出現、鏡モッチア

    作者:聖山葵

    「ほぉう」
     始まりは唐突だった。
    「な、何だよ……冗談じゃんか。お前鏡餅好きだし――」
    「それで『そのまな板にのっけりゃいい』言うたんか……あのな、うちはこの真っ平らな胸をからかわれる分には大して怒らへん。怒らへんわ、けどな……」
     怯む少年の前で、怒りのオーラを背負った少女の顔はその直後般若もかくやと言う形相に変わる。
    「うちが許せんのはよりによって鏡餅様を下ネタの道具にしたこっちゃぁぁぁぁっ!」
    「鏡餅……さま?」
     様付けで鏡餅を呼んだ少女を前にあっけにとられた少年は、次の瞬間信じられないものを見た。
    「ぬうううううっ」
    「な」
     少女の身体が異形へと変貌し始めたのだ。中身の肥大化によってはち切れんばかりに膨れあがった服は限界を迎えてボタンが吹っ飛び、開いた胸元からこぼれだしたのは、大きな鏡餅。
    「えっ、あ、ちょ」
    「覚悟するもちぃ、歯ぁ食いしばれもっちゃぁぁぁぁっ」
     咆吼と共に振り上げられた拳、まさに絶体絶命であった。
     

    「一般人が闇もちぃしてダークネスになる事件が起きようとしている。今回は鏡餅だ、まぁ季節モノだな」
     君達を出迎えた座本・はるひ(大学生エクスブレイン・dn0088)は、まずそう明かすと、情報提供者の牧原・みんと(象牙の塔の戒律眼鏡・d31313)を横目で見た。
    「ただ、今回は人の意識を残したまま一時持ちこたえるのでしたね?」
    「その通り。もっとも、言葉通りに一時だ。よって、君達には彼女が灼滅者の素質を持つのであれば闇堕ちからの救出をお願いしたい」
     また、そうでないときは完全なダークネスになってしまう前に灼滅を、それがはるひからの依頼だった。
    「問題の少女の名は、銅鏡・桃衣(どうきょう・ももえ)。中学二年の女子生徒だ」
     下校途中、家のある方角が同じと言う理由で居合わせた同級生にからかわれた少女は、愛する鏡餅を下ネタに使われたと言う怒りから無駄にスタイル抜群の色白美女と言った容姿のご当地怪人、鏡モッチアへと変貌しからかった同級生に殴りかかる。
    「流石にそのまま殴られればただでは済まないが、少年が殴られる直前で荒ればバベルの鎖に触れることなく介入が可能だ」
     この時ディフェンダーポジションの誰かが割り込むことで同級生の少年を庇うことが出来る。
    「少年を守れたなら、後は少女を救えばいい」
     闇堕ち一般人を救うには戦ってKOする必要がある為、戦闘は避けられないが、人間の心に呼びかけることで戦闘力を削ぐことも出来る。
    「ちょうど鏡開きで食べてしまおうと思っていた鏡餅が残っていた、これを持っていくといい」
     はるひ曰く、鏡餅を渡せば鏡モッチアがこちらをむげに扱うことはないとのこと。
    「少なくとも話に耳を傾けるくらいのことはしてくれるはずだ」
     そこで説得し、弱体化したところで戦闘を挑めば戦いは優位に運べるだろう。
    「説得に関しては、同級生に謝罪させるのが一番効果的だと言わせて貰おう。危険も伴うが、それはそれだ」
     誰かが庇えば、いいということなのだろう。
    「後は鏡餅を褒める……持ち上げること、だな。様づけて呼び、自分のことより鏡餅のことで怒るぐらいの鏡餅好きだ」
     ちなみに戦闘になると鏡モッチアはご当地ヒーローのサイキックに似た攻撃で応戦してくる。
    「最後に、現場は夕方で寒い為か、接触から一時間ほどなら人が来ることもない」
     人避けも明かりも不要、言外にそう言うと桃衣のことをよろしく頼むとはるひは君達に頭を下げたのだった。


    参加者
    ホテルス・アムレティア(斬神騎士・d20988)
    湯乃郷・翠(お土産は温泉餅・d23818)
    仮夢乃・蛍姫(小さな夢のお姫様・d27171)
    牧原・みんと(象牙の塔の戒律眼鏡・d31313)
    セティエ・ミラルヴァ(ブローディア・d33668)
    神代・蓮(神に愛された無頼漢・d36326)

    ■リプレイ

    ●通学路に
    「ふーむ」
     茜色に染まった雪景色を左右に唸ったのは、神代・蓮(神に愛された無頼漢・d36326)だった。
    (「本人には何気ない言葉が相手にとっては苦痛で学校に来なくなったっていう懺悔をこないだ聞いたな。今回は闇落ちしちまうとは……何でそいつは言ったんだ?」)
     同級生である以上桃衣の餅好きぐらい知ってるはずだと思いつつもそれ以上の材料はなく。
    「同級生を殴って怪我をさせたらあとが大変だしちゃんと止めてあげないとね」
    「ええ」
    「うん、大変なことになっちゃうもんね!」
     並ぶ湯乃郷・翠(お土産は温泉餅・d23818)の声に頷いて見せたのは、ホテルス・アムレティア(斬神騎士・d20988)と仮夢乃・蛍姫(小さな夢のお姫様・d27171)。
    「ただ……あれは、まぁ」
     怒りますよね、と牧原・みんと(象牙の塔の戒律眼鏡・d31313)は胸中で理解を示す。
    (「私だって眼鏡で目が大きくなるアレやられるだけで腹フォースブレイク食らわしたくなりますし」)
     鏡餅を愛用の眼鏡に置き換えた場合ではあるものの、どうすれば自分を怒らせることがに心当たりが有ったのだろう。
    (「下ネタなら猶更。……とはいえこれだけで堕ちてしまうのも酷い話ですよね」)
     ただ、だからといって見過ごすことも出来ず。
    「何とか食い止めましょうか」
    「はい、騎士として、嘗て大切な人を失った者として……嘗ての己のような思いを誰にもさせぬ為に!」
    「えーと、騎士じゃないけど、わたしも何としても食い止めるよ!」
     ぐっと拳を握ってみんとに応じたホテルスの目にはもう救うべき人が映っているのか。合わせた蛍姫は、闇堕ちじゃなくて闇もちぃなんだねと聞き慣れぬ単語に一時首を傾げたものの、悲劇を避けようと考えている点は変わらず。
    「ちょっと良いかしら?」
     会話の中心には入らず半ば聞き手に徹していた、セティエ・ミラルヴァ(ブローディア・d33668)が口を開いたのは、その直後。
    「そろそろ目的地よ」
    「では、そろそろ私の出番のようですね」
     ちらりと密かに時計を見たのは、介入タイミングの事も考えてのことか。警告に小さく頷いたみんとがサウンドシャッターで周囲が戦場と化した場合の音に備え。
    「あそこ」
    「ぬうううううっ」
     誰かが上げた声に一同が目をやれば、そこに居たのは異形化により部分的に膨れ上がって行く少女。
    「覚悟するもちぃ、歯ぁ食いしばれもっちゃぁぁぁぁっ」
     変貌が終わり、咆吼と共にご当地怪人が拳を振り上げた直後だった。
    「ちょっとごめんなさいね!」
    「なっ」
     突如割り込んできた翠にご当地怪人は驚きの声を上げるも、拳は止まらず、盾になった翠へ直撃し。
    「大丈夫、湯乃郷?」
    「何とか、ね」
     セティエの声に片膝をついたまま応じた翠は傷を癒されつつ立ち上がる。
    「こ、これ、いったいどう」
    「こちらへ」
    「何してるの? お姉さん? そんな怖い顔して……鏡餅がどうこう聞こえたけど、何かあったの?」
     おそらくはどういう事だと口にしようとした少年が、ホテルスに問答無用で連行される中、ご当地怪人が我に返るより早く声をかけたのは、蛍姫。
    「何をしてるも何も――」
     殴りかかる程いきり立っていたところだ声音は誰が聞いても非友好的なものだった、が。
    「私も今ちょうど大きな鏡餅持ってるんだよね! 鏡餅様だよ見て見て!」
    「な、鏡餅様やないもちぃ!」
     蛍姫に鏡餅を見せられたご当地怪人鏡モッチアの表情は驚き一色に染まった

    ●説得の時間
    「鏡餅様を持ってきたのだけれど話を少し聞いて貰えないかしら?」
    「ほっほぅ、そういうことだったもちぃね」
     セティエの言に何やら納得したそぶりを見せ。
    「大きな鏡餅だから鏡餅様! 凄いでしょ! 食べ応えもきっとバッチリなんだよ! 一緒に食べようよ! きっと美味しいよ!」
    「もちろんもちぃ!」
     蛍姫が続けた言葉に鏡モッチアが抗えるはずもない。話しは何なのかと問うことすら忘れて即答し。
    「私も鏡餅様が好きで……お正月には鏡餅様がないとはじまらないわよね。毎年見ているとこれがないとお正月って気分にならなくなってしまうし」
    「ですね。新年を祝うに相応しい重量感に白きボディ……これがないと新年の始まりという気がしませんね」
    「キミ達ももちぃか?」
     同好の士を得たとばかりに元少女はセティエとみんとへ笑みを零せば。
    「上手くいっているようですね」
    「みてぇだな」
     連行した先で元少女が変貌した理由を説明していたホテルスは、鏡餅に食いつき少年を含む自分達から完全に意識が逸れた様子を見て蓮と共に頷き合う。
    「で、話しを戻すぞ? あいつがああなったのは概ねお前のせいだ」
    「っ」
     好きな物である鏡餅を侮辱された怒りから変貌したことを説明されていた少年は蓮の指摘に顔を強ばらせ。
    「だが、何でそんなことを言った?」
    「そ、それは……っ」
     追求に言葉を濁すも、眼光に耐えきれなかったのだろう。ポツリポツリと語り始め。
    「あ、好きな女をわざわざ怒らせたのかよ? 男なら守ってやるのが当然だろうが」
    「ち、違う。そうじゃない……あいつはいつも明るくて、周囲と冗談言い合って笑ってる様なやつだから――」
    「仲良くするつもりで冗談半分にからかい、知らずに逆鱗へ触れてしまったという訳ですか」
     少年の弁解を聞いたホテルスは少年側の事情を纏めると、ですがと続けた。
    「此のままでは元に戻らず、最終的に彼女の体は乗っ取られ彼女の心は殺され消え去ってしまいかねません」
    「なっ、そんな」
    「もっとも、心の底から彼女が大切に思っている鏡餅を侮辱した事を謝れば、彼女を救う事は可能です」
     声を上げる少年と目を合わせ、ホテルスは明かし。
    「俺……」
    「此のまま一生謝る事が出来ずに彼女がいなくなってしまっても良いのですか?」
    「懺悔してぇなら後でたっぷり聞いてやる……が、その前にやるべきことがあんだろ?」
     ご当地怪人の方を見てから拳を握りしめ、俯いた少年へ二人が問う。
    「好きな鏡餅様を粗末に扱われるのは確かに怒りますね」
    「あなたの怒りは私も分かるわ、私も自分の好きなお餅を馬鹿にされたり変なふうにされたら嫌だもの」
     この時、鏡モッチアと他の灼滅者達との会話も続いており、愚痴の形をとるご当地怪人の憤りにみんとと翠は理解を示していた。
    「わかってるくれるもちぃか」
    「「ええ」」
     だからこそ、鏡モッチアへみんと達は頷いて見せ。
    「でも今のあなたが殴ったら普通の怪我じゃすまないわよ、第一鏡餅様だってあなたが手を汚すのを嫌がるはずだわ」
    「ですね。ただその怒り……昔何かあったのですか?」
     そして、話の流れを変える。同級生の少年に謝罪させるのが説得には効果的と全員が説明をされていた。
    (「なら、様付け呼ぶ程鏡餅を好きな理由をあの少年にも聞いて貰った方が好都合だものね」)
     セティエは自分を鏡モッチアが見ていないことを確認してからちらりと少し離れた男子三名に目をやり。
    「昔な、鏡餅様に命を助けられたことがあるんもちぃよ」
     元少女曰く、硬くなったお餅が盾になっていなければ、今自分はこの場にいなかったもちぃとのこと。
    「つまり、命の恩餅って訳か。俺は教会に住んでたが、神様に供えてしかもありがたい意味がたくさんある鏡餅様は凄ぇよな」
    「なら尚のこと、どっしりと構えた純白の鏡餅様のように相手に惑わされず無闇な暴力は振るわないほうがいいんじゃないかしら?」
     会話に加わってきた蓮へ翠が合わせる中、他の女性陣も悟る、少年を説得していた筈の男性陣が会話に加わってきた理由を。
    「悪い、銅鏡……俺が悪かったっ!」
    「なっ」
     灼滅者達にしてみれば予想出来ていたとしても、同性の灼滅者達との会話や蛍姫の提案で食べていたお餅に気をとられていたご当地怪人からすれば、同級生の少年による謝罪は突然すぎた。

    ●救うために
    「ここから、だな」
     状況を見守りつつ呟いたのは、蓮。
    (「説得に効果的とは聞いていたけれど、それだけなのよね」)
     謝った場合元少女がどう反応するかについての情報はない。だからこそ、少年に鏡モッチアが危害を加える可能性を考慮し、備えようとしたのだろう。
    「……この通りだっ」
     一方で少年は頭を下げ続け。
    「そいつは事情を知らなかったらしい……にも関わらずいい訳もしてねぇだろ?」
     助け船を出したのは、聖職者として、神に使えるものとしてか。
    「どうするよ?」
    「も、もちぃ」
     謝罪に対する答えを要求されたご当地怪人は目に見えて威圧感を減退させ。
    「それはそれとして、さっきも言ったけどよ、鏡餅様は凄ぇな」
    「へっ? もちろんもちぃ!」
     唐突な話題変換に一瞬面食らいつつも即座に肯定した鏡モッチアへ蓮は聞く。
    「そんな鏡餅様はお前が暴れて傷つくことを喜ぶのか?」
    「っ」
    「違うなら、もうやめろ」
     問いかけに言葉を失う元少女を諭し。
    「ふ、ふふふ、ふふ……なんや、ここまでして貰うて、駄々こねたらうちだけが子供やないもちぃ」
     零れ出たのは笑い声から続く自嘲気味な言葉。
    「じゃ、じゃあ」
    「知らへんかったならしゃあないもちぃ。けど、一度だけもちぃ、一、ど……うぐっ」
     顔を上げる少年へ許す旨を告げるご当地怪人の笑顔は途中で崩れ。
    「なっ、おい銅――」
    「下がって、後は私達に任せて」
     この手の展開に覚えのあるが少年を庇うように前へ進み出て、言う。
    「……酷い真似するやあれへんもちぃなぁ。あとちょっとってとこやったんもちぃで?」
     崩れた笑顔を別種の笑みに変え、元少女が人差し指を立てたのが、始まり。
    「一体何が」
    「彼女を乗っ取ろうとしていたものが表に出てきたようです。ここは我輩達が抑えますから、安全な場所に――大切な誰かが、軽口を叩きあってた誰かがいなくなって、あの時謝ってたら良かった、もっと色々な所に一緒にいけば良かったなんて思って……そうなってからじゃ遅いんです」
    「わ、わかった」
     状況を呑み込めずに居た少年も説明に続けたホテルスの訴えに気圧され頷くと、銅鏡をお願いしますと頭を下げて駆け出し。
    「逃がすも」
    「させないわよ」
    「にゃあっ」
     少年の背に向けてご当地怪人がビームを撃ちだそうとした瞬間、翠が自分の身体で射線を遮り、さらにその翠をセティエのウィングキャットが庇い。
    「こら! 動かないで!」
    「そう来ると思ったぜ」
    「もちゃびゃあっ」
     視界に変化を感じた鏡モッチアは、結界と攻性防壁が重なった中で悲鳴をあげた。少年を庇う翠達に目を奪われ、凶行に及ぼうとした場合に備えていた蛍姫達に気づけなかったのだ
    「くっ、この程」
    「あまいわ、ねっ」
    「もちゃぶっ」
     それでも顔をしかめつつ結界と攻性防壁を突破しようと試みたご当地怪人は流星の煌めきと重力を宿したセティエの跳び蹴りをもろに食らって吹っ飛ばされ。
    「では、私達も続きますよ、知識の鎧――マキハラントメイガスっ」
     地面を転がる鏡モッチア目掛け、ビハインドに呼びかけつつみんとは帯を射出。
    「ちょ、ちょもちゃあっ」
     帯によってご当地怪人が地に縫いつけられ、動きの止まった鏡モッチアを遅うは知識の鎧。
    「もちばっ」
     霊撃を叩き込まれたはずみで帯が外れるも、灼滅者達の攻撃はまだ終わらなかった。
    「うっ、もちぃ、まだ――」
    「参りますぞ!」
     次の瞬間、ご当地怪人の視界に飛び込んできたのは異常に巨大化し自分に迫りつつあるホテルスの握り拳だったのだから。
    「もちゃああ」
     悲鳴は異形化した巨腕に潰されて不自然な形で途絶え。
    「くうっ、もう許さへんもちぃ……お返しもちぃやっ!」
    「守りなさい、マキハラントメイガスっ」
     それでも腕をはね除けて起きあがり、鏡モッチアは反撃に転じるも、繰り出した跳び蹴りは主の命で仲間を庇うべく前に進み出た知識の鎧に膝をつかせるに至らず。
    「な、嘘もちぃ……こんな」
    「お姉さん!」
     弱体化が招いた結果に呆然とするご当地怪人を蛍姫の影が呑み込む。
    「うぐ、もちぃ……うちが、こない一方的に……」
     戦いはその後も続いた。だが、弱体化した時点で鏡モッチアに勝機などなかったのだろう。
    「鏡餅は包丁で切る事すら避ける縁起物、そんな縁起物をこれ以上血で汚して良いのですか?」
    「うっ」
     満身創痍のご当地怪人はホテルスの問いに怯み。
    「鏡餅様の素晴らしい所が分かるあなたならきっと大丈夫だわ」
    「問答無用もちぃ!」
     決着の時は近づいていた。これ以上弱体化させられてなるものかと頭を振った鏡モッチアが飛び出し。
    「そう、なら、仕方ないわ、ねっ」
     これに声をかけた翠が雷を拳に纏わせ地面すれすれを飛ぶように駆けて迎え撃つ。
    「うちかてご当地怪人もちぃ」
     下から繰り出されるアッパーをかわし、最後の力を振り絞って一矢報いる。鏡モッチアはそのつもりだったのだろう、だが。
    「もぢゃばっ」
     みんとの引き起こしたもうひとつの雷に巻き込まれ、動きを止めた身体へ突き刺さるは裁きの光条。
    「悔い改めよ、ってな」
     蓮の声を知覚した直後、元少女のいや鏡モッチアの意識は途絶え。
    「……終わったようね」
     人の姿に戻り始めた元少女を眺めながらセティエは殴打のため作っていた縛霊手の握り拳を開いた。

    ●戦い終わって
    「やったね!」
     蛍姫が仲間とハイタッチを交わす中、杞憂でしたかと呟いたのは上に羽織る為の服を抱えた、ホテルスだった。
    「いずれにしても、救うことが出来て良かったわ」
    「そうね。ただ、まだやるべき事は残ってるけれど」
     セティエの言葉に頷きつつも、救った少女の元に駆けていった蛍姫の後を追って翠が歩き出した理由は抱えた武蔵坂学園のパンフレットを鑑みれば明らかか。
    「一応、あちらはハッピーエンドってとこだな」
     助けられた少女と囲む仲間達を見てポツリと零すとそちらに背を向けた蓮は歩き出す。話すべき相手が一人、居たのだ。
    「恋愛相談も受付中だからな?」
     笑みと共にそう付け加えるのは、少女が無事だった旨を伝えた後。
    「私達灼滅者は――」
     蓮の背後からはまだ事情説明をする声が聞こえていた。
     

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年2月3日
    難度:普通
    参加:6人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ