ワレワレハ、ウチュウジン、ダ

    ●栃木県某所
     宇宙人で村おこしをしようとした場所がある。
     この村の周辺ではUFOの目撃例が多かったらしく、それに目を付けた村長と村役場の観光課が結託し、UFO騒動をでっち上げ、再び村に活気を取り戻そうとしたようだ。
     純粋な村人達はすっかり騙され、UFOの存在を信じてしまい、何かあるたび『コイツは宇宙人の仕業だ』と口にするほど、頑なにその存在を信じていたらしい。
     その中で生まれたのが、今回の都市伝説だ。

    「枝毛は放っておくと大変な事になる。ある意味、今回の一件と似ているな」
     自分では良い事を言ったと思いつつ、神崎・ヤマトが今回の依頼を語り始めた。

     今回、倒すべき相手は、グレイタイプの都市伝説だ。
     コイツは、いかにも宇宙人っぽく振舞っているが、実際には単なる都市伝説だ。
     深い追及すれば、色々とボロが出る。
     おそらく、お前達が行く頃には、牛が襲われて臓物が引きずり出されている頃だろう。
     いわゆる、キャトル何とかって奴だ。
     そのせいで、牛が酷く怯えて、村人が様子を見に来ているかも知れない。
     ここでうまく対応しておかないと、『おめえ、おらんちの牛を盗む気かぁ?』という展開になってしまうから要注意だ。
     それと、都市伝説は相手の体に手を突っ込んだ内臓を抉り出そうとするから、接近戦は控えた方がいい。
     たまに光線銃で反撃してくるが、こっちは単なる玩具。
     物凄く眩しいだけで、何の効果もないから、気にせず倒してしまってくれ。


    参加者
    黒瀬・凌真(痛歎のレガリア・d00071)
    春宮・さくら(暴走機関車・d00185)
    風嶺・龍夜(闇守の影・d00517)
    土御門・璃理(真剣狩る☆土星♪・d01097)
    四谷・夕闇(オカルト大好き少女・d02928)
    水樹・葵(月の雫・d04242)
    鈴鹿・幽魅(百合籠の君・d04365)
    真城・光里(熱血味噌煮込み・d06382)

    ■リプレイ

    ●謎の未確認生命体
    「やってきました、超常現象っ! とりあえず、グレイの仕業だよねっ! そういう事にしておこうっ! 思いっきり楽しむよっ!」
     楽しそうに鼻歌を歌いながら、春宮・さくら(暴走機関車・d00185)が都市伝説の確認された村に向かう。
     村は宇宙人一色。
     この手では定番の、宇宙人饅頭から、宇宙人煎餅、UFOブーメランに、UFOヨーヨー、UFOラジコンなんてものまである。
     中には、連れ去られた村人人形や、キャトルミューティレーションされた牛の置物なんてものまであった。
    「自業自得……イタズラに、噂を流すから……牛の犠牲で止めておかないと……」
     半ば呆れた様子で、水樹・葵(月の雫・d04242)で頭を抱える。
     おそらく、最初に殺された牛も、誰かの悪戯。
     実際には、宇宙人と何の関係もなかったと言うのが真相だろう。
    「村興しに熱心なのはいいけど、実害出ちゃったら本末転倒だよねえ……。余計、閑散としそうだし……」
     デシカルカメラ片手に、四谷・夕闇(オカルト大好き少女・d02928)が写真を撮っていく。
     その途端、家政婦は見た状態で物陰から顔を出していた宇宙人の置物と目が合い、何となくペコリと頭を下げた。
    「それにしても、内臓を抜き取るってのは、エゲつないもんだな。んだが、好きにやらせるわけにもいかん」
     険しい表情を浮かべながら、黒瀬・凌真(痛歎のレガリア・d00071)が写真に目を通す。
     そこに映っていたのは、内臓を抉り取られた牛の姿。
     おそらく、写真に写っているこれらは、都市伝説の仕業なのだろう。
    「宇宙人を騙るとは笑止千万! 本物の土星人である私が成敗しちゃうZO♪」
     写真を見てフンと鼻で笑い、土御門・璃理(真剣狩る☆土星♪・d01097)が殺界形成を展開する。
     これでほとんどの村人は、この場から離れていくだろう。
    「それじゃ、行こうか」
     猫変身で目立たないサイズになり、真城・光里(熱血味噌煮込み・d06382)が牛舎にむかう。
     その途端、牛舎の方から悲鳴が上がり、村人達が這うようにして逃げてきた。
    「お、落ち着いてください。一体、何があったんですか? わたくし達は民間の宇宙人の研究をしている団体です。宇宙人はわたくし達に任せて、内臓を抜き取られなくなかったら、早くお逃げなさい」
     黒いスーツに黒い帽子、サングラスといった何処かの政府の特務機関といった雰囲気を漂わせ、鈴鹿・幽魅(百合籠の君・d04365)が村人達に警告しながら牛舎を睨む。
     牛舎にボンヤリ浮かんだ怪しい影。
     間違いない、都市伝説である。
    「人の事を言えた義理ではないが……、怪しいな」
     村人達を守るようにして陣取り、風嶺・龍夜(闇守の影・d00517)が口を開く。
     ……都市伝説は威嚇モード。
     近づけば、タダでは済まない。
    「接近戦は控えろ、と言われてるが……、難しいもんだな。まあ、どうにかやってみるとするか」
     警戒した様子で間合いを取りながら、凌真が都市伝説に近づいていく。
     次の瞬間、都市伝説が右手を構える。
     凌真の体から内臓を引きずり出すために……!

    ●グレイタイプ
    「敵グレイタイプ発見! みんなにあわせるよっ!」
     都市伝説の死角に回り込み、さくらが光刃放出を炸裂させる。
     一瞬、都市伝説の服を切り裂いたら、どうなるかと言う疑問が過ぎったりしたが、実際には皮膚であったらしく、青緑色の血が辺りに飛び散った。
    「まあ、偽物だしなあ、倒しちゃって良いんじゃないかな? 一般牛や一般市民に害するなら、ヒーローとして黙っちゃいられないし! 光線なら、私の方が眩しいからね! 名古屋のヒーローはシャチホコなみに、金ピカに輝いているんだから!」
     攻撃を仕掛けるタイミングを窺いながら、光里が少しずつ間合いを取っていく。
     その間に都市伝説が再び利き腕をワシャワシャさせ、内臓を抉り出す勢いで迫ってきた。
    「……牛にイタズラとか、変な事ばかりしているし……早く、灼滅しておかないと……」
     都市伝説の攻撃を避けつつ、葵がエンジェリックボイスで仲間達を援護する。
     しかし、都市伝説は怯まない。
     内臓を抉り出して、ソーセージ的な何かを作る勢い。
     むしろ、作って販売するレベル。
    「マジカル☆クルエル・ロックオン♪ 逝くよ、必殺バスタァァァァビィィィッム!」
     都市伝説を射程内に捉え、璃理が腰だめにバスターライフルを構えて極太ビームを放つ。
     その一撃を喰らって都市伝説の何かが吹っ飛ぶ。
     内臓的な何かが飛び散った。
     だが、都市伝説も必死。
     必死に内臓を掻き集め、何事もなかった様子で口笛を吹く。
     あくまで自然に、かつスタイリッシュに。
    「まさか、それで誤魔化したつもり……? じょ、冗談だよね。ほら、ちょっとこぼれているし……」
     大粒の汗を浮かべながら、夕闇が都市伝説にツッコミを入れる。
     ……都市伝説は何も答えない。
     傷口を縫うのに必死。意外に器用。
     これは夕闇のデータにないもの。
     それ以前に宇宙人と関係ない気がプンプンである。
    「まあ、また斬るだけだ」
     都市伝説を迎えうち、龍夜が影喰らいを放つ。
     それでも、都市伝説が手を伸ばす。
     龍夜の内臓を抉り出すため、全力で!
     しかし、届かない。ギリギリのところで届かない。
    「そればかりに気を取られて、まわりが見えなくなっているなんて……、実に哀れですわ」
     都市伝説に冷たい視線を送り、幽魅がパッショネイトダンスを使う。
    「内臓か脳漿か知らんが、ブチ撒けろ……!」
     その間に凌真が距離を縮め、都市伝説に鉈を叩きつける。
     飛び散る臓物。モツパーティ!
     一気にブチ撒かれた臓物が雨の如く降り注ぐ。
     そして、辺りに立ち込める異様な臭い。
     それでも、都市伝説は攻撃を仕掛けてきた。
     内臓なんて飾りですよ、と言わんばかりに!

    ●内臓がなくても
    「どういう仕組みになっているのか分からねえが、近づくのなら容赦しねえぜ」
     内臓を引きずり出されないように注意しつつ、凌真が都市伝説にジグザグスラッシュを叩き込む。
     目と鼻の先で両手をワシャワシャとさせる都市伝説。
     よほど内臓を引きずり出したいのか、元気いっぱい動いている。
     そこまでして、他人の内臓を欲する理由。
     ただ何となくか、入れ替えるつもりなのか。
    「生まれよ刃……、虚映に写りしかの存在に、終焉を」
     必要以上に都市伝説の傍には近づかず、葵が虚空ギロチンを炸裂させる。
     続け様に攻撃を喰らった事で、流石に弱る都市伝説。
     それでも、内臓を引きずり出すための利き腕は元気そのもの。
     むしろ、本体と錯覚してしまうほど元気。
    「一気に決めるよ」
     危険を顧みず都市伝説の懐に潜り込み、さくらが地獄投げを炸裂させる。
     その一撃を喰らった都市伝説が『ぐえっ!』と妙な声を上げ、辺りに四散して跡形もなく消滅した。
    「正義はかーつ!」
     都市伝説が消滅した事を確認し、光里が腰に手を当てつつ、もう片方の手で人差し指立ててポーズ決める。
    「今日は何も見なかった。何もなかった。そう言い聞かせた方がいいわね」
     村人達を口止めするため、幽魅がスタスタと歩き出す。
     説得は難しいかも知れないが、やるだけの事はやってみようと思いつつ……。
    「せめて光線銃でもあれば良かったんだけど……」
     少し残念そうにしながら、夕闇がやれやれと首を横に振る。
     都市伝説が消滅してしまったせいか、何ひとつ残っていない。
    「牛さん達は南無阿弥陀仏~。来世は土星に生まれればいいと思うよ、土星牛~☆」
     犠牲となった牛達に冥福を祈り、璃理がなむなむと両手を合わす。
    「任務、完了。帰還する」
     そう言って龍夜が夜の闇に紛れる。
     都市伝説を倒してしまえば、用はない。
     ……後は黙って立ち去るのみ。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年9月25日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 0
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