●都内某所
莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600)は、こんな噂を耳にした。
『嫌いな食べ物を無理やり食べさせようとする都市伝説が存在する』と……。
この都市伝説は子供達が嫌いなナスやピーマン、ゴーヤなどが融合して出来た化け物のような姿をしており、相手が嫌っているものを無理やり食べさせようとしてくるらしい。
しかも、都市伝説は子供ばかりを狙っており、強引に口の中に押し込んでくるため、被害に遭った子供達の大半が、野菜嫌いを悪化させており、深刻な問題になっているようだ。
それでも、都市伝説は気にせず、幼稚園などを襲撃しているため、早めに手を打っておく必要があるだろう。
そう言った事を踏みえた上で、都市伝説を灼滅するのが今回の目的である。
参加者 | |
---|---|
マルティナ・ベルクシュタイン(世界不思議ハンター・d02828) |
撫桐・娑婆蔵(鷹の目・d10859) |
神楽・武(愛と美の使者・d15821) |
飛鳥・智之(不良ヒーロー・d16606) |
椛山・ヒノ(ハニーシュガー・d18387) |
夜川・宗悟(彼岸花・d21535) |
莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600) |
魅咲・狭霧(中学生神薙使い・d23911) |
●都内某所
「……あれ? 権三郎さん、なんか意外とまともだよ……。訳ワカメな噂を流した馬鹿野郎出てこい的なアホかと思ったのに、ふつーに都市伝説っぽい感じで逆にショックだよ……」
マルティナ・ベルクシュタイン(世界不思議ハンター・d02828)はゲンナリとした表情を浮かべながら、仲間達と共に都市伝説が確認された場所に向かっていた。
都市伝説は野菜を擬人化させたような姿をしており、好き嫌いの多い子供達に襲い掛かり、好き嫌いを無くそうとしているようだ。
しかし、マルティナはもっとアレな都市伝説が現れると思っていたので、色々な意味で残念な気持ちになっていた。
それとは対照的に、元霊犬の権三郎さん再現パペットが、『訓練され過ぎ!』と言わんばかりの勢いで驚いている。
マルティナもその自覚はあるものの、やはり物足りないと感じているらしく、考えを改めるつもりもないようだ。
「子供ばかりを狙っている都市伝説ですか。どうやら、わたしもターゲットに含まれているようですが……」
魅咲・狭霧(中学生神薙使い・d23911)が、事前に配られた資料に目を通す。
都市伝説が子供達食べさせている食べ物は、すべて生。
そのため、よほどの事がない限り、それを食べて、好きになる事はないだろう。
「……とは言え、またしょーもない都市伝説が出てきたわねぇ。内容からして、どこで出てきても不思議はないケド……。大した害ってわけでもないからある種微笑ましいくらい。なんていうか、もっと色んな意味で奇抜な都市伝説が多いから、感覚がマヒしちゃったのかしら」
神楽・武(愛と美の使者・d15821)が、複雑な気持ちになった。
ある意味、都市伝説としては、正統な部類。
それでも、アブノーマルな都市伝説ばかり相手にしていたせいで、イレギュラーな印象の方が強いようである。
「でも、好き嫌いって、そう簡単に治せないと思うんですよね。私は特にないですけど……」
莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600)が、気まずい様子で視線を逸らす。
「……好き嫌いねぇ。だったら、肉を食べればいいのに、肉を! 食べ合わせ次第では、どうとでもなる。まあ、僕もしいたけが嫌いな訳だが……」
夜川・宗悟(彼岸花・d21535)が、険しい表情を浮かべた。
都市伝説は野菜がメインのようだが、それだけ子供達が野菜を嫌っているためだろう。
「ハッハッハッ! しいだけが嫌いか! ならば、しいたけを食らうがいい!」
次の瞬間、都市伝説が宗悟の口めがけて、しいたけを飛ばしてきた。
「うぐごっ……ゲホゲホッ!」
それを口にした都市伝説が青ざめた表情を浮かべ、口の中に入ったしいたけをゲホゲホと吐き出した。
「ハッハッハッ! 見たか、これが俺の力だっ! そして、そこのお前は、ピーマンが嫌いだろ!」
都市伝説が狭霧をビシィッと指差して、全身の野菜をピーマンに変えていく。
おそらく、これを狭霧に食べさせるつもりなのだろう。
濃厚なピーマンの匂いが辺りにもわんと漂ってきたため、あっという間に狭霧の表情が険しくなった。
それでも、ピーマンを炒めれば、何とか食べる事が出来るものの、さすがに生は無理なので、ドン引き状態のようである。
「あたしもピーマンは苦手デス……! ピーマン苦いデス……いためても苦いデス!! 緑、赤、黄と色も一杯で、信号みたいデスよーうっ……。あとたまねぎも嫌いデス!! たまねぎは目に染みて、涙が沢山出るし、嫌いデス!! 生のままだと口の中、もやもやシマス……。だから野菜は嫌いデス! だから野菜がなくても生きてけるデス!!」
椛山・ヒノ(ハニーシュガー・d18387)も、一緒になってドン引きする。
「ハッハッハッ! もっと怯えろ、恐れろ! それが俺のパワーになる!」
都市伝説が勝ち誇った様子で、高笑いを響かせた。
「えーと、ちょっとそこの都市伝説くん……。キミさ、自分で『キャラ弱ぇ』とか思わない……?」
すぐさま、マルティナが都市伝説を前に陣取り、自分が一番知りたい事を口にする。
(「それ、相手に聞くのッ!?」)
これには元霊犬の権三郎さん再現パペットも、ビックリ!
その質問を投げつけられた都市伝説も、吃驚仰天なようである。
「えー、だって物足りない感じしない……? ネタ成分が不足してるっつか、面白味が足りないっつか……」
それでもマルティナは、臆する事なく言い放つ。
「お前は何もわかっていない! 俺は子供達に好き嫌いを無くしてもらうために生まれた存在。故にネタ成分など必要ない!」
都市伝説がムッとした様子で、マルティナに正論を吐き捨てた。
「……分かる。あっしにゃァ、分かりやすぜ。お前さん、何も害悪たろうとして、年端も行かねえ幼子らを片端からマトに掛けてるわけじゃァねえ。……左様でございやしょう?」
撫桐・娑婆蔵(鷹の目・d10859)も共感した様子で、都市伝説に語り掛けていく。
「ああ、そうだ。その通りだ!」
思わぬ賛同者に驚きつつ、都市伝説が力強く頷いた。
「確かに、ガキの内からあれやこれやと好き嫌いがあっちゃ、健やかに育てねえ。だからこそ、ガキの内から野菜を食す必要がある。お前さんは、子供らに厭われた無念の集合だ。そこになおりなせえ。個にして群、群にして個、厭われて無念に咽ぶ野菜共。お前さんの死に花、最後に一皿。この『畏れの刃』で飾り包丁を入れてやりまさァ!」
娑婆蔵が畏れの刃を構え、都市伝説に襲い掛かっていく。
「あ、いや、ちょっと待て! なんで、そうなる? ……と言うか、そういう流れだったのか?」
都市伝説が驚いた様子で、その場から飛び退いた。
しかも、途中まで味方だと思っていた相手に、背後から攻撃されたような心境なので、かなり動揺しているようである。
「ところで、野菜の融合体だから、ベジタブルキメラってどうだろう? よし、決めた。それで!」
そんな中、宗悟が勝手に都市伝説の名前を付ける。
「あ、いや、だから俺をネタキャラにするんじゃねええええええええええええええ!」
途端に都市伝説がブチ切れ、八つ当たり気味にピーマンを投げつけた。
「えっ? なんで?」
しかし、宗悟は納得がいかない様子でピーマンをキャッチすると、そのまま都市伝説の顔面めがけてピーマンを投げ返す。
「ぐおっ! き、き、貴様ァァァァァァァァァ! 許さん!」
次の瞬間、都市伝説が激しい怒りを爆発させ、全身のピーマンをはちきれんばかりに隆起させた。
「これ以上、子供達が好き嫌いを悪化させても良い事ないですからね。……きっちり灼滅します」
その姿に危機感を覚えた想々が都市伝説の逃げ道を塞ぎ、スレイヤーカードを使うのだった。
●都市伝説
「ハッハッハッ! 無駄な抵抗をっ! そこのお前っ! 白子が嫌いだろう!」
その途端、都市伝説が高笑いを響かせ、全身を白子に変化させていく。
「お、お兄ちゃぁん……!」
これには想々も、半泣き状態。
だが、都市伝説は完全に勝ったつもりで、白子状になった身体をグイグイと押しつけてきた。
「想々ー!!」
それに気づいた飛鳥・智之(不良ヒーロー・d16606)が、都市伝説めがけてご当地キックを放つ。
「うごっ!」
都市伝説が間の抜けた声をあげ、地面を何度かバウンドした。
「おいコラ……なに人の妹を泣かしてンだ? え?」
すぐさま、智之がオラオラモードで、都市伝説に迫っていく。
「お、俺にこんな真似をしてタダで済むと思うなよっ! みんな纏めて、好き嫌いをなくしてやる!」
都市伝説が殺気立った様子で、ブドウの如く白子をブクブクと増やしていった。
「……って、白子はダメだろ、白子は! せっかく、ベジタブルキメラって命名したんだから、野菜をメインにしなきゃ!」
宗悟が納得のいかない様子で、都市伝説に駄目出しをし始めた。
「あ、いや……、すまん」
都市伝説も言葉に詰まって、何となく謝った。
「いや、謝るなら最初からやっちゃ駄目だよね? それにすまんって。僕達、友達でも何でもないよね? それなのに、すまんはないよね、すまんは……」
だが、宗悟はドブのような目で、さらに駄目出しをしていった。
「あ、はい。いや、すみません……って、違うだろうが! この件に関して、俺は悪くないだろ!」
都市伝説がハッと我に返って、キレ気味に反論をする。
「それ以前に、なんか面白い事できないの……? 嫌いなもの食べさせるとか普通も普通なんだよね……。こう、嫌いな食べ物をイケメン擬人化させて、『うわ、マズッ! でも、しゅてき☆』みたいな訳分かんないのとか……」
それでも、マルティナは怯む事なく、都市伝説に駄目出しをする。
「どいつもこいつも俺の事をバカにしやがって! 許さん、許さんぞおおおおおおおおおお!」
都市伝説が激しい怒りを爆発させ、思い浮かぶ限り子供達が嫌いな食べ物に身体に出現させ、グロテスクな外見になった。
「こ、これはさすがに……」
狭霧が身の危険を感じて、後ろに下がっていく。
「大丈夫……、お兄ちゃんが絶対にお前を守ってやるぜ」
その間に智之が想々の前に陣取り、優しく声をかける。
「お兄ちゃんかっこいい……!」
想々が感動した様子で、瞳をキラキラと輝かせた。
「ちなみに、アタシは嫌いな食べ物なんてないワ。なんでもよく食べ、よく動き、よく寝る。それがこの美しい肉体を維持する秘訣だもの☆」
武が恥ずかしそうにテヘッと笑う。
だが、都市伝説は華麗にスルー。
まるで興味がない様子で、軽くスルーした。
「あぁッ!? シカトぶっこくとはいい度胸してんじゃねぇか!」
武がイラついた様子で、都市伝説の胸倉を掴む。
その途端、胸元の白子が潰れて、独特な匂いが漂った。
「お前さん、本当は喰って欲しいんでございやしょう? 野菜の味を知って欲しいんでございやしょう? あっしにゃァ、好き嫌いはねえぞ。掛かって来なせえ!」
娑婆蔵が都市伝説を挑発しながら、ブレイドサイクロンを放つ。
「グワッハッハッハッ! この程度で俺が屈するとでも思っていたか!」
都市伝説が高笑いを響かせ、次々と嫌いなモノを飛ばしていく。
「まぁ、いいや。結局フルボッコだしね……。努力は認めるけどサムかったから不合格なの……」
そう言ってマルティナが、都市伝説に尖烈のドグマスパイクを叩き込む。
「それじゃ、どーんとやっつけるデス!」
ヒノもサクッと気持ちを切り替え、都市伝説にレイザースラストを放つ。
「俺の妹に手ぇ出した落とし前……つけて貰おうか」
智之も般若のような形相を浮かべ、都市伝説に戦艦斬りを炸裂させた。
「無理やり食べさせるはダメ絶対」
それに合わせて、ヒノが再びレイザースラストを放ち、都市伝説を追い詰めていく。
「この輝かしくも美しい体を持て余すことなくパワーにして、とことんボコボコにしてあげるワ。子供相手に嫌がらせしてんじゃねぇぞ、コルァァァッ!」
続いて武が天使のような笑みを浮かべた後、鬼のような形相になって都市伝説をブン殴る。
「うごっ!」
その一撃を食らった都市伝説が、頭から地面に突っ込んだ。
「こ、この程度の攻撃で、お、お、お……」
都市伝説が激しく痛む頭を押さえ、フラついた様子で強がった。
「焼いたら美味しくなりますか、そおれ!」
その間に想々が緋牡丹灯篭で、都市伝説の身体を燃やす。
次の瞬間、都市伝説の身体から、この世のものとは思えぬ異臭が漂った。
「ごめんなさい。……無理です」
狭霧が涙目になりつつ、都市伝説から遠ざかっていく。
「これで完成でさァ!」
それと同時に娑婆蔵がグラインドファイアを放ち、都市伝説の身体を炎に包む。
都市伝説はまったく抵抗する事が出来ず、断末魔を響かせて消滅した。
「よく頑張ったな。お前の好きなもの食べに行こうぜ」
そう言って智之が、想々の頭を撫でる。
「えへへ、甘い物がいいな。……あ、あとあったかいの」
その問いに想々がニコッと笑って、元気よく答えを返すのだった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
|
種類:
公開:2016年1月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|