伏見城の戦い~猪突モー進! ブランド牛!

    作者:三ノ木咲紀

     青い空に、堂々とした城が築城されていた。
     この城の名は、伏見城。
     安土城怪人が築城した、彼らの拠点だった。
     伏見城の壁には、無数のペナントがたなびいてた。
     ペナントの柄は多種多様。
     ご当地の名産品が描かれているのは、各地のご当地怪人達。
     鬼の絵や、画数の多い漢字は天海大僧正から離脱した羅刹達か。
     鎧や武器は、鎧武者アンデッドだろう。
     その膝元には、ペナントを生産する正社員待遇のレプラコーン達。
     いけないナース達の姿も見える。
     宿敵・天海大僧正に完全勝利する日も近い。
     そんな気配が、伏見城には満ち溢れていた。

    「安土城怪人との決戦準備をしとった天海大僧正の勢力から連絡が入ったんや」
     神妙な表情のくるみは、集まった灼滅者達を見渡した。
     天海大僧正達の決戦準備が整う前に、安土城怪人が侵攻を開始し、京都周辺に攻め寄せてきたのだ。
     攻め寄せてきた安土城怪人勢力は、京都の伏見区に城を築き、戦力を集めている。
    「安土城怪人勢力は、なんちゅーかやる気満々でな。このままやったら天海大僧正勢力は、滅ぼされてしまうかも知れへんねん」
     これに対して、天海大僧正は全力で伏見城を攻略し、攻略成功と同時に琵琶湖の敵拠点に攻め込む作戦を行う。
     敵が戦力を分けたのならば、各個撃破する好機。
     伏見城の攻略は天海大僧正勢力で行うため、武蔵坂学園には、伏見城の攻略に成功した後、琵琶湖の拠点に攻め込む助力をお願いしたいとの事。
    「伏見城へは、天海大僧正勢の精鋭であるスサノオ壬生狼組が投入されるみたいや。……この戦いは、ほうっておけば痛みわけとなりそうやなぁ。伏見城は落城するけど、スサノオ壬生狼組は壊滅。伏見城から撤退した安土城怪人勢力のダークネス達は、琵琶湖に向かって合流するって感じやね」
     天海大僧正の要請に従えば、伏見城の戦いに最初から助力する必要はない。
     が、ここで助力する事で、伏見城から脱出するダークネスを減らす事ができれば、琵琶湖の戦いで有利になるかも知れない。
     また、壊滅する筈のスサノオ壬生狼組が生き残れば、琵琶湖の決戦に援軍として参戦してくれる可能性もある。
    「助力の方法は、みんなの判断に任せるわ。琵琶湖への援軍を防ぐ事には充分なメリットがあるって思うで」
     このチームが担当するのは、伊賀牛怪人と松阪牛怪人と但馬牛怪人が、それぞれ三体ずつ。
     ポジションは、クラッシャー九体。
     ご当地ヒーローに似たサイキックとシャウトを使う。
     いずれもなかなかの戦闘力を誇る。
     スサノオ壬生狼組は全滅するまでに、敵を半数まで減らすことができる。
     撤退するところを襲撃する場合、ダークネスの戦力は半減している。
     スサノオ壬生狼組が交戦中に襲撃する場合、タイミングによって敵戦力は変わっている。
     伏見城内で戦う場合、天守閣の旗の力で敵戦力の上昇が見込まれる。
     危険だが、伏見城内に攻め込み敵を素早く撃破できて余力がある場合、レプラコーンやいけないナース達を灼滅することができるかも知れない。
     また、誰かが天守閣を制圧した場合、城内での戦力増強はなくなる。
    「今回は、協定に従えば助力する必要はあらへん戦いやけど、メリットもぎょうさんある。――せやけど一番の戦果は、皆が揃って帰ってきてくれはることやさかい、無理せんと頑張ってな!」
     くるみはにかっと笑うと、頭を下げた。


    参加者
    比嘉・アレクセイ(貴馬大公の九つの呪文・d00365)
    ルーパス・ヒラリエス(塔の者・d02159)
    椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)
    ジオッセル・ジジ(ジジ神様・d16810)
    オリヴィエ・オーギュスト(従騎士・d20011)
    深草・水鳥(眠り鳥・d20122)
    高梨・雪音(見習い神薙使い・d25550)
    物部・暦生(迷宮ビルの主・d26160)

    ■リプレイ

     堂々とそびえ立つ伏見城。
     揺れるペナントを遠くに臨んだ三体のスサノオ壬生狼の後ろに、八人の灼滅者達が現れた。
    「……灼滅者か。何をしに来た?」
     素っ気なく言い放つスサノオ壬生狼組の一人に、椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)は真剣な目で言った。
    「壬生狼組の力を見くびる訳じゃないけど、決戦の場はまだ先だろ? だから手を貸すぜ」
    「……お前達に要請された決戦の場も、まだ先であろう?」
     武流に怪訝そうに首を傾げたスサノオ壬生狼組に、物部・暦生(迷宮ビルの主・d26160)は肩をすくめた。
    「まぁ、折角だから予備戦力として受け取ってくれや。こっちはこっちで、この城攻めに手を貸すメリットはあるからな」
    「メリット……だと?」
    「そう。ここで敵の戦力を少しでも削れれば、来るべき琵琶湖の戦いに有利だからな」
    「……」
     凛々しく告げる高梨・雪音(見習い神薙使い・d25550)の声に、スサノオ壬生狼組は答えない。
     表情の読めないスサノオ壬生狼組達に、ルーパス・ヒラリエス(塔の者・d02159)は得物のクロスグレイブを担ぎ上げた。
    「思惑はおいといて、仕事を片付けよう。仲良くしてくれなくてもいいけど、今の利害は一致してる」
    「明日はどうなるかわからないですが、今は共通の敵を持つ同志……。信じて背中を預けるのです」
     真剣なジオッセル・ジジ(ジジ神様・d16810)の訴えに、スサノオ壬生狼組はふいと視線を逸らした。
    「……好きにしろ」
     素っ気なく言い放ったスサノオ壬生狼組達は、城に向かって歩き出した。
     受け入れた訳ではないが拒否もしない背中を、深草・水鳥(眠り鳥・d20122)は追いかけた。
    「あの……お名前、伺っても?」
    「……何故だ?」
     怪訝そうに立ち止るスサノオ壬生狼組に、水鳥は怯えたように立ち止った。
    「その……。大僧正様と、同盟したから……仲間、です……。連携、できたらなって。それに……回復も、させて貰えたらって」
     重度の人見知りから非常に怯えながらも、それでも勇気を振り絞る水鳥に、スサノオ壬生狼組は頷いた。
    「俺はコガネ。右がシロガネで左がアカガネ。そう呼べ」
     コガネの鋭い眼光に思わず怯えた水鳥を庇うように、暦生が一歩前へ出た。
    「じゃあコガネさんよ。ちと質問なんだが……。お前らって慈眼城から出て来たのか? つか、どーやって」
    「答える義理はない」
     暦生の問いに少し機嫌を損ねたように、スサノオ壬生狼組は伏見城へと向かう。
     とりあえずの連携は成り立ちそうな気配に、灼滅者達はその後を追った。


     固く閉じられた門が、勢いよく吹き飛んだ。
     怪力無双で景気よく城門を破壊したオリヴィエ・オーギュスト(従騎士・d20011)は、陽動になるように堂々の口上を述べた。
    「日本のご当地怪人達! フランスの騎士が城を頂きに参上したぞー!」
     オリヴィエの声に、伏見城内がざわつく。
     城内へと突入した灼滅者達とスサノオ壬生狼組の混成部隊は、伏兵や罠を十分警戒しつつ奥へと進んでいった。
     天守閣へ向かう十字路に差し掛かった時、オリヴィエが全員を止めた。
     棒の先に付けた鏡が、突進する牛頭のダークネスを映し出す。
     その様子に、比嘉・アレクセイ(貴馬大公の九つの呪文・d00365)は指先に魔力を集中させた。
    「撃ちます! 前衛は離れてください!」
     前衛が道を開け、アレクセイの魔力が最大まで練られた時、突進する牛の先頭が十字路に差し掛かった。
     先頭の牛に、魔力弾が突き刺さった。
     油断し、突進していた伊賀牛怪人に大きく穴が穿たれ、よろめいて倒れる。
     同様に突進していた後進の牛の数体が、先頭の伊賀牛怪人につまずいて転ぶ。
     この隙を逃す灼滅者達やスサノオ壬生狼組ではなかった。
     矢のように飛び出したコガネが、大ダメージを負った伊賀牛怪人に襲い掛かり、一刀の下に斬り捨てる。
     続いて飛び出したシロガネとアカガネが、先頭の伊賀牛怪人につまずいて倒れた但馬牛怪人に大ダメージを負わせる。
     日本刀で切り刻まれた但馬牛怪人に、雪音はエアシューズを起動させた。
    「高級和牛なんて……。高級和牛なんて、焼肉にでもなるがいい!」
     家庭の事情で、ここ半年焼肉を食べていないという個人的な恨みが籠った回し蹴りが、ダメージを負った但馬牛怪人に叩き込まれる。
     肉の焼けるいい匂いを漂わせながら消えた牛に、態勢を立て直した怪人達は灼滅者達に指をびしっと突きつけた。
    「お前達、何者だマーツ!」
    「俺達は……」
    「何者でもいいマツ! 侵入者はやっつけるマツ!」
     一声吠えた松阪牛怪人は、突出したコガネに向けて大きくジャンプした。
    「食らえ! 松阪の牛キック!」
    「危ない!」
     牛頭の巨体がコガネに突き刺さる直前、武流が動いた。
     頭上から襲い掛かる文字通り重い蹴りを、クロスした両腕で何とか受け止める。
     松阪牛怪人の攻撃を受け切った武流の脇腹に、ビームが突き刺さった。
    「攻撃するのは目の前の奴からイガ! 伊賀産和牛ビーム!」
    「更に攻撃イガ! 伊賀産和牛ビーム!」
     叩き込まれる連撃に武流が膝をついた時、武流の体が白い帯に包まれた。
    「大丈夫?」
     ジオッセルが放ったラビリンスアーマーが、武流を癒し、護る。
     続いて飛び出した霊犬のギエヌイが、武流の目を覗き込む。
     癒しの光に立ち上がった武流に、コガネは目を見開いた。
    「お主……何故」
    「……コガネ達は、一般人に迷惑かけたりした?」
    「いや……」
    「言葉が通じて人様に迷惑かけないんなら、それでいいんじゃないか?」
     それに今は仲間だし、と言って笑う武流に、コガネは口元を引き締めた。
    「お喋りはそこまでだ。……来るぞ!」
     更に突進してくる牛達に、暦生は縛霊手を構えた。
     放たれた除霊結界は広範囲に広がり過ぎ、完全な効果は発揮できない。だがそれでも、数体には効果があったようだ。
     突進してくる松阪牛怪人を迎え撃つように、ルーパスの妖の槍が唸りを上げた。
    「牛串できあがり、ってね!」
     カウンターのように突き出された槍が、松阪牛怪人に突き刺さる。
     ロースを貫かれ、それでも構わず突進する松阪牛怪人が、コガネに体当たりをかました。
    「牛斬り包丁は先に叩ーくマツ!」
    「松阪の牛ビーム!」
     攻撃を受けたコガネに、ビームが突き刺さった。
     大ダメージを受けたコガネは、続く攻撃を覚悟した。
    「まずは邪魔な回復を退治するタジー!」
    「牛は但馬ビーム!」
     不意打ちのように飛んできたビームの二連撃が、オリヴィエに向かう。
     攻撃を受けてよろめいたオリヴィエは、但馬牛怪人に向けて怒りの目を向けた。
     そんなオリヴィエに、水鳥は歌いかけた。
    「落ち、着いて……オリヴィエさん!」
     水鳥の心を落ち着かせる美しい歌声に、オリヴィエは我を取り戻す。
     オリヴィエは視線で水鳥に礼を伝えると、戦局全体を見渡した。
     回復を受けた武流よりも、近接攻撃を受けたコガネの方がダメージが深い。
     オリヴィエは迷わずラビリンスアーマーをコガネに放った。
    「コガネさん!」
     癒しの鎧を身に纏ったコガネは、オリヴィエを振り返った。
    「何故……」
    「第二次新宿防衛戦で助けて貰ったからには……ね! サムライは、恩義って言うんですよね?」
    「……ふん」
     微笑むオリヴィエに感情の読めない声を返したコガネの前に、ルーパスは立った。
     何か重要なことを告げなければならない。重々しい雰囲気を纏ったルーパスに、その場の全員が息を呑む。
    「……ご当地国産牛怪人。君たちに、言いたいことがある」
     攻撃がひと段落して少し落ち着いた様子の怪人達に、ルーパスは指を突きつけた。
    「お前達……。探してたのに布教もしないで引きこもってるだなんて、あんまりだ!」
     魂の叫びとも言える声が、戦場に響いた。


     言葉の意味を測りかねた和牛怪人達は、思わずきょとんとした。
    「……はい?」
    「最近全く肉類のご当地怪人と遭遇出来なかったから、こっちは鬱憤が溜まってるんだよ! 騒ぎのひとつも起こせば、退治しに行けたのに!」
    「いやそんなの知らないマツ!」
     思わず裏拳ツッコミを入れた松阪牛怪人に、アレクセイもまたくすりと笑った。
    「ご当地国産牛ですか……。戦勝祝いに天海僧正で領収書切りましょうか」
    「なっ……!」
    「みんな牛なのに……。わざわざ三種類に分けても……違いは、分からない……」
     水鳥のよく通る声に、怪人達が水鳥を振り返る。
    「ご当地怪人も、奥が……深いね……」
    「何を言うイガ! 伊賀牛は最高の和牛イガ! 他の牛とは一味も……」
    「ちょっと待つマツ! 贈答用に一番喜ばれるのは、松阪牛より他に……」
    「知名度なら、但馬牛だって負けてないタジ!」
     やいのやいのと言い合うご当地国産牛怪人達に、ルーパスは妖の槍を両腕で担いだ。
    「ところで、誰が一番美味しいの?」
     ルーパスの問いに、ご当地国産牛怪人達の空気にヒビが入った。
     元々「牛」という共通項で何となく一緒にいたが、地元が近所のライバル和牛同士の間柄だ。横の連携が取れている訳ではない。
     ご当地国産牛怪人達は文字通り角を突き合わせると、お互い言い合った。
    「伊賀牛こそ世界一イガ!」
    「いいや松阪牛が……」
    「但馬牛の方が!」
    「隙あり!」
     ルーパスが放ったダイダロスベルトが、ダメージを受けた松阪牛怪人を切り裂く。
     ぐらりとよろけた松阪牛怪人に、アレクセイのレイザースラストが迫った。
    「サイコロステーキのできあがり、ですね」
     アレクセイのダイダロスベルトが持ち主の元へと戻った時、角切りになった松阪牛怪人が地面に落ちて消えた。
    「モー怒ったタジ! 松阪の! 伊賀の! 今は一時休戦タジ! 安土城怪人様のため、こいつらをやっつけるタジ!」
    「目の前の敵に全力イガ!」
     ダメージが癒えきらないコガネに向けて、伊賀牛怪人が猛突進を仕掛けた。
     コガネの前に、雪音が飛び出した。
     突進の軌道を変えて吹き飛ばされる雪音に、コガネは叫んだ。
    「婦女子が前に出るな!」
    「お、女の子とか関係ないだろう! それに……」
     女の子扱いに対する苦手意識から思わず顔を赤くした雪音は、立ち上がると殲術道具を構えた。
    「私は灼滅者としてまだまだ未熟な身だが、出来る限りの力を尽くしたい」
    「……好きにしろ!」
     雪音に向けて突進する松阪牛怪人に、コガネは斬りかかった。
     同時にシロガネとアカガネも動く。連携の取れた攻撃を一身に受けた松阪牛怪人に、暦生の咎人の大鎌が迫った。
    「討ち漏らし退治は、列攻撃に限るねぇ」
     黒い波動が、ご当地国産牛怪人達を薙ぐ。
     雪音に向かっていた松阪牛怪人は、何も言わずに消えていった。
    「雪音さん!」
     ダメージを受けた雪音に、白いベルトが舞い降りた。
     ジオッセルの放った白いベルトが雪原のように雪音を守り、傷を癒していく。
     その姿に、但馬牛怪人達がいきり立ったようにジャンプした。
     連続する攻撃を受けて再び膝をついたコガネにの頭上に祭壇を展開しながら、オリヴィエは声を張り上げた。
    「コガネ! 下がって!」
    「……ここで下がっては、スサノオ壬生狼の名が廃るわ!」
    「でも、無理は……しないで!」
     無理に声を張り上げた水鳥の声が、コガネの傷を癒していく。
    「その意地、貫いてみせろよな!」
     口の端に笑みを浮かべた武流は、伊賀牛怪人の前に紅い逆十字を出現させた。
     どこか目をとろんとさせた伊賀牛怪人は、猛突進を仕掛けた。


     戦況は、灼滅者・スサノオ壬生狼組有利に進んだ。
     元々戦略等は考えずに突進するご当地国産牛怪人達の攻撃は重いが、一撃で倒れるほどではない。
     対して、灼滅者達の連携は折り紙付きだ。司令塔もしっかりとしている。
     数でも勝る灼滅者達は、ご当地国産牛怪人達を圧倒していった。

     最後に残った但馬牛怪人は、突進しようとした。
     だが、動けない。
     序盤から与え続けた除霊結界によって動きを止めた但馬牛怪人に、暦生の咎人の大鎌が閃いた。
    「牛肉のハンバーグも、乙な物だよねぇ」
     暦生が機嫌良く召喚した無数の鎌が、但馬牛怪人に迫る。
     殺到する無数の鎌に切り刻まれた但馬牛怪人に、ジオッセルはエアシューズを起動した。
    「……いきます!」
     流星の煌めきを乗せたジオッセルの蹴りが、容赦なく叩き込まれる。
     ぐらりとよろけた但馬牛怪人は、そのまま倒れると黒い霧となって消えた。

     大きく伸びをしたルーパスは、伏見城を見上げた。
    「さて、と。物資略奪がてら調査といきますか!」
    「ま、待って!」
     駆け出すルーパスの背中を、オリヴィエは慌てて追いかけた。
     城内は、閑散としていた。
     城の攻撃を受けた安土城怪人勢力は、非戦闘員を先に逃がしたのだ。
     逃げ出す敵を討つ選択をした組は無い。
     結果、こちらの戦力は保持できたものの、敵の戦力もまた大きく残す結果となった。
     敵の退路を断っていれば、また違っていたのかも知れない。
     非戦闘員が誰もいない城内に、オリヴィエはホッと胸を撫で下ろした。
     相手はダークネス。それは分かっているが、一般人に何もしない内から何かしたくない。
    「レプラコーンやナース達が、アイドル淫魔達と活動してくれたらなあ……」
     思わず呟いたオリヴィエに、武流も頷いた。
    「灼滅するほどでもないなら、更生するかも知れないしな」
     武流の隣で周囲を見渡したアレクセイは、残された物資を手に取った。
    「相手の戦力が減りはしたが、痛手とも思えません。情報があればいいですが」
    「そうだなぁ……」
     暦生は壁に掲げられたペナントを調べてみたが、特に変わったところはなさそうだった。
     一通り調査を終えた時、水鳥は顔を上げた。
    「……帰りましょう。なんか、無性に……ステーキ、食べたくなった」
    「いいな! 行こうぜ! コガネ達もどうだ?」
    「お前達だけで行くがいい」
     健闘を称えるように武流は声を掛けたが、素っ気なく答えたスサノオ壬生狼組はそのまま立ち去った。
     戦いが終わり、日が暮れて。
     灼滅者達は存分にご当地国産牛を堪能して、家路についた。

    作者:三ノ木咲紀 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年2月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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