、ヒールの靴を鳴らしながら走り出す。
     後方にて口をへの字に曲げているクリスへ視線を送り、逆十字を描き出した。
     イオもまた魔法を放ち、左肩に逆十字が記されたクリスを軽く拘束する。
     さなかにはガーゼが踏み込んで、スーの足元にバベルブレイカーを突き刺した。
    「衝撃のグランドシェイカーってさー。ある意味、床ドンだよねー……」
     ニヤリと口の端を持ち上げながらトリガーを引き、地面に伝わる衝撃波。
     飛び退るスー。
     避けられてしまったのは、まだまだ万全には遠いからだろう。
     耐えていけば問題ない……と、千影はパーツを外しクリスに銃を突きつける。
    「呪創弾、痺呪」
     黄色い弾丸を込めた後、トリガーを引く。
     虚空を貫く弾丸は、誤る事なく逆十字の中心を貫いた。
    「そこ!」
     よろめくスーを、リュカの放つ影が襲う。
     小さな全身を飲み込んでいく。
    「クリス!」
    「……きゃはっ、大丈夫よスーちゃん」
    「……」
     クリスが影を打ち破っていく中、唇を尖らせリュカを睨みつけていくスー。
     間になつみが割り込んだ。
     直後、スーに両肩を掴まれた。
     持ち上げようとするスーと、地面に留まろうとするなつみの、力の比べ合い。
     一歩も引かずに睨み合う中、なつみは右手にオーラを走らせる。
     青い輝きで世界を満たす。
     クリスの心を惑わせるため。
     少しでも早くクリスを倒すことができるよう。
     しかし……。

     攻撃を担う者たちの中に、遠距離攻撃を持たぬ者がいた。
     スーに守られているクリスへ届く攻撃の数が減り、マリの時のように順調に削っている……とは行かない状態に陥っていた。
     手こずっている間にも、スーの力が前衛陣を削っていく。癒やしきれぬ傷の数が、増えていく。
     傷が増えているのはクリスも同じと、呪縛から解き放たれた灼滅者たちは攻撃を重ねた。
     イオの放った魔法が、クリスを完全に拘束した。
    「くっ……」
    「……」
     身じろぎするクリスをキャンパスに、リュカが逆十字を書き記す。
     額に逆十字を刻まれ、クリスは膝をついて倒れ伏した。
    「……ごめんね、スーちゃん……」
    「クリス……」
     拳を握り、灼滅者たちを睨みつけていくスー。
     見つめ返し、明彦は剣を非物質化。
    「残るは彼女だけ。早急に幕を引くとしよう」
     踏み込み、剣を突き出した。
     体を捻り避けていくスーの力を削ぎとった時、傷だらけの志織が懐へと入り込む。
    「一気に決めますよ」
    「やらせない……」
     巨大な十字架を持ち上げた時、スーは拳を肥大化させた。
     先端を突き出した時、拳もまた放たれて……。
    「……」
     二つの力が交錯し、両者の体を捉えて弾き合う。
     スーは尻もちをつきながらも立ち上がり、志織は……。
    「……燃え尽きたっす……真っ白に……」
     立ち上がろうと足を震わせた後、倒れ伏した。
     一瞥し瞳を細めた後、灰音は拳を固め懐へと踏み込んでいく。
    「クリスに手こずった分、あなたへのダメージも重なっているはずです」
     腰を落とし、放つは正拳。
     クロスした両腕に防がれるも、加護を砕いた手応えは得る。
     頷く灰音。
     見据え、アクレルドは手元にオーラを集める。
    「今、このタイミングなら……」
     退いていく灰音と入れ替わるように、集めたオーラを解き放った。
     質量を持つオーラに揺さぶられながらも、スーは前へ、前へと走り出す。
     進路上にガーゼが割り込んで、体当たりを受け掴みとった。
    「今がチャンスだよー」
    「呪創弾、石呪」
     千影は放つ、灰色の弾丸を。
     スーを、石化の呪いで包むため。
    「ボクの牙は、人を不幸にする存在を砕く! ……だよ」
    「ぐ……」
     歯ぎしりし始めるスーの元へ、明彦が歩み寄っていく。
    「嫉妬の力は凄いものが有るな。でも、愛の力には勝てない」
     告げると共に杖を振り下ろし、左肩へと振り下ろした。
     ぶち当てると共に魔力を爆発させ、スーを地面に伏せさせた。
    「……ごめん、マリ、クリス……」
     静かな言葉を残し、スーもまた消滅した。
     戦いを終えた戦場には、高まりし熱を癒やすかのような冷たき風が吹き抜ける……。

    ●街を満たすのは
     得物をしまった後、なつみは倒れた志織を抱き起こした。
     各々の治療や片付けを行っているうちに志織は目覚め、休めば大丈夫……と笑っていく。
    「良かった……これで万事解決、ですね」
     笑い返し、志織を立ち上がらせていくなつみ。
     その頃には人も戻り、街は再び熱に抱かれた。
     浮かんでいるのはもちろん笑顔。聞こえてくるのは愉しげな会話、満ちているのは幸。幸せな空気!
     さんさんと輝く太陽に抱かれて、人々は一年に一度の時を……これからも続いていく幸せな時間を過ごしていく……。

    作者:飛翔優 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年12月30日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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