プレスター・ジョンの国防衛戦~キリングパーティ

    作者:叶エイジャ

     血が尾を引いて、首が舞う。
     六六六人衆の首だった。
    「アッハハ、ダッサイのがなくなって、ちょっとは綺麗になったじゃん♪」
     哄笑が上がり、首を失くした六六六人衆の身体に刃が飛来し殺到する。刃に切り刻まれ、残った部分も突き立っていた刃が爆散し、跡形もなくなった。
    「次はだれが死ぬ?」
     そう言った女が振りむいた時には、その身体に敵の刃が、魔術が、殺意が突き刺さっている。
     四人の六六六人衆は仲間の死になんの動揺も見せず、攻撃を続けてくる。
     否、彼らに本当の意味での仲間意識はない。
    「いいね、そうこなくっちゃ♪」
     そして血まみれの笑みを浮かべて迎え撃つ方も、同類だ。
     振るわれた爪の刃が敵の四肢を斬り飛ばし、急所や心臓を貫いていく。自分と他者の血にまみれて、嬉しそうに殺し合いを行っていく。
    「はい、もひとり死ーんだ……!?」
     そして間近で自爆され、致命的な隙ができた。
     残った六六六人衆が攻撃を集中させる。
     一人ひとりは彼女より弱かったが、いかんせん数の差が勝った。勝負が終わる。
    「クソ、いてえ……」
    「しかし邪魔者は片付いた。さっさとプレスター・ジョンを殺しにいくぞ」
     生き残った者がその場を後にする。
    「最悪。サキが人殺しのクズどもに負けるなんて……」
     血だまりに伏した女は、「コルちゃん怒るかなぁ」と言って、ついには光になって、消えていく。
     六六六人衆、屍斬・裂はこうして死んだ。
     でもしばらくしたら、たぶん復活してる。


    「優貴先生が熱を出して倒れちゃったんだ」
     天野川・カノン(中学生エクスブレイン・dn0180)の話によると、かなりの高熱らしい。
     しかもその原因は、『歓喜のデスギガス』勢力がプレスター・ジョンの国に攻め込んだせいだと判明した。
    「目的は、プレスター・ジョンの暗殺だよ」
     知りうることができた情報をまとめると、プレスター・ジョンの国の残留思念を奪い、その残留思念をベヘリタスの秘宝によって実体化させようとしているのではないか――という結論になった。
    「みんなの方が詳しいと思うけど、あの場所にはたくさんの残留思念がいるよね。もしそれが復活して、デスギガスの勢力に加わったら……」
     言うまでもなく、良い展開にはならないだろう。
    「状況を説明するねっ」
     プレスター・ジョンの国に攻め込んでいるのは、なぜかシャドウではない。彼らによって、ソウルボードに招かれた六六六人衆だ。
    「たぶん、コルネリウスがシャドウの侵攻を何らかの形で阻んでいるんだと思うよ」
     代わりに侵入した六六六人衆は、最近闇堕ちした序列外だ。戦闘力に難がある分、複数人で行動している。
     目的はもちろん、プレスター・ジョンの暗殺である。
    「戦況はかなり混乱してるみたい。残留思念はプレスター・ジョンを守ろうとして六六六人衆と戦ってたり……逆にこれを好機と見て、暗殺に加わる動きもあるよ。今回みんなには、防衛側のダークネスを紹介するから、協力して侵攻を防いでね」
     そのダークネスの名は、屍斬・裂。キリサッキーとも呼ばれる。
     去年、灼滅者に競り勝つ形で、プレスター・ジョンの国に入ったようだ。
     敵と同じ六六六人衆だが、コルネリウスのために戦うらしい。
    「敵対する六六六人衆は五人だよ。あまり大きな能力差はないみたいだけれど、一人爆弾魔みたいな人がいるみたいっ。気を付けてね」
     戦闘場所は、ソウルボード内の住宅地となる。
     裂は灼滅者を嫌っているが、こちらがコルネリウスに利する行動をとる以上、意外と協力的だ。敵がいる以上、そのあたりはドライなのかもしれない。
    「六六六人衆と共闘って変な感じだけど、デスギガスたちに戦力増強させるのは防がないとだねっ。優貴先生の容態も心配だし……」
     それに、今回はデスギガスとコルネリウス、四大シャドウの二つが、小競り合いを越えた規模で衝突しているともいえる。
    「大きな戦いの前触れかもしれないね。六六六人衆だって、なんの意図もなしに関わっていそうにないよね……」
     それでもまずは、目の前の戦いを勝利で切り抜けて。
     カノンがそう言って、灼滅者たちを見送った。


    参加者
    詩夜・沙月(紅華の守護者・d03124)
    柳瀬・高明(スパロウホーク・d04232)
    空飛・空牙(影蝕の咎空・d05202)
    リーグレット・ブランディーバ(ノーブルスカーレット・d07050)
    鈴木・昭子(金平糖花・d17176)
    白石・作楽(櫻帰葬・d21566)
    瀬川・蓮(悠々自適に暗中模索中・d21742)
    夜伽・夜音(星蛹・d22134)

    ■リプレイ


    「プレスター・ジョンもある意味人気者だな」
     命狙われたんじゃ嬉しかねえだろうが、と柳瀬・高明(スパロウホーク・d04232)が降り立った住宅街を見まわす。
     この巨大ソウルボードに訪れた者には、違いが分かった。侵入した六六六人衆によって、各所で戦端が開かれているのが感じられる。
    「防衛って、プレジョンも分割存在なんだろ。暗殺なんて意味あんのか?」
     混乱した気配にけらけらと笑うのは、空飛・空牙(影蝕の咎空・d05202)。
    「何か方法があるのかもしれんが……堕ちたての番外どもで実行できるかも疑問だな」
    「確かに」
     白石・作楽(櫻帰葬・d21566)が同意する。とはいえ裏で起きている出来事や秘密が多すぎて、もはや何があっても不思議でない状況だ。
    「とりあえず防衛に加わるとしよう。私は屍斬・裂とは初めてだが……中々にぶっ飛んだ性質と聞くな」
    「アレはただのガキだ」
     リーグレット・ブランディーバ(ノーブルスカーレット・d07050)が「六六六人衆なんてどいつもそんなものだろう」と肩をすくめる。
    「そういえば友達を求めていた気もするな」
    「おともだちを助けたいって気持ち、それって僕達となんにも変わらないのにね」
     夜伽・夜音(星蛹・d22134)がそう呟いたその時、哄笑が聞こえた。

    「バカ言いなよ。高位序列ならいざ知らず、群れた番外ごときがサキに指図なんて」
     屋根の上で、一人と五人の六六六人衆が対峙していた。
     一人は元序列四四四位、屍斬・裂だ。
    「あのジジイ殺すのは勝手だけどさ、結局コルちゃんの敵になれってことでしょ? サキ、友達だから、コルちゃんを殺すのはサキ以外許せないしー。むしろお前らウザいから殺す」
    「……王様って慕われてるのかと思ったんですが、違うんですね」
     瀬川・蓮(悠々自適に暗中模索中・d21742)が霊犬のルーとともに、屋根上の光景を見てむむむ、と唸る。
    「あと、裂ちゃんの途中の日本語が分かりません」
    「あんな精神の持ち主と、共闘……」
     こんなこともあるんですね、と鈴木・昭子(金平糖花・d17176)は無表情に言って、詩夜・沙月(紅華の守護者・d03124)を見る。
    「沙月ちゃんは、大丈夫ですか?」
    「はい。ちょっと、不思議な感覚ですが」
     八人の中で、残留思念との戦闘経験がある沙月。
     苦い記憶が残った戦いだけに、こんな形で共闘する日が来るとは思わなかった。
     戦った敵と共闘。つい、かつて手を握り看取ったダークネスを思い浮かべてしまうが、
    「今は目前の敵を倒す事に集中します」
     沙月が決意とともに放った帯が、裂に仕掛けようとした番外衆を貫いた。


    「このタイミングで灼滅者ァ?」
     その場の全六六六人衆が動きを止め、警戒する。裂が問う。
    「またサキの邪魔しに来たの?」
    「えっと、違います!」
     攻撃してきそうな気配に、蓮が簡潔に答えた。その足元で霊犬が『ワン!』と同意を示す。夜音が言った。
    「邪魔してごめんねぇ。僕達もあの五人組さん倒しにきたの……キリサッキーさんのお力も、貸してほしいんだ」
    「はぁ?」
     裂が困惑した。
    「サキが、よりによってお前らと?」
    「はい。そこの方々に目的を果たされると困りますので」
     お久しぶりですね、と言う沙月から転じ、裂がリーグレットに視線で問う。
    「君が友を守りたいと思う様に、私達にも守らねばならん存在がいる」
     それに、と続いた。
    「こんな下らない連中に負けてもらっては困るんだよ、こちらまでコケにされた気分だ」
    「――だれが、負けるって?」
    「でも、たかが番外に好き勝手されるのは業腹でしょう?」
     怒りの灯り出した声音が、昭子の言葉に押し黙る。
     分が悪いとは、感じているのだ。
    「わたしたちは、苦しんでいる先生を守りたいのです。協力しましょう、とは申しません。裂ちゃんの邪魔はしませんので、どうぞご存分に」
    「俺達は俺達の事情で動いちゃいるが、利害は一致している。そして共通の敵が迫っている。考えるまでもない、だろ?」
     高明が昭子のあとに畳みかけた。裂が鼻を鳴らした。
    「敵の敵は味方じゃないけど……そこまで言うなら、勝手にしなよ」
    「決まりだな。一期は夢よ、ただ狂え――!?」
     力を解放した作楽は、次の瞬間、身体のすぐ近くに飛来して止まった刃に身体を硬直させた。見れば裂の服から射出した刃が灼滅者全員を取り巻いている。作楽は裂を睨みつけた。
    「どういうつもりだ」
    「別にぃ。あんたらが裏切らないか、その保険」
     裂が唇を歪ませた。
    「安心しなよ。サキの邪魔しなければ、とりあえず守っといたげる」
    「あーあー、めんどいやつだな」
     空牙は変わらずけらけらと、視線を五人に向けた。付近の刃は、とりあえず忘れることにする。
    「そんじゃ、狩らせてもらうぜ? お前らのその存在をな」


     五人の番外が手を出さなかったのは、裂と灼滅者の争いを狙ったためだ。
     その目論見が外れ、苦い顔で彼らも動き出す。
    「灼滅者が共闘など!」
    「ほっときゃ殺し合う連中に言われたかねえな!」
     女の六六六人衆の放った鋼糸に、高明が断斬鋏を振るった。黒鋼の翼が流星の如く煌めくたび、糸は切断され、鋏の呪力が増していく。
    「キリサッキー、そちらに爆弾魔がいるぞ」
    「ハッ、自分の心配をしろよ、赤髪女!」
     返ってきた声に肩をすくめ、リーグレットが呟く。
    「こちらは三人か」
     灼滅者に向かってきたのは番外三人。堕ちたばかりとはいえ、まともにやり合えば苦戦必至の人数だ。
    「それがどうした」
     リーグレットの掲げた杖に魔力が収斂。即座に魔法陣が展開する。
    「返り討ちにするまでだ」
     撃ち出された魔弾は五つ。そのすべてが敵ディフェンス役に命中し、その大柄な身体をのけ反らせる。
    「この、女ッ」
    「まだです!」
     怒声を上げたその男に、沙月が一気に間合いを詰めた。牽制で風の刃を放ち、風に追いつかん勢いで高速の剣技を放つ。風をかわした男はその刃を回避――する直前、沙月の周囲で滞空していた刃の群れが射出された。切り裂かれた男が血しぶきをあげる。沙月は一瞬瞠目したが、剣速は鈍らなかった。体勢の崩れたダークネスを斬れば、確かな手応えが返ってくる。
    「瀬川さん、合わせて」
    「はい!」
     作楽が縛霊手を展開。古巻物と蔦花の絡む瑠璃水晶が現れ、紡がれた霊力が縛鎖となって敵前衛を封じる。大打撃を受けたまま動きを制限された男に、すかさず蓮が裂帛の声で十字剣を叩きつけた。
     ハスの彫刻が刻まれた黄玉の刀身が駆け抜けたときには、六六六人衆の男は灼滅されている。
    「な!? クソ……ッ!」
     護り手の消滅に、指輪をつけたダークネスが悪態をついた。指輪から魔弾を連射する。着弾した家の屋根が次々に弾け飛んで行き、その一つが昭子を襲った。
    「……?」
     着弾によろめき、困惑する昭子。ダメージが想定より少ない。見れば、浮遊していた刃が盾となり、砕け散るところだった。
    「あきこちゃん、行くよぉっ」
    「あ、はい!」
     夜音のイエローサインに、昭子はすぐに反応した。地を蹴って、同時に利き腕を鬼のそれへと変化させる。肉迫した彼女に、指輪の男は一手、回避行動が遅れた。昭子の巨拳が敵の中央をとらえ、渾身の力で殴り飛ばす。宙に吹き飛んだその身体を、今度は夜音の七不思議の力が取り囲んでいく。
    「黒髪黒目の普通の子、空見て夢見て枷遊び」
     夜音が言葉を紡ぎ、伽枷奇譚を唄われた少女の幻影が、影の枷と戯れながら指輪の男に怨嗟の波動を浴びせていく。苦鳴を上げて転がった男が立ち上がる。手にナイフを取り出し、目前の空牙に斬りかかる。消耗してもブレない殺意の気配に、空牙が口笛を吹いた。
    「ヒーホゥ! 序列外の日雇いバイトども、とりあえず質問に答えてくんね?」
    「てめぇに答える事なんざねぇよ!」
    「そうかい――じゃ、滅びてくれよ」
     鮮やかな空色が、空牙の足元から直上に駆け上がった。顎をエアシューズに蹴り上げられた男は飛び退って威力を殺そうとするが、その背に刃の群れが飛来して爆発を起こす。
    「これでおしまい、ってな」
     吹き飛んできた男の急所を空牙のガンナイフが瞬時に引き裂いて、灼滅する。三人のうち残った女の六六六人衆に、彼はやはりけらけら笑って問いかけた。
    「で、アンタは知ってんのか答えてくれるのかい? 『秘宝』のことや、ダイヤの勢力がどうやってここの連中をまとめるかってことを」
    「う、うるさい!」
     女のその声は空牙への答えというより、仲間が倒された状況に恐慌をきたしたようだった。鋼糸と殺意を放ってくる。
    「くそ、くそ、こんなはずじゃ……!」
     鋼糸をキャリバーのガゼルが機銃で撃ち弾き、作楽のビハインドの琥界、霊犬のルーが殺意や鋼の糸から灼滅者たちを守っていく。
     その間に、高明がガンナイフを手に女へ向かう。
    「可哀そうだが、優貴先生が心配なんでなっ」
    「誰だよそいつ!」
     女の殺気に、高明が得物を振るう。刻まれし鋼の鴉が殺意の雨を潜り抜け、刀身は六六六人衆の身体を穿っている。呻いた女が飛び退った。
    「私が灼滅者なんかに!」
    「いいね、いいよー。その悔しそうな表情♪」
     着地した女を後ろから抱き締めたのは、裂だった。剣と化した爪や、服の刃が六六六人衆を切り裂き、突き立っていく。悲鳴が上がる。
    「さよならー♪」
     刃が引き絞られた。悲鳴は絶叫に変わった。夜音が昭子の目を塞ぐ。
    「夜音ちゃん、大丈夫ですよ」
     昭子がそう言って、再び見えるようになると、朱に染まった共闘相手が笑って立っているだけだった。
    「ねえねえ、お前らまた強くなった? それともこいつらがヨワヨワなだけ?」
     灼滅者たちに周囲にあった刃が離れた。ブレイドサイクロンとなったそれが、残る二体の番外の内、傷ついていた一方を血煙に変えた。

    ●共闘したからって、殺さないとは言ってない。
     残った一人も、集中砲火でほどなく灼滅された。
     ダークネスの火力も上乗せされたとはいえ、クラッシャーやスナイパーによる火力重視が活きた形だ。その上で痛撃が幾つも重なれば、六六六人衆とはいえ番外ではひとたまりもない。
    「ふうん」
     血塗れた女は、ダメージも軽傷で切り抜けた灼滅者たちを見て、笑みを歪めた。
    「じゃ、殺しあおっか」
    「なに……!?」
     作楽が瞠目する。放射される殺気に、高明がため息を吐いて再び武器を構えた。
    「この状況で、言うか普通?」
    「この場での利害関係は終わったじゃん。灼滅者とサキが出会ったら――あとは考えるまでもないでしょ?」
     言うなり、裂が迫ってきた。唸りを上げる爪の剣を、沙月が冷気纏う『雪夜』の刀身で止める。襲ってきた重圧をはね返し、切り返せば、刃は相手の肩口を斬り裂いていった。避け損ねた裂が口笛を吹く。
    「やっぱ強くなってる……そうこなくっちゃ!」
     ゴスロリ服が旋回し、刃の群れが投射された。前衛を狙ったそれを昭子と蓮、ガゼルや琥界が防ぐが、刃は突き立った次には爆発を引き起こす。
     巻き起こる爆炎を破って、空牙とリーグレットが向かった。空牙のトラウナックルが裂の爪剣と火花を散らす。
    「狩り尽くしたから、お前に聞くけどさ。本当に暗殺できたと思うか?」
    「シャドウの事情なんて、サキの知ったことじゃないね!」
     空牙を弾き飛ばし、裂が鼻を鳴らす。
    「でも、大物が動いたからには勝算と、次の手がある。あんたらがいっつもそれを潰してんじゃないのォッ」
     爪の剣が空間を切り裂き、真空波が巻き起こる。リーグレットが斬られながらも、裂へと地を蹴った。指先から放った光条が乱舞し、迎撃に放たれた刃を打ち砕く。
    「残留思念になってもガキのままだな。我が魔導のもと、朽ち果てろ」
    「また血染めにしてやるよ」
     蛇の如き狂笑が、十指の剣を振るう。リーグレットが跳躍して、赤髪が上方になびく。攻撃の間合いを勘で見切ったのだ。爪剣は足の肉をこそいだだけ。その時には、リーグレットの主装『ジャルダレオン』が魔導の爆轟を響かせていた。吹っ飛んだ裂に合わせて、今度は空牙が宙に身を躍らす。体の回転に重力を合わせ、上方からロケットハンマーを叩きつける。
    「蓮ちゃん、あきこちゃん、今回復するね!」
     夜音から影の蝶が舞いだした。夢幻の蝶は『夜伽噺の言霊』。ディフェンスの治療を行いつつ、夜音は彗星の矢を放つ。地を跳ねるように態勢を整えた裂が刃の盾で阻むが、突破口は開けた。
     その突破口へと、作楽が突き進んだ。手にした『蒼薇笑・荊月』が螺旋の軌道を描き、裂の爪と軋みを上げる。
    「残念だ。友の為に戦う姿勢は好感が持てたのにな」
    「サキに好かれたきゃ、強さで示しな! でなきゃ死ね!」
     作楽の口が咆哮を放った。得物の切っ先を押し進める。裂の蹴りが作楽の腹部に叩き込まれ、苦鳴を上げた彼女が屋根の上を転がる。
    「アハ、残念無ね!?」
     言いかけた裂が蓮の炎の蹴りと、昭子の閃光の拳に後退する。起き上がった作楽が二人に加わる。刃が飛び出し反撃を行う。
    「っだまだぁ!」
     殺意の嵐が吹き荒れ、飛び出した刃が住宅地を爆撃していく。灼滅者たちを衝撃波が吹き飛ばし、ダメージを蓄積させていく。
    「灼滅者とやり合うのは久々なんだ。もっとサキを楽しませて、糧になりな!」
    「糧になるのはお前の方だ」
     声に裂が反応した。背後に放った殺意の奔流がガゼルを捉えて爆散する。しかし乗っていた高明は既に別の場所にいた。
     再び鴉が、今度は大鷲の如き軌跡をみせる。
     ガンナイフに腕を裂かれたダークネスが、超反応で爆煙に五指剣を突きこむ。沙月は止まった。その喉元には切っ先を突き付けられている。以前と同じ光景。
     違うのは、雪夜の切っ先が裂の喉を貫いていることだ。
    「友人の為に戦うあなたの事は、嫌いではありませんよ」
    「……サキはお前が嫌いだよ」
     裂から殺意が消えた。その身体が光に包まれる。
    「早く帰れば? 復活したら今度こそサキが勝つよ?」
     そう言って、屍斬・裂は死んで消え去った。
     でもたぶん、その内復活する。
     六六六人衆とのダメージを引きずっていない状態で。
    「行くか」
     リーグレットが言って、踵を返す。空牙がけらけらとまた笑った。
    「収穫なしか。まぁ、なるようにはなるだろ」
    「僕達だって理想王さん倒しちゃってるけど、今回とどう違うんだろうね」
     夜音も首を傾げる。
    「白石先輩、ご無事ですか?」
    「うん……敵は早めに倒せたが、その分厄介な状況になったな」
     蓮の声に作楽が苦笑した。
    「しかし、コルネリウスの行動も謎が多いな」
    「デスギガスも慌しいし、六六六人衆も便乗してキナ臭いな」
     高明がだが、と笑った。
    「どれも阻んでやるぜ。それより、優貴先生は無事かな」
    「そうですね。先生の様子がどうなったか気になります」
     沙月も頷く。昭子が呟いた。
    「裂ちゃん、復活してもあなたは、今のことを覚えているのでしょうか」
     またね。また明日。
     おやすみなさい。
     ポツリと言って、灼滅者たちは未来のために歩き出す。

    作者:叶エイジャ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年2月8日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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