●アガメムノンの初夢作戦~悪い夢は振り返れずに
新年早々、1月2日。
武蔵野市周辺、時刻は早朝……町の住民達はまだまだ寝静まっている頃。
夢から程なく醒めつつある頃……人気の無い市街地に、姿を表す……悪夢の尖兵。
しかし彼らは、夜色のシーツの様なものを身体にすっぽり被っており、その姿を何か、と判断する事は難しい。
そして悪夢の尖兵達は……頷き合う様な仕草をすると、次の瞬間、力を発揮。
彼らは突如として暴れはじめ、町の破壊を開始するのであった。
「皆さん、新年明けましておめでとうございます。そんな新年早々恐れ入りますが、急ぎ依頼があり、連絡させて頂きました」
と、五十嵐・姫子は集まった灼滅者達に真摯な表情で、早速説明を始める。
「この私達の武蔵坂学園のある武蔵野市が、シャドウによる攻撃を受けているのです」
と、姫子の口から出た衝撃的な一言。そして続けて詳しい説明へ。
「今回のシャドウは、第二次新宿防衛戦で撤退した四大シャドウの一角、歓喜のデスギガスの配下アガメムノンです」
「彼は、灼滅者の皆さんの初夢をタロットの力で悪夢化し、悪夢の尖兵を現実世界へと出現させました」
「アガメムノンは、灼滅者の本拠地が武蔵野である事を知らない様です。この作戦は、どこにあるか判らない、灼滅者の拠点を攻撃する為のもの、と考えられます」
「またアガメムノンは武蔵坂学園の規模についても知らないようで……この襲撃自体は武蔵坂学園の危機という程ではありません。しかしながら、このまま放置すれば、武蔵野市周辺に大きな被害が出るのは間違い無いでしょう。皆さんには、武蔵野市周辺に出現した、悪夢の尖兵の灼滅をお願い致します」
と、そこまで言うと、姫子は続けて詳細な説明を続ける。
「悪夢の尖兵らは、本来ソウルボードの外に出る事は出来ません。ですが今回の事件、初夢という、普通の夢とは違う特殊な夢であるという事に加え、タロットの力により無理矢理発生させている模様です」
「つまり、この悪夢の尖兵……その結果24時間程度で消滅するものだと思われます。しかし消滅するまでの間は、ダークネス並の戦闘能力で破壊活動を行いますので、時間切れを待つ事は出来ません」
「悪夢の尖兵の外見ですが……夜色のスーツを被ったおばけのような姿をしています。しかし戦闘時に本気を出すと、そのシーツを捨てて、本来の姿を見せるとの事ですので、皆様の見た夢が、その真なる姿かも知れません……どんな夢を見たか、話してみると、その切っ掛けになるかもしれませんね」
そして、最後に姫子は皆を見渡し。
「このように、正月早々厄介な事件を起こすシャドウもいたものです。とは言えこのままでは大きな被害が出てしまう事になりますので、皆さんの力……どうか貸して頂くよう、お願い致します」
と、深く頭を下げた。
参加者 | |
---|---|
セリル・メルトース(ブリザードアクトレス・d00671) |
灯屋・フォルケ(Hound unnötige・d02085) |
紅羽・流希(挑戦者・d10975) |
三条院・榛(猿猴捉月・d14583) |
久条・統弥(時喰みのディスガイア・d20758) |
癒月・空煌(医者を志す幼き子供・d33265) |
ニアラ・ラヴクラフト(闇を彷徨うもの・d35780) |
アクレルド・ガージウェー(赤い忠犬・d35934) |
●悪魔の苦行
新年早々の1月2日。
武蔵野市に現れる歯、夜色のシーツにすっぽりと身を包んだ悪夢の尖兵達。
その姿は灼滅者達初夢とリンクしているという……そんなアガメムノンの初夢悪夢。
「ふむ……夢を具現化させる、未知と遭遇する機会」
とニアラ・ラヴクラフト(闇を彷徨うもの・d35780)に、癒月・空煌(医者を志す幼き子供・d33265)と灯屋・フォルケ(Hound unnötige・d02085)、紅羽・流希(挑戦者・d10975)も。
「初夢の悪夢ですか……年始め早々、厄介な事件なのです」
「ええ。初夢を利用し、威力偵察を仕掛けてくれるとは……なんとも嫌味な真似をしてくれます」
「初夢すら、悪夢な物に代えてしまうとは……許せません」
「そうですね……しっかりと倒さないとですね」
そんな三人の言葉に対し、ふと久条・統弥(時喰みのディスガイア・d20758)が。
「……しかし、悪夢の具現化かぁ……それって相当怖いよね……自分の深層心理で畏れている物が現れるとなると、ダークネスより危険なものもありそう」
確かに悪夢……それは一人一人違うもの。
とは言え、悪夢を具現化するのが今回の相手、シャドウ。
……新年早々、悪夢など見たくはないが、見ないことには何も始まらない訳で。
「僕達の初夢……やっぱり過去の経緯もあるから、悲惨な物が多いのかもしれないね。何にしても、どんな夢であったとしても、自分の夢だと解ったら、すぐに声を上げることにしようか」
「そやね。皆、宜しゅう頼むわ……ん?」
と、セリル・メルトース(ブリザードアクトレス・d00671)に三条院・榛(猿猴捉月・d14583)が頷きつつ……。
「う、ぅぅ……ん……」
うとうと、うとうと……こっくりこっくりと首を振っているのは、アクレルド・ガージウェー(赤い忠犬・d35934)。
「……アクレルド、大丈夫か?」
ぽんっ、と肩を叩くと、ちょっと驚いた声を上げる。
そして、慌てて取り繕いながら。
「うぅ……少々、眠いです……全く、新年早々……もう少し大人しくして貰いたいものですね……」
とぽつり。
夢を見て、目を覚ます頃という事は、早朝……眠いのも当然。
もう一時間もすれば朝焼けが始まり、人々は起きてくる頃だろう。
「ま、頑張ろうや」
と、榛が肩を叩き……そして、灼滅者達は、そのモノが現れし所へ急ぐのであった。
●悪夢の顕現
そして、武蔵野市の市街地一角。
灼滅者達が到着すると、前方から歩いてくる……悪夢の尖兵達。
夜色のシーツに身を包んだ彼らは、薄気味悪く、ざっ、ざっ……と灼滅者達の方へと歩んできている。
……そんな夜色のシーツ姿に、榛が。
「……どことなく、メジェド様を思い出すのぅ……」
そんな言葉をふと呟く。が、すぐに。
「ふざけとる場合やないわな。さぁて……誰の夢やろうな」
と構えを穫ると、それに頷く仲間達。
そして、セリルが。
「まずは一般人の対処だね……贈り物が、こんなにもすぐに力になってくれるとは、ね。有り難い限りだよ」
と言いながら、その場に殺界形成を即座に展開。
更に合わせて空煌、アクレルドがサウンドシャッターを共に展開し、周囲の音を確実に遮断する。
……そんな灼滅者の行動に、悪夢の尖兵は。
『……』『……』
無言ながら、互いに頷く。
そして、次の瞬間……彼らは、灼滅者達に向けて、一気に距離を詰める。
「っ……真白なる夢を、此処に!」「力を貸してっ!!」
咄嗟にスレイヤーカードを解放するセリルに空煌、そして前に立ち塞がるのは榛。
「不意打ちした気ーなったかもしれへんが、させへんよ」
ニッ、と笑みを浮かべ、蛇拐の一閃で勢いを跳ね返す。
合わせて統弥も、榛と同じディフェンダーポジションから、咄嗟に尖兵の攻撃をカバーリングする。
「……素早いですね。でも……大丈夫です。回復に徹しますから、皆さんは攻撃に集中してください」
とアクレルドの言葉に、クラッシャーのフォルケ、セリル、流希が。
「Ja」
「了解。宜しく頼むよ」
「ああ……さて、どんな初夢かは知らんが、本気を出させるとしようか」
と三者三様頷いて、そしてフォルケのブラックフォームを先陣に、流希の黒死斬、セリルの鬼神変を叩き込んで行く。
一撃一撃、悪夢の尖兵の体力を真っ正面から削る一方、ジャマーのニアラはトラウナックルで、悪夢の尖兵へのトラウマを抉っていく。
そして、スナイパーの空煌はレイザースラストで狙アップを付与すると、一方榛はクルセイドスラッシュ、統弥が旋風輪と攻撃していく。
……そんな灼滅者達の攻撃が一巡した後、続いてのターン。
悪夢の尖兵は、夜色のシーツを被ったまま、更に攻撃を継続。
そんな悪夢の尖兵の攻撃……流石に一撃、統弥が喰らう。
「っ……!」
と唇を噛みしめるが、それを速攻でアクレルドが天魔光臨陣で回復。
「ありがとう。当たると、中々痛い一撃だね」
「そうか、了解や」
榛は統弥に頷きつつ、統弥より一歩前に出て、次の攻撃を受けるように構える。
そして、その両サイドからは、次なるクラッシャー、セリル、フォルケ、流希の猛攻と、ニアラの蒐執鋏。
確実に、バッドステータスを蓄積させ、悪夢の尖兵を追い込んでいく……そして、彼らの攻撃は、アクレルド、そして酷い時には空煌も加わり、被害を後に残さぬ様に立ち回る。
そして……戦い初め、5分程が経過した、その時。
……また、悪夢の尖兵達は頷き合う様にすると……次の瞬間、ぱっ、とそのシーツを脱ぎ去る。
脱ぎ去った下には……見るも無惨な、黒焦げの体の兵士達の姿。
そして特徴的なのは……彼らの顔には、一様にガスマスク……。
「……私の、ですか」
とフォルケがぽつり。
彼女の見た、昔の夢……紛争地帯での化学工場、その施設毎毒で攻撃された上に、焼き討ちにされた……悲劇。
目の前に居並ぶ悪夢の尖兵達は、一様に、焼け焦げ、ガスマスクをつけて顔が潰れている。
「フォルケのか……これはこれは、無残やな」
「……うーん、やっぱり悪夢の姿は、誰のでもいい気持ちにはならないね」
「そうだな。俺も毎年、変な初夢しか見てないんだよな……来年はこんな事が起こっても良い様に、ちゃんとした悪夢を見て起きたい所だ」
榛、統弥、流希の言葉。そして、セリルとニアラが。
「夢は、所詮夢だ。良い夢だろうと、悪い夢だろうと、個人の心の中に在るべきもの。だから、其れが誰のものであれ、我が物顔で便乗されるのは気分が悪い物だ」
「他の夢を覗く。すなわち未知を除くと同意。精神世界とは愉快奇怪である」
と言い放ち、更に気を引き締めていく。
そしてフォルケが。
「彼らの弱点は、火炎を伴う攻撃……炎で、集中攻撃しましょう」
と、その弱点を宣告すると、フォルケは構えてブレイジングバースト。
榛はグラインドファイア、そして空煌が緋牡丹灯籠……炎の連携攻撃が、悪夢の尖兵達に決まって行く。
すると……尖兵達は。
『ウゥゥアアア……!!』
悪夢の記憶の追体験……死した際の炎に包まれ、苦しんだ記憶が、フラッシュバックする。
そして彼らは、狂気と共に狂い攻撃。半ば混乱している彼らは、最早守りもない。
無差別攻撃に対し、榛、統弥の二人が代わる代わるカバーリングを行い、そして体力はアクレルド、空煌が戦線維持のサポート。
そして、クラッシャー陣三名が、その勢いを上回る強力な攻撃で、悪夢の尖兵を削っていく。
……正体を現し、更に狂った悪夢の尖兵。
完全に自暴自棄になった彼らは……攻撃力はたかいものの、それ以上のダメージを、瞬く間に蓄積されていってしまう。
そして……対峙し、十数分。
一人倒れ、また一人倒れ……いつの間にか、残るは後一体。
最後の一体に対し、セリルが。
「さぁ、終幕だ。そんな悪夢は、此処で断ち切る」
と言い捨て、叩き込むは渾身のフォースブレイク。
その一撃に、地面に体、叩きつけられた悪夢の尖兵……そこに。
「夢喰いバクに食べられて、消えてしまえ!」
と統弥のクルセイドスラッシュが決まると……最後の悪夢の尖兵も、崩れ墜ちていった。
●夢の残滓
そして……。
「……うん。終わったみたいですね」
と、フォルケが武器を降ろし、深く息を吐いて微笑む。
他の仲間達も、皆頷き……スレイヤーカードに再封印し、ほっと一息。
「しかし……被害を最小限に抑えられて良かったと思うのですが……敵も本格的に私達を捜しに来ていますねぇ……日々精進しつつ、悪夢などに負けぬようにしなければなりませんね……」
流希の言葉に、榛、統弥も。
「そやね。ともあれ、やっぱ他人の夢なんざ、覗き見るもんじゃないのぅ」
「そうですね……フォルケさんの悪夢も、中々ハードな悪夢だったと思います」
と、そんな仲間達の言葉に、ニアラが。
「……皆の初夢は如何か? 俺の初夢は未知に追いかけられる夢。弱点は、既知と呼ぶ事」
と訪ねると、榛が。
「未知、か……未知の相手を既知と認識するだけだが……不定形の何かとはシャドウそのものだから、最初から既知と言えば既知なのだが……」
と悩む……そして他の仲間達も。
「私の夢は、富士山の麓の湖で、二体の鷹と、茄子型の武器が三体。それが亡霊船になった宝船で、ゾンビ型七福神と戦う夢でしたよ……おめでたいのか、良く解らない夢でしたねぇ……」
「俺は、大量の着ぐるみに襲われる夢だった。愛くるしい姿なのに、総てが血濡れでボロボロ……怖いよな」
「……私は、厨房を荒らす害虫の夢でした。ネズミとゴキブリ……だったと思います」
流希、統弥、アクレルドらの初夢……そしてセリルは。
「私は……亡き友の夢でした。夢での再開は、嬉しくも辛いものでした……」
と、瞑目。
……そんな灼滅者三者三様の夢の時。
でも、もう朝日も昇り初める頃……そろそろ、悪夢の初夢の刻も終わり。
「……まぁ、例え悪夢を見たとしても、今年はいい年になって欲しいですよね……」
と空煌の言葉に、他の仲間らも頷きつつ……今年こそはいい年になる様、祈り、帰路につくのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年1月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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