●死せども性は変わらず
夕陽の差しこむビルの地下駐車場。
ゴミの転がる冷たいコンクリートに血が滴る。肉を斬り、肉を斬られる音。
「話のわからない羅刹だな!」
着崩れた格好の三人の若い男が、日本刀を手にした黒いスーツの中年男に襲いかかっている。全身切り裂かれ血にまみれていたが、中年男――額に捻れた角のある羅刹は逃げる素振りも見せなかった。
「数がいたら俺がびびって言うことを聞くとでも思ったか、餓鬼ども!」
怒声と共に風が渦をまき、空気を裂いて若い男たちの一人に疾る。ざっくりと胸から腹までを切り裂かれ、血をぶちまけて吹き飛んだ。コンクリートの上を跳ねて転がる。
けれど羅刹の抵抗もそれが限界だった。
二人の男のナイフが脇腹に突き刺さり頸動脈を掻き切る。血がしぶき、羅刹は喘鳴をもらすとがくりと膝をついた。
「雑魚が手間かけさせやがって、くそっ!」
「おい急ぐぞ、プレスター・ジョンの首を誰かに取られちまう」
倒れて消えていく羅刹――藤堂・英悟には目もくれず、三人組は傷の手当てもそこそこにビルの地下を後にした。
●理想王の首を狙う影
大津・優貴先生が高熱を出して倒れたという話は、学園内に知れ渡っていた。それがただの病気ではない、とも。
「これは歓喜のデスギガスによる、プレスター・ジョンの国への侵攻だ」
教室に集められた灼滅者に、埜楼・玄乃(中学生エクスブレイン・dn0167)は資料を渡しながら説明を始めた。
侵攻作戦の目的はプレスター・ジョンの暗殺。そしてあの精神世界の残留思念たちを奪いベヘリタスの秘宝で復活、実体化させ自軍に加えるというものだ。わかっているだけでも残留思念体はかなりの数に上る。彼らが全て奪われてデスギガスの軍勢に加われば大変なことになるだろう。
「考えたのは絶対デスギガスじゃないだろうな。ともかく戦力増強など看過出来ん」
作戦を頓挫させなくてはならない。では侵攻はどう行われるのか。
玄乃は苦虫を噛み潰したような表情になった。
「シャドウはソウルボードに序列外の六六六人衆たちを招き入れた。闇堕ちしたてだが、低い戦闘力をチーム行動で補っている」
かの国にはプレスター・ジョンその人や、己の現状を快く思わない残留思念も無論いる。六六六人衆たちに呼応しプレスター・ジョン打倒に動く残留思念も出るため、戦況は混乱を極めるだろう。城攻めをする敵の数を減らす必要があるのだ。
「そこでだ。かつて刺青羅刹として闇堕ちし、最終的にかの国送りとなった藤堂・英悟という羅刹と共闘し、彼の元に現れる六六六人衆たちを撃破して貰いたい」
藤堂・英悟は城攻めの話を蹴って戦い、倒されることになる。
「六六六人衆たちの態度が癇に障ったのはもちろんだが、プレスター・ジョンを倒したいとも思っていないらしい」
灼滅者に倒された経緯上、素直に受け入れるかは疑問だが、六六六人衆を見逃すつもりがないのなら共闘の目はある。
灼滅者は両者の遭遇時に介入することができる。
六六六人衆たちはいずれも殺人鬼のサイキックの他、解体ナイフを使った攻撃も得手だ。堕ちたてとはいえダークネス三人を相手取ることになるので油断は禁物。
対して藤堂・英悟は神薙使いのサイキックがメインで、日本刀による雲耀剣も使う。
戦場は藤堂・英悟が二度にわたって滅びを迎えた、ビルの地下駐車場を再現した場所になる。時刻は夕暮れ時で地下駐車場とはいえ照明があり、天井が高く武器の取り回しに支障はない。広さも充分にあるので存分に戦えるだろう。
大方の説明を終えてファイルを閉じた玄乃が眼鏡を押し上げた。
「本来争っているであろうデスギガス勢、コルネリウス勢双方のシャドウの姿がないのは気になるが、六六六人衆が手を貸したのはベヘリタスの秘宝目当てだろうな」
どこかで争っているのか、何かの協定でもあるのか。目に見えぬ動きを知る術はない。
「いくらかでも話が聞けそうなのが慈愛のコルネリウスだけときているし、今後を考えると頭が痛い……ともあれ、これも介入戦だ。皆気をつけて行って、無事で戻ってくれ」
参加者 | |
---|---|
真榮城・結弦(高校生ファイアブラッド・d01731) |
羽守・藤乃(黄昏草・d03430) |
城・漣香(焔心リプルス・d03598) |
鳴神・千代(ブルースピネル・d05646) |
コロナ・トライバル(トイリズム・d15128) |
富士川・見桜(響き渡る声・d31550) |
荒谷・耀(護剣銀風・d31795) |
エリーザ・バートリー(切断解体私が大絶叫・d35973) |
●相争う敵
あかい夕陽。郷愁よりは不吉な予感を掻きたてる風景。
滅びたダークネスの集う精神世界――プレスター・ジョンの国。
「羅刹と共闘……ね。でも、天海さん達と同盟も組んでたりするし、そういうこともこれからどんどん増えていくのかもしれないね」
呟く鳴神・千代(ブルースピネル・d05646)の足元で霊犬の千代菊が主を見上げ、エリーザ・バートリー(切断解体私が大絶叫・d35973)が首を傾げた。
「ダークネス同士でもこんな風に殺し合うのね。灼滅者としては潰しあいは推奨するところかしら? ああ、とは言ってられないわよね、先生の事があるもの」
「プレスター・ジョンもデスギガスとやらも全く興味もないけど、デスギガスの戦力増大阻止の為にガンバルゾー」
コロナ・トライバル(トイリズム・d15128)が小さな拳を振り上げる。懸念が拭えない羽守・藤乃(黄昏草・d03430)が、物思わしげに目を伏せた。
「上手く出来ると良いのですけれど。下手に出すぎると見くびられてしまうでしょうし、かといって礼儀を失いたくはありませんし……塩梅が難しいですね」
駐車場の奥から怒声が響いた。予測どおり話が拗れたようだ。
突入すると、怒気もあらわに対峙する二者、見上げるように大柄な羅刹を取り囲み、細身の男三人がナイフを振りかざしている。額から血を滴らせる羅刹へ荒谷・耀(護剣銀風・d31795)が防護符を放った。
「誰だ?!」
振り返る手傷を負った六六六人衆に、城・漣香(焔心リプルス・d03598)が距離を詰めて火の粉を噴く交通標識を振り上げる。思わず跳びのく男へ、別の男から叱責がとんだ。
「バカ野郎、包囲が解けるだろ!」
この男が熊谷か。目星をつけながら真榮城・結弦(高校生ファイアブラッド・d01731)は羅刹と男たちの間に位置どり、羅刹――藤堂・英悟の前に富士川・見桜(響き渡る声・d31550)が庇うように立ち塞がった。
「なんで灼滅者がこんなところに」
「俺が知るかよ。どうせ全員切り刻んでやりゃいいんだ。ガタつくんじゃねえ」
仲間を叱責した男が楽しそうに両手の間でナイフを遊ばせる。やはり彼が熊谷のようだ。
「虎さん、虎さん、そこな3人組を一緒に倒さない?」
コロナの言葉で自分を葬りこの国へ送った灼滅者の仲間、と気付いた英悟が、一行を見て眉を吊り上げた。
●敵の敵との共闘
気色ばむ英悟に耀が丁寧に会釈をして言葉を重ねる。
「藤堂のおじ様、失礼します。私達、あの人達を排除しに来たんです。それでですね……もしお嫌でなければ、共闘しませんか?」
「共闘だと? 俺をここに送ったお前らとか!」
英悟――否、羅刹である『英悟』にとって灼滅者はいきなり襲われ、二度にわたって滅ぼされた相手だ。人間だった藤堂・英悟の分を勘定に入れれば三度であり、むしろ灼滅者とこそ戦う理由はある、のだが。
「半端者と半端者に殺された羅刹の連合か? お笑い草だな!」
嘲笑う熊谷の体からどす黒い殺気が溢れ出し、灼滅者はもちろん英悟をも飲み込んだ。割り込んだ見桜が殺気を己が身に引きつけ、英悟への攻撃を阻む。
「……何をしている」
「私たちとあなたの目的は一緒だと思う。なら、無理にあなたと争うことはないし、争いたくない。一緒に戦ってくれないかな」
背筋を伸ばしてまっすぐ自分を見つめる見桜を見下ろし、英悟は眉を寄せた。バベルの鎖を目に集め、六六六人衆を警戒しながらエリーザも口を添える。
「喧嘩に水を差してごめんなさいね。でも私達そこの六六六人衆を狙って来たの。せめて譲ってくれないかしら?」
「譲るだと?」
「共闘したいけど、無理にってわけじゃないんだ。こう見えても僕たち、こいつらに負けるつもりはないからね」
穏やかな笑顔で微笑んだ結弦が『白桜』を抜くと、刀身を橙色の炎が這い、鮮やかな軌跡を描いて手負いの六六六人衆を斬り裂き焼いた。苦鳴があがる。
「ぐおっ?!」
「独りで挑むよりかは満足出来る結果になりそうだけど。手を取るのなら、裏切るような真似はしないさ」
「オレらは単純にあいつらを倒しに来ただけ。少なくともあんたの邪魔はしないし、そうはなんないよ。今んとこそれだけは信じてほしいかな」
どう? と首を傾げるコロナと漣香が、仲間を守る警戒色の光を灯した標識を掲げる。加護が自分にもかかるのを感じて英悟が唸った。
「この場だけで構いません。互いの目的が一致するなら……駄目、でしょうか?」
見桜に符を飛ばして傷を癒す耀はあくまで冷静だが、訴えるようなものがあった。そう、符。彼女が駆けこんでくるなり自分に符を飛ばしたのも事実。
「目的は違えど敵は同じ……力を貸して貰えないでしょうか。出来ぬとあれば、そこで黙って見物なさって下さいませ」
縛霊手で六六六人衆の動きを阻害する結界を張りながら、藤乃がいっそ清々しいほど突き放す。かちんと来ながらも、英悟は気概を見てとった。自分を利用したいなら調子に乗せようとするだろう。
妖の槍を構えた千代が螺旋を描く刺突を仕掛けながら声をあげた。
「この人達を倒すというのは英悟さんと一緒。だから気分良くないかもしれないけど、私たちもあなたと一緒に戦うよ! 足手まといにはならないようにする!」
「いいだろう! 簡単にくたばるなよ、餓鬼ども!!」
半ば自棄の英悟に安堵したように笑う結弦が、巻いたラリエットをなぞるように帽子へ手をやり、きゅっとかぶり直した。
●影を消し去れ
「お出でなさい、鈴媛」
凛とした藤乃の声が、スレイヤーカードの解放を告げる。
「共闘とか戦争位だと思ってたけど、たまにはいいかもね。そんじゃおっぱじめよーぜ、おっさ……じゃなかった、お兄さん」
「ええい、おっさんでいい!」
「死ね、役立たず!」
言い直す漣香に怒鳴る英悟へ熊谷が跳びかかった。英悟の神薙刃が六六六人衆にとって脅威であると同様に、彼らの殺人技術は英悟の弱点。互いに早く決着をつけるべき相手だ。熊谷のナイフの斬撃、英悟の零距離からの神薙刃が互いを同時に襲った。
喉を裂かれた英悟を目にして、耀が思わず駆け寄る。
「大丈夫ですか、父さ……っ」
そこで言葉を飲み下したが、英悟は無言で耀を見返した。わずかに、声が揺れる。
「……藤堂の、おじ様。ごめんなさい、失礼を」
「行くぞ」
聞こえなかったような顔で敵に向き直る英悟と、耀。
千代は複雑な想いを抱いていた。ダークネスは全てが絶対悪なのかと言われれば、それには違和感を覚え始めている。共闘するダークネスがいてもいいんじゃないか――まだ、形にならない胸の中。
「千代菊、頑張ろうね」
真っ白い相棒がふわりと尻尾を振る。弾丸のように飛び出すと、千代菊の斬魔刀と千代の炎をまとった蹴撃のコンビネーションが鷺沼を襲った。藤乃の鈴振る影が忍び寄り、ぎしり、男を絞める。
「シャドウにいいように使われるとは……どのような甘言に釣られたのかは知りませんが、貴方がたの目的は諦めて頂きますわ」
影が離れてよろけた鷺沼を、今度は長い髪をなびかせて回り込む煉の放つ霊障波と、漣香の炎を纏った標識の挟み撃ちが待っていた。
「チームワークならこっちだって負けないよ」
心の深淵からかき集めた黒い想念を弾丸に変え、結弦が狙い澄まして撃ち込む。
「……手下が鷲と鴨なのになんでリーダーは熊なの? 鷹とかで統一しないの? 改名したほうが格好良いと思うよ」
「うるさい!」
「クソ餓鬼様のお通りだー!」
英悟にダイダロスベルトを滑らせて傷を癒しながら、コロナが敵を挑発する。
戦場の敵するものに原罪の紋章を灼きつけながら見桜は考えていた。
(「なんのために戦ってるんだろうね」)
戦える力があるからだと思っていた。戦うことそのものに疑問も持たなくなってしまっている。戦っている時の高揚感も知っているけれど。
英悟を狙った鴨田の斬撃の前に滑りこみ、見桜は一撃を引き受けた。血がしぶく。
「おい、お前ら知らんのか。俺は残留思念で」
死んでも勝手に蘇る。
「でも、私は守るために戦いたい」
英悟が口をつぐんだ。
「あなただって今は仲間だからね。これくらいたいしたことじゃないよ。私が前を歩いて、みんなを守りたい!」
六六六人衆の中心に焦点を絞って氷結地獄を生みだしながら、エリーザは首にまとわりつく三つ編みを後ろへ払った。それにしても英悟の『ヤのつく自営業』ってなんだろう。
(「なんだかこの人、「解体」の仕事を依頼しにくるマフィアを思い出すのよね」)
立ち位置をずらし、結弦は英悟を視野に収めた。さりげなくフォローする形で戦っていけば動きやすいだろう。
●朽ちる死の影
熊谷はほぞを噛んでいた。10分で落ちた二人の手下にもがっかりしたが、半端者たちも数がいると厄介だ。ちょこまか動き回る犬と足のない女は消し飛ばしたが。
エリーザの操る『urlare』が音楽と共に轟音をたてて体を引き裂き、麻痺や足の痺れを増していく。
「全く関係ないことだけど、六六六人衆って全く減る気配ないよね。黒い何かかな? ……いや、3人組だし三連星?」
防戦一方に陥った熊谷をダイダロスベルトで追い詰めながら、コロナが首を傾げた。引き裂かれて反撃に奮った熊谷の刃は、立ち塞がった見桜に完璧に止められる。
「てめえ!」
瞬間、耀が死角に回りこんでいた。『護法の鶴翼』がしたたか脇腹を抉る。攻撃は幼げな容貌からは想像もつかないほどに苛烈だった。
「人を殺す技、私も少し心得があります。能力では劣るかもしれませんが、踏んだ場数は負けません」
傷が抉り込まれた。口調は落ち着いていて、激したところなど微塵も見えない――それでも激痛の中で熊谷は耀が激怒していることを感じた。一歩、二歩たたらを踏むと。
英悟の放った傲然と唸る風が断裂を生み、ざっくり熊谷の胸から腹腔までを斬り裂いた。悲鳴をあげた傷の上から、更に見桜が『リトル・ブルー・スター』で斬りかかる。
「くっそマジかよ……こんなの、命張るような話じゃないよな?」
「不利になったらそう思ったのか?」
言い捨てる結弦の『白桜』が閃いた。銀の桜の武器飾りが刀の纏う炎を映してオレンジに染まる。熊谷はもはや身を焼く炎や衝撃のたびに蝕む氷から、己を癒す術がない。
包囲の穴を探す動きは漣香に見切られ、退路を塞がれた。先回りした煉に追い立てられて戻れば漣香が躍りかかる。
「勢力争いだかなんだかしんないけど、オレ達のアイドルを苦しめないでくれる? ほら、意識吹っ飛ばせる奴、くれてやるよ!」
横殴りの斬撃が伴う炎に焼かれ、熊谷は悲鳴をあげた。焦りの色を浮かべる熊谷の延髄に重い蹴りを見舞い、千代はとんと着地した。大切な人たちを守るため、少しでもたくさんの人が笑顔で暮らせる日常を守るため、この男は見逃せない。
傾いだ熊谷の足元まで、影の鈴蘭が揺れながら伸びた。鈴の音が聞こえるような影業『fairy ladders』が体を這いあがり絞めあげる。ごきり、骨の折れる音が響いて。
「……クッソ……」
影の縛めが解かれると、熊谷は操り糸の切れた人形のように倒れた。その姿は黒く霞み、見る間にぼろぼろと崩れ、散っていったのだった。
●まぼろしのまま
終わってみれば皆が怪我を負っていた。仲間ばかりか英悟まで庇った藤乃や見桜は相当に消耗している。結弦が血にまみれた見桜を見て眉を寄せた。
「お疲れさま。ああ、結構ひどいね」
「大丈夫だよ」
これで城へ向かう戦力を減らすことができた。結弦の集気法の治療を受けながらも、疲労感と達成感で見桜が気持ち良さそうに英悟に笑いかける。
「ここ、意外といいところかもね。住みたくはないけどね」
「誰もいなくてせいせいする……なんだ、おい何してる」
そう返した英悟が、藤乃の祭霊光に振り向いて声を尖らせた。
「応援は出来ませんが、せめてこれくらいは」
「ありゃ、案外深いねー」
仲間の傷を癒し終えたコロナも治療を始め、いよいよ理解できないという顔で英悟が眉間のしわを深くする。形相こそ節分の鬼にうってつけだが、怒ってはいないらしいので千代は聞いてみた。
「ねえ、さっき六六六人衆に何を言われたの?」
「け。餓鬼が生意気に、頭数がいれば楽だから助けてやる、城攻めを手伝えとよ。暴れるチャンスをくれてやるまで言いやがった」
忌々しそうに吐き捨てると、沈みかける夕陽を眺める。
「好きで此処にいるわけじゃねえし、プレスター・ジョンだって俺のことなんざ気にしてないかもしれんが。黙って置いといてくれてるもんへの義理ってのもある」
それは人間だった藤堂・英悟が生きてきた世界での考え方で、彼の死をもって現れた羅刹の『英悟』がその考えに囚われているのは不思議なことだった。
治療を終えた藤乃が離れると、英悟は頬にとんだ血を拭った。
「……久しぶりにまともに身体を動かしたな」
口調には、思うさま力を奮ったことへの充足があって。
「お兄さんまだ暴れたりない? そんならこいつで遊んでいーよ」
漣香が煉を指して水を向けると、英悟は面倒そうに顔をしかめた。
「いらん。だが次にお兄さんとか吐かしたら殴る」
「あっそ。ま、今度会った時もよろしくしてよ」
「敵対する理由がなけりゃな」
さして期待していなさそうな漣香に、英悟も気のなさそうな返事をした。羅刹らしい暴力への衝動がいくらか解消されたのは確かなようだ。
「藤堂のおじ様、ありがとうございました。失礼致します」
耀が一礼すると英悟は手をあげて追い払う仕草をした。
「餓鬼は危ない真似してねえで帰って勉強すんだな。もう来るなよ」
「ありがとうね!」
「お邪魔しましたっと」
千代が謝辞を述べ、笑顔を浮かべた結弦を先頭にエリーザも会釈をして、灼滅者たちは英悟のいるエリアを後にした。
プレスター・ジョンの城の攻め手となるはずだった敵は斃れた。
理想王の国が脅かされているのは変わらない。これからを思えば頭の痛い状況に代わりはないが――今は大津・優貴先生の発熱が収まっていることを祈るばかり。
作者:六堂ぱるな |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年2月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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