俺の誕生日は12月27日である。本当は今日だよ、ばかやろお。
冬休みだわ年の瀬の忙しい時期だわで、ダチは誰1人祝ってくれねーし。
なんでこんな時にかーちゃんは俺を生んだんだよ、せめて年明けにしろよ。
なにより、だ。
「明比(アケビ)メリークリスマス&誕生日おめおめ!」
「明比、2日ほど早いが誕生日のプレゼントだ」
と、まぁ、生まれてこの方14年、ずーーーーっとクリスマスとひとまとめだよ!
今日は誕生日だってのに朝から親父の「はははは、金が浮いていいなあ」に、ついぶちっとキレそうになってコンビニまで出てきたんだ。
コンビニに入ってすぐ売れ残りのクリスマスブーツが目に入って、なんか後頭部で『ぶちっ』て音がした。マジでキレちまったっぽい。
で。
………………あれ?
なんで俺、こんなもんもってんだろ?
まぁ、いいか。
もうなんか、どーでもいいわ。
デモノイドは店員の部品だった頭部をぽいっと投げ捨てると、他に誰も生きている者がいないコンビニで咆吼をあげる。
破壊の限りを尽くされた店内の中で、殊更ひどい被害を被っていたのは売れ残り商品が置かれたレジ横の台だった。
●
「誕生日を祝ったげて。ただし武力も忘れずに」
なんか難しいコト言われたー?!
灯道・標(中学生エクスブレイン・dn0085)さんの言うことには、中学2年の少年がデモノイドに闇堕ちしようとしているのだという。
理由は単純。
27日生まれの少年田之倉・明比(タノクラ・アケビ)は、14回目の誕生日もクリスマスと一緒くたにされて済まされた。その哀しみが、コンビニの売れ残りクリスマスブーツを見て爆発したのだ。
「……腹が立つとか言えなかったん、ですね」
気持ちを無為にする家族に気遣う必要なんてないと考えつつも、嫌われたくないと肩をつかまれ口にしない――恐らく、三和・悠仁(偽愚・d17133)はそちら側の人間だ。
「おとーさんも、しつこいネタの芸人みたいな感じで『クリスマスと一緒だから助かるわー』なんて言っちゃうもんだからさ」
「毎年だとうんざりするでしょうね」
そうして毎年ジワジワとストレスを溜めていた明比少年である、可哀相に。
「接触できるのは、彼がコンビニに入ってきてクリスマスブーツを見た直後だよ」
荒れ狂うダークネスが表になり、腕をデモノイドの証しである蒼に変化させる。放置するとレジにいるバイト女子高生がまず被害にあう。
「……騒ぎにしたくはありませんね。そもそも被害を出したくないです」
「だったら、襲いかかる直前に話しかけて店外に連れ出すのがいいと思うよ」
闇堕ちしっぱなしの灼滅エンドでいいなら、店外に連れだしたらESPで人払いをして殴って灼滅、それで完了。
とはいえこの場合は、結構強いので戦闘で気を抜かないように。舐めてかかると負ける。
ちなみにサイキックは、デモノイドヒューマンと交通標識の物を使用する。
「でもさ、結構な勢いで明比さんなメンタルが残ってそーだし、できれば助けてあげて欲しいなーって、ボクは思うわけさ」
心の手当はわかりやすい。
――彼の誕生日を祝ってあげよう!
もちろん、どうしても戦闘にはなるので誘導先は空き地、大した事はできないだろう。
でも心を籠めた言葉って意外と響くモノである、特にこういう状況下では。
お祝いやあたたかな言葉で明比の気持ちが慰められたら、彼の中のダークネスが最後の足掻きとダダをこねるように皆に襲いかかる。
「それを返り討ちにすれば救出完了ですか」
「ん、そーだね」
説得が上手くいっていれば戦闘力もかなり下がっているはず。
「ぶっちゃけ堕ちる要因について彼にはなんの責任もないわけだから、厳しい言葉は地雷だよ」
あとクリスマスっぽい何かもきっとマズい――指を立て注意事項を告げた標に見送られ、灼滅者達は年の瀬の街へと繰り出すのである。
参加者 | |
---|---|
望月・心桜(桜舞・d02434) |
来須・桐人(十字架の焔・d04616) |
青和・イチ(藍色夜灯・d08927) |
片倉・純也(ソウク・d16862) |
猫乃目・ブレイブ(灼熱ブレイブ・d19380) |
桜泉・レン(若桜・d24817) |
三和・透歌(自己世界・d30585) |
ウナ・ギーヌ(マクシム・d33505) |
●12月27日コンビニの一幕
「わらわ、肉まん……あ、やっぱりピザまん、あ、でも」
「ふむ、すぱいしぃかれーまんもよさそうでござる」
蒸気で曇る蒸し器を前にむむと悩む望月・心桜(桜舞・d02434)と猫乃目・ブレイブ(灼熱ブレイブ・d19380)へ、店員の愛想がそろそろ売り切れそうだ。
(「おいしそうな、ねこ缶どれかな」)
黒猫2匹が入るケージを抱え込み棚を物色するウナ・ギーヌ(マクシム・d33505)の後ろを虚ろな気配の少年が抜ける。同時にウナは掌で隠し錠を外した。
「――」
少年明比がクリスマスブーツを凝視するのに、おでんを物色していた来須・桐人(十字架の焔・d04616)が身を固くした。
ぷちり。
ぷち、ぷちぷち……ブチッ!
袖が弾け蛇腹のように解け床を擦る醜悪な蒼の腕。呆けたのは一瞬、ダークネスが躰を手にしたか獰猛さ瞳に宿し縮めた腕が拳を握る。
「だめなのじゃ」
腕を包んだのは、心桜。反対側からブレイブも抑えに立つ。腕をレジから隠すように立つ桐人は注意深く彼の目を伺った。
「……あ?」
虚を突かれた明比は、闇と人の間ゆらりゆら。
がたん!
彷徨い子の目を醒ますような些かけたたましい音、続けてにゃーにゃーと絡み合う猫の二重奏。ケージから飛び出した漆黒猫と白眼鏡黒猫は、真面目そうな青年片倉・純也(ソウク・d16862)が開けた自動ドアをするりと出ていく。
空き地では桜泉・レン(若桜・d24817)が誕生パーティの飾り付けを仕上げて待っている。できれば明比のままで導きたい。
たまに立ち止まりちらと見たあとつんと澄ます黒猫三和・透歌(自己世界・d30585)の隣、しっぽに雪掛け青和・イチ(藍色夜灯・d08927)が振り返り小首を傾げてまた歩き出す。
「大変! ねこ逃げちゃった」
一緒に追いかけてと頼み込むウナに、明比は未だ蒼から戻らぬ腕と自動ドアを見比べ混迷に陥る。
「少々お話がござって……」
落ち着かせるように囁くブレイブに続き桐人は明比の蒼に指を触れ言葉を流し込む。
『この腕の色……安心してください、僕達は説明できます。場所を移しましょう』
「!」
瞠目に対し心桜は安堵誘うように微笑みかけて、ウナは立ち止まる猫たちを指さし誘った。
「一緒に、猫を追いかけるのじゃ」
「お願い、あの子たち、あぶない」
こくり。
頷きコンビニを飛び出す明比。
「みぃ」
「ふみぃ」
黒猫たちはしっぽをゆらり、安心抱いて軽やかに一目散。
●サプライズパーティ
(「誕生日は誕生日であげるたのしみがあるのにもったいないことされてきてたんだな」)
プレゼントを受け取るのは嬉しい。
でもお祝いをしてあげるのだって、嬉しい。
よし、とレンが満足気に立ち上がった所で飛び込んでくる黒猫、そして駆け込む足音。
「こら、待てってば……あ?」
明比の視界に映ったのは――。
折り紙飾りを纏った折りたたみ椅子は王様の席。
サンタさんののってないケーキには『HAPPY BIRTHDAY』の文字が躍る。
黒猫2匹、敷物の上でころり丸まりしっぽをゆらゆら。
寒空の下にめいっぱい心を尽くしあたたかく飾り付けられた空き地がお出迎え。
「田之倉明比だな、其方は今厄介な状態にある。各位や此方は対処に来た」
「あ、ああ……説明してくれるっ……て。でも、これ……パーティ?」
視線を受けて純也から引き取り桐人が口火を切った。
「その手は心が押さえきれず発露してしまった力です」
未だ傍に居てくれる霧江――自分は罪人、許されない。でも彼に罪を犯させやしない。制御できぬ力で妹を失った轍は踏ませない、絶対に。
「みんなが危ないことにならないように気を付けてるよ。お兄さんもそうしないとね」
かいつまんでの説明が一区切り着いた所で進み出たレンは、コートで隠された蒼を見て明比を見た。
「そんなことできんのか?」
大丈夫、と。
この場の全員が頷く。にゃーと後押しするように鳴く猫は、透歌とイチに戻り改めて頷いた。
――明比の心の特効薬はただひとつ。
「それはさておき主賓が到着したので始めよう。今日が記念日と聞いたからな」
純也が懐から取り出したのは煌めく三角錐。
人に添う支援の可否を問う試金石、可で在れと望み糸を引けば破砕音と共に底が弾け色とりどりな紙が空を飾った。
ぱーん☆
ぱぱーん☆
ぱぱぱーん☆
「……おたんじょうび、おめでとう」
自分が鳴らしたクラッカーに驚いたレンに明比は思わず吹きだした。
「明比殿、誕生日、おめでとうでござる! 大変めでたく!」
「ハッピーバースデイ! 今日はあなたが主役の日です」
穏やかな拍手から流れるように桐人が示したのは主役席。
「誕生日おめでとう……今日は、君の特別な日」
イチはそう告げるとはたはたとしっぽをゆらすくろ丸と共に主役席へ歩み寄り「どうぞ」と振り返る。その仕草が蒼い瞳に白しっぽの猫のそのままで、なんだか納得。
椅子に腰掛けたら首に掛かるは金の折り紙キラキラに猫のシールがぺたりなお誕生日メダル、心を籠めた手作り主役の印。
「ありがとう、すげー嬉しい」
誇らしげに持ち上げるのにレンは愛らしく破顔し「おめでとう」ともう一度。
「お誕生日おめでとうなのじゃよー。蝋燭は14本じゃな!」
ケーキを目の前に置いて、心桜はナノナノのここあが渡してくれる蝋燭を優しく挿していく。腕の蒼が治まるのに安堵し火を灯し。
「誕生日おめでとうございます」
ウェッジに身を預け一歩離れた場所で髪を払う透歌は、猫の頃と余り雰囲気が変わっていない。
「おめでとう、にゃー」
ぴょこんっと猫耳、もふっと猫尻尾、手は招き猫の形で……しかしあくまで淡々と、ウナの醸し出すギャップに明比は背を揺らし口元を抑えた。
「大抵のねこ好きならコレでコロッといくって聞いた、にゃー」
「ぷっ……ぷぷっ……ご、ごめん。すげーおもしれー」
堪えきれず吹きだした主役を囲みパーティのはじまりはじまり!
●キミが生まれた日を祝おう
純也の翳す携帯電話から流れるバースデーソングにあわせての歌声『ディア明比』の所でじーんと胸を熱くなった。
「なーの♪」
「わんっ♪」
合わせて謳うここあとくろ丸、霧江も控えめに。
「さあさ、吹き消すのじゃ」
「ふーっっっ!」
一気に消えた蝋燭、迸る拍手、照れたように頭をかく明比。その腕は完全に人の物に戻っていた。
「対処詳細は後程に。まずは個人の祝日おめでとう」
跪き、締めの言葉を考えてもらえるか? と純也に請われますます頬を赤くする。
「よければ此を」
さりげない所作で差し出したメモ帳と、透明ラッピングに包まれているのは猫型クリップつきのペン。
「おめでとう」
「あ、ありがと」
ぎゅうとペンを握りしめる所にレンから差し出されたお皿には可愛いにゃんこがぽてんと。愛らしい練り切りだ。
「俺のプレゼント、もうひとつはこれだよ」
「すげー、これ喰えんの? なんかもったいないなぁ」
「でも食べないともっともったいないよ。せっかく作ったんだもん」
「手作りかぁ! さんきゅ」
「これ、手触りが気持ち良いですよ」
好みに合えば良いのですが……と、透歌が見せるのは猫のにくきゅうストラップ。
「受け取って、いただけますか?」
ぷに。
つまむと得も言われぬ倖せ感触、でもありがとうとお礼を言った頃にはしれっと元の場所、気怠くウェッジに凭れている透歌なわけで。
(「ホント、猫みてー」)
「にゃー」
ニホンゴはまだ苦手、故に語彙も少なくウナは皆より言葉を探すのに時間がかかる。
(「自分で働いてプレゼントを買えばいい……は、地雷」)
せっせとアルバイトし身を立てている者としてはむずむずしもするけれど落ち込む心に鞭打つのは、よくない。
「1年に1度の誕生日にござるな。なにより、歳を重ねられたことは大変喜ばしく」
ブレイブにぎゅうと手を握られてカアッと頬が染まる、そんな思春期まっただ中。
「……でもよ、日付がらあんま祝われてねーんだよ」
「クリスマスと近いと一緒にされてしまうのでござるな……」
「わらわの彼氏さまもお正月誕生日で、おせちとケーキ、お年玉とプレゼントは一緒みたいなのじゃ」
うんうんと共感示す心桜。
「わらわも春休みが誕生日じゃからよく忘れられて悲しい思いをしたなあ」
「あー休み中の誕生日は寂しいよなぁ。年末とか、忙しいから仕方ないのかもだけどよ」
茶化すように笑うけれど闇堕ちのきっかけとなる程に苦しかったのだ。
「ずっと我慢、してきた君は……やさしいね」
もっちりした猫のぬいぐるみを手渡したイチは伏し目で寂なる声を響かせた。
「でも、言って良いと思う」
――僕の生まれた日を、大切にして、って。
「誕生日は27日だよって言えばいいんだよ」
イチとレンの声にもらった猫をぎゅうと抱けば『ぶみゃっ』と潰れたような音。
「ぷっ……なんだよ、不細工声! 笑いすぎて……はは、はははは」
涙を拭う明比の背中と肩に手をあてるブレイブと心桜、忘れられた悲しい思いに寄り沿う言葉を連ねればグスリと鼻を啜る音が返る。柔らかくも真っ直ぐなイチの瞳をはじめ包み込むような皆へ委ねるように「祝って欲しかった!」と気持ちが弾けた。
「他の人にとっては自分が大事じゃないのかって思うと辛くなりますよね」
傍らに立ち桐人は落ち着かせるように肩を叩く。
「でも、人生の主人公は自分自身なんです。今日はそれを味わっていい日――あなたが命を授かった記念日です」
おめでとうともう一度。
「これは、僕からのプレゼントです」
新たな1年を示すカレンダー。桐人が撮った猫が月を彩り、12月27日には『祝』の文字、この世でたったひとつのカレンダー。
「明比殿のこれからの1年も、良い年になりますように、にござる」
改めて手をにぎり、ブレイブはにぃっと屈託なく笑み、もふもふの猫クッションをぱほり胸に押しつける。
ばほん!
華やかな音で開く傘、ぱっと広がる晴れ空。
「これな、誕生日プレゼント!」
心桜の笑顔も晴れ空。
「あり、がとう。ありがとう! 全部全部大事にする、俺、貰った言葉もプレゼントも全部!」
哀しみは喜びに昇華され少年の涙はうれし泣きに変わる。
「……」
ハレに変じた場を見据え、透歌はふと息をつく。
――蔑ろにされ家族に祝われない兄、関係も薄く感情も湧かないが、こんな風にされたかったのだろかと、ふと。
(「そういえば彼も妹は祝われるのに……と」)
透歌は求めた事などなかったのに祝われていた妹の立場だ。
ケーキを切り飲み物を配り自身は口をつけず裏役に徹する。純也は準備からそうだった。パーティの形を整えるべく出来うる限りの物品を揃えた。学園に来て得た『日常』の知識が生きている確かな手ごたえ。到りたい自分になるために手段を重ね続ける研鑽。
「コンビニ、アルバイト始めようと行ったんだよね?」
ひょこ。
ウナは顔を出すとちょこんと首を傾げる。
「バイトかぁ、確かに今はちょっと憧れるかなぁ。みんなのプレゼントお返ししてーって思うと……」
イチにもらった猫をぎゅむ抱き『ぶにゃにゃ!』に頬がゆるむ。
勤労の気持ちは尊い。
「ちょっと早かったけど、自分で働けると思えた。立派、大人、格好いいよ」
「! ……あ、ありがと、な」
不意打ちの格好いいに照れる声を隠すように、にゃんこに更に『ぶにゃにゃ』と鳴いてもらった次第。
●厄落とし
宴もたけなわ、和やかに見えたパーティも最後の仕上げの時間となる。
『でも祝ってくれねー家族の元に帰るんだぜ? こんなん今だけだって』
「!」
自分の口が吐いた台詞に呆然、そんな明比の腕が再び醜悪な蒼へ膨らんだ――ダークネスの足掻き、だ。
純也は素早くプレゼントを回収すると戦いで壊れぬよう遠ざける。
「明比殿、しばしの辛抱でござるよ」
ブレイブが殺気を放ち、心桜は音を封じて悲劇が重ならぬよう努める。
合わせて手を引き会場から放した桐人は面差しを肉食獣へと変じ、殴る事の説明を口早に。
「あ、あうっ……お、おう俺……頑張る……コイツ、叩きのめして、くれ。嬉しいん、だ。パーティ……すごく」
十字架で殴られ霧江の傘で払われた明比は蒼を抱え込みそう絞り出した。
「わかってるよ」
洗うような光を呼んだレンは手を取るように指さして。
「でも、思ってることはちゃんと言わないと伝わらないんだぞ。家族にも言わなきゃ」
『言ってもわからねぇよ!』
翻る蒼に「やめろッ」と悲痛な叫びが重なった。
「きっとみんな……ほんとは、分かってる」
前に出て受け止めるように喰らったのはイチ。
「だから、闇に、飲まれないで……誕生日、祝ってもらおう」
くろ丸の癒しの眼差しに剥がれ落ちる痛みを見せて大丈夫と顔を逸らす。
両親の愛を求めるから苦しいのか、得られないから愛されないと自分を見限るのか――ならば最初から求めなければいいのに。
……とは決して口に出さずウェッジのアクセルを吹かす。走り込み様の踵落としの透歌に続き激しい銃撃音が耳を打つ。
「明比殿」
気遣わしげな心桜の呼びかけに痛みを堪える呻き、しかし腕はまた確実に収まりはじめている。ならば躊躇わず神凪ぎ厄落とし、ここあもしゃぼんをぶつけた。
手際よく片付けた純也はさりげなく戻る素振りで無造作に明比を蹴り上げた。属した場所から棄てられた起点の蒼は、目に痛い程眩しい。
地に叩きつけられた所をブレイブの放った氷が着弾し、ダークネスを冷たく灼き切る。
(「家族か……拙者にもいたのでござろうか」)
悩める軌跡を持たぬ侍は、少しだけの寂莫抱いて。
「デモノイド、嫌い」
無理矢理宿されたデモノイドの力に唇を曲げるウナは、晒すように蒼の剣で明比の腕を断ち切る。
『がぁあああ!』/「痛ってえ!」
「でも大丈夫、戻れるのなら、アケビは嫌いじゃない」
素の叫びが冬空に響き渡る、ここに田之倉明比は人として帰還した。
「これあげる。今日は特別、プレゼント」
ウナは冷え冷えの瓶牛乳を倒れる頬にぴたり。
「来年もまたお祝いしたいでござるな」
「明比殿じゃったら武蔵坂でも楽しく過ごせそうじゃよ」
ブレイブの手を取り起きた明比は心桜の言葉に改めてみんなを見回す。
「そーだなぁ。みんなの誕生日も祝いたいぜ」
友達に出会えた14回目の誕生日は最高の日――少年の心はすっきり澄み渡る。喉を落ちる牛乳の冷たさがやけに心地よかった。
作者:一縷野望 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年1月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 10/キャラが大事にされていた 1
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