プレスター・ジョンの国防衛戦~背番号六二六の夢試合

    作者:るう

    ●夢の中の甲子園
    「こんな所にいつまで燻ってンだ?」
    「アンタがしたいのは玉投げじゃねえ……そうだろ?」
    「なあ? 元・序列六二六位さんよ?」
     釘バットの不良男たちは、マウンド上の男に呼びかけた。けれどマウンドの男――血のように赤いユニフォームのピッチャーは、手の中でボールを弄ぶばかり。
    「ああ、この上ないスカウトだ……が!」
     鋭い目。それから球児風六六六人衆の残留思念は、思い切りボールを投げつけた!
    「話は、お前たちを殺してから聞いてやる!」
    「そうかよ!」
     ピッチャー返し! さらにマウンドに殴り込み、情け無用の乱闘を始める!
    「ならテメェは……俺らの序列のために……死ね!」

    ●武蔵坂学園、教室
    「みんな! 井の頭キャンパス中2Cの大津・優貴先生が、高熱を出して倒れちゃったの」
     そう言って、須藤・まりん(高校生エクスブレイン・dn0003)は未来予測を語り始める。
    「どうやらその原因は、四大シャドウの一体『歓喜のデスギガス』が、先生のソウルボードから繋がる巨大ソウルボード『プレスター・ジョンの国』に攻め込んだ事みたい!」
     目的は、王たる『プレスター・ジョン』の暗殺。彼の国に集う残留思念化したダークネスを手中に収め、『ベヘリタスの秘宝』で実体化させて配下とするための行動だろう。
     本当にそんな事が成ったならば、デスギガスの勢力は必ずやダークネス間のバランスを大きく崩し、世界に大いなる悲劇を生み出すに違いない。
    「その暗殺の実働部隊を担っているのは、シャドウによってソウルボードに招かれた六六六人衆なの! 最近闇堕ちした、序列外の弱い敵なんだけど、数で弱さを補っているみたい」
     彼らはプレスター・ジョンの国の各地で暴れるようだ。その動きは残留思念と化したダークネス達にも影響を与え、戦況を混乱させている……暗殺に呼応し手を貸す者もいれば、逆にプレスター・ジョンを守ろうとする者もいる。
    「みんな、この序列外六六六人衆たちを撃退して、世界と優貴先生を助けてあげて!」

     ここに集まる灼滅者たちに頼みたいのは、そのような戦いの一角への干渉だ。『Mr.殺人ピッチャー』と呼ばれるかつての序列六二六位の六六六人衆は、人皮で作ったボールを投げて人々を殺害する凶悪なダークネスであった。が、その凶悪さが逆に、三人の釘バットの序列外六六六人衆からプレスター・ジョンを守る方向に働いている。そこに乱入し、侵入者たちを灼滅するのが今回の任務だ。
    「戦場は広い球場だから、乱入は四人の戦闘中、殺人ピッチャーのせいで三人が簡単に逃げられなくなってる時がベスト! 観客席やベンチから飛び出して、一気に三人を一網打尽にしちゃってね!」
     その際、殺人ピッチャーが倒されぬように戦えば、有利に事を運べるだろう。が、三人が倒れた後、殺人ピッチャーは灼滅者たちにも襲い掛かってくるはずなので、あまり彼が安全になりすぎる戦い方も不利かもしれない。
    「でも、無力だったはずの残留思念が、どうして力を持ったのかな? ともあれ、倒しちゃえばいつもの無力な残留思念に戻るはずだから、四人とも全部倒してきちゃって!」


    参加者
    志賀神・磯良(竜殿・d05091)
    東雲・悠(龍魂天志・d10024)
    不動峰・明(大一大万大吉・d11607)
    鏃・琥珀(ブラックホール胃袋・d13709)
    湊元・ひかる(コワレモノ・d22533)
    十・七(コールドハート・d22973)
    高嶺・円(蒼鉛皇の意志継ぐ餃子白狼・d27710)
    只乃・葉子(ダンボール系アイドル・d29402)

    ■リプレイ

    ●エキシビジョン・マッチ
     満員の阪神甲子園球場。
     気がつけば灼滅者たちは、その内野席に立っていた。
    「話は、お前たちを殺してから聞いてやる!」
    「そうかよ! ならテメェは……俺らの序列のために……死ね!」
     未来予測に語られたのと全く同じ遣り取りが、灼滅者たちの目の前で繰り広げられる。
    「ぶちのめせー!」
    「殺っちまえー!!」
     盛り上がる観客たちに背を押されるように、マウンドへと攻め入ってゆく不良たち!
    「下らん奴らめ……」
     ピッチャーの手からボールが離れた。不良の一人が釘バットでそれを打ち払おうとし、けれども眩惑する球には当たらず。
     空振りし、大きく体制を崩した不良へと、不動峰・明(大一大万大吉・d11607)の野次が浴びせかけられた。
    「へいへい! バッター! そんな切れないスライダーも打てないのか!」
    「うるせぇ外野ども! プレなんとかって奴を殺したら、テメェら纏めて狩ってやる!」
     観客たちの間に紛れ、鏃・琥珀(ブラックホール胃袋・d13709)はほっと安堵の溜め息を吐いた。
    (「どうやら私たちのこと、タダの観客だと思ってるみたいなのよ」)
     このまま、いい感じに潰し合ってくれれば楽なのに。そんな風に琥珀は思う。
    「か・ん・ぷう! か・ん・ぷう!」
     勢いづいた不良たちが優勢になったと見るや、さっきまで「かっ飛ばせ」と叫んでいたのをころっとピッチャー応援に変えた東雲・悠(龍魂天志・d10024)の声を聞きながら。
     再び勢いづいてきた『Mr.殺人ピッチャー』。その姿を遠くからを眺め、十・七(コールドハート・d22973)はふと、自身の手の平に目を落とした。
    (「……治ってるのね、手」)
     七が、確かに断ち切ったはずの手首。無数の殺しの記憶の一つでしかなかったはずの感触が、ふと、彼女の中に呼び起こされる。
     横を見た。湊元・ひかる(コワレモノ・d22533)もあの時、七の近くにいた一人だ。
     ひかるは、何かを六六六人衆たちへと呼びかけていた。けれども、その声はあまりにか細く、隣の七の耳にすら届かない。
    (「怖い……」)
     敵が。失敗が。そして……自分が、誰かの期待を裏切るのが。
     足元に控える霊犬は、何も答えてはくれない。
     すがるように向けた目つきの先で、一つの『箱』が踊っていた。
    「フレー! フレー! ピ・ッ・チャー!」
     トレードマークのダンボール頭を振り振り、会場のどんなチアにも負けず球場をライブ会場へと変えてしまう只乃・葉子(ダンボール系アイドル・d29402)。その眩しい姿にあやかろうと、志賀神・磯良(竜殿・d05091)までチアリーディングとも神楽ともつかない舞いを披露している。
    「野球してるって聞いて観にきちゃったけど、まさかピッチャーさん負けないよねぇ?」
     ひょうきんに、そんな野次まで飛ばしていると、向こうの方からは高嶺・円(蒼鉛皇の意志継ぐ餃子白狼・d27710)の声が響いてきた。手にする観戦のおつまみは、もちろん、香ばしい宇都宮餃子……と何故かなめろう。
    「序列外ごときに苦戦してたら、Mr.殺人ピッチャーの名が泣くよ! そんな三下たち、完封しちゃってよっ!」
    「……おい」
     その時不意に、殺人ピッチャーの表情が険しくなった。ボールを手に握ったまま投げる事なく、辺りにちらと視線を遣って呟く。
    「どうやら、遊んでいる場合じゃなくなったようだ」
    「ビビってんのかオラァ!」
     いきり立つ不良たち。ピッチャーは不満げに舌打ちをすると同時に、人皮ボールを振りかぶる……狙いは、愚図な刺客から僅かに逸れる!
    「おいおい! ノーコンにも程が……」
     それを嘲笑おうとした不良の一人が……肩口から血を噴き出した。

    ●乱入者たち
    「いっ……てぇ!」
     肩を押さえ、歯を剥き出して威嚇する不良へと、明は澄ました顔で肩を竦めてみせた。その片手には剣を提げ、もう片方の手でボールを受け止めながら。
    「おっと。ワンナウト、と思ったんだがな」
    「テメェ……一体どこから!」
     感情を隠して見せない明に苛立って、横殴りに薙がれる釘バット。だがそれは、金属音と共に何かに弾かれる……青と白の戦闘機を思わせる闖入者は、琥珀のライドキャリバー『ラウンドフォース』だ。
    「そんなに死にてぇか!」
    「なら、まずテメェから殺してやるよ!」
    「どいつもこいつも邪魔しやがって!」
     まるで三つ子のように息の合った――逆に言えば隙も全く同じところにある序列外たちを琥珀は、ラウンドフォースの上から眠そうな目で見下ろした。
    「こっちを見てていいの? このままじゃすぐにスリーアウトなのよ」
    「……ぉぉぉおおお!」
     一つの迫力が近付いてくる。が、不良たちはそれがどこからやって来るのか、気付く事すら許されない。何故なら彼らの目を惹いていたのは円……いや。
    「餃子白狼……降臨っ!」
     その掛け声と共に表れた、百目鬼の力を纏った白狼人!
    「宇都宮ご当地の畏れをとくと見よ……行くよ百目鬼!」
     敵を見つめる無数の目。
     天を衝くような狼の遠吠えが細くなり、その瞳が生む威圧感が消えた時、ようやく彼らは理解した。
     刺客が、既に自身の真上にいた事に。
    「やべ……ッ!」
     それが、一人の不良の遺言となった。彼を真っ二つに裂いても飽き足らず、グラウンドに深々と刺さった槍を引き抜いて、悠は軽く、付着した血を振り払った。
    「この球場、血なまぐさすぎだろ……ボールなんて打てそうにもない釘バットに、バッターに当たるまで止まらないボール」
     見回す悠。残る二人の序列外たちはすぐさま襲い掛かってくるし、ピッチャーの方はこれ幸いと距離を取り、じっと灼滅者たちの様子を覗っている。
     あの目。あの、ぞっとするような悪意の目。
     殺人ピッチャーの双眸は、きっとひかるを貫いている。何もかも状況の違う、不思議な再会ではあるが、その目が彼女を嘲笑い、罪を責め立てる事に変わりはない。
    「早く」
     七に催促されてようやく、ひかるは自分の仕事を思い出した。ひかるから飛び出し、鎧の形を作るダイダロスベルトを見送って、七も自分の十字架を振り上げる……そして二人目の序列外の爪先に落とす。ピッチャーは、まだ動かない。
     そちらにちらと視線を遣って、七は再び十字架を持ち上げた。
    「随分と温くなったものね。序列外程度、一笑に……いえ、一投に付す事は出来たと思うんだけど」
    「生憎、お前たちのお蔭でこのざまだ。それより……そんな余所見をしていていいのか?」
    「いやあ、ご忠告感謝するよ」
     磯良が、舞いの動きに合わせて扇子を向けると、『安曇』が飛び出し不良を襲う。思わずバットを取り落としかけた序列外は、磯良を口汚く罵った。慌ててぱたぱたと手を振るって弁解する磯良。
    「うわあー! 私は敵じゃないんだ! だからどうぞ、やり合うのならピッチャーさんとご存分に……」
    「どの口が言いやがる!?」
     その直後、不良たちが冷静さを失った瞬間を見計らったかのように、色とりどりのスポットライト!
    「みんなー! ハコの事、応援してくれてありがとー!」
     灼滅者たちの乱入に盛り上がる観客たちに手を振って、葉子の、スタジアム全体を巻き込んだライブが今、開演!

    ●LIVE&DEAD
     既に投手の退いたマウンドを占拠して、ダンボール系アイドルのステージは進む。フリル付のミニスカートを揺らして踊り、マイクにありったけの『好き』をぶつけて歌い。
     ラブ・アンド・ピース! 両手を合わせてハートを作れば、誰もが彼女に釘付けになる。
     釘バットを肩に担いだまま唖然とする不良たち、じっとその真意を覗う赤ユニフォームの投手、そして、今まで六六六人衆たちの殺し合いに熱狂していた観衆……。
     ……それと、眩しそうに葉子の舞台を眺め、惹かれると同時に身を焦がすひかるも。
     何故、こんなにも明るく振舞えるのだろう? ここで不良たちを止めるのに失敗すれば、きっと恐ろしい事が起こるはずなのに。
     自分は、回復の要を務めきれるだろうか? 実感はない。けれど、手を止めて考える事すら許されない……。
     ひかるが目を泳がせた先で、ようやく葉子の魅了が解けた不良と目が合った。
    「……ッチ、妙なマネしやがって!」
     気を取り直してバットを握り直す。が……遅い!
    「そんな事で気を散らすようなら、凡退するのが関の山だな!」
     武器を振るう時間も勿体ないと、一挙にクロスプレイに持ち込む明! 決して顔には出てこないものの、拳が、何よりも彼の野球愛を物語る……野球を穢す輩を前に!
    「今の左でワンストライクだ。それから、こっちでツーストライク」
    「そして……こいつで三振だ! プレスター・ジョンとやらを助けていいのかは判らんが、デスギガスの企みの方が面倒そうだからな!」
     再び、空から悠の槍が急襲する! けれども不良はバットを振るい、その穂先を僅かに急所から逸らす!
    「そんな手、何度も食らってたまるかよ……」
     そう叫んでバットを振るおうとした不良の頭が、柘榴のように爆ぜた……殺人ピッチャーだ。
    「感謝なのよ」
     一応、口に出しておく琥珀へと、血濡れの投手は馬鹿馬鹿しいとでも言いたげな視線を向けた。
    「序列外どもの思惑も、お前たちの思惑も、俺には知ったこっちゃない。俺は……この球が狙うべき相手に球を投げる。ただそれだけだ」
    「十分なのよ」
     ラウンドフォースのスロットルを吹かす琥珀。
    「前菜はさっさと片付けて、思う存分メインを堪能してくれればいいのよ!」
    「ざけんじゃねぇ!」
     自分が歯牙にもかけられていない事を知り、最後の不良が悲鳴を上げた。
    「事情がねえなら、こっちの事情の邪魔をするんじゃねえ!」
     けれども、知らないねぇ、と磯良はお手上げのポーズを作ってみせる。
    「実際、本当にキミ達の事情なんて解ってないんだ。私の目的は、先生を助ける事でしかないんだからね」
    「うるせぇ……殺す! ナントカって王も、糞ピッチャーも、テメェも……そしてその先生とかいう奴も!」
     不良は、がむしゃらに釘バットを振り回した。
     ……のだけれど。
    「余所見はダメと、教えてあげたはずなのよ」
     飛び込み妨げるラウンドフォース。不良が、仕切り直さんと体重をずらした時には既に、人知れず、七から伸びた影が彼の足元へと忍び寄っている!
    「真っ直ぐな馬鹿は割りと嫌いではないけれど、捻じ曲がった馬鹿は嫌い。あなたも……そして殺人ピッチャーも」
     全身を影に斬り裂かれ、思わず防御が崩れた不良。そしてその目の前に、人皮球。
    「やべっ……!」
     不良の顔色が青くなった。無理矢理振るったバットは辛うじて球を捉えて逸らしたが……直後。
    「ナイスアシスト、ピッチャー……あれ、こういう場合はアシストに入るのかな?」
     磯良の放った呪詛の弾丸が、安堵した彼に、安らかなる灼滅を与えていた。

    ●延長戦
     風を切る音がする。
     その正体を見極める事すらせずに、明は飛来した人皮ボールを捕球した。
    「早速か」
    「俺たちが弱らせ合うよう仕向けておきながら、まさかタダで帰れるとは思っていないだろう? 灼滅者」
     別のボールを新たに握り、投球モーションへと移る元・六二六。
    「もっとも序列外の釘バッターどもは……全く気付いてすらいなかったようだが!」
     ボールは、吸い込まれるように七の手首を打った。投手が一度は喪った部位と、同じ場所だ。
    「まあ、いいわ」
     痛む手首をさすりつつ、七は淡々と意思を表明した。
    「戻ってきたなら、もう一度。また戻ってきたなら、さらにもう一度。始末してやれば、済む話」
     痛みなど知らぬとばかりに十字架を担ぐ。追って、磯良も布帯を放つ!
    「キミは、確かにいい球を投げる。でも、野球で大切なのはチームワークだろう?」
    「他人の事を言えた義理か」
     指摘する投手。
     違いない。磯良自身、自分が気ままにやってる自信はあるし、葉子に至ってはまだ一人でライブ中。たまに、ボールが頭のダンボールに命中すると、自分の怪我を診るより何よりも先に、ダンボールを新しいのに取り替えている。フリーダムにも程がある。
    「……でもね」
     視線の先には、防御の事など考えず、槍を燃やす程に苛烈に攻め立てている悠。まるで、初めて訪れたこの超巨大ソウルボードを満喫するかのように、彼は伸び伸びと居心地良さそうに全身を空中に躍らせ、その槍を振るう。
     一方、人皮球の行く先を追えば、ラウンドフォースと共にグラウンドを自由に駆け廻る琥珀。愛機の装甲はかなり剥げ、自身も体に少なからずの打撲痕や引っ掻き傷を残してはいるが、いまだ、彼女の速度は衰えてはいない。
     琥珀の幾つかの傷の周囲には、包帯のように纏わりつく布の帯。それがなければ彼女が今頃どうなっていたかなど、布帯の主であるひかるはただ祈るばかりで、想像だにしていない事だろう。
     見事なほどに、バラバラだ。
     バラバラだけど……でも。
    「そろそろ、ゲームセットだな」
     明も剣を向けながら、はっきりと、殺人ピッチャーへとそう告げた。
    「最期は大きな一発をお見舞いされて、そのままピッチャーは降板だ」
    「やってみろ。既に二度も灼滅されている今の俺は、灼滅すらも恐れないぞ」
     殺人ピッチャーの最後の投球。大きく、その体を目一杯まで捻り……。
     円は、酸化膜を青虹色に光らせる剣、『沖膾蒼鉛』に、愛しげに一度、キスをした。
     皆の行動の一つ一つを見れば異なるけれど、それらが確かに補い合っているのだという確信。そんな非対称なチームワーク……あるいは『絆』が、もしも自分と『彼』の間にもあるのなら。
     そんな事を願いつつ、円は『初恋の人』との共同作業を始める。
     ゆらめく刀身。それが虹色に輝いて……。
    「今亡きあの人への想いをここに……力を貸してロード・ビスマス! この剣を貴方に捧げます! ……なめろう餃子神霊剣!」
     元・序列六二六位の残留思念、ここに……消える……。

    ●死合終了
    「案外、メインディッシュもあっさりめだったのよ」
     それでも痛む体を引きずりながら、琥珀が皆の元へと戻る。
    「同士討ちを上手く狙えて、助かったねぇ」
     磯良もほっと溜め息を吐いたのに合わせるかのように、葉子が、嬉しそうに手を振り回した。
    「ハコは、いっぱい歌聞いて貰えて嬉しかったです!」
     そんな風に喜べる皆が、やはりひかるには眩しくて。置いてかれないだけでも必死で。
     けれど実際は、誰も仲間を置いていったりはしないのだ。
    「もしデスギガスに次の手を打ってきても、その時も必ず潰してやろうぜ!」
     胸元で拳を握り、笑う悠。
     その姿を見ているうちに、知らず、一筋の涙が円の頬を伝わった。例えデスギガスを討ったって、彼は、もう、戻らない。
     感傷に囚われる円に背を向けて、七は、一人その場を後にする。
    「そういえば、そろそろプロ野球のオープン戦だな! どんな試合運びになるだろうな」
     辺りに漂う余韻を吹き飛ばすような、明の声を聞きながら。

    作者:るう 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年2月8日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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