伏見城の戦い~特攻スサノオ壬生狼組

    作者:彩乃鳩

     建築された伏見城の城壁には、様々な、ペナントがたなびいていた。
     そのペナントを見れば、伏見城に集まっている多種多様なダークネスの様子をうかがい知る事ができる。
     名産品のペナントを掲げるのは、日本各地のご当地怪人達。
     鬼の絵が入っていたり、画数の多い漢字のペナントは、天海大僧正勢力から離脱した羅刹達。そして、数多くのペナント怪人と、そのペナント怪人を生産する、正社員待遇のレプラコーン達。更に、いけないナース達も城でサービスしているようだった。
    「盟友である白の王の為にも、一刻も早く畿内を制圧せねばならん!」
    「応!」
    「然り!」
     そんな中で武者アンデッドの一団は、剣を掲げる。
     彼らは、もはや、自分達の勝利は間違いないと、意気軒昂だった。
    「安土城怪人との決戦準備を行っていた、天海大僧正の勢力から連絡が入りました。決戦準備が整う前に、安土城怪人が侵攻を開始し、京都周辺に攻め寄せてきたようです」
     灼滅者達に五十嵐・姫子(大学生エクスブレイン・dn0001)が説明を始める。
    「攻め寄せてきた安土城怪人勢力は、京都の伏見区に城を築き、戦力を集めているようです。安土城怪人勢力は、覇気に溢れており、このままでは、天海大僧正勢力は、滅ぼされてしまうかもしれません」
     これに対して、天海大僧正は、全力で伏見城を攻略し、攻略成功と同時に琵琶湖の敵拠点に攻め込む作戦を行うらしい。
    「敵が戦力を分けたのならば、各個撃破する好機という考えのようですね。伏見城の攻略は、天海大僧正勢力で行うので、武蔵坂学園には、伏見城の攻略に成功した後、琵琶湖の拠点に攻め込む助力をお願いしたいとの事です」 
     伏見城へは、天海大僧正の軍勢の精鋭である、スサノオ壬生狼組が投入される。
    「この戦いは、ほうっておけば痛みわけとなりそうです」
     伏見城は落城するが、スサノオ壬生狼組は壊滅。伏見城から撤退した安土城怪人勢力のダークネス達は、琵琶湖に向かって合流するという結果が予想される。
    「天海大僧正の要請に従えば、伏見城の戦いに最初から助力する必要はありません。が、ここで助力する事で、伏見城から脱出するダークネスを減らす事ができれば、琵琶湖の戦いで有利になるかもしれません」
     また、壊滅する筈のスサノオ壬生狼組が生き残れば、琵琶湖の決戦に援軍として参戦してくれる可能性もある。
    「助力の方法は、現場の判断に任せますが、琵琶湖への援軍を防ぐ事には充分なメリットがあるでしょう」
     ここの灼滅者達が担当する相手は武者アンデッド達となる。城内の入口付近で陣取っている六体で、その戦意は高い。
    「スサノオ壬生狼組は全滅するまでに敵を半分まで減らす事ができるので、撤退する所を襲撃する場合、ダークネスの戦力は半減となります」
     途中で救援する場合は、タイミングにより敵戦力が変わる。
     また、伏見城の中で戦う場合、敵の戦闘力の上昇が見込まれる。伏見城に攻め込み素早く敵を撃破する事ができ、更に余力がある場合は、レプラコーンやいけないナースなど、非戦闘要員のダークネスを灼滅する事ができるかもしれない。
    「ちなみに、誰かが天守閣を制圧した場合、城内での敵の戦闘力の上昇は無くなります」
     姫子は最後に、灼滅者一人一人の目を見て頷いた。
    「スサノオ壬生狼組にどう対応するかで、戦況も違ってきます。自分達の安全と、そして、琵琶湖に敵勢力が合流するのを防ぐ事をお願いします」


    参加者
    新城・七葉(蒼弦の巫舞・d01835)
    灯屋・フォルケ(Hound unnötige・d02085)
    阿久沢・木菟(八門継承者・d12081)
    木元・明莉(楽天日和・d14267)
    香坂・翔(青い殺戮兵器・d23830)
    四刻・悠花(高校生ダンピール・d24781)
    上里・桃(生涯学習・d30693)
    秦・明彦(白き雷・d33618)

    ■リプレイ


    「伏見城攻略の援軍に来ました」
     上里・桃(生涯学習・d30693)は、壬生狼組へと共闘の申し出を行う。その後に作戦を伝えて連携を取れないか提案を行う。
    「援軍に、提案だと……?」
     羽織を着たスサノオが訝しむ。木元・明莉(楽天日和・d14267)は、共闘するダークネスと真っ向から相対した。
    「共闘する以上、この戦に於いて壬生狼組を全面的に信頼する。だから俺達の事も信頼して欲しい」
     灼滅者達の提案は主には二つ。壬生狼組と灼滅者側の各チームとして連携行動を取ること。そして、先手を取れるよう敵の注意の引きつけの依頼。後は……
    「こういう方針だから、念の為伝えておくよ」
    「……一応頭には入れておいてやる。だが、過大な期待はするな」
     同行することになったスサノオは、新城・七葉(蒼弦の巫舞・d01835)の顔を鋭く睨んだ。灯屋・フォルケ(Hound unnötige・d02085)は壬生隊と臨機応変は前提に互いの考えている侵攻経路と支援態勢等を打ち合わせする。
    「前の戦争ではお世話になりました。今日は宜しくお願いします」
    「……ふん、先に行くぞ」
     フォルケが会釈の敬礼をすると、スサノオの剣士は鼻を鳴らす。
    (「流れる血は少なくあって欲しい。もしナースたちが人を襲わず、安土城へ付かないでくれるなら灼滅する理由がなくなるのではと思う……目指せるなら目指したい」)
     他にも一つだけ聞いておきたいことがある。
     戦闘が始まる前にと、桃はダークネスの背に声をかけた。
    「どうして過去に寝返った造反者の羅刹を、壬生狼組が倒して畏れで支配するとき、周囲の一般人も殺してしまおうとするんですか?」
    「……そんなことを聞いてどうする?」
    「それを知れれば、もっとスサノオというダークネスへの理解を深められると思うから」
     灼滅者の答えに、ダークネスは歩みを止めることはなかった。
    「ならば、無用な質問だ。我らスサノオ壬生狼組は灼滅者と馴れ合うつもりはない」
     断固とした言葉は、それ以上の問答を明確に拒んでいた。
     城は既に目と鼻の先であり、他のチームによりあちこちから鬨の声があがっている。 
    「ひゃっはー! 城攻めでござるぜぇ!!! 皆丸太は持ったでござるか!?」
    「……城門は開いている。丸太はいらん」
     スサノオと一緒に突撃するのは、阿久沢・木菟(八門継承者・d12081)だ。ノリと勢いとテキトーさと女性への優しさで出来てる純忍者を自認するだけであって、何やらテンションが高い。
    「スサノオ壬生狼組参る!」
    「ちっ! 敵襲か!」
    「こちらにも来るぞ!」
     目的である武者アンデッド達へと、一番にスサノオの剣が迫る。灼滅者達も、次々に交戦状態へと入った。
    「VITALIZE!」
    「蒼の力、我に宿り敵を砕け」
     四刻・悠花(高校生ダンピール・d24781)は、いろいろな思いを振り切るため、気合を入れてスレイヤーカードを開放する。香坂・翔(青い殺戮兵器・d23830)もカードを解き放ち、螺穿槍で一体ずつ狙っていった。
    (「初手は壬生狼隊含めた全員で単体攻撃、一番近い敵を最初の目標として攻撃を集中だ」)
     秦・明彦(白き雷・d33618)もクルセイドスラッシュで同じ敵を狙う。自身としては、防御を固めつつ戦うつもりだ。
    「まずは、あいつだな」
    「Ja,(了解)」
     明莉が認識相違がないように声を掛け。相手の隙を作るように後方から神薙刃で殺傷ダメージ重視の攻撃を行う。フォルケは兵士として寡黙に淡々とティアーズリッパーを見舞った。
    「む」
    「切り裂け……」
     攻撃に気を逸らされた武者へと、七葉のレイザースラストが続く。サーヴァントのノエルも猫魔法で主人と同じように連動した。
    「くっ……」
    「効いています、このままで」
     初撃にスサノオの剣を深々と受けた武者アンデッドの一体は、その後の集中攻撃に苦しそうに呻きを上げる。桃は後衛のスナイパーであることを活かして戦場を俯瞰し、的へと確実な攻撃を叩きこむ。
    「まずは、初白星でござる」
     木菟はクルセイドスラッシュによる、強烈な斬撃を繰り出す。武者の刀を砕き、剣はアンデッドの身体を両断する。最初の標的になってしまった不幸な敵は、悲鳴をあげる暇もなく消滅した。
    「……Tango down!」
     敵一体目の排除。
     まずは作戦の第一関門の突破だ。フォルケの静かな歓声が響く。
    「この、怯むな!」
    「行くぞ!」
     不意を突かれた武者アンデッド達は、こぞって失点を取り戻すように攻勢をかけてくる。灼滅者達を粉砕せんと、巨大な刀が唸りをあげる。
    (「ダークネスとはいえ、壬生狼組を死地に送り込んだ天海勢をやはり信用できません」)
     悠花は棒術で相手の攻撃を邪魔しつつ、序盤は回復役に徹した。
    (「とはいえ、先に助力してもらっている以上は、こちらから約束を破るわけにもいきませんし。この戦で本当に戦わなければならない相手は、心の葛藤なのかもしれません」)
     内心では渦巻くものがあるが。
     戦闘中はそこは飲み込み、ワイドガードとフェニックスドライブで戦線を支えた。今回の戦いにおいて、彼女のように複雑な心情の者は多い。
    (「今度の敵は安土城怪人。天海を全面的に信用するのは怖いけど、こっちも協力してもらった恩義があるからね。恩を仇で返すつもりもないし、ダークネスとはいえ今回は壬生狼も仲間だ。被害を最小限で抑えなきゃね」)
     すぐ目の前で斬り合うスサノオの剣士とアンデッド武者。
     そんな姿を見やりつつも、翔はクラッシャーとして火力を発揮して閃光百裂拳を打ち放つ。出来るなら城外で戦いところだ。
    (「ダークネスとの共闘は不思議な感じがします。とはいえ、先代クロキバやダークネス時代のラブリンスターのように、認める事ができるダークネスもいると思う)」
     気魄回避の装備を身に着けた明彦は、敵の攻撃をディフェンダーとして引きつけて抗雷撃で迎撃する。BS耐性も鑑みてのことだ。
    (「私たちで全部片付けるつもりで――」)
     敵を一体屠った後は、七葉は戦法を変える。
     ジャマ―として、バッドステータスをばら撒きながらの各個撃破。
    「汝の罪を知れ」
     オールレンジパニッシャーによる光の乱射が、パラライズの効果を伴って敵群を薙ぎ払いにかかる。
    (「天海勢とは、というかダークネスとは仲良しこよしする気はない。知合いの子が闇堕ちした直後なのもあり、余計に。ダークネスと共存するというのは闇堕ちも受け容れるって事だ。俺にはそれは絶対に許容できない」)
     明莉は殺人注射で毒を付与しにかかる。
     命中率ダウン回避には神薙刃のホーミングだ。
    (「だけど今回は共闘。前回の戦争の借りは返さなきゃだし。共闘する以上は相手を信頼しないと戦列が崩壊する。ただ、それだけの事だ」)
     バッドステータスを付与しつつ体力の低い敵から狙いを定める。声掛けと目視で一体ずつ集中攻撃、オーバーキルを避けた。フォルケも各個に攻撃を集中して順次排除するため、味方と連携して黒死斬を放つ。
    「三時方向注意を!」
    「ちっ!」
     周囲監視していたからこそ。
     敵の不意の攻撃にも、警告を味方にしっかり伝達することが出来る。フォルケの声に反応して、敵の斬撃をすれすれで躱し。桃は鬼神変の一撃で、カウンターを仕掛けた。
    「隙あり!」
    「しまっ……」
     灼滅者の反撃により、武者アンデッドの態勢が崩れる。そこへ血に飢えたスサノオ壬生狼組の剛剣が容赦なく降り注ぎ、また一体敵が斬り捨てられて四散した。


    「特攻したら死んじゃうでござろうし、助かる様に手伝うでござるわ」
     混戦の中、スサノオの剣士と背中合わせになり。
     木菟は個人的な意見を率直に伝えておく。そこには、嫌がられない程度に恩を着せておこうという思惑もある。
     だが――
    「ふん、恩には着んぞ」
     スサノオ壬生狼組はつれない一言で一蹴して、武者アンデッドへと果敢に攻めて攻めて攻め込んでいった。木菟のサーヴァントはいそいそと、味方後衛にリングを光らせた。
    「……ちなみに、そちらには美人の女性隊士は居るでござるか?」
     拙者の興味は、果たして可愛い女性隊士が存在するのかどうか! 
     気になります!
     などという声が聞こえてきそうな質問だったが。
    「答える義理はない」
     どこまでも無愛想ここに極まりといった態の、スサノオ壬生狼組だった。女性隊士が居る場合はテンションを上げ、居ない場合はホモ疑惑を突くつもりだった木菟も、どちらの反応をすべきか分からない。
     ともかくも。
     双方の陣営ともに、剣戟が入り乱れて戦いが激化しているのは確かだった。
    「この天海の犬が!」
     武者アンデッドが巨大な刀を大振りして打ち下ろせば、大地が揺れるほどの衝撃が走る。もちろん、スサノオの方も黙ってはいない。
    「壬生狼の牙を舐めるな!」
     一、二、三。
     ほぼ同時に三カ所を突き通す三段突き。防御する隙など与えず、武者の鎧を血刀が鋭く貫通して破壊せしめる。
    「壬生狼……かつての敵が今日の味方か。何か不思議な気分だな。でも、今は味方だ。だから守る。オレはそのために存在する「兵器」だから」
     スサノオが負傷を与えた敵へと、翔のDMWセイバーが煌めく。灼滅者は己の利き腕を巨大な刀に変えて、アンデッドを斬り裂いた。致命傷を負った相手は、微動だにすることもできぬまま光となって消え去る。
    「確実に一体ずつ殲滅するよ」
    「あと三体ですね。行きます」
     回復役に徹していた悠花も、攻撃に転じる。炎を纏わせた打撃が、轟音を鳴らして武者アンデッドへとクリーンヒット。焦げ臭い匂いと、汗が噴き出そうな熱気が戦場に漂う。
    (「分からない事も多いし、考え込む前にまずは行動に移して情勢を作りつつ、情報や知識を得てみないと」)
     戦闘が激しさを増すにしたがって、全員ともに負傷は拡大していく。特に前衛の者は治療が間に合わない。明彦は攻守のバランスを取りながら、集気法で味方の回復を行う。そして、最前線に立つ壬生狼も治療の対象だ。
    「大丈夫か? これで、まだ戦えるはずだけど」
    「ふん……礼は言わんぞ」
     スサノオは灼滅者の支援を受けて、縦横無尽に斬って斬って斬りまくった。その戦闘力の高さは共闘相手とはいえ、思わず鳥肌がたつほどだ。
    「効率よく削る」
    「ん、仕留めるよ」
     明莉と七葉が同時に動く。
     明莉の百億の星により、敵群の頭上から無数の矢を降り注ぎ敵の動きが止まる。そこへ七葉がブレイジングバーストを使い、魔力を込めた大量の弾丸を連射する。見事に着弾すると派手な爆炎が上がり、そのうちの一人が地に倒れて動かなくなった。
    「っ! 身体が……」
    (「被害の拡大を狙います」)
     武者アンデッド達は、次第に動きが鈍くなっていく。フォルケは仲間が与えたバッドステータスを活かすために、ジグザグスラッシュを多用して有利な状況を加速させる。
    「――あともう少し」
     桃は傷を負いながらも、蒐執鋏のドレインで攻撃。仲間や壬生狼組を問わずフォローするように立ち回る。
    「純粋なのでファンタジーな忍術は使えませんでござる!」
    「この忍者が!」
     木菟とサーヴァントのウイングキャットは、落ちそうな味方を随時カバーする。中衛を庇ってから、主従のトラウナックルと肉球パンチが飛んだ。
    「今回は壬生狼を信用して共闘しないとね」
    「ふん」
     翔のグラインドファイアによる炎を纏った激しい蹴りが、スサノオの剣と共に武者に決まる。ぐらりとアンデッドの身体が傾くところへ、悠花が踏み込む。
    「トドメです」
    「!」
     魔力を込めた突きが、敵を穿つ。
     一瞬の間の後、相手は内部から大爆発して崩れ落ちた。
    「灼滅者に、スサノオ壬生狼組が!」
     最後に残った武者アンデッドが激昂して、猪突猛進して刀を振りかざす。その迫力は鬼気迫るものがあった。
    「そちらには、行かせない」
    「惑わせ、癒せ」
     明彦が攻撃を何とか受け止め、七葉がラビリンスアーマーで味方の回復にまわる。
    「頭を抑えます……今のうちに立て直しを」
     フォルケがバレットストームで、制圧射撃を掛け味方が態勢を立て直す時間を稼ぐ。弾丸の嵐に敵が気を取られているうちに、桃は集気法で必要な味方のフォローを行う。明莉も声を掛け合って、癒しの矢を使って戦線を立て直し――最後の攻勢に出る。
    「これで終わりだ」
     鋼鉄拳の一撃が、敵の強化を削ぎ落とすと同時に意気を挫き。崩れることのない灼滅者達に対し、ついに武者は刀を取りこぼして膝を折った。
    「……ぐ、ここまでか」
    「斬り捨て御免」
     スサノオの抜刀が、アンデッドの首を音も無く切断。この場所での決着がついた。
    「これで全部かな? 油断は出来ないけど、当初の目的はこれで果たせたことになるのかな。後は敗残兵の処理が終わったら琵琶湖の襲撃が待ってるんだね。そっちもちゃんと出来ればいいけど」
    「ん、皆の退路を確保する大切なお仕事だね」
     翔の言葉に、七葉が頷く。
     このチームの方針としては、この後は天守閣は目指さずに城内へ進んだ味方の退路を確保するつもりであった。ただ、出てくるのは味方だけとは限らないので敵の迎撃の準備も怠らない。
    (「出来れば、裏口も……」)
     そう桃が考えていたところへ、一人のナースの姿を見せた。ほうほうの態で、どうやら逃げ出す途中のようだ。
    「……女と言えど容赦はせん。刀の錆としてくれる」
    「ひっ。ま、待ってください。私は戦うつもりはないんです」
     スサノオが淫魔の前に立ち塞がる。 
     その殺気は、誰もが息を呑むほど明確だ。
    「待ってください。相手には、もう戦闘の意志はありません」
    「……どけ、灼滅者」
     桃は二人の間に割って入って助命を願う。
     特にナースたちは元々中立。安土城勢へついたのは学園が灼滅しようとしたのが原因のひとつだから、と彼女は考えていた。
    (「非戦闘要員は見逃したい気持ちはある。だけど、これは天海勢が決める事……上里達の説得に期待するしかない」)
     明莉はじっと、ことの成り行きを見守る。
     投降兵の命は保障したいところと、木菟も思っていた。
    「なあ、君。今後、人を害さず、安土城怪人に与しないって約束できるか?」
    「は、はい。約束します。私はもう……」
    「……こう言っていることですし、見逃すことはできませんか?」
    「……」
     明彦と悠花も口添えをした。
     うかつに動けず両者の間で睨みあいが続く中、ナースはこれ幸いにとどこぞへと離れていた。そして、別のスサノオが近付いてきて何やら仲間に耳打ちする。
    「……天守閣の奴らは既に逃げていたという報告が入った。俺も仲間に合流する」
     スサノオは剣を納めて、灼滅者に背を向ける。
    「必要な作戦だったとはいえ、納得してこの戦いに臨んだのですか?」
    「……」 
     悠花の質問に、剣士は黙って背中で語り去っていった。
    「これで一勝だね、お疲れ様」
     七葉の言葉に皆が力を抜く。
     どこからか、とりあえずの勝ちを喝采する声が聞こえてきた。

    作者:彩乃鳩 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年2月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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