●地より下の温い住処
『あー……ったく、だるいよなぁー』
『まーそう言うなよ。今日はこれで早上がりなんだし……さっさと巡回終わらせて、酒でも飲んで嫌なこと忘れちゃおーぜ』
そんな会話が響くのは、地面より下。
彼らが居るのは、街の下に拡がる地下下水道。
定期的に入らなければいけない、下水道の巡回管理業務。
勿論、今迄も何か変なことが起きる事も無くて、今日もいつもと同じで、早く終わらせようと想っていた。
だが……その時。
『ピィ……』
小さく、聞こえてきたのは、ネズミの野太い鳴声。
その鳴声に、ん……と顔を向けて。
『ん……ネズミか?』
『ああ、ネズミ種済み。ま、下水道だからそれくらいるだろう。ほら、さっさとおわらせよーぜ』
と歩いて行く彼ら……その背後から、巨大なネズミの集団が、近づきつつあった。
「皆様、お集まり戴けましたね? ありがとうございます。早速ですが、ご説明を始めさせて戴きますね」
執事服に身を包んだ野々宮・迷宵は、集まった灼滅者達に深く一礼し、そして説明を始める。
「本日、皆様に地下下水道に巣くうネズミバルカンの群れを灼滅してきて戴きたいと想います」
と、その地下下水道の地図を広げ、更に二人の写真を見せる。
「この下水道に、毎月の巡回管理という事で、この二名の方が入り込んでいるのです。彼らは当然ネズミバルカンが居る事など知らず、管理業務真っ当の為、下水道を歩き回っています」
「下手に二人を歩かせていると、ネズミバルカンが突如として襲いかかる可能性があります。つまり、二人を発見次第、地下下水道から退避させ……途中で見つかったネズミバルカンと対峙し、灼滅してきて欲しいのです」
「ネズミバルカン達は下水道の中に10匹巣くっています。そして一匹が見つけると、次々と仲間を特殊な鳴声で呼びつつ、バルカン砲を撃ち放って、瓦礫の山を築いて進路を塞いできますので、それに巻き込まれないように注意してくださいね」
そして、最後に迷宵は。
「何にしても、一般人が被害に遭いかねない状態です。皆さんの力で、どうか救出してあげてください。宜しくお願いします」
と、深く頭を下げた。
参加者 | |
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東海林・朱毘(機甲庄女ランキ・d07844) |
暁・紫乃(殺括者・d10397) |
初食・杭(メローオレンジ・d14518) |
蒼月・桔梗(蒼き剣を持つ翼の花・d17736) |
仮夢乃・流龍(夢を流離う女龍・d30266) |
ヘイズ・フォルク(青空のツバメ・d31821) |
クレンド・シュヴァリエ(サクリファイスシールド・d32295) |
貴夏・葉月(地鉛紫縁が背負うは終末論・d34472) |
●冬の温もり
町の下に拡がる、住民の生活に根ざした地下下水道。
いつもは人が訪れることは無い場所だが、定期的に巡回管理業務の為に、市役所の職員などが立ち入るという、下水道。
……しかし、そんな下水道の中に巣くってしまった人並みの巨大化ネズミ、ネズミバルカン。
「うーん……ネズミバルカンかー……」
と、初食・杭(メローオレンジ・d14518)が呟くと、それにヘイズ・フォルク(青空のツバメ・d31821)と仮夢乃・流龍(夢を流離う女龍・d30266)が。
「下水道……ネズミの住処としては最適。人が来るには最悪の場所っと」
「そうだね。地下のネズミが相手って言われても、何か緊張感に欠けるねぇ……ま、武装している凶暴なやつらみたいだし、一般人もいるならちゃちゃっと終わらせないとね!」
そんな二人の言葉に対し、蒼月・桔梗(蒼き剣を持つ翼の花・d17736)は。
「しかし下水道か……汚い所は苦手なのだが、ネズミバルカンの被害が出るのを見過ごす訳にはいかないか……」
と言うと、暁・紫乃(殺括者・d10397)が。
「そうだな! アガメムノンだソロモンの悪魔だと騒がしい灼滅者界隈だが、大物だけでなく、こういう単純なネズミ退治もきちんとこなしてこその灼滅者な訳で」
ぐっと拳を握りしめて言うと、それに貴夏・葉月(地鉛紫縁が背負うは終末論・d34472)とクレンド・シュヴァリエ(サクリファイスシールド・d32295)が。
「ええ……そうね。私達の仕事には色々あるけど……これも市民の方達からすれば一大事な事件だものね」
「そうだね。依頼に大小あるかもしれないけど、一般人が苦しんだり、死に遭遇しかねないというのなら、絶対に護り切ってみせる!!」
と気合いを入れる仲間達に、紫乃が。
「そうだね。まぁ……本当は楽したいだけだけど! ねえあけびん!!」
「……いや、私に聞かないでよ。ほら、さっさと灯を持って行くわよ!」
と東海林・朱毘(機甲庄女ランキ・d07844)が懐中電灯をばらーっと広げる。
丁度人数分の懐中電灯を用意してきた彼女。
更に桔梗が、この地下下水道の地図を市役所から貰ってきて、それを皆の前に広げて、侵入地点を確認。
「結構広いなぁ……この中から一般人を捜して、ネズミバルカンから護るとなると……遭遇地点から逃げるルートをある程度想定しておいた方がよさそうだな」
「そうね。クレンドさんと葉月さん。宜しく頼みますね」
「了解。大丈夫だ!」
桔梗と朱毘に、こくりと頷くクレンド。
そして灼滅者達は、下水路へ続くマンホールを開いて……そして、地下下水道の中へと侵入するのであった。
●不浄と不気味
そして、地下下水道内を歩く灼滅者達。
ぴりっと張り詰めた風、緊張した空気……そして、下水道から漂う匂い。
流石に漂う匂いには、ちょっと気が滅入りそうになるが……でも、こんな所を、職員の二人は頑張って巡回しているのだ。
「さて……何にしても、まずは職員の二人を捜さないとな。果たして何処に居るのやら……」
と、ヘイズが呟き、懐中電灯の明かりを左、右と向ける。
そして通路の先を確認しながら、耳を澄ます……そして職員も、ネズミバルカンも居なければ、更に先へと進む……そんな捜索を、暫し続ける。
地図をトレースしながら、更に奥の方へと進んでいくと……。
『うぎゃあああ!!』
と、突然響き渡る悲鳴。
その悲鳴と共に、チュゥゥ……という鳴き声も。
「何かいる……そしてこの鳴き声は間違い無い……! 皆、こっちだよ!!」
その声のした方向を鋭く察知し、流龍がその方向へと先陣切って掛けていく。
急いで駆けていった先には、壁際を這う様に、どうにか逃げようとしている職員二人。
そして職員の目の前には、人並みの大きさのネズミバルカン……。
『チュゥ……チュゥゥ……』
と、唸り声を上げて、職員を威嚇している。
そんなネズミバルカンの威嚇に対し、立ち塞がる……そして流龍が。
「救助は任せるよ! こっちは引き受けるから!!」
と声を上げると、クレンドが。
「了解。プリューヌは皆のサポートを宜しく頼むな」
その言葉に、コクリと頷くプリューヌ。
そして葉月が早速、魂鎮めの風を吹かせて、一般人二人を眠りに落す。
眠った後に、クレンド、葉月いがそれぞれ一人ずつを背負い……そしてビハインドの菫が、周囲の警戒を行いながら、退路を急ぐ。
……当然、それに追いすがろうとするネズミバルカン達もいる。しかし。
「さてと……害虫の次は、害獣駆除と行きますかね」
「ああ。ネズミ達、さぁ、この攻撃を受けてみろ!」
と、ネズミバルカンにレーヴァテインで、先手の一撃を叩き込む。
そして、続けて紫乃が。
「さて、足止めとは言うが、別に殺してしまって構わんのだろう?」
ニカッと笑うと、それに朱毘が。
「まぁね。イチマル。あなたは紫乃さん乗っけて、彼女の操縦に従いなさい」
と、己のライドキャリバーに指示を与える。その指示に従い、紫乃を乗せてエンジン音をブゥゥン、と吹き鳴らす。
その動きに、興奮したのか紫乃は。
「おおお、ついに紫乃は殺人鬼とご当地ヒーロー、更にライドキャリバーという未知の次元に足を踏み入れるんだね!? あ、返さなくていいよね?」
「返せ! っていうか、あげるったってあげられませんからね!?」
そんな紫乃と朱毘の会話に対し、ネズミバルカンは。
『チュゥ……チュゥゥゥ……!!』
と、怒りの鳴き声を上げるばかり。
……そして、更にイチマルと紫乃は、ライドキャリバーと共に攻撃。
イチマルの機銃掃射に合わせて、紫乃が黒死斬の一閃。
続けて杭は、ウィングキャットのネコマタと共に、グラインドファイアと猫魔法。
そしてヘイズも。
「何体殺せるかな……!」
と、赤い妖刀『赤雪』で斬りつける。
そんなクラッシャー陣の連携攻撃が、ネズミバルカンをバッサバッサと削り行く。
一方、プリューヌは顔を晒す、流龍のビハインド小竜も顔を晒して、トラウマを重ねて付与。
更に朱毘、流龍、桔梗らも。
「討漏らしが後でまた事件を起こしても面倒ですし、きっちり殲滅しておきますよ」
「そうだね! 出来れば仲間が来る前に始末したいところだね!」
「ああ、さっさと仕留めるとしよう」
と言葉を交わしながら、イカロスウィング、尖烈のドグマスパイク、レーヴァテイン。
……灼滅者達の連携攻撃の前に、流石にネズミバルカンの残り体力はかなり少ない。
しかし、ネズミバルカンはチュウゥゥ、と甲高い鳴き声を上げてから、一歩灼滅者達から距離を取る。
そして……その鳴き声に呼応するように、周りから更にチュゥゥ、と鳴き声。
「どうやら、仲間を呼んだ様だな……来るぜ、次々と」
ニヤリと笑うヘイズ。
左から右からと響く鼠の鳴き声の大合奏。
1、2ターンの内に一匹、また一匹、次は二匹……と、次々とネズミバルカンが登場し、灼滅者達の前に立ち塞がっていく。
「……最初の内に逃しておいて良かったのかなー?」
「そうだな……護りながら戦ってたら、ちょっと厳しかったかもな……いや、こいつらを足止めし続けなきゃならないのは、俺達もキツイが」
「そっかー。ま、何にしても全部倒しゃーいいんだろー? いっくぜー!」
ヘイズの言葉に杭がニヤリと笑いつつ、そして灼滅者達は、ネズミバルカンの退治を続けるのであった。
そして……一般人を逃していた二人は、幸いネズミバルカンと逢う事無く、地上へと脱出。
一本裏通りに入ったところに二人を降ろすと、軽く頬をはたき、二人を起こす。
『へ……あ?』
きょとんとしている二人。
そんな二人に、クレンドと葉月が。
「二人とも、もうここなら安全よ……あの大っきなネズミは、もう居ないわ」
「うん。あれは悪い夢だったんだよ、きっと……今日の巡回業務は終わったんだし、帰りなよ」
と、二人の言葉にあ、ああ……とぼんやりとした答え。
……どうやら、ネズミバルカンと逢ったことは、余り憶えていない様で……二人を置いて、また再びクレンド、葉月と菫は、地下下水道へと潜り込むのであった。
そして、大量のネズミバルカンを相手にする灼滅者達……いつの間にか、数は10体集まっていて、中々厳しい戦況。
ズドンズドンと砲門を打ち鳴らすネズミバルカン、足場もかなり崩れてきている。
「くっそーー、瓦礫邪魔くせぇえええ!!」
と、紫乃がキレ気味に叫ぶ位、足場が悪い。
でも、それまでの間にネズミバルカンも3体ほど倒しており、残るは後7匹。
「本当、面倒なネズミね。瓦礫なんか、これでぶっ飛ばしてあげるわ!」
と、ご当地ビームを使用し、瓦礫を壊して足場を作りながら、他の灼滅者達がネズミバルカンを倒す。
……そして、戦闘開始から十数分。
「お待たせしました。無事、一般人は避難完了しました」
「おお、3体も倒してるんですね。それでは後七体、一気に仕掛けよう!」
と葉月、クレンドの二人の声が響き渡る。
それはネズミバルカンを挟撃するような形となり、ネズミバルカンは前と後ろから攻撃を受けることに。
『チュゥ、チュゥゥ……!!』
と、ネズミバルカンの悲鳴が響き渡るが……最早、慈悲もせず。
「斬り裂けぇっ!」
とヘイズのジグザグスラッシュが一体を一刀両断にすれば、紫乃も。
「紫乃のチェン剣が光って唸って大騒ぎぃー!」
と、ライドキャリバーと連携しての連続攻撃で、確実に一匹ずつを叩き伏せていく。
そして……戦闘開始から、二十数分。
『チュ、ゥゥ……』
と鳴くネズミバルカンも、後一匹。
「後一匹……みんな、最後まで気合いすんなよー!」
と杭の言葉に頷き、そして流龍が。
「これでどうだぁーっ!!」
気合いと共に、叩きつけたグラインドファイア。
その一閃に……最後のネズミバルカンも、断末魔の悲鳴を上げて、崩れ墜ちるのであった。
●命からがら
「……ふぅ。やっと終わったな」
「ああ……こうも数が多いとなかなか厄介だったな」
ヘイズが息を吐き、刀に付いた血を振るい祓いながら、納刀し、桔梗も頷く。
それに合わせて葉月も。
「そうですね……やれやれ、お掃除完了です……ね……」
「ああ。ネズミ風情に殺せるとは思うなよ」
二人言い捨て、そして……一応、他にネズミバルカンなどが居ないかを、一回りして捜索。
そして、何もない事を改めて確認してから、灼滅者達は地下下水道から脱出。
クレンド、葉月先導で、一般人を避難させた所に向かう。
が……既に職員達は影形も無い……とっくに逃げてしまったのだろう。
それに胸をなで下ろしつつ。
「さてと……帰ったらシャワーを浴びておきたい所だな」
「うん、そうだね。体中、下水臭くなっちゃってるし……皆で一緒に銭湯でも行かない?」
桔梗、流龍の提案に、杭が。
「んー……確かに温泉とかでスッキリしたい所だけどさー、でも……お腹もすいたかなー?」
と言うと、それに葉月、紫乃、朱毘が。
「そうね。寒いですから、暖かい物を食べて帰りましょう……おでんとか、良いですね……」
「そうだなー。一仕事終えたし、誰か誘って夕ご飯にしようぜなのあけびん。あ、麺類以外でよろしくなの!」
「麺類以外? ……じゃあ、丼物なんてどうでしょう。私、今日はちょっとガッツリ行きたいですし。行く人、いますか?」
「あ、いいねーいいねー。うん、オレもいくいくー!」
二人の提案に、はいはーい、と手を上げる杭。
他の仲間達も、確かにお腹は空いたね、という事で……その提案に頷いて、そして灼滅者達は、一緒に夕飯をしに、スレイヤーカードに封印した後、町へ繰り出すのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年1月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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